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グリーとOpenFeintは「世界の人を幸せにする夢」を共有する
OpenFeintジェイソン・シトロンCEOに独占インタビュー
「僕の究極の夢は、ソーシャルゲームを通して世界の人々を幸せにすること」──世界9000万人のユーザーに愛されるモバイルゲーム・プラットフォームOpenFeintの若き創業者ジェイソン・シトロン氏はそう語る。その理想はグリーと一致し、両社相携えてのグローバル戦略がスタートした。
(取材・文/広重隆樹 総研スタッフ/宮みゆき 撮影/佐藤聡)作成日:11.07.15
スマートフォン・ゲーム向けプラットフォーム。ユーザーベースは9000万人

 無造作に伸ばした髪と髭。フードのついたトレーナーを愛用し、一心不乱にPCに向かうジェイソン・シトロン氏。まだ26歳。米国西海岸ならどこにでもいそうな風情のITエンジニアは、実は9000万人のユーザーを抱える世界有数のモバイルゲーム・プラットフォームの創業者でもある。4月にグリーの米国法人GREE Internationalが同社を約85.7億円で買収。両社合計で一挙にユーザーベースは1億人に達した。いま、サンフランシスコ郊外バーリンゲームのオフィスで両社の協業が始まっている。

ジェイソン・シトロン(Jason Citron)氏
OpenFeint Founder & CEO
ジェイソン・シトロン (Jason Citron)氏

──グリーのグローバル展開の足がかりの一つがOpenFeintの買収です。まずは、日本の読者にOpenFeintという会社を紹介していただけますか。

ジェイソン・シトロン(以下、J.C)
OpenFeintはモバイル・ネットワークのプラットフォームを運営する会社で、3年前に創業しました。スマートフォン・ゲーム向けに、Xbox LIVEやPlayStation Networkのようなコミュニティサービスを提供しています。プレイヤーは仲間との対戦を楽しんだり、実績を競い合ったりでき、参加デベロッパーはゲームの開発にあたってOpenFeintのサポートを受けることができます。

ソーシャルゲームのプラットフォーム提供企業という意味ではグリーと同じ。英語圏を中心としたグローバルマーケットが僕らのターゲットで、現在9000万人のユーザーがいます。ちなみに、僕らのプラットフォームは、Ruby on Railsで開発されています。

──ユーザー数もすごいですが、OpenFeintのプラットフォームに1万9000社ものゲームデベロッパーが集まっているのも驚きです。

J.C

ゲームデベロッパーが何にこだわっているかということを、非常に深いレベルで理解しているからだと思います。僕自身が根っからのゲームプログラマとして何年もゲームを作ってきたので、そのことが本能的にわかるんです。個人的には、今から12年前の中学2年生のときにWindowsPC用にゲームを書いたのが最初。任天堂、プレイステーション、Xboxなどのコンソールゲーム用のゲームも作っていました。

僕たちの会社は、最初にiPhoneのゲームデベロッパーとしてスタートしました。現在は、プラットフォーマーに徹していますけれど、デベロッパーが何を求めているかを常に感じています。

──デベロッパーからプラットフォーマーへと事業を転換したのはなぜですか。

J.C

資金が足りなかったから (笑)。創立して9カ月目で資金繰りが苦しくなり、開発資金が続かなくなってしまったんです。このままじゃ会社が潰れる。そこで、ソーシャル性に特徴のあるスマートフォン用のプラットフォームを作り、そこに事業を専念したほうがいいと思うようになりました。

その前にiPhone用のゲームを書いて、フリーで提供したりもしました。ゲームデベロッパーたちがそれで遊び、気に入ってくれました。僕らは同じゲーム・コミュニティの住人。OpenFeintのプラットフォームをローンチしたときは、僕の存在はすでにゲーム業界の中で知られていた。だから、プラットフォームに移行すると、すぐに火がついたというわけです。

──デベロッパーたちのコミュニティでも、ジェイソンさんはリスペクトされています。あなたがつくるプラットフォームなら自分たちも安心してゲームを提供できると、デベロッパーたちは思ったのですね。

J.C

たぶん、そういうことだと思います。

事業目的・ビジョンの似た企業同士。日本で培ったノウハウを大胆に移植

──今回、グリーから一緒にやろうというオファーが来たときは、どう思いましたか。

J.C

グリーはグローバル展開を目指していた。僕らは世界中からデベロッパーとユーザーを集めていた。その利害が一致したのです。

──ITベンチャーが大きな会社に買われると、創業者は買収益を得て、しばらくは豪遊する人も多い。ところが、あなたは今までと同じように仕事をしています。

J.C

それは必ずしも西海岸のITベンチャー創業者の典型とは言えないと思います。しかも、僕自身、お金がゴールだったわけではなく、世界を変えたいと思ってこのビジネスを始めたわけですから、今もこの仕事を続けています。グリーの田中さん(田中良和社長)に会ったとき、意見を交換して、二人ともビジョンがよく似ていると確認しました。僕と彼のゴールは一致している。双方の強みを合体させることでいち早く目的を達成できる。だから、会社を売却したからといって、そこで僕が遊ぶわけにはいかないのです。

──日米のエンジニアたちの交流が始まりました。グリーという会社のエンジニアについてはどう思いますか。

J.C

グリーのエンジニアは大規模なスケールでシステムを開発しています。OpenFeintはユーザーの数でこそ圧倒的に上回っているけれども、「GREE」のユーザーはとても活動的。このアクティブさを保証するため、グリーが導入している技術の複雑さは世界でも群を抜いていると思います。だから、僕らはこれからグリーのエンジニアリングをキャッチアップしながら、プラットフォームをより大規模に展開する方法を学びたいと思っています。

──逆に、OpenFeintが、グリーに与えられるものとは何ですか?

J.C

OpenFeintは創業3年目の企業。グリーも若いけれど、僕らはもっと若い。その若さが力になると思いますよ。

本場のハイレベルなエンジニアと肩を並べて仕事。その刺激がスキルを磨く

──今、OpenFeintにエンジニアは何名いますか。

J.C

35人ぐらいです。

──その中から優れたエンジニアを何人か紹介してもらえますか。

J.C

そうですね。スコット・フラッケンスタインは、Get Satisfaction.comの創立者の一人でした。カスタマーサポートなどのサポートフォーラムが作成できるサービスをWebサイトで提供する会社です。そこに飽きたらず、OpenFeintに移ってきました。今はエンジニアのリーダーとして、Cassandraやシャーディングなど先端的な技術を活用して、大規模な分散データベースの管理を行っています。一言でいうなら、システムアーキテクチャの天才。自分が開発したツールが、何千人、何万人もの人に使われ、次々にデベロッパーを生み出す、その波及力を楽しんでいます。

もう一人、アンジェル・デルは僕の大学の同窓生。僕と同じゲーム産業で仕事をしていましたが、僕がOpenFeintを起こすと、すぐに2人目の社員になりました。OpenFeintのゲームは僕らが開発したSDKをダウンロードして、それをゲームに組み込む形で利用するのですが、その部分の開発担当者です。エンベデッド型では、メモリ管理などいろいろと難しいことがある中で、うまくやってくれています。彼が書いたSDKは6000ものゲームにエンベデッドされています。

──ところで、ジェイソンさんは「GREE」のゲームで遊んだことはありますか。

J.C

「クリノッペ(※『踊り子クリノッペ)』)」で少し遊びました。日本語が読めないからなかなか先に進めないけど(笑)。面白いし、クリノッペは、OpenFeintのみんなも好きですね。

──いまソーシャルネットワーク型のゲームが日本で大流行ですが、アメリカではどうでしょうか。

J.C

日本は、携帯電話の優れたインフラと優れたアプリやサーバ技術で、モバイル・ソーシャルゲームでは世界の最高レベルにあると思います。そこにいま世界が追いつこうとしている。ソーシャルゲームはアメリカでも火が付いていますよ。

「世界中の人を幸福に」──夢がまた一歩近づいた

──両社の協業、今後の課題は?

J.C

ビジネス的にはグローバル・ディストリビューション・チャンネルを構築して、質の高いソーシャルゲームを世界中のユーザーに届けたいと思います。OpenFeintは英語圏のディストリビューションに強い。グリーはアジア圏に強い。互いに分担しながら、チャネル網を世界中に広げていきます。
技術的には、グリーとOpenFeintの両方で使えるAPIを開発できるかどうか、これが重要です。

──ジェイソンさんの人生の最終目標は何ですか。

J.C

まずはユーザーが国境を越えて、遊べるようなツールと環境を提供したい。世界中の人々がオンラインでつながって、ニコニコ笑いながらゲームを楽しんでいる姿を想像します。僕の究極のゴールは世界の人々を幸福にすることなんです。そのためには、水道管のようなインフラを整備し、インターフェイスなど環境を整えてあげることが必要です。

──そのような夢を、ゲームを書き始めた中学生の頃から抱いていたのですか?

J.C

中学生のときはただのゲーム少年だったけれど、いつも世の中を幸福にしたいとは思っていました。そのビジョンは、田中さんと私で共通しているところだと思います。

OpenFeint Founder & CEO ジェイソン・シトロン(Jason Citron)氏

1985年生まれ。フロリダ州にあるフルセイル大学でゲームデザイン・開発を専攻した。同大は米国で2番目にゲーム専攻学科を設けた大学として知られる。卒業後3年間、ゲーム会社で働いた後、2008年、OpenFeint社を起業。2011年4月、GREE Internationalによる買収に合意。同社執行役員に就任。

グーグルから転職。OpenFeintと協業し、グリーの世界拡大をリードする。

 グリーの世界進出は、ソーシャルアプリ開発やそれを支えるプラットフォーム構築を担う日本のエンジニアにとって、活躍のフィールドが世界に拡大することを意味している。同時に、世界のITエンジニアからも、グリーは「次に働く場所」として注目を浴びるようになってきた。

 グーグルで検索担当プロダクトマネージャーとして「Google急上昇ワード」などを開発してきた倉岡寛氏は、この4月、グリーに転職してきた。OpenFeintと協業しながら、グローバル・プラットフォームの構築に従事する。倉岡氏に、グリーに託す「未来」を語ってもらった。

日本発グローバル企業で、人々の「幸福」を追求する

 グーグルで4年間仕事をしてきましたが、そこで気づいたのは米国のIT企業は最初から視点がグローバルであること。常に世界を見ているんです。グーグルはもちろんのこと、OpenFeintにもそういう志向が明確に存在します。そういう環境下にいたため、「日本発」ということにそれほどこだわりはなくなっていたのですが、特に東日本大震災のときに、大勢の日本人が傷つくのをみて、やはり"日本発でプロダクトを発信したい"ということを改めて意識するようになりました。グローバル企業の視点で日本のマーケットを考えるというより、やはり日本発でグローバルをめざす方向が自分には合っている。そのように自分の方向性を定めたとき、やはりこれから面白いのはモバイル・ソーシャル・プラットフォームの世界だと考えたのです。

 日本には「ガラパゴス」と揶揄されなからも、優れたモバイルの技術と文化があります。それを武器に世界で闘える企業となると、やはりグリーなんじゃないかと。ゲームは遊ぶためのものだけでなく、人々のコミュニケーションのきっかけになると考えれば、一般的に抱かれている既存の"ゲーム"という枠組みを超えて、ビジネスの領域もぐんと広がります。さらに、グローバルに通用するソーシャルプラットフォームを構築することで、日本の良質なコンテンツが世界中の人たちにも使われるきっかけを作り、日本にも世界にも貢献することができればなと。

「Google」は検索エンジンなどで人々に「便利で効率的な世界」を提供しています。しかし、ソーシャルゲームなどで「遊ぶ」ことも、人間の貴重な営み。「効率」に加えて、コミュニケーションの楽しさという「幸福」も私たちには必要だと思っています。そう考えたとき、グリーに転職して今までとは違う環境に飛び込むことは、新しいことを学ぶきっかけにもなると感じました。転職には確かにリスクが伴います。けれども、いまの変化の激しい時代、「リスクを取らないことがリスクになる」と考えていたので、転職には躊躇しませんでした。

倉岡 寛氏
国際事業本部 国際事業開発
シニア・プロダクトマネージャー

倉岡 寛氏
M&Aを成功に導くために、プロダクトマネージャーの任務は重要

 グリーがこれまで国内で培ってきた技術の集積も、世界で十分勝負できるものだという予感はありました。それは入社してすぐに確信へと変わりました。自分たちの技術で世界を変えたいと本気で思っている仲間。彼らとの協業は、とてもエキサイティングです。

 当面はグリーのプロダクトマネージャーとして、OpenFeintプラットフォームの改善を急ぎます。さらに日米のゲームデベロッパーがワンコードで、「GREE」とOpenFeint両方のプラットフォームにゲームを提供できるようにするのが私の役割です。マネージャーの任務としては、部門間の調整や、様々な国籍のメンバーが混在するチームのモチベーションをドライブすることが重要になりますが、そのあたりは前職で培った経験が活かせると思います。

 シリコンバレーではIT企業のM&Aが日常茶飯事ですが、すべてが成功しているとは言えない。買収された会社のエンジニアのモチベーションが下がって、人材が流出するということもよくあります。プロダクトの統合は人と人とのつながりなしには上手くいきません。エンジニアがモチベーションをもってプロダクトを開発していくことこそが重要なのです。グリーはそのための環境も整えていこうとしています。私もマネージャーとしてその辺りを意識し、両社の協業をより高い次元へと導いていきたいと考えています。

国際事業本部 国際事業開発 シニア・プロダクトマネージャー 倉岡 寛氏

1982年生まれ。東京大学大学院(工学系研究科精密器械工学専攻)を2007年3月に卒業後、同年4月にグーグルに入社。1〜2週間ほどの新人研修の後、プロダクトマネージャーとして配属。2008年4月に「Google 急上昇ワード」をリリースして、その存在を知られるようになった。2011年4月、グリーに転職。

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2004年2月に、ソーシャル・ネットワーキング・サービス (SNS) 「GREE」を公開、日本だけでなく米国・欧州などグローバル展開を進め、世界で億単位のユーザー数を目指すソーシャルメディア事業をはじめ、ソーシャルアプリケーション事業、プラットフォーム事業、広告・アドネットワーク事業等を展開しています。続きを見る

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