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【特別対談】2011年のモバイル&ソーシャルサービスはどうなる?
頓智・井口CEO×面白法人カヤック柳澤社長の業界予測
「セカイカメラ」で世界を驚かせた頓智・CEOの井口尊仁氏と、ユニークなWebサービスを連発する面白法人カヤック社長の柳澤大輔氏の特別対談が実現! 2011年のモバイル&ソーシャルサービス業界動向から、活躍できるエンジニア像まで、熱く語ってもらった。
(取材・文/富岡修 総研スタッフ/宮みゆき 撮影/栗原克己)作成日:11.01.28
頓智ドット株式会社 CEO 井口 尊仁氏
立命館大学文学部哲学科卒。ソーシャルネットの未来に魅了されて株式会社デジタオを1999年に創業。さらに現実空間のソーシャル化を志向して頓智ドット株式会社を2008年に立ち上げる。同年9月に「セカイカメラ」のコンセプトをTechCrunch50にて発表、その一年後に日本にてリリースし、2009年12月には世界77カ国に向けてセカイカメラをローンチ。未来ビジョンを現実化するための頓智に総てを賭ける毎日。
面白法人カヤック 代表取締役 柳澤 大輔氏
1974年香港生まれ。慶應義塾大学環境情報学部を卒業後、ソニー・ミュージックエンタテインメントに入社。1998年に「面白法人カヤック」を学生時代の友人と3人で設立し、24歳で代表取締役に就任。「サイコロを振って給料を決める」ユニークな社内制度や、ユニークなサービスの開発で注目を集める。
「頓智」を働かせて、「面白」く働きたい!

──2人が知り合ったきっかけを教えてください。

井口

実際に会ったのは去年が初めてでしたが、以前から存じ上げていました。だって、柳澤さんは業界の有名人ですから。

柳澤

いえいえ(照)。

井口

社名に「面白法人」って、他にないですよね。しかも、ユニークなだけでなく、旧来の日本企業に対するカウンターパンチというか、異議を申し立てている感じがして。
「面白」と「頓智」って似ているかもしれません。面白く働くって簡単じゃない。どうすれば面白くなるか、それこそ頓智を働かせて(笑)、頭を捻って考えないとできないですもんね。

2011年、ソーシャルゲームの海外進出が本格化する

──2011年のモバイルインターネット業界はどうなると思いますか?

井口

2011年は日本のモバイルインターネット業界にとって、エポックメイキングな年になると思います。Androidとソーシャルゲームという2つが車輪となって、日本企業の海外進出が本格化するでしょう。

Androidの自由でオープンなプラットフォーム。そこに日本発のソーシャルゲームが乗っかって世界に羽ばたく。まさしくグリーやDeNAといった企業がそうで、国内での事業基盤は盤石。海外に出るための「ヒト・モノ・カネ」が揃っている。

そうした企業も、一昔前までは海外展開やスマートフォンに興味がないように見えて僕は内心「しめしめ」と思っていたのですが(笑)、今では軒並み海外、スマートフォンにも積極的に展開しようとしています。グリーの田中良和社長は、具体的な数字を挙げて海外進出を表明している。この流れは本物でしょう。

柳澤

海外のモバイルゲームはソーシャル的要素が少ない。DeNAやグリーなど日本で培ったノウハウが世界で通用するかどうかは興味がありますね。

井口

ソーシャルプラットフォームの面白い点は、国籍、企業や個人を問わず、誰もが成功できるチャンスがあること。ロシアの高校生が作った「チャットルーレット」などはその典型。だって、いきなり誰か分からない人とチャットするアプリですよ(笑)。クレージーなアイデアだけど、ソーシャルネットワークの世界では、むしろこうした頓智がきいたアイデアこそ広がる可能性を秘めている。実際にチャットルーレットはブレイクしていますし。

鎌倉で作ったアプリが中東でブレイク!?
柳澤

人によって海外志向は違うと思いますけど、純粋にアイデアと技術だけで海外で勝負できるというのはワクワクしますね。実際、私たちが昨年リリースしたアプリ「ナカマップ」が、「App Store」の中東諸国の無料ランキングで1位を獲得したのには驚きました。日本の鎌倉で作ったアプリが、中東で売れるなんて、今までの常識だったら想像できない。

カヤックがインターネット業界に参入して13年が経ちますが、現在は、ドットコムバブルが起きて続々とウェブサイトが立ち上がった創成期、「i-mode」が登場してモバイルインターネット分野が急成長した時期に次ぐ、新たな時代の幕開けになると思います。その意味では、井口さんが言われる通り、2011年は面白い年になるでしょう。経営者や起業家に限らず、自分が作ったサービスやソフトを世界に発信したいエンジニアにとっても挑戦しがいがあるでしょう。

井口

カヤックさんでは、スマートフォン市場にはどれくらい注力するつもりですか?

柳澤

iPhoneやAndroidなどのスマートフォン向けサービスやアプリを開発する体制を整えようとやっています。

井口

スマートフォン向けの技術者は不足していません?

柳澤

そうですね(笑)。

井口

今言っておいた方がいいんじゃないですか。「スマートフォンエンジニアよ、カヤックに、カモンと」(笑)。

柳澤

エントリーシート不要!志望動機不要!という「卒制」キャンペーンを開始したので、ぜひチャレンジしてほしいですね。

ARを再定義し、リアルソーシャルを仕掛ける
柳澤

2011年の「セカイカメラ」はどうするつもりですか?

井口

ARが本格的に拡大する年になると思います。個人的には、ARを再定義しようと。「セカイカメラ」をはじめとした現在のARアプリは、ライブビュー上にデジタルオブジェクトを表示させる方式が主流ですが、その実現にはジャイロが常に動いていないといけないとか、カメラがオープンでないといけない、だからバッテリーを消耗するなどといった制約が多い。

例えば、「フォースクウェア(foursquare)」といった位置情報サービスに、人間の行動が投影されると、それ自体がARとも言えるわけです。人と人が近くにいて、何らかの行動や興味をシェアしてコミュニケーションが促進するというのは、僕らが定義するARそのもの。現実を拡張してエンパワーメントされるという目的と合致しているんです。

柳澤

井口さんが目指すその先はどこにあるのですか?

井口

リアルとソーシャルの融合ですね。ネット上ではなく、現実空間で人と人がつながったり、チームを作ったりする。現実世界で、誰がどこで何を見て、何に興味を示し、行動したり他の人とつながったりするという「リアルソーシャル」時代が到来すると思うし、自ら率先して仕掛けたいと。

柳澤

ただ、そうしたアプリやサービスを開発しても、ビジネスとして継続させるまでの道のりは非常に険しいですよね(苦笑)。

井口

そう。そこは僕も強調したい。みんな簡単に「ソーシャルやろう」というけど難しい。過去10年間を振り返っても、生き残って成功している会社はほとんどない。そこに至るまでには死屍累々。Facebook CEOのマーク・ザッカーバーグ氏のように、最初の状態から様々な機能やサービスを付加して、ビジネスとして世界中でブレイクできる人は、世界を見渡してもほんの数人しかいない。それほど難しい。

どんどん失敗して、大欲を抱こう

──これだけ変化の激しい中、エンジニアはどう動くべき?

井口

失敗を恐れないことですね。成功より失敗からの方が学ぶことが多い。特にベンチャー企業は失敗にポジティブでないと。と言うか、積極的に失敗しないとダメ。

柳澤

おっしゃる通りですね。僕たちも過去にさまざまなサービスを開発してきた中で改めて思うのは、失敗しないと成功も見えてこないこと。社員には、むしろ失敗してもらうぐらいでないと、危なっかしくて見ていられないし、大きな仕事も頼めない。「どんどん失敗してください」と言っています。

井口

日本人の多くは失敗にネガティブな印象を抱くのは“失敗”という言葉にあるかもしれない。失敗ではなく、“エクスペリエンス”とか言い換えた方がいい。「失敗奨励制度」を設けてもいいぐらい(笑)。

柳澤

カヤックには、半年に一度行う人事評価の中で「どんな失敗をしたか?」を記入する項目があります。意識的に失敗しないってことは、挑戦していないも同義という考えからです。

話は変わりますが、僕の好きな言葉に「欲も大欲になれば、無欲なり」があります。エンジニアも大欲を持ってほしい。自分のためだけの欲でもいいけど、それだとつまらない。大欲を描いて挑戦してほしいですね。

井口

その意味でもグリーとDeNAには頑張ってほしいですね。大きくなってもベンチャースピリットを失っていないし、世界に真剣勝負を挑もうとしている。

「変わって当たり前」の気がまえで臨む

──両社ではどんなエンジニアが活躍しているのですか?

柳澤

カヤックでは役立つというよりは、面白いものを作って周囲を楽しませたいことを好む。プラットフォームよりも、コンテンツを作りたいエンジニアが多いですね。

井口

カヤックさんは、エンジニアも面白くないと採用されない?(笑)。

柳澤

そういう訳ではないです(笑)。ただ面接では、今までに作ってきたモノについての話はよく聞きますね。作ったモノと、働き方はある程度リンクする。面白く働かないと、面白いアイデアも出てこないですから。それ以外ではトップダウンではなく、みんなでアイデアを持ち寄って作るスタンスの方が合っていると思います。

井口

弊社も似ていますね。設計図や仕様書がない状況で作り始めたり、最初作ろうと考えていたのと完成品が違うということが往々にしてある。モバイルにしろ、ソーシャルアプリにしろ、自分で触ってみないと分からないし、ユーザーも想定外の使い方をすることも多い。仕様書ありきではなく、自分やユーザーのフィードバックを得て開発を進めるという考え方がいいと思います。

もちろんビジョンやコンセプトはあった方がいいけど、それが邪魔したり、ブレーキになったりすることもある。ピーター・ドラッカー氏は、「組織が生き残りかつ成功するには、自らがチェンジエージェントすなわち変革機関とならなければならない。変化をマネジメントする最善の方法が、自ら変化をつくりだすことである」と言っている。

「頓智お茶会」って何?
柳澤

弊社のFlashエンジニアは、フラッシュがなくなるかもしれないという危機感から、昨年1年間かけて、ほぼ全員がAndroidやiPhoneアプリも作れるようになりました。

井口

それはすごいですね。弊社も、新しい技術を率先して学ぼうとするエンジニアが多いですね。師弟関係とまでは言わないけど、「俺のレベルについてこい」と切磋琢磨し合うというか。こんなこと言って大丈夫かな(笑)。

柳澤

エンジニア採用の条件ってありますか?

井口

うーん、明確にはないけど、自分で率先してコードを書けないとダメですね。誰かに言われないとできない、仕様書がないと書けないという人もダメですね。

柳澤

そうですね。この世界は、自分でさっとプロトタイプを作れるぐらいでないと。自ら進んで勉強できない人も厳しい。僕は37歳ですけど、この業界には、自分より年上のエンジニアっていないんですよ。先に手本がいない。

職場を選ぶ際に重要なのは、教育体制が充実しているよりも、尊敬できる先輩エンジニアがいること。「俺が一番になる」という気概がある人なら、尊敬できる人がいなくてもいいが、そうじゃない人は、この人から学びたいと思える先輩がいることは極めて重要ですね。

井口

弊社では、ちょっとしたアイデアを共有する「頓智お茶会」と、そこから吸い上げた意見を元にした製品コンセプトやプロトタイプを持ち寄ってブレストする「Fireside Chat」をそれぞれ週替わりで開催しています。前者はお茶とお菓子、後者はビールを飲んだりピザをつまんだりしながら皆でワイワイやって、モノづくりのひと通りの流れをサポートするという試みです。1人よりも大勢でアイデアを練った方が良いものができる。

ソーシャルの世界は大変だけど、とても挑戦しがいがある。だって、トヨタ自動車や日産自動車といった日本を代表する企業でも、明日からいきなり「面白カー」とか「頓智カー」を出せないわけじゃないですか(笑)。でも、我々の世界はそれができる。技術も大事だけど、それ以上にちょっとしたアイデアやウイットで、世界を変えられるかもしれない。

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