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何の気なしに訪れた与論島。島に暮らす人々が普通に助け合い、明るくあいさつを交わす光景に心が動いた。気付けば週末は東京から往復して交流を深め、2年後には移住していた。この島のために何かできないか。元エンジニアはそう考えて動き出した。 | ||||||||||||
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広島大学工学部でシステム工学を学んだ植田佳樹さん。卒業後は百貨店に就職し、店舗出店のための立地調査やコンセプトの立案、通信販売の販売・購買分析や販売計画などに携わっていた。1999年に大手ISPに転職するのだが、入社前の2月、観光促進のための「離島フェア」で偶然に与論島に訪れた。これが人生を変えた。 |
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与論島に居を構えた植田さんは「オフィスY&Y」を起業。収入の道を得るとともに、10月には民間と行政の共同による「e-Ok(イーマルケー)」を結成した。「マルケー」は与論の方言で「いい仲間」を表す。 「10年に一度の中期計画に『情報の島づくり』が盛り込まれ、情報化推進母体として民間団体を立ち上げてほしいという依頼がありました。e-Okには元エンジニアなど10人が集まり、パソコンの相談室や修理事業を新たに進めながら、ADSLによる全島のブロードバンド化に取り組んだのです。それぞれが仕事を持ちながらの活動です」 果樹園やインターネットカフェを経営するなど、メンバーの仕事はさまざま。植田さんも本業はWebデザイン、サイト構築、PCのメンテナンス、印刷物の制作などで、島のガイドブックも彼の手によるものだ。 島内で徐々にADSL化の計画を進めてNTTと交渉すると、「200軒以上の希望」で可能とわかる。植田さんたちはアンケートと署名活動で300軒以上を集め、2003年7月にADSLサービスがスタートした。既に温めていた計画により9月には早速「与論情報サイト」を立ち上げ、「十五夜踊り」のインターネットライブも中継した。 彼らの成功は周辺の地域を驚かせた。「与論にできるならうちでもできる」という意識が広まり、奄美大島全域でADSLが引かれ、鹿児島県へと「上陸」していくのである。 |
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2004年7月にNPO法人化されたe-Okは、2006年3月には光ファイバーのためのアンケートと署名活動を実施。また2007年7月には、「サンゴ再生プロジェクト」がマイクロソフトのNPO支援プログラムに採択された。 実は植田氏は、大学時代にダイビング資格の最高位であるインストラクターを取得したほどのベテランダイバー。ダイバーたちのログブックの情報をWebサイトに上げてもらい、集約した内容からわかる与論島のサンゴ礁の状態を、研究者に解析してもらう試みを進めていたのだ。これが島外に情報を発信する最初となった。 「このころから意識が変わりました。これまでは『自分たちでできること』をやっていこうと思っていた。違うんですね。『やらなければいけないこと』を始めるべきなんです。こうした気持ちが、ITを活用した観光活性化計画へとつながりました。そしてこの活動を通して、島の方々の意識の変化が実感できたのです」 2008年10月には地域情報発信システムのための調査を開始し、2009年2月には与論町、商工会、観光協会とともに計画策定協議会を発足。7月に総務省の「地域情報通信技術利活用推進交付金事業」に申請して、12月に採択が決定した。この12月に、奇しくも念願の光ファイバーが実用化された。 |
10人で始めたe-Okは現在、半分の5人が入れ替わっている。Uターンした島民、Iターンの移住者、与論島出身の奥さんに連れられて(?)きた人などさまざまだ。技術を知る人は半数とのことだが、ここではUターンした元エンジニア2人を紹介したい。 | ||||||||
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上述のように昨年12月に採択された「地域情報通信技術利活用推進交付金事業」。今年からはこの補助金を基にした、「ヨロンまちづくり支援サービス」の開発が始まった。旧サイトを全面リニューアルした「ヨロン島観光ガイド」 (http://www.yorontou.info/)がオープンし、e-Okでは現在、島の事業者への支援体制を準備中だ。まだ途中ではあるが、着実に歩を進めている。 |
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そこでe-Okと商工会青年部で考えたのが、補助金を原資にした「ヨロンまちづくり支援サービス」だ。観光客・住民向けの無料サービスと、事業者向けの有料サービスを提供する。 |
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委託開発したシステムはほぼ完成しており、観光サイトは「ヨロン島観光ガイド」(http://www.yorontou.info/)として既にオープン。現在ではECサイトの本格稼働に向けた準備と、事業者へのITリテラシー向上を進めている。 |
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「何かないかではなく、今までのスキルと経験を生かしてこんなことができる、こうすれば島のためになるといった、提案できる方にぜひ来てほしい。僕の場合はそれが技術だった」 |
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