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エンジニア給与知ッ得WAVE Vol.
97
20年前の水準?記録的な
マイナス幅の2009年冬ボーナス
日本経済は不況の影響から脱することができないまま、厳しい冬を迎えようとしている。2009年冬のボーナスについて調査を行ったところ、ほぼ全業界、全業種にわたって軒並み減少もしくは、全面カットと厳しい結果となった。
(取材・文/広重隆樹 総研スタッフ/宮みゆき イラスト/絵理すけ) 作成日:09.12.16
「ボーナスが出るだけまだマシ」というムードさえ

 長引く世界不況の影響で厳しさが予想された2009年冬のボーナス。労務行政研究所が行った、東証一部上場218社を対象とした事前調査では、すでに10月段階で「平均支給額は65万9864円、昨冬に比べ13・1%の減少」と伝えられていた。これは同研究所が1970年に調査を開始して以来、最大の減少率だという。

 12月初旬のマスメディア報道でも、支給額は70万円程度で、前年比15%前後の減少。「20年前の水準」に戻ったとされている(2009/12/11付け日経新聞など)。世界不況や円高による輸出不振が業績を直撃した製造業での不振が目立つが、非製造業でも前年割れを記録しているという。

「20年前の水準」といわれても、本欄の読者の多くはピンと来ないだろう。まだ幼稚園生や小学生だった人も多いからだ。20年前の1989年はバブル経済が破裂する直前。物価はもちろんインフレ傾向にはあったが、それでも当時の70万円は相当な購買価値があって、人々の消費意欲も旺盛。そんなにはもらわなかったけれど、それでも仲間と連れだって六本木に繰り出し、派手な忘年会をやったもの──というのは、当時を知る筆者の記憶だ。いかにバブルの真っ直中だったとはいえ、当時の消費者心理はきわめてポジティブで、そこが現在のマインドとは全く違うところだ。

 近年は「ボーナスが出るだけまだマシ」というムードが強い。実際、中小企業のなかには冬のボーナスを全面カットするところも出てきている。少なくとも、ボーナスが出たから、何か新しいモノを買おうという意欲は減退気味だ。これがますます消費の低迷に拍車をかけて、不況を長引かせるのだとすれば、まさに悪循環の再生産で、このスパイラルから逃れるのは相当先のことになりそうだ。

全体平均54万円。前年調査を2割下回る

 Tech総研が09年12月に行った、20代後半から30代前半にかけての300人のエンジニア対象としたボーナス調査でも、減少傾向は明らかだ。全体の平均は54万円(税込み)。これは昨年同期の調査(1000名対象)の69万円に比べると、実に2割以上の減少なのだ。調査対象は各回異なるというものの、冬のボーナスが60万円代を割り込んだのは、この調査を開始して以来、初めてのことだ。

DATA1 職種・年代別/2009年冬のボーナス
職種分野 職種 20代後半 30代前半 30代後半
IT系 コンサルタント、アナリスト、プリセールス 60 万円 125 万円 105 万円
システム開発(Web・オープン系) 36 万円 56 万円 66 万円
システム開発(マイコン・ファームウェア・制御系) 30 万円 56 万円 70 万円
システム開発(汎用機系) 41 万円 51 万円 43 万円
ネットワーク設計・構築(LAN・Web系) 45 万円 47 万円 42 万円
パッケージソフト・ミドルウェア開発 60 万円 43 万円 31 万円
運用、監視、テクニカルサポート、保守 58 万円 63 万円 54 万円
研究、特許、テクニカルマーケティング、品質管理ほか 53 万円 60 万円 54 万円
社内情報システム、MIS 30 万円 49 万円 43 万円
通信インフラ設計・構築(キャリア・ISP系) - 59 万円 55 万円
電気
機械
化学系
回路・システム設計 44 万円 48 万円 39 万円
機械・機構設計、金型設計 55 万円 55 万円 34 万円
研究、特許、テクニカルマーケティングほか 53 万円 85 万円 41 万円
光学技術 30 万円 120 万円 40 万円
制御設計 0 万円 52 万円 30 万円
半導体設計 65 万円 32 万円 44 万円
品質管理、製品評価、品質保証、生産管理 31 万円 52 万円 43 万円
生産技術、プロセス開発 43 万円 55 万円 66 万円
素材、半導体素材、化成品関連 - 39 万円 47 万円
セールスエンジニア、FAE、サービスエンジニア - 109 万円 42 万円

 年代別平均では20代後半が43.8万円、30代前半が48.2万円、30代後半が60.9万円となった。エンジニアの職種別でみると、100万円を上回るのは「コンサルタント・アナリスト・プリセールス」のみだ。その他の職種については、全年代にわたって回答者がいる職種に限れば、平均額60万円台を上回るのは、「研究・特許・テクニカルマーケティング」と「光学技術」のみ。「システム開発(汎用機系)」「ネットワーク設計・構築」「パッケージソフトウェア・ミドルウェア開発」「回路・システム設計」「機械・機構設計、金型設計」「社内情報システム・MIS」「制御設計」「半導体設計」「品質管理・製品評価・品質保証・生産管理」などはのきなみ30万〜40万台に留まっている。

 勤務する企業の業種別でみると、「機械関連メーカー」(92.6万円)が例外的に高く、また「家電・AV機器・ゲーム機器メーカー」(37.6万円)が例外的に低い数字となっているが、全体でみると、IT・インターネット系だからよく、製造業だから低いというような顕著な傾向はみられない。不況業種があるなかで、好況業種もみられた従来の不況とは、この点も大きな違いとなっている。

空しい満足感。グチをこぼしても始まらない?

 300人の回答者の生声をいくつか拾うと、
・「会社の仕事量が減っているから、ボーナスも当然なし」(生産管理/33歳)
・「仕事が減って支給額が前年の45%しかなかった」(機械設計/33歳)
・「去年より数十万円減った」(システム開発/33歳)
・「仕事の受注件数が激減。会社自体が現在休業補助受けている状態」(機械設計/32歳)
 など、苦境を訴える声が相次ぐ。

 ボーナス減額の理由はもちろん、受注減、売り上げ減による利益の低下。「自分の仕事は売り上げとは直結しないので、仕事の忙しさは変らない。でも賞与は減る。やりきれない部分もある」(品質保証/34歳)と、自分ではどうにもならない状況に、苦渋がにじむ。

 ボーナスへの不満が高じて、「会社の業績はそこまで悪くないにもかかわらず、基本給削減など人件費を削られ続けている」(研究/32歳)と会社の賃金政策の批判に及ぶ声も出てくるが、全体のトーンは「業績不振でかなり減った。仕方ない。もらえるだけでもありがたい」(システム開発/30歳)という声が代表しているだろう。この不況下で、いくら「ボーナス額が低い」とグチをこぼしても始まらないという、諦めの心境がそこには漂う。

 結果的に満足度調査では「仕事内容に比べて安い」(54%)と「今回の金額に満足している」(45%)がほぼ拮抗する結果となった。「満足」といいつつ、その内容は推して知るべしである。中には「ボーナスがもらえることは嬉しいが、業績不振のなか会社は大丈夫なのか?」(品質管理/31歳)と、逆に会社の将来を心配する人まで登場する始末だ。

DATA2 2009年冬のボーナス金額の満足度は?
DATA2 2009年冬のボーナス金額の満足度は?
「貯金する」人の割合がさらに上昇

 最後にボーナスの使い道を聞いてみた(複数回答)。  あらかじめ予想されたことだが、「貯金する」(81%)が圧倒的に多い。昨年の調査でも79%が「貯金する」と答えていたが、今年はその数字を上回った。以下、「買い物をする」(46%)「ローン返済にあてる」(36%)「旅行する」(20%)「家族・恋人などにプレゼントを買う」(18%)という順番。

 買い物やプレゼントの中味までは聞けなかったが、2009年の年末商戦や冬の旅行需要の傾向からみても、全体に小粒になっているのは否めないだろう。  デフレ経済とはいうものの、収入の目減りで、消費は縮こまったままだ。それでも、少ないボーナスをやりくりして、ささやかなプレゼントを贈り合う。普通のビジネスパーソンにはそれが精一杯の姿なのかもしれない。

DATA3 2009年冬のボーナスの使い道とその金額 (※複数回答)
DATA3 2009年冬のボーナスの使い道とその金額 (※複数回答)

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宮みゆき(総研スタッフ)からのメッセージ 宮みゆき(総研スタッフ)からのメッセージ
今回調査に協力頂いたエンジニアの方の内、去年の冬はボーナス支給があったのに、今年は0円という方は13人でした。一方で、勤務先の業績や個人評価などで高額なボーナスをもらっている人も少なくはなかった気がします。不況期は会社の実力を見極める機会でもあるようです。

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