転職をしたら年収が100万円アップしそうな企業は？　有休を自由に取りやすそうな企業は？　ITエンジニア300人に聞いた企業のイメージ調査を基に人気企業ランキングを大発表！　魅力的な企業の条件をレポートする。 （取材・文／二之形幸子　総研スタッフ／山田モーキン）作成日：07.04.18

今回300人のITエンジニアに「○○だと思うIT企業」についてアンケートを実施した。転職をするときにかなり気になる重要なポイントという観点から10個の質問を用意し、ITエンジニアにそれぞれが抱く企業イメージを調査。したがって、あくまでもランキングは個人の知識や体験に基づいた“イメージ”の枠を超えないものである。しかし、一般的な人気企業ランキングとはちょっと趣向を変えてITエンジニアだけが選んだIT企業トップ5のレポート、参考にしていただきたい。

今回の人気企業ランキングでは圧倒的な人気を誇った日本IBM。この項目でも2位のNECを大きく引き離してトップの座に輝いた。日本IBMの投票理由の大半は研修制度。5位のマイクロソフトも日本IBMと同じ外資系だが資金力が評価された。2位・3位・4位はNEC・富士通・日立とほぼ同数で日本の大企業が選ばれ、その大半が教育制度がよさそうと回答している。また、日本の大企業は外資系よりも身近なだけに実体験を投票理由に挙げるITエンジニアが多かったことも特徴的だ。 社内研修が充実していると聞いており、短期間で成長できそう。（社内情報システム、MIS・28歳） 同行訪問をよくやっている。（運用、監視、テクニカルサポート、保守・39歳） 若手のエンジニアでしっかりしている人材が多いから。（システム開発（汎用機系）・39歳） 年配者は教育熱心そう。（研究、特許、テクニカルマーケティング、品質管理ほか・34歳） 資金力があり、研修などが充実してそう。（運用、監視、テクニカルサポート、保守・39歳） 　少数派のなかでも特に評価されたのは、CSK、日本オラクル。CSKは研修制度、人材育成に関して高い評価を得た。ほかの企業は独特の社風が評価されたようだ。 研修制度も充実しているし、先輩との付き合いも割合しやすいと聞いているから。（パッケージソフト・ミドルウェア開発・33歳） エンジニアを専門に採用するのではなく、業界・職種未経験でも平気に採用できるということは、それだけ内部で教育できるということにつながると考えたから。（研究、特許、テクニカルマーケティング、品質管理ほか・28歳） さまざまなトレーニングが用意されている。（システム開発（Web・オープン系）・34歳） いろいろな技術・サービスを扱っており、すべて自社開発で、かつ社風も風通しがよさそうだから。（システム開発（Web・オープン系）・36歳） わきあいあいとした雰囲気で親切丁寧に教えてくれそう。（運用、監視、テクニカルサポート、保守・34歳）

1位は日本IBMで2位のGoogleとは僅差でトップになった。日本IBMの投票理由はチャレンジできる機会の多さ、Googleはいろいろなことにチャレンジできそうとそれぞれ異なる観点から評価されたようだ。また、1位の日本IBMは「外資系だから結果も厳しく求められる」というシビアなイメージもやはり根強い。3位のソニーは社内コンペなどの社内制度を評価する声が多かった。4位のマイクロソフト、5位のヤフーは、それぞれの企業姿勢が評価される結果になった。 チャンスは与えてくれそうだが、結果も厳しく求められそう。（社内情報システム、MIS・36歳） 全仕事時間の2割は自分の好きなことの研究にあてると言われているくらいだから、いろんなチャレンジを許してくれそう。（システム開発（Web・オープン系）・31歳） 社内コンペなどがあり、優秀だ！と認められればどんなことでも商品化できるなど、いろんなウワサを聞くので。（システム開発（Web・オープン系）・35歳） 技術に対する向上心がすごいから。（システム開発（Web・オープン系）・29歳） 多種多彩の業務でいろんな分野の知識が必要そうだから。（運用、監視、テクニカルサポート、保守・39歳） 　少数派とはいえ、この質問では楽天が高い評価を得た。また、楽天にかぎらず、はてな、サイバーエージェント、ミクシィなど、話題のIT企業も顔をそろえた。 ジャンルを問わず新しいことを取り入れることに積極的な感じがする。（システム開発（Web・オープン系）・30歳） 常に新しいことを模索している企業だから。（運用、監視、テクニカルサポート、保守・34歳） 社長自らいろいろな方面へ飛び込んでいきそう。（システム開発（Web・オープン系）・34歳） 先端的な技術を先取りしているというイメージがある。（通信インフラ設計・構築（キャリア・ISP系）・29歳） ベンダー企業として顧客以上のスキルが必要と思われるから。（通信インフラ設計・構築（キャリア・ISP系）・31歳）

1位日本IBMの投票理由は、男女同等の企業イメージが評価を得た。2位と3位はほぼ同数でソニー、マイクロソフトと続く。ソニーが企業イメージ、マイクロソフトは世界シェアの高さとそれぞれ異なる観点で評価されている。4位Google のエンジニア主体の企業らしさを示す回答が多かった。5位のソフトバンクは女性社員が増えたというイメージがあるようだ。 エンジニアのステータスが高そう。（パッケージソフト・ミドルウェア開発・39歳） 今のトレンドで時代に則したことを行っており、企業イメージもクリーンなので。（システム開発（Web・オープン系）・35歳） 世界シェアが高い分尊敬されそう。（システム開発（Web・オープン系）・34歳） エンジニア王国。尊敬してくれそうな、というより世間では受け入れられないくらいハイレベルな、ハイソサエティなエンジニアが多そうだから。（研究、特許、テクニカルマーケティング、品質管理ほか・28歳） 携帯事業もはじめたので、技術系スタッフ以外の女性社員は多そう。（パッケージソフト・ミドルウェア開発・32歳） 　5位にランクインするくらいの勢いがあったアップルコンピュータ。「エンジニアというかクリエイターっぽいイメージでもてそう」「デザイン性の高い商品を開発している」とオシャレでクリエイティブな企業イメージが高い評価を得た。 センスの良い商品作りをしているから。（システム開発（Web・オープン系）・33歳） 女性社員の活用が進んでいるため。（システム開発（マイコン・ファームウェア・制御系）・34歳） 活気があって藤田社長が有名。（システム開発（Web・オープン系）・26歳） イメージや感覚、直感です。（システム開発（Web・オープン系）・33歳） 賢そうなイメージがある。（システム開発（Web・オープン系）・28歳）

1位日本IBM、2位マイクロソフトと外資系がトップに並んだが、両社とも「外資系で成果主義」という点が評価されている。一方、3位のソフトバンク、4位のGoogle、5位のヤフーは給与の面で評価された点が共通している。また、ソフトバンクとGoogleは企業の急成長の実績を評価する声も多かった。 外資系で成果主義。（通信インフラ設計・構築（キャリア・ISP系）・35歳） 会社自体に資金力がありそう。技術者には惜しみなく支給がありそう。（パッケージソフト・ミドルウェア開発・32歳） スキルのあるエンジニアが高収入を得ているので。（システム開発（Web・オープン系）・36歳） 今後の業績の伸びがIT業界で一番期待できそうだから。（システム開発（Web・オープン系）・34歳） 高給のイメージ。（運用、監視、テクニカルサポート、保守・36歳） 　ほかの質問回答ではあまり見かけなかったSAPジャパンとキーエンスだが、どちらも「実際○○だった」と回答する者が多いところは見逃せない。 実際給料を高くして知識の流出を防いでいる会社だから。（システム開発（Web・オープン系）・32歳） 堅実に業績を伸ばしており、かつ、もともとトップクラスの企業だから。（システム開発（Web・オープン系）・27歳） 新入社員の基本給が高いから。（パッケージソフト・ミドルウェア開発・33歳） 先輩社員が転職して、年収が倍になったから。（システム開発（Web・オープン系）・29歳） 中堅社員の平均給与水準が高く、常に人材が不足しているから。実力的には自分と同じかそれより低い場合でも報酬はよいから。（コンサルタント、アナリスト、プリセールス・35歳）

この質問でランクインした企業はすべて「技術中心の企業でエンジニアの技術力も高い」と評価され、「企業の技術力」を挙げる回答が多かった。1位から3位まではやはり外資系企業が独占したが2位Googleの投票理由は、技術で成り立っている企業だから当然エンジニアが優遇されるという回答が大半を占めた。4位のソニーもGoogleと同様の回答が多かった。5位NECの投票理由は、技術と人を大切にする企業イメージがあるようだ。 技術で成り立っている企業だと思うから。（システム開発（汎用機系）・25歳） 技術者への依存度が高そう。（パッケージソフト・ミドルウェア開発・33歳） エンジニア部隊が主力だから。（社内情報システム、MIS・28歳） 技術志向が高く、その価値を理解してくれていそうだから。（コンサルタント、アナリスト、プリセールス・35歳） 営業より技術の方が発言能力が高い印象を受けているから。（コンサルタント、アナリスト、プリセールス・35歳） 　 　少数派のなかでは、はてなが「エンジニア主体の会社だから」と高得票だったほか、イメージ重視の回答が見られた。 他の職種の人がいなさそうだから。（システム開発（Web・オープン系）・26歳） どたばた混乱で辞めた人も多く人手不足だろうから。（社内情報システム、MIS・34歳） オムロンなどの電子デバイスメーカー工場では技術者が重宝されるのは当然。（システム開発（Web・オープン系）・26歳） 貧富の差が激しいようだがエンジニアは優遇されそう。（システム開発（汎用機系）・33歳） ITに特化しているから。（パッケージソフト・ミドルウェア開発・32歳）   　今回のアンケート調査でGoogleが初の1位を獲得した。投票理由は自由な社風。また、他の企業には出てこないものも見られ、Google特有のルール「20 percent time」（勤務時間の20%を個人のプロジェクトに費やすルール）を挙げる回答もいくつかあった。2位の日本IBMと3位のマイクロソフトは外資系であること、4位のソニーは商品のイメージから自由度が高そうと評価されたようだ。5位のヤフーは若い人がたくさんいて自由なイメージがあるようだ。 発想が奇抜な企業体制を感じる。（研究、特許、テクニカルマーケティング、品質管理ほか・31歳） ジャンルにとらわれない自由な社風というイメージがあるから。（コンサルタント、アナリスト、プリセールス・39歳） 新しいプロジェクトを率先してさせてくれそうだから。（システム開発（Web・オープン系）・35歳） 自由というイメージがいまだにあるので。（運用、監視、テクニカルサポート、保守・37歳） いろいろなサービスを提供しているから。（通信インフラ設計・構築（キャリア・ISP系）・29歳） 　はてなの「自由度」を挙げる回答が多く、「開発提案がたくさんできそう」と高評価を得た。アップルコンピュータも「自由」「柔軟性に富む」「独特の社風がありそう」と評価する人が多かった。 雑誌等のイメージから、自由度が高そうだから。（運用、監視、テクニカルサポート、保守・28歳） 新しい会社だから、社員層が若そう。（運用、監視、テクニカルサポート、保守・32歳） 社長が社員の積極性を第一に考えてくれそうな方なので。（研究、特許、テクニカルマーケティング、品質管理ほか・31歳） 混乱がおさまりこれから再度立ち直らなきゃいけない会社。会社を軌道に乗せるためにいろいろやっていく必要があり、そのための提案もしやすい。（通信インフラ設計・構築（キャリア・ISP系）・34歳） 柔軟性に富んでいそう。（運用、監視、テクニカルサポート、保守・38歳）   　1位日本IBM、2位マイクロソフトと続いたが「外資系は福利厚生が充実していてファミリー的」という評価を得た。続いて日本を代表する大企業NTTという順番になっているがやはり元国営という背景が根強くあり、福利厚生がしっかりしていると評価する声が多かった。4位NEC、そして5位の松下電器もNECと同様に「家庭的なイメージで社員を大切にしそう」という回答が目立った。このように昔ながらの日本の大企業を評価する声も多い。 ファミリー的だから。（社内情報システム、MIS・34歳） 外資系であれば仕事よりも家族優先の考え方のような気がする。（パッケージソフト・ミドルウェア開発・32歳） やはり公共企業というかお役所的なイメージが強い。（研究、特許、テクニカルマーケティング、品質管理ほか・31歳） 家族的な風土を大事にしそうな企業。（システム開発（Web・オープン系）・39歳） 社員を大事にしていそう。（運用、監視、テクニカルサポート、保守・32歳） 　この質問は「そんなIT企業はない」と回答する者が多かったことも確かではある。一方で、ノリや社長のイメージから家族思いの企業と連想する回答が目立った。また、楽天には「日本的な雰囲気を感じるから」という回答もあった。 東京・渋谷の本社から2駅以内に住めば、毎月三万円の家賃補助をしてくれる。また、休日出勤をしても、社内が嫌々（嫌々な人もいるだろうけど）仕事をさせられている雰囲気がなく、それこそ休日も深夜も同僚と仕事の議論をしたり、遊んだりとまるで学生のノリ。そんな会社らしくない、ところが良いから。（システム開発（Web・オープン系）・32歳） 社長自体が愛妻家であり、家族を大事にしているのではないかと。（システム開発（Web・オープン系）・34歳） 社長も人妻なので、配慮してくれそうな印象がある。（ネットワーク設計・構築（LAN・Web系）・37歳） ブログでの評判や写真等でみる社内の雰囲気から。（システム開発（Web・オープン系）・26歳） 福利厚生がしっかりしているから。（通信・インフラ設計・構築（キャリア・ISP系）・31歳）   　1位日本IBM、2位マイクロソフト、4位Googleと外資系企業3社がランクインした。3社共通の選社理由は「自由な社風」「社員のプライベートを尊重している」「福利厚生が充実している」などの回答で大半を占めた。さらに、長期休暇も自由に取れそうという回答が多かったことも外資系ならではという感じだ。

1位の日本IBMと2位のマイクロソフトの選社理由は「外資系は転職が普通だから中途採用組のエンジニアが活躍できそう」「中途採用組が多そう」という回答が多く、両社に共通している。特に外資系は実力成果主義だから、新人よりもある程度経験を積んだ中途採用組のほうが重宝されるのも当然といえば当然だ。

圧倒的な評価を得た日本IBMの選社理由は「ブランド価値がある」「ワンランク上のイメージ」「かっこいい」など、日本IBMのブランドイメージに価値を見いだす回答が続出。2位のマイクロソフトは「世界的に有名」と回答する者が多く、日本IBMとは異なる観点から評価されている点は見逃せない。

今回のアンケート結果は過去にＴｅｃｈ総研で実施したIT企業人気ランキングと変わりのない、いつも上位に入る有名企業が顔をそろえた。そこで、今回はIT業界のトレンドに詳しい水上浩一氏にお話を伺った。 「ミクシィやはてな、サイバーエージェントなどの新興IT企業もランキング入りすると思いましたが、結果は全く違いましたね。ITエンジニアのみなさんは『堅実』『大手志向』だなというのが正直な感想ですね」と水上氏は今回の結果に少々驚いた様子。また、「昔からの人気企業が今回も選ばれたのは『保守的』『大手志向』という理由以外にもITエンジニアが次のステップアップを考慮している可能性がありますね。キャリアアップという観点から考えれば当然の結果なのでしょう」と水上氏は語る。確かに、将来独立を考えていたら技術力の高い大企業でスキルを高めることが賢い選択であるし、転職の際には有名企業の肩書が有利になる。 トップ5に選ばれた企業については「IBMは確かに面白い企業。パソコン事業からいきなり撤退したりと変化も激しい。時代を見る目のある企業だと思います。Googleも奇想天外の面白さがありますね」と水上氏。また、「はてなはビジネスモデルの設計力に優れ、イメージを形にするまでのプロセスがとてもユニーク。今までの日本にはなかったビジネスモデルです」とのこと。 　 　水上氏が最初に予想したように、急成長する新興IT企業がランキング入りする日もそう遠くはないのかもしれない。 株式会社ドリームエナジーコンサルティング代表取締役社長　 水上浩一氏 1964年8月5日　東京生まれ、神奈川鎌倉育ち。グラフィックデザイナーとして活躍した後、2000年にネットショップ「おいしい紅茶の店　ディンブラ」をオープン。月商1000万円を達成し、ほか3店舗を運営。2005年からはAll Aboutの「IT業界トレンドウォッチ」ガイドとしても活躍中。著書に『教わる技術』（ソフトバンクパブリッシング刊）、『人気ネットショップ店長セキララ奮闘記』がある。