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5年間の開発実績、アプリ開発事例、人気プロダクトの作り方etc.
グリー「CEDEC2011」講演 スマートフォン時代のゲームとは
CEDEC、東京ゲームショウと相次いで開かれたゲーム業界のカンファレンスには、ちょっとした異変が起きている。ソーシャルゲームのリーディングカンパニー・グリーが、その存在感とゲーム業界のソーシャル化の流れを示したのだ。まずはCEDECのセッションから紹介しよう。
(取材・文/広重隆樹 総研スタッフ/宮みゆき 撮影/佐藤聡)作成日:11.09.30
スマートフォンがもたらした3つの革命に乗り遅れるな

 CEDECは、コンピュータエンターテインメント協会(CESA)が主催して、毎年9月頃に開催されている日本最大級のゲーム開発者カンファレンス。2010年までの正式名称は「CESAデベロッパーズカンファレンス」だったが、2011年からは「コンピュータエンターテインメントデベロッパーズカンファレンス」に変更された。その「CEDEC2011」の掉尾を飾った9月8日のパネルディスカッション「世界の心をつかむスマートフォン時代のゲームとは」から紹介していこう。このセッションは、これからのゲーム業界の方向性を示すものとして大いに注目され、ソーシャルゲームの存在感を際立たせていた。

田中良和氏
グリー株式会社 代表取締役社長
田中 良和氏

 タイトーの庄司顕仁氏、エレクトロニック・アーツ・インタラクティブのアラ・マック・グロウエン氏、カプコンの手塚武氏と共に登壇したのが、グリーの社長、田中良和氏だ。一部ではよく知られていることだが、田中氏は子供の頃から大のゲーム好き。
「小学生時代は『ファミ通』にハマって、ガバスを集めたり、中学時代には『ストリートファイターII』をやるために毎日ゲームセンターに通ったり……」と自らのゲーム遍歴を語るその表情は生き生きとしている。

 ディスカッションの中で田中氏は、グリーの世界展開に触れ、「10億ユーザーを目標にする」と宣言した。田中氏によれば、スマートフォン向けプラットフォームの移行はある種、必然的な流れ。「いつでもどこでもつながる通信の革命、小売店を介さずにボタン一つでダウンロードできる流通の革命、そしてユーザー一人ひとりにばら売りができるようになった販売手法の革命」という3つの“革命”を、スマートフォン・ゲームが成し遂げつつあるという。田中氏の言葉は、「ゲーム業界は、その革命に乗り遅れるな」という檄のようにも聞こえた。

グリーのエンジニア、自らの失敗を語る。

 CEDEC2011のセッションの中でもひときわ注目を集めたのは、9月7日に開かれた、グリーCTOの藤本真樹氏とアプリ基盤チームリーダー梶原大輔氏による「GREEソーシャルゲーム5年間の技術的失敗と成功の歴史」というものだ。この種のカンファレンスの中で、「技術的失敗」が表立って語られることは極めてまれなこと。エンジニアの関心は高く、会場はすぐに満席となった。

 グリーは2007年、まだ「ソーシャルゲーム」という言葉がなかった頃から、モバイルゲームをリリースしている。2007年5月リリースの「釣り★スタ」が最初だ。以来、5年にわたる開発実績の中では、失敗は数知れずあった。ネットワーク上のDNSの問い合わせがオーバーヘッドになったり、NATテーブルがあふれるという、意外と初歩的なミスも、当時の試行錯誤を物語る。

 データベースのMySQL関連では、貴重なノウハウがいくつか語られた。梶原氏によれば、「MySQLのボトルネックのほぼ8割が、書き込み処理時に発生する」と言う。
「『あしあと』の情報や友達の新着情報は書き込みが激しくて、普通のMySQLの設計では対応できないことが多い。そのためグリーでは、memcached互換の分散key-valueストレージエンジン『Flare』を自社開発している。テーブル分割のためのsharding技術の活用に当たっても、専用のライブラリを開発した」(梶原氏)

「Flare」の開発について梶原氏は、「Key-Value-Storeのミドルウェアはどこのソーシャルゲーム業界の会社も独自に持っていると思う。自分たちで作らないとかゆいところに手が届かないということがある。『Flare』はまだまだ機能拡張中で、いろんな機能が追加されている」と、ミドルウェアの自社開発の優位性を語る。もちろんその成果を惜しみなくオープンソースで公開するというのも、ソーシャルゲーム企業ならではのことだ。

 アプリケーション開発の失敗ということでは、当初のグリーはソースコードを一つで管理していて、そのコードは巨大なかたまりのようになっていたという。「これだと、デプロイやマージなどの作業が、開発者の間で奪い合いになってあまりよい状態ではなかった」(梶原氏)

 その解決方法として、アーキテクチャの疎結合に乗り出した。 「プログラムを疎結合化して、機能をAPI化することで、それぞれを異なる言語で記述することもできるようになった。疎結合化が進むことで、『GREE』内製のゲームなのに『GREE』のPlatform API使ってユーザー情報を取得したり、友達と交代するようなゲームも作れるようになった。最近はAndroidやiOSアプリとの通信部分をWeb APIで作るような実装も用意されている」と語る。

藤本 真樹氏
グリー株式会社
取締役 執行役員CTO 開発本部長

藤本 真樹氏
梶原 大輔氏
グリー株式会社
プラットフォーム開発本部 リーダー

梶原 大輔氏

 運用面で梶原氏が強調したのは、「障害の原因を特定しやすい環境をつくる」ということ。「GREE」のWebサーバーも、当初は複数サービスが混在していたため、全体の負荷が上がってくると、どのサービスがその負荷要因になっているのか、特定が難しかったという。memcachedとapacheを同居させていた時代もあった。その対策として効果があったのは、可能な限りサーバーを分けるというシンプルな方法。大規模な負荷がかかるソーシャルゲームのサーバー運用としては、当然の方法のようにも聞こえるが、実際の失敗事例を踏まえての話なので、説得力が高かった。

混沌としたスマートフォンの世界。勉強することが多すぎる

 同セッションの後半パートは、藤本真樹氏が引き継いだ。 「去年はCEDECに登場してもまだグリーの存在は物珍しかった。しかし、1年経つともう当たり前の雰囲気がある。フィーチャーフォンからスマートフォンへのこの1年の変化がそれだけ凄まじかったのだと思う」と、感慨を述べた。ただスマートフォン向けゲームの開発ではOSやプラットフォームが混在する。ブラウザアプリなのか、ネイティブアプリなのかでも開発の方針は違ってくる。選択肢が増えた分だけ、開発効率を上げることが難しくなっていることも事実。

「開発していて思うのですが、アプリケーションってスマートフォンになると一気に複雑になりますよね。ブラウザアプリでも、HTMLファイルをまじめに勉強しなきゃいけないし、Canvasとかをやると、何しろ普通のWebをやっていた人とは全然違うプログラミングの世界。JSも覚えなくてはいけないし、CSS3も覚えなきゃいけない。かたやネイティブアプリの方にいくと3Dのプログラミングみたいな話もあるし……。そういったものも勉強していかなければならないのは大変です」
 と言う藤本氏の率直な述懐は、いまスマートフォン・ゲームを開発しつつあるエンジニアには深く共感されるものだった。

 フィーチャーフォンがドメスティックな勝負だったのに対して、スマートフォンはグローバル市場が相手というのも大きな違い。
「これからは、海外のデベロッパーとの勝負になる。スピードやコスト競争も、国際標準で進められるようになる。そうした環境に真面目に取り組んでいかなければ、日本全体のデベロッパーが立ち遅れてしまう。そうはなりたくない」と、藤本氏は語気を強める。
 グリーは「GREE Platform」の提供やさまざまなオープンソースの開発を通して、国内デベロッパーと共に、ソーシャルゲームのグローバル市場で勝負していく。その姿勢が鮮明に示された講演だった。

“集客”“活性化”“収益化”を可能にする「GREE Platform」の優位性

 9月7日には、同社ソーシャルプラットフォーム統括部長の伊野友紀氏による「グリーにおけるスマートフォン向けソーシャルゲームの創り方」というセッションも行われた。この中で伊野氏は、グリーが今四半期中に提供開始予定のアプリの開発事例を披露。また、「GREE Platform」のケースから、ソーシャル機能を活用しながらアプリを活性化していく方法、さらには、アドビシステムズからゲストスピーカー、アンディ・ホール氏を招き、既存のFlashコンテンツを活かすツールの特徴についても説明した。

 グリーのスマートフォン・プラットフォームについての現状認識で興味深かったのは、「グリーとしてはAndroidを重視している。社長の田中もAppleは好きだけど、ビジネスとしてはAndroidという考え」という言葉だった。とはいえ、国内のSNSサービスとしては最速で、Webアプリ、iOSアプリ、Androidアプリのフルラインアップをそろえるグリー。今後の開発手法としては、ネイティブアプリの他に、“ハイブリッドアプリ”にも注力していくと述べた。

 ハイブリッドアプリはグリーの用語だが、一口に言えば「従来のブラウザゲームをアプリでつつんだ“ガワだけアプリ”」(伊野氏)。ブラウザゲームとしての更新の手軽さのほかに、プッシュ通知機能、電話帳へのアクセスなどの多機能性を持ち、ブラウザアプリとネイティブアプリの両者のメリットを組み合わせている。この概念はすでに今年1月のジャパン・イノベーション・リーダーズ・サミットなどで、同社のソーシャルメディア統括部長の伊藤直也氏から語られているもの。その手法で開発された、自社タイトル『探検ドリランド』は、App Storeでダウンロード・ランキング1位を獲得している。ソーシャルゲーム開発全体で重要なポイントを、伊野氏は“集客”“活性化”“収益化”の3点にまとめ、「『GREE Platform』はこの3つを効果的にアプリにビルトインできるように設計されている」と指摘した。

 ゲストして招かれたアドビのアンディ・ホール氏は、従来のFlashをさまざまなデバイスで動作することができる「Adobe AIR」について報告した。伊野氏もまた「AIRプラットフォームの対応を検討している」と語り、両社の最近の緊密な協業関係をうかがわせた。

伊野 友紀氏
グリー株式会社
ソーシャルプラットフォーム統括部長

伊野 友紀氏
コンソールゲームのカリスマ、なぜグリーに転職したのか語る

 最終日のセッションでは、メディア事業本部の土田俊郎氏と、開発本部ソーシャルアプリケーション(Japan)統括部長 岸田崇志氏が「セールスランキングNo.1 プロダクトの作り方」を語った。土田氏は2011年2月まで、スクウェア・エニックスで「フロントミッションオンライン」や「ファイナルファンタジーX」「ファイナルファンタジーXIII」の開発に関わった、日本を代表するゲーム・デザイナー。3月にグリーに入社したばかりだが、土田氏の転職はまさに今、コンソールゲームからソーシャルゲームへと業界の流れがシフトしていることの象徴とも言える。

土田 俊郎氏
グリー株式会社
メディア事業本部

土田 俊郎氏
岸田 崇志氏
グリー株式会社
開発本部ソーシャルアプリケーション
統括部長

岸田 崇志氏

 土田氏は、家庭用コンソールゲームとソーシャルゲームを比較しながらこう語る。
「『探検ドリランド』(グリーの自社開発ゲーム)は収益から見ても、家庭用ゲームで数百万本を売り上げるクラスのゲームだ。家庭用ゲームは開発にお金や時間がかかるが、そうしたリスクのある中で開発したコンソールと肩を並べる規模感のタイトルを、グリーはソーシャルゲームで作っている」

 コンソールゲームとソーシャルゲームでは、プロダクト開発の手法が大きく異なる。一般にコンソールゲームではプロデューサー、プランナー、デザイナーの役割分担が明確だが、グリーの場合はプロジェクトのメンバー一人ひとりが重層的に領域をカバーする。これを、岸田氏は「垂直統合型スキルセット」という言葉で表現した。そのことによって、チーム内の意志決定、開発スピードをアップすることができるのだという。

 膨大なユーザーデータをデータマイニングの手法で分析し、それをゲーム開発にダイレクトに役立てる方法も、ソーシャルゲームならではのものだ。これは「データ駆動型アプローチ」と呼ばれる。土田氏は「ソーシャルゲームをやっていくためには、今後このアプローチを理解していかないとゲームクリエイターとして滅びてしまうかもしれない。逆にそれを理解できれば、クリエイターとしての過去の経験は十分活かせる」と語り、コンソールゲームとソーシャルゲーム開発の非連続性と連続性の双方を指摘した。

 ヒットするゲーム開発のためには、「集客」(ユーザーが集まり続ける仕組み)「活性化」(ユーザーが使い続ける仕組み)「収益化」(課金など収益を得る仕組み)の3つが重要であることは、先の伊野氏の講演でも触れられたこと。岸田氏はそれをさらに詳しく、実際のゲームの構造やライフサイクルに沿って説明した。

 土田氏も、このモデル化こそが、コンソールゲームとソーシャルゲームの最大の違いと述べる。
「グリーでは、いくつもあるモデルやフレームワークの中から、自分たちが作るゲームにマッチするケースを導き出すことができる。新しいアイデアが成功するとそれが新たにフレームワーク化され、社内で共有される」という、モデリング開発の好循環が生まれていると指摘。長年ゲーム業界にいた人だからこそ見抜ける、「GREE」成功の秘訣を語った。

 CEDECのグリー・セッションでは、同社がスマートフォン向けソーシャルゲーム開発のために、「GREE Platform」の強化を急ぎ、国内外デベロッパーをサポートしていく様子が語られた。同時に、アドビなどソフトウェア開発企業との連携も進めることもわかった。こうした技術環境の提示は、既存デベロッパーの中でゲームのソーシャル化に従事する開発者たちを大いに奮い立たせるものだった。もちろん、そこからプラットフォームそのものの開発に関心を抱き、グリーへの転職を志向する人たちも生まれてくるはずである。

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2004年2月に、ソーシャル・ネットワーキング・サービス (SNS) 「GREE」を公開、日本だけでなく米国・欧州などグローバル展開を進め、世界で億単位のユーザー数を目指すソーシャルメディア事業をはじめ、ソーシャルアプリケーション事業、プラットフォーム事業、広告・アドネットワーク事業等を展開しています。続きを見る

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