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大手SIer・化学が健闘。
2010年夏ボーナス平均は59万円 |
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大手企業では3年ぶりに前年を上回っている一方で、中小企業ではボーナスの減額や、支給なしという企業もあるようだ。景気回復の波に乗る業種・職種とそうでないところの差も目立ち始めた。Tech総研は実施したエンジニア1000人を対象に、夏のボーナス支給額に関する調査を実施。その概要を紹介する。
(取材・文/広重隆樹 総研スタッフ/宮みゆき イラスト/絵理すけ) 作成日:10.07.21
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全体平均額は59.2万円。前年比で6.2%の増加
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日本経団連が7月に発表した大手企業の今夏のボーナスは、前年比0.55%増の75万7638円で、3年ぶりに前年度比増に転じた。経団連では「景気の底打ち感はあるものの、楽観視できる状況ではない」としている。その一方で、大阪信用金庫による取引先の中小企業約1000社を対象にした調査では、「夏のボーナスを支給しない」と回答した企業の割合が前年比5.7ポイント増の49%で、過去最悪になったという。平均支給額も前年比1541円安い25万3559円で、同じく過去最低を更新。大手企業との著しい格差がみてとれる。 Tech総研のアンケート調査は、ソフト・通信ネットワークなどのIT系(以降、IT系)、電気・電子・機械・素材などのハード系(以降ハード系)のエンジニアに絞ったものだが、勤務する企業規模は1000人以上が57.9%、1000人未満が42.1%で、大企業、中小企業がほぼ半々という構成だ。夏のボーナス支給額は全体平均で59.2万円となっており、経団連調査よりは低いものの、大阪信金調査よりはかなり高めに出ている。同じ回答群に聞いた2009年度夏のボーナスは全体平均が55.7万円だから、前年度に比べると、6.2%の増加となっており、これは経団連調査を大きく上回るものである。 |
研究・開発など上流工程に関わるエンジニアのボーナス額が多い
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エンジニアの場合、給与・ボーナスは職種によって一定の差がある。米国のように職種別賃金が明確になっているわけではないものの、例えばIT系の場合、システム開発のより上流工程にタッチする人や企業──例えば、コンサルタントファームのコンサルタントや、大手SIerの上級SE──のほうが、2次請け3次請けのソフトハウスのプログラマよりは一般的には賃金が高い。こうした職種別賃金構造という観点から職種別・専門技術別に夏のボーナスをランキングすると、DATA1のようになる。 DATA1 2010年度夏のボーナス額/職種・年代別
最も高いのはIT系の「研究、特許、テクニカルマーケティング、品質管理ほか」の73.8万円。以下「素材、半導体素材、化成品関連」「通信インフラ設計・構築(キャリア・ISP系)」「コンサルタント、アナリスト、プリセールス」「ハード系の制御設計」「システム開発(Web・オープン系)」などが続く。 支給額の低いほうから見ていくと、「運用、監視、テクニカルサポート、保守」の50.2万円が最低で、「サービスエンジニア」「セールスエンジニア、FAE」「システム開発(マイコン・ファームウェア・制御系)」「システム開発(汎用機系)」なども順位は下位に甘んじている。「運用・監視」の50.2万円と「研究、特許」の73.8万円では23.6万円の差があり、けっして小さな額ではない。簡単に言ってしまえば、やはり、研究・開発などより上流工程に関わるエンジニアのほうが、販売・サポートなど下流工程のエンジニアに比べるとボーナス額は大きいということがいえそうだ。 職種をIT系とハード系でざっくり分けてみると、ソフト系が58.9万円、ハード系が59.5万円と、差はわずかながらもハード系がソフト系を上回っている。全体的には前年度に比べボーナスは増えているが、中でも増加幅が大きい職種は「素材、半導体素材、化成品関連」9.9%、「光学技術」9.0%、「ハード系の研究・特許、テクニカルマーケティングほか」7.0%など、ハード系に集中している。これは化学・材料、半導体、エレクトロニクスなどの製造業における景気回復の足取りを象徴しているのかもしれない。一方で、「パッケージソフト・ミドルウェア開発」「セールスエンジニア、FAE」など前年度よりもボーナスが減っている職種もいくつかある。 年齢・年代によっても当然ボーナス額は差がついてくるが、全体平均だと30代前半と20代後半の差は10.7万円ほど。この差が顕著なのは「パッケージソフト・ミドルウェア開発」26.3万円、「素材、半導体素材、化成品関連」25.4万円、「光学技術」21.4万円などだ。これらは年功序列型が強い企業に多い職種ともいえるし、経験の積み重ねがモノをいう職種ともいえる。 |
大手SIer、コンサル、化学系などが健闘。構造的に低い派遣業界
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勤務する企業の業種別でみると、もともと構造的に足元のしっかりとした業界や景気回復の波に乗っている業界と、そうでない業界の違いがよりクリアになる。 ワースト5を拾ってみると「技術系人材派遣企業」34.5万円、「専門コンサル系」35万円、「住宅・建材・エクステリアメーカー」37.8万円、「上記以外のソフトウェア・情報処理系」45.2万円、「食料品メーカー」45.4万円などとなった。 前年度に比べて、ボーナスの伸び率が高いのは「繊維・服飾雑貨・皮革製品メーカー」15.5%、「大手SIer/NIer、コンサルファーム、ベンダー」11.5%、「医療機器メーカー」10.1%など。これらの業界は、回答者の実感値としてもボーナスが「増えた」とする回答率が高くなっている。 逆に前年度よりもボーナスが減っているのは、「専門コンサル系」「商社系電気・電子・機械系」「大手SIer/NIer、コンサルファーム、ベンダーの子会社、関連会社」「外資系SIer/NIer、コンサルファーム」などだ。大手SIer/NIerでは伸びているのに、その子会社・関連会社ではボーナスが減っているというのは興味深い現象だ。もしかすると利益が親会社に吸い取られるという状況が発生しているのかもしれない。 DATA2 2010年度夏のボーナス額/会社業種・年代別
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消極的ながらも「満足している」が55%
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実際の手取額がどうであれ、ボーナスに対する満足度は人によって異なる。「会社業績が改善しないのに、これだけ出ているのだから満足」という感想もあれば、「こんなに仕事が忙しいのに、前年比でこれっぽっちのアップじゃ満足できない」という人もいるだろう。ボーナスへの満足度を調べると、業界や職種ごとの不満度や閉塞感の一端を垣間見ることができる。(DATA3) 例えば、ハード系のサービスエンジニアは、職種別ランキングでは下位のほうにあるのだが、「今回の金額に満足している」という意味での満足度は81%と最も高い。これはやや意外な結果である。支給額ランキングで最低の「運用、監視」における61%の満足度も平均以上だ。ところが同じ下位群にある「セールスエンジニア、FAE」では満足度11%と最も低い結果が出ている。この支給額と満足度のギャップはなかなか説明しづらいものがあるが、「安くても満足感を感じる」なんらかの理由が、それぞれの回答者にあるのだろう。 支給額が高い群──「ソフト系の研究、特許、テクニカルマーケティング、品質管理」「素材、半導体素材、化成品関連」「通信インフラ設計・構築(キャリア・ISP系)」「コンサルタント、アナリスト、プリセールス」「ハード系の制御設計」「システム開発(Web・オープン系)」などでは、「制御設計」を除けば全体に満足度は高めに出ている。 全体傾向としては、「今回の金額に満足している」が55%、「仕事内容に比べて50万円程度安い」が39.2%、「仕事内容に比べて100万円程度安い」が3.2%となった。ただし、満足度が高い人の回答では、以下で紹介するコメントのような“消極的満足”の答えが多いことも事実である。また、不満度の高い人の中には、例年以上に苛立ちもあらわな回答が目立った。 DATA3 2010年夏のボーナス額についての満足度
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![ナマゴエ!!](../contents/ts_report/img/201007/001722/namagoe01.gif)
----「2010年夏のボーナスに満足」派----
■ | 「減額となったが会社存続のためには仕方がない」 |
■ | 「仕事がないなりにたくさんもらえたから」 |
■ | 「社内全体で2割カットなので、まあこんなものかと」 |
■ | 「売上目標額に達していなかったため、今回はボーナスが出ないのではないかと思っていたが、少しながらでも出てよかった」 |
![](../contents/ts_report/img/201007/001722/namagoe_bottom.gif)
![ナマゴエ!!](../contents/ts_report/img/201007/001722/namagoe02.gif)
----「2010年夏のボーナスに不満」派----
■ | 「世間の不況のあおりを受け、なかなか回復しない経済情勢により賞与の大幅減。満足度はゼロ。給与カット、手当てカットなど、仕事をやる気をなくすような会社の対策は困ります」 |
■ | 「ボーナスが減ったのは、社員全体の稼働率が下がったため。さすがにボーナスが下がると、モチベーションが下がる。満足度は低い」 |
■ | 「会社の業績が回復傾向にあるにもかかわらず、支給額が減ったまま。一度減らすとなかなか元には戻らない」 |
![](../contents/ts_report/img/201007/001722/namagoe_bottom.gif)
「貯金」が85%。依然固い、エンジニアの財布のひも
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さて、最後にボーナスの使い道を聞いてみた。最も多いのが「貯金」の85.2%、ついで「買い物」47.3%、「ローン返済」26%、「旅行」23.8%などとなっている(※複数回答)。昨年同時期の調査では、「貯金」76.6%「買い物」43.3%「ローン返済」26.4%。「旅行」25.3%となっていて、貯蓄に回す傾向が今年はより強くなっていることがわかる。(DATA4) JTBが7月に発表した夏休みの旅行動向調査によると、1泊以上の海外旅行に出かける人は昨年より8.4%多い244万人と、2年連続で増える見通しで、人数は2006年以来4年ぶりの高水準というが、どうやらエンジニアの実感とはズレがあるようだ。今回の調査を見る限り、エンジニアは旅行気分に浮かれるほど、景気回復を実感していない。全体的にはボーナス額はアップというものの、財布のひもは依然固いようだ。 DATA4 2010年夏のボーナスの使い道とその平均金額 (※複数回答)
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