46歳サポートエンジニア一度の面接で内定獲得までの道

大不況が何だ！逆境転職に成功したエンジニア奮闘記
46歳サポートエンジニア一度の面接で内定獲得までの道
不況下転職に成功したエンジニアたちを紹介していく連載企画。今回は46歳にして初めて、転職を決意したサポートエンジニアが半年の活動期間中、わずか1回の面接で内定を獲得した経緯について紹介したい。（総研スタッフ　山田モーキン）作成日：10.03.01

「自分を変えたい」就職26年目にして初めての転職を決意

Sさん（46歳）は医療機器を取り扱う商社に就職後、25年間一貫して医療機器の販売サービス部門で、販売後のメンテナンスや保守などアフターサービスのサポートエンジニアとして現場の第一線で活躍してきた。もともと機械を触るのが好きで、なおかつ多くの人と関わりたい意志を持っていたSさんにとって理想の職場だった。

しかし数年前からふと「転職して、自分を変えてみたい」という思いを抱くようになる。折しも2年ほど前からの世界的な経済危機の影響から会社の業績は悪化したことで、ますますその思いは強くなっていった。
ついに一昨年の年末に転職を決意したSさん。転職活動中に会社を辞め、退路を断ちつつも半年ほどの期間を経て、たった一度の面接で本人が求めていた企業から内定を獲得した。
なぜたった1度の面接で内定を獲得できたのか、活動の経緯について本人に語ってもらおう。

転職エンジニア
株式会社沖電気カスタマアドテック
事業企画部　S氏

46歳で初めての転職を決意。退路を断って活動に取り組む

電気系の専門学校を卒業後、医療機器を主に取り扱う商社に入社しました。サービス部門に所属し、病院などの医療施設に納入した医療機器、例えばレントゲンや放射線装置などのメンテナンスや消耗品の取り換え、修理などのアフターサポート担当のエンジニアとしてかれこれ25年、担当してきました。
もともと機械を触るのが好きでしたし何より、お客さまと近いところで仕事ができ、喜んでいただける姿を直接、目にすることができるサポートエンジニアというポジションは私にとって、ひとつの理想の仕事だったと言えるでしょう。

しかし数年前からなんとなく、「自分を変えてみたい」という思いを抱くように。
別に職場環境や待遇面などに大きな不満があったわけでもなかったのですが、これまでずっとひとつの職場にいた私にとって、もっと違う環境で新しいことにチャレンジしてみたいという気持ちが徐々に強くなってきていたのかもしれません。
またちょうど2年くらい前からの不況の影響で、会社の業績も悪化したこともありおととしの年末、転職を決意しました。そして活動開始から3カ月たった昨年3月、会社が業績不振を理由に希望退職を募ったタイミングで、正式に退職したのです。

一通のオファーをきっかけに面談。そして“最初で最後の面接”から内定獲得へ

退職したときは転職活動中で、まだ1社も内定を得ていない状況。46歳という年齢で、正直なところ自分の求める企業に転職できるのか不安はありました。でも不安に駆られていても仕方がない、前を向いてポジティブに活動していこうと気持ちを切り替え、地道に理想の職場を探しました。

その理想の職場の条件、実は特に決めてなかったのです。医療系に限らずどんな業界でもかまわなかったし、サポートエンジニアという職種にも特に限定していませんでした。とにかく新しいことにチャレンジできる職場であればという思いで、転職サイトにレジュメを登録し、スカウトオファーが来るのを待ち続けました。
半年間で10社程のメールが届いたのですが、どれもあまり気乗りしない文面で、そこから先へは進まなかったんです。そして昨年6月ごろ、今勤務している企業からスカウトオファーのメールが。文面から私のこれまでの実績を高く評価していただいていることが伝わり、一度話を聞いてみようと思い、それから3回ほど面談を行いました。
話を聞くうちに、幅広く事業を手掛けていて、しかも適性を踏まえた上で自分の志望する職場に自由に移れるという柔軟な姿勢に共感し、ぜひここで仕事がしたいと思うようになりました。そしてその後、人生初めてとなる中途採用面接を一度受けた後、内定をいただくことができたのです。

昨年8月に入社後、各支社や営業案件の支援などを担当していて、従来のサポートエンジニアとしての現場業務からマネジメント領域に移っています。また収入も前職と比べ大きく下げてしまいましたがこれから新しい領域にチャレンジできる高揚感と、成果を出して再び収入を上げていけばいいという気持ちで日々の業務に取り組んでいるところです。
今回転職できた要因は、サイトに登録したレジュメを定期的にブラッシュアップしながら、キャリアや保有資格などをわかりやすくアピールすることを心がけたことにあるかなと思います。特にエンジニアとしてだけでなく、労務管理などマネジメントのキャリアも前面にアピールしたことも結果的に、オファーを受けることができたと考えています。

Sさん採用企業：株式会社沖電気カスタマアドテックの採用戦略

人事教育本部人事部
三浦晶氏

当社は情報処理、通信、制御、計測、放送、医療などの機器やシステムの保守や運用サポートなどを総合的に行っています。このように幅広く事業を展開していることもあり、エンジニアを含めた中途採用もニーズの変動に合わせて随時、幅広い職種で募集しています。

当社の採用条件として、各職種による個別のスキルやキャリアは別として、「お客さまに良質なサポートサービスを提供する」という事業の核心となる部分に関して、高い意識を持っている方を求めています。特にお客さまに対してだけでなく、社内の各部門との調整も多いことから、円滑なコミュニケーションが求められますね。
今回ご紹介したSさんは、転職サイトに登録していたレジュメを拝見し、当時募集していたポジションに必須の条件（保有資格・サポートエンジニアとしての経験に加え、マネジャーとしてもマネジメントの経験も豊富であることなど）を備えていたため、年齢的なことは特に気にせずオファーさせていただきました。
実際にお会いしてみて、非常にコミュニケーション力が高い方であることが理解できましたので面接後、その場ですぐに内定を出しました。今後もニーズに合わせてさまざまなポジションで、さまざまなタイプの方を採用していけたらと考えています。

【転職活動のカギ】豊富なキャリアや資格を効果的にアピールすれば、スカウトは来る

46歳にして初めて転職活動に臨んだ今回のケース。しかも退路を断っての活動で一般的にみれば、非常に勇気のある行動のように映る。しかし本人いわく「楽観的な性格」であること、そして転職先の条件をあまり細かく絞らず、とにかく新しいことにチャレンジできる環境、そして自分を変えることができる環境であればどんな業界・職種でも構わないという柔軟な姿勢で転職に臨んだことが、成功の要因として挙げられるだろう。
それに加え、前職在籍中から転職サイトにスカウト登録しつつ、じっくり時間をかけてキャリアやスキルを含めた自分自身の魅力を効果的にアピールするレジュメにブラッシュアップしたことも、魅了的なスカウトを受けることにつながった。
年齢やスキルに限らず、「自分は転職できるのか？」という不安を抱いているエンジニアにとって、今回の活動手段は「意外な企業から意外な部分を評価される」ことを実感でき、転職成功への可能性がより高くなるはずだ。