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ソフト未経験のハード系エンジニアがアルモニコス社で新境地を開拓

重電機械設計者が3次元CADのソフトウェア開発に挑戦

アルモニコスは静岡県浜松市に本拠を置く、3次元CAD/CAMシステムの急成長ベンチャー。コンサルティングを通じて各企業の目的に合ったシステム開発を行うため、CADの経験の有無を問わず、ユーザー業務に精通した実務経験のあるエンジニアを幅広く求めている。ソフト未経験の機械系設計者は、いかにして面接を突破したのか。
(取材・文/広重隆樹 総研スタッフ/高橋マサシ) 作成日:04.04.21
アルモニコス社
応募したエンジニア 企業の面接担当者
宮崎さん
宮崎篤司さん(当時27歳)
内田さん
常務取締役
内田幸雄氏
当時の職種
機械設計エンジニア
募集職種
コンピュータソフトウェアの開発者
業務内容
火力発電用タービン機器など制御機器の設計。
仕事内容
3DCADソフトの顧客仕様に合わせた開発およびコンサルティング。
職務経歴
国立大学大学院修士課程修了後、大手電機メーカーで火力発電プラント制御機器の基本設計に2年半従事。
応募資格
CAD開発経験の有無を問わず、ユーザー業務に精通した実務経験者。
志望動機
Uターン先の地元企業で製造業と密接に関係し、かつ製品開発にあたって技術者の創造性を発揮したい。
募集背景
業務の拡大に伴う開発体制の強化。ただし、よい人材であればいつでも中途採用を行う。
面接の流れ
基本的に採用担当役員が選考する。
通過者全員に会社概要、経営理念、仕事内容などの会社説明会を開く。その後、理数系の基礎能力や発想力を試す筆記試験を行う。合計で約2時間。
筆記試験は数学かプログラミングの選択問題、加えて基礎能力試験を実施。その後、採用担当役員による面接。合計で約3時間。

社長と役員2人による面接。約1時間。その後、希望者には若手技術者と話す機会を設けるケースもある。
主にメールで約1週間後に連絡する。
【通過率:約2割】
【通過率:約3割】
【通過率:約3割】
Part1
職務経歴と顧客接点

上流工程の基本設計エンジニアに顧客接点はない
内田:
 はじめまして。内田と申します。今回初めて面接に参加する役員もおりますので、あらためて自己紹介をお願いします。【Point1】学部や大学院での勉強がどのように仕事につながったか、現在のお仕事の経験などをお話しいただければと思います。
宮崎:
 大学では材料力学、なかでも原子力発電用の材料について研究していました。そこで発電に興味をもつようになり、大手電機メーカーの○○に就職しました。配属先は火力発電用タービンプラントの部署で、ここで2年半、制御機器の基本設計をしています。

 具体的には、まず、工場に発電設備を設置したいという、お客さんからの仕様が持ち込まれます。それに対して私たちがスケジュールを立て、材質や強度などの基本設計をして、お客さんに了承を取ります。そして、それを詳細設計の部門に渡すという、設計のなかでも上流工程の仕事をしています。
内田:
 お客さんと直接会話をしながらの折衝もあるのですか?
宮崎:
 【Point2】顧客窓口は技術営業部門なので、直接顔を合わせることはありません。ただ、実際に装置をつくる協力会社の人とはしょっちゅう打ち合わせをします。
内田:
 【Point3】お仕事の流れのなかで、CADソフトを使ったり、ソフトウェアでシミュレーションを行ったりすることはありますか?
宮崎:
 2次元のCADを使って簡単な図面を描くことがほとんどです。シミュレーションについても、数値計算の中での簡単なシミュレートです。蒸気の条件が何気圧だったら、その後の工程でどのぐらいの損失が生じるか、などといったものです。
Point1
[面接官]宮崎さんにプログラミングの経験がないことは、書類審査の段階でわかっていました。その意味で即戦力ではありませんが、これは入社後にいくらでも勉強できます。未経験を補うだけの、その人の強みを聞いていくのが今回の面接のポイントです。
Point2
[応募者]協力会社やベンダーさんとの接点はありますが、最終ユーザーとの直接折衝はないので、この質問には少々焦りました。お客さんと密に接する仕事なのだと、あらためて業務の違いを感じました。
[面接官]弊社では、お客さまそれぞれの業務に合わせたシステムを開発しているので、エンジニアには顧客折衝力や技術面でのアピール能力なども求められます。ですから、宮崎さんの顧客接点の少なさは少々気になりました。しかし、彼はわれわれの製品を使っている顧客そのものというとらえ方もできます。そこが彼の強みかもしれないと感じました。
Point3
[面接官]設計現場でのCADやシミュレーションソフトについては、しつこく聞きます。何をどのように使っていたか、パッケージソフトか自社開発のものかなどです。ソフトの使い勝手や改善への要望は、これからの開発のための貴重な材料になりますし、入社後はたえずそういった意識をもってほしいからです。
[応募者]CADソフトの会社であることはもちろん知っていましたが、使用経験についてここまで深く聞かれるとは想定していませんでした。しかし、ここで知ったかぶりをしても仕方がないと思い、正直に話しました。
Part2
転職動機と志望理由

頭を使わなくてもモノができる物足りなさ
内田:
 転職を考えた動機を聞かせてください。
宮崎:
 直接のきっかけは、家庭の事情で親元に帰らなければならなくなったことです。私は浜松市出身なので、その近郊で仕事を探そうと思いました。ただ、今の仕事に物足りなさを感じていることが、大きな転職の動機です。
内田:
 それでは、当社への志望動機はどういうものですか。
宮崎:
 御社のことは知り合いから紹介されました。ソフトウェア開発を行う企業なので自分の専門外だと思っていましたが、きわめて技術力の高い企業と聞いて興味がわきました。そこでホームページを見て、社員のみなさんがいきいきと働いている様子を知り、率直にいいなあと感じたのです。日常感じている物足りなさが、ここでは満たされるかもしれないと思いました。
内田:
  先ほどからおっしゃっている「物足りなさ」を、もう少し詳しく話してください。
宮崎:
 私の仕事はお客さんからの仕様に対して設計をするわけですが、大手メーカーの設計現場は効率が命です。一からスタートするのではなく、過去のモデルをベースにした、ひな型のようなものが既にでき上がっています。工程も標準化が進んでいて、自分のアイデアや発想を入れ込む余地はほとんどありません。
 極端にいえば、自分の頭をあまり使わなくても、モノができてしまうのです。エンジニアとしては、どうしても物足りなさを感じてしまいます。私は頭を使い、手足を使って、モノをつくりたいのです。
Uターン転職でソフト開発企業を選んだ理由
内田:
 【Point4】Uターンで地元企業へ転職することが第一条件なのですか?
宮崎:
 そうです。浜松近郊で、かつ機械設計というのが当初の条件でした。実際、その関連の企業にも応募しています。
内田:
 浜松には製造業が多いですよね。当社は直接の製造業ではなく、製造業のお客さまのために、CADシステムをつくっているソフト会社です。【Point5】宮崎さんのなかでは、どういう位置づけになるんでしょうか?
宮崎:
 確かにソフト開発企業ですが、ビジネスアプリケーションではなく、CAD分野のソフトウェアです。つまり、製造業に近いところで仕事をしているということが、まず私にとっての魅力です。

 また、こういう不景気でメーカーは開発投資を抑えがちですが、もちろん全部抑えてしまうと次の成長ができません。そこで、優れたシステムを使って作業を効率化したいという要望があると思います。御社のソフトは技術力が高いだけでなく、そういう「かゆいところに手が届く」といった狙いがうまいと思います。非常に興味がありますし、私の経験も何らかの形で生かせるのではないかと思いました。
Point4
[面接官]最初の動機が、弊社ではなく浜松市へのUターンというのは、やはり気になるところです。ただ、Uターンへの条件が強ければ強いほど、転職先は限られます。入社後は本気になって業務に取り組んでもらえるという判断もできます。
Point5
[面接官]弊社は製造業ではなく製造業を顧客とする会社。そのどこに魅力を感じているのかは、ぜひすり合わせておきたい事項です。
[応募者]私のなかでは、製造業という業種の重みは大きいものです。ですから、アルモニコスが単なるビジネスソフトの会社だったら興味はわきませんでした。ここなら大手メーカーだった前社の経験が生かせるし、新しいチャレンジができる。貢献できる余地もあると思ったので、その点をアピールしました。
Part3
企業風土との適合性と将来像

製品デモを見て3次元シミュレーションに感動
内田:
 この面接の前に、当社製品のデモンストレーションをご覧いただいたと思います。ご感想を聞かせてください。
宮崎:
 3次元でモノが見えるということに、とても新鮮さを感じました。今の会社でも、ベテランのエンジニアなら、2次元の図面を見ただけで立体図がイメージできます。しかし、私にはなかなかそれができません。
【Point6】ですから余計に驚きましたし、3次元の図面が自在に変形してさまざまなシミュレーションを行うことにも、興味を覚えました。お客さんの意向を聞きながら、モノをつくる大変さ、同時にその面白さを想像しましたね。
「ハードワーク」は単なる長時間労働ではない
内田:
 会社説明会のなかで、当社は年俸制でハードワークだと何度も強調しましたね。これらの言葉にどういうイメージをもちますか?
宮崎:
 能力主義の年俸制についてはプロ意識が強くなりますし、やりがいも出てくると思います。望むところといった印象でした。
 ハードワークでまず連想したのは、筆記試験に出た問題です。もう少しで解けたのに、時間が足らずに断念したものがありました。もう少しで解けるのに、というのは今の仕事でも感じていることです。大手企業なので、せっかく仕事が乗ってきたところなのに、ノー残業デーなどを理由に退社せざるを得ない場合があります。自分の裁量、自分のペースで仕事ができる環境に憧れています。
内田:
【Point7】そのハードワークに耐えられますか?
宮崎:
 一抹の不安はありますが、自分のやりたいことに好きなだけ専念できるのは、願ってもない環境です。
内田:
 私たちがいうハードワークとは、長時間の単純労働ではありません。いろいろ自分の頭で考えながら仕事にのめり込むこと。例えば、趣味のテレビゲームでも、ハマると朝までやってしまいますよね。そういうイメージです。自主的な勉強会も頻繁に開かれますが、これは業務時間内に行っています。それらも含めてハードワークなんです。
宮崎:
 なるほど。私がイメージしていたのと同じです。
将来は業務経験を生かしたコンサルタントを希望
内田:
 入社後はプログラミングをマスターしてもらいますが、数年たつと、プログラミングのスペシャリストになるか、チームマネジメントに徹するか、コンサルタント的な立場になるかの、3つから選択することになります。宮崎さんはどうなりたいと思いますか?
宮崎:
 プログラミングはやはり未経験な分だけ、ほかの人と差が出てくると思います。どちらかといえば、最後におっしゃったコンサルタントに興味があります。【Point8】製造業での実務経験を生かして、顧客の問題解決に当たるという方向を目指していきたいですね。
内田:
 最後に今回の採用選考全体についてのご感想と、アルモニコスについての印象を聞かせてください。
宮崎:
 筆記試験に出たパズルのような問題を解きながら、頭にこんなに汗をかくのは久しぶりだなと思いました。自分の頭で問題を解決し、お客さんに満足してもらうことは、これまでの自分の仕事になかったことです。【Point9】正解を作っていくのはたしかに難しいことですが、お客さんと話しながら、限られた時間の中でそれを追求する仕事には大変興味があります。
内田:
 そういっていただけると私どもとしてもうれしいです。今日はどうもありがとうございました。
Point6
[面接官]弊社では会社説明会か1次面接の後で、若手社員による製品のデモンストレーションを行っています。「3次元が頭に浮かばない」というのはマイナスの評価に近いのですが、興味をもったという感想は高得点です。また、お客さまと一緒にシステムを開発するという当社の業務については、よく理解していると思いました。
Point7
[面接官]「ハードワーク」がわが社のモットーですが、そのイメージについて共通理解をしておきたい。文字どおりの意味ではないのですが、あえて突っ込んだ聞き方をします。宮崎さんの答えは二重丸ですね。たまに、ハードワークという言葉だけで拒否感を示す人がいますが、それでは困ります。
[応募者]話を聞いていくうちに、世間でいう長時間の残業とは違うと感じました。最初は、趣味のサッカーができなくなるかと、ちょっと不安でしたけど(笑)。
Point8
[応募者]自分の経験をどこで生かすかを考えると、やはり将来の選択肢はコンサルタント職になりました。工学部の機械出身で重電の設計に携わっていたというのは、いまどきの転職市場では珍しいかもしれません。その珍しさを生かす道を示したほうが、アピールになるとも思いました。
[面接官]将来のキャリアプランについて、入社段階からイメージをもっていただくことは大切です。私の考えと当人の方向性との、イメージの一致を確認したいのです。
Point9
[応募者]面接を経てよい会社と感じて、本当はすぐにでも入社したい思いでした。ただ、転職は初めてでしたし、入れるかどうかの不安もありました。もっと素直に、入社を強く希望してもよかったかもしれません。
[面接官]自分のやりたいことをうまくアピールし、弊社の魅力もよく理解していました。この時点での評価は極めて高いものでした。しかし、この段階ではまだ弊社が第一志望かわからない場合もあります。宮崎さんは違いましたが、この後で再度面接を行う場合もあります。
面接官はここを見た!
●その人が提供できる自分なりの「強み」があるか。
●能力主義やハードワークなどの企業風土と合致しているか。
●顧客に対応できるコミュニケーション力はあるか。
「プログラムはだれでもできる」というのがアルモニコスの考え方。そのため、採用に関してプログラミングの経験は問わない。それよりも、特化した業務知識やコンサルタント力など、より高いレベルでのセンスやインテリジェンスを重視する。また、能力・実力主義、自分で時間をコントロールしながら仕事を進めるなど、企業風土と本人の志向性の合致を探る。顧客からニーズを引き出して開発を行うための、コミュニケーション力の経験や素養も見る。
宮崎さんはコレで決めた!
「仕事を自分でコントロールでき、
自分の頭を使って何かを加えることができる。
それこそ理想の環境だと思いました」
 面接を重ねるうちに、モノづくりの世界に別の形でアプローチするという、新しい仕事のイメージが像を結んできました。自分の頭で考えながら、何かを創造できるというのは、エンジニアにとっての最大の醍醐味。仕事だからと割り切るのではなく、自分ならではの強みを出して、興味や情熱を仕事に注ぎ込んでいる。そんな仲間たちと一緒に仕事ができればいいと、ワクワクしてきたことを覚えています。
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高橋マサシ(総研スタッフ)からのメッセージ
エンジニアはそれぞれ専門技術が異なるので、異業種転職に躊躇する方が多くいます。しかし宮崎さんはそれ以上の「異職種転職」でした。もちろん全くの未経験。それが今では、プロジェクトマネージャとして会社を引っ張る人材に成長しています。皆さんが知りたい転職シーンはありませんか? ご希望がありましたら、ぜひお知らせください。

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