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ひとつのソフトウェア分野にこだわり続けた。CAD技術の最前線を経てステップアップしたK.J氏
ひとつのソフトウェアプロダクトを極めたエンジニアは、そのプロダクトを必要とする市場が一定の規模である限り、キャリアの価値は高い。K.Jさんは、CADの分野で市場動向を見据えながら転職を重ねてステップアップを続けた。
(取材・文/中村伸生 総研スタッフ/山田モーキン)作成日:08.05.19
デファクトスタンダードとなって市場を席巻するプロダクトは少なくない。しかし、流行には終わりがあるように、デファクトを獲得した製品も、うまくバージョンアップしたり、新たな需要を取り込まなければ、やがて競争力を失う。しかし、いったんプロダクトとその対象業務、さらに顧客を熟知したエンジニアは、少しの追加スキルで取って代わって新たなデファクトとなった他社のプロダクトを扱うことが難しくない。必然的に新デファクトの拡販を急ぐベンダーは、転職市場で旧デファクトのエキスパートを待ち構えている。IT市場では、こうしたプロダクト軸でキャリアを積み重ねるエンジニアが少なくない。K.Jさんは三次元CADの分野でスキルを継続させて、最終的に最大手のSIerに到達した。
Profile 大手システムインテグレーター テクニカルエキスパート(46歳)
新卒で大手SI企業A社のパートナー企業であるB社に入社。そこでCADと出合い、継続的にスキルを磨いて転職を何度か繰り返し、最終的にA社へのステップアップ転職を決める。
転職前(中堅システムインテグレーターD社 プリセールス・39歳) 転職後(大手システムインテグレーター A社 テクニカルエキスパート・46歳)
年俸約800万円。当時の会社の給与水準としては限度額目いっぱいを引き出していた。 給与 年俸約1200万円。収入はエンジニアのプライドとして納得できる額。仕事が面白ければ、少なくても構わないとも考えている。実際に、株取引の収入のほうが多い。
9時〜20時 勤務時間 9時〜18時(残業はしない主義)
みんな好き勝手に仕事する(できる)環境。 職場環境 最大手の余裕なのか、紳士的な社風。ただ、ルールに縛られることがある。教育が充実しているのはよいが、研修を強制的に受講しなければならないという融通の利かない面もある。
互いに頼ったり助け合ったりしない一匹狼の集合体。 職場の人間関係 大人の社風で、自然な協力体制が組める。
CADプロダクトのプリセールス。 仕事の
中身
CADプロダクトのプリセールスならびに社内テクニカルエキスパート。
製品紹介、ソリューション提案、導入支援などすべて自分で行う。 仕事の
進め方
ビジネスパートナー(代理店)を組織的に活用したプリセールス活動。
今回の注目!
自分ひとりでプロダクト販売〜導入をすべて主導する。 仕事の
役割
プリセールスとして、ビジネスパートナーの営業、マーケティング、エンジニアを主導。指導面も担う。
転職前編 製造業向けCADの進化とともに歩んできた。
理系の難関大学に入学したが、就職は大手企業をあえて避けた。組織の歯車になるのが嫌だったからだ。今から思えば若さゆえの無知だが、小規模な企業ほど自分らしく自分の意思を軸に働けると考えたのである。ただ、業界・職種は決めていた。フォーカスしていたのは、CADを商品として扱う技術系企業である。アルバイトとして電機メーカーで働いたときに、二次元だったがCADの使い方を学び、このソフトウェアプロダクトは面白いなと感じていた。その際に、「自分だったらこんな使い方はしない」とか、さらには「プロダクトとしてこんな作り方をしたいな」といったアイデアや発想をたくさんもっていた。だから、就職活動の方向性は自ずとCADベンダーもしくはCADを取り扱うSIerに絞られたのである。

その結果、新卒で入ったB社は中堅SIerで、CADに力を入れようとしていたことを聞いたので入社した。20年以上前のことで、三次元CADがようやく実用化し始めたころで、大手製造も実証実験的に導入を考えだした時期である。B社では念願かなって三次元CADのプリセールスを担当。三次元CAD導入が未知の顧客ばかりだから、ユーザーに対してのプロモーションをじっくりとやれたし、設計の業務フローに入り込んでコンサルティング的な動きをさせてもらえた。売る側、ユーザー側とも勉強しながらの導入であり、市場価値の高い貴重なスキルを身につけることができた。実際、某外国ベンダーの有名CADの日本におけるファーストユーザーとなった自動車大手での導入プロジェクトに、私はプリセールスとして大きく関与している。

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そこから十数年、三次元CADが急速に進化するとともに、転職を2回重ねることになった。立体で作図・設計する基本的な機能に加え、強度解析などのシミュレーションができるようになったり、調達や生産のためのデータを生成できるCAE方面の機能も広がったりした。ハードの進化も三次元CADの発展に貢献し、モデリングなどにかかるスピードも大幅にアップした。

市場をリードする海外CADベンダー各社もしのぎを削り、市場占有率は数ブランドが競い合った。ひとつが新しい機能を発表すれば、追随するほかのブランドがそれを凌駕する機能を発表するという中で、三次元CADはプロダクトとして成熟度を高めたのである。

熾烈なベンダー間の競争は、実際に国内マーケットを担っている代理店やSIerも巻き込んだ。その時点で、最も優れたプロダクトを担ぐ企業が市場優位性を高める。戦略を間違えば市場からの撤退も余儀なくされる。同業他社間の吸収合併も珍しくなかった。

そうした中で、より中身の濃い、有益な提案ができるポジションを得るために、積極的に転職したのだった。実績があるから、自分の売り込みには困らなかったし、節目節目ではオファーもかなり受けた。おかげで、常に三次元CAD市場の最前線に身を置くことができた。
転職活動編 技術イベントで自分を売り込む。
CADというプロダクトを手掛けて20年近くたって40代となったとき、進化を続けた三次元CADは成熟したプロダクトであるように思えてきた。今のものとは異なる新しい数学の計算式を活用した製品でも出ない限り、大きな展開が出てこないように感じられた。それは、この先のキャリアにおいて大きなドラマに出合えないということと同義だった。

そこでいったんCADという概念から飛躍して、開発から生産技術と製造設備まで一貫して仮想構築できるプロダクトであるCAPEに興味をもった。以前から開発・設計をベースに経営の全体計画や最適化まで視野に入れた技術コンサルティングの方向性にキャリアの有望性を感じていたからだ。

このCAPEの概念を実現する某プロダクトを扱う企業への転職を意識するのは自然な流れだった。また、その当時所属していた企業の勤務環境に疑問を持ち始めていたので、転職するにはいい機会かもしれないとも感じていた。

そんなある日、某CAD関連の技術イベントに参画していたとき、隣がたまたま外資で業界最大手A社のSIerのブースだった。業界がせまいせいか、かつてプロジェクトで知り合ったエンジニアがプロモーションの先頭に立っていた。そしてイベントの合間に自然と雑談になり、A社のCAPEに対する取り組み状況や人材ニーズの動向について探りを入れてみた。感触がよかったので、A社のホームページにあるリクルーティングサイトから直接応募した。すぐに面接。これまでの実績とスキルが正当に評価されて、入社が決まった。
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転職後編 市場動向が変わっても、スキルの価値は変わらない。
実は転職後すぐ、A社はCAPEの取り扱いを行わない方向にシフトした。しかし、A社への転職は失敗ではなかった。さすがSIer最大手だけあって、顧客層も一流企業ぞろい。そんな製造業の第一線のCADユーザーは、尖鋭的なCAD活用を常に取り入れようとしている。対応するこちら側もさまざまな発想でCADの可能性を提案していくことができる。顧客の業務に深く入り込んだプリセールス活動は刺激的だし、三次元CADがまだまだ可能性を秘めたプロダクトであることも確認できた。

期せずしてこのようなポジションを手に入れられたのは、ひとえにCADの最前線を歩み続けてきたからだろう。ひとつのプロダクトを極めていくと、周囲のレベルも自身の成長に合わせて高められることを、振り返って実感した。
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K.Jさんの転職考察 CADプロダクトに熟知してきたことで、次の最適なステップが踏めた
転職して良かった点
・自分が原動力となることで、大きな組織のたくさんの歯車を動かせられる。
・企業としてのブランド力を活用でき、より多くのお客様とコミュニケーションが図れた。
転職して悪化した点
・社内ルール尊守がうるさい。
・資格の取得、TOEICのスコア向上が求められる。
転職動機は人によってさまざまだが、K.Jさんは三次元CADというひとつのプロダクト分野において、市場価値の高い製品と技術を扱うことにこだわって転職を重ねた。そこでは、自分のスキルが陳腐化するという危機感ではなく、エンジニアとしての技術的興味を優先して転職先を探すアンテナを働かせてきたように見える。実際、収入は順当に上がっていったそうだが、K.Jさんはそれをキャリアアップのおまけと考えている。株の売買で給与以上の収入を得ているのだそうだ。
そんなエンジニアとしての意欲的な姿勢と実績ベースで臨む転職活動だけに、アプローチは主体的であり無駄な手数や失敗がない。多くのエンジニアに当てはまるケースとは言えないだろうが、特定のソフトウェアプロダクトにかかわっているエンジニアであれば、ひとつのキャリアアップ像として参考になる部分はあるはずだ。
今回の転職ノウハウ:得意なプロダクト分野を深めることで、転職市場で価値の高いスキルをもつことが可能になる。
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