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勤務先業種で満足度に格差!
2011年賞与平均は106万円 |
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東日本大震災や原子力発電所の事故に揺れた2011年。大企業のボーナス事情は明るかったが、中小企業は、非常に厳しい結果が報告されている。エンジニアのボーナス支給状況を探るため、Tech総研ではエンジニア1000人を対象に調査を実施した。
(取材・文/中村仁美 総研スタッフ/宮みゆき イラスト/絵理すけ) 作成日:12.03.15
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メーカーは好調ながら、自動車は苦戦
東日本大震災、東京電力福島第1原子力発電所の事故、タイの大洪水、円高……。2011年は日本の企業に、これまでの経験にはないさまざまな試練にあった年だった。特に東日本大震災は被災した東日本はもちろん、被災していない西日本の企業にも大きなダメージを与えた。東日本の太平洋側沿岸部の工場の中には、再開のめどが立たず閉鎖に追い込まれたところも多かった。
そんな厳しい経済環境の中で、2011年夏・冬のボーナスはどういう状況だったのか、振り返ってみたい。まずは夏のボーナス。日本経済団体連合会(日本経団連)が2011年7月28日に発表した大手企業の支給額平均は昨年比4.42%増の79万1106円。製造業だけ見ると昨年比6.96%増という結果だった。一方の中小企業はどうか。大阪市信用金庫が取引先である大阪の中小企業1072社にアンケート調査したところ、ボーナスを支給する企業が微減、平均支給額も25万3559円と98年の調査開始以来の最低額という厳しい結果となった。
次に冬のボーナスはどうか。大手企業の支給額平均は夏に引き続き昨年比3.62%増80万2701円(2011年12月11日日本経団連発表)。一方の中小企業は昨年比0.33%減の27万1536円だった(大阪市信用金庫のアンケート調査より)。
中小企業は非常に厳しい結果となった一方で、大企業は震災などの影響がなかったような印象を受ける。しかし2011年のボーナスは2010年の業績を反映したもの。しかも春闘で冬のボーナスも含めて妥結した企業も多かったので、中小企業との格差が広がったと言えるだろう。
これまでは相場観の話。では実際、Tech総研の読者であるエンジニアの2011年のボーナス事情はどうだったのだろうか。ソフト・通信ネットワークなどのIT系(以降、IT系)、電気・電子・機械・素材などのECM系エンジニア1000人(24〜35歳の正社員・平均年収502.9万円)にアンケートを実施。結果は夏のボーナス平均支給額は51.5万円(昨年比13%減)、冬のボーナスは54.1万円だった(昨年比3.7%減)、総額105.6万円。夏のボーナスが昨年度よりも1割以上も減る結果となったのは、東日本大震災の影響が大きく影響をうけた中堅・中小企業で働くエンジニアが多かったからと考えられる。
同じ年代でもECM系エンジニアのボーナス額が多い
職種別に見てみると、東日本大震災やタイの洪水などの被害をより受けやすかったECM系のエンジニアの方が、ほとんどの年代において夏冬ともボーナス額が多かった。IT系と比べ、夏のボーナスは平均で2.6万円、冬のボーナスは2.5万円、年間で5.1万円の差となっている。(DATA1)
とはいえ全職種を通じて最もボーナス総額が多かったのは、IT系の「研究、特許、テクニカルマーケティング、品質管理ほか」の134万円。次いで「半導体設計」、「生産技術、プロセス開発」、「制御設計」、「素材、半導体素材、化成品関連」、「光学技術」という順になった。
逆に最もボーナス額が少なかったのは、「システム開発(汎用機系)」と「運用、監視、テクニカルサポート、保守」の88.3万円だった。多くの企業で汎用機がまだまだ残るとはいえ、その多くは運用・保守。新規開発案件はほとんどないと考えられるため、業績への貢献度で決まるボーナスが抑えられてしまうのは仕方のないところかもしれない。次いで少なかったのが、ECM系「サービスエンジニア」。同職種はECM系の中で唯一、ボーナス総額が100万円を切っている。IT系、ECM系に限らず、サポート系職種のボーナスは抑えられる傾向にあるようだ。
DATA1 職種別・2011年の年間ボーナス額
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業界別には医療系がトップの座に
冒頭でも述べたように、日本では企業規模の違いによって、ボーナス額が大きく変わる。そこで勤務先企業別の平均ボーナス総額を調べてみた。いちばん、ボーナス額が多かったのは「医療機器メーカー」で153万円。次いで「医薬品・化粧品メーカー」、「大手SIer/NIer、コンサルファーム、ベンダー」「外資系SIer/NIer、コンサルファーム」「総合電機メーカー」と続く。上位10社の中には、「化学・石油・ガラス・セラミック・セメントメーカー」「鉄鋼・金属メーカー」などの重厚長大系企業も。(DATA2)
また「家電・AV機器・ゲーム機器メーカー」は7位にランクイン。2010年、家電業界は家電エコポイント制度や地上アナログ放送の終了などを受け、薄型テレビやエアコンなどの販売台数を大幅に伸ばし、好業績を達成した企業が多かったからだろう。しかし2011年度の決算は、非常に厳しい結果になりそうだ。次の夏のボーナスでは、上位ランクに顔を出すのは難しいかもしれない。
一方ボーナス額が最も少なかったのは、「商社系総合商社・素材・医薬品他」の54.3万円。次いで「繊維・服飾雑貨・皮革製品メーカー」「技術系人材派遣企業」「上記以外のソフトウェア・情報処理系」「流通・小売系」となっていた。トップの「医療機器メーカー」と最下位の「商社系総合商社・素材・医薬品他」との差は約100万円。業種・業界による景気の格差が広がっているようだ。
DATA2 勤務先業種別の2011年の年間ボーナス額
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ボーナス金額への満足度、ECM系は57.6%、一方のIT系は46%
IT系とECM系のボーナス支給総額の差は約5万円しか違わない。それなのに満足度に大きな差が出ている。そこで昨年度のボーナス総額と比較してみた。(DATA3)
DATA3 職種分野別・2011年ボーナス額に対する満足度
2010年度のIT系のボーナス総額は平均で113.3万円。今年の総額は103.1万円なので、昨年度比9%マイナスだ。一方のECM系の昨年度のボーナス総額は117.5万円。今年の総額は105.6万円なので、こちらも昨年度比8%のマイナスとなった。こちらはたった1%の違いしかない。
なぜ、満足度に大きな差が出たのだろうか。おそらくその背景には、ECM系職種は東日本大震災やタイの大洪水、円高をより濃く受けた企業に所属していることがある。「大変な状況の中だったが、ボーナスを出してくれた」という気持ちがこのような結果をもたらしたと考えられる。
一方最も満足度が低かったのが、「システム開発(We・オープン系)」。「仕事内容に比べて50万円以上安い」と感じている人が62人、「100万円以上安い」が9人、「200万円以上安い」と答えた人も5人もおり、「今回の金額に満足している」と答えた人(58人)よりも多い結果となった。
実は、今非常に注目が集まっているインターネット系企業で開発に携わっているエンジニアたちの満足度は、大手SIer勤務のエンジニアと比べて高くない数値となった。伸び盛りの業界で働いているだけに、ボーナスへの期待も高かったことが背景にあったのではないだろうか。(DATA4)
DATA4 大手SIer vs インターネット系企業、満足度の違いは?
ボーナスの使い道はやっぱり貯蓄
ボーナスは何に使っているのか。最も多かったのは、貯蓄に回すというもの。その貯蓄額は平均31.8万円。ボーナスの約6割を貯蓄に回すということだ。(DATA5)
次に使い道として多かったのは、「買い物をする」。とはいえ、その金額の平均は7.4万円。日ごろ買えないモノをまとめて買うという金額ではない。使い道の第3位は「ローン返済に充てる」。平均金額は5.9万円なので、従来のように毎月の支払いを小さくしてボーナスでたくさん返すというローン設計をしている人は少ないことがわかる。「旅行に使う」「親・家族・恋人などにプレゼントする」人はそれほど多くなく、また平均金額も旅行が2.6万円、プレゼントが2.1万円という結果となった。
今回、アンケートに答えてくれたエンジニアの平均年齢は31.6歳。家庭を持っている人の場合、子供が小さかったりなど、これからがお金のかかる時期とも言える。しかも日本のみならず、欧州、米国など世界の経済の先行きはまだまだ不透明。エンジニアの生活もより堅実にならざるを得ないのかもしれない。
DATA5 2011年ボーナス額の使い道は何だった?
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