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進む方向はひとつじゃない∞可能性は無限大だ  悩める20代ITエンジニアへ☆転機は自分で呼び込め
新年度の春、大ざっぱでもよいから、少し先のキャリアプランを考えてみてはどうだろう。特にお奨めしたいのは、仕事に慣れてきた20代のITエンジニアだ。「目の前の業務でそれどころじゃない!」という気持ちもわかるが、記事を読めば納得してもらえるはず。若いからこそ見える未来もある。
(取材・文/総研スタッフ 高橋マサシ イラスト/相原健二)作成日:07.04.04
Part1 30代前半のエンジニアに聞く「キャリアを変えた大きな転機」
 ただ待っているだけでは、転機もキャリアもやってこない。ある日突然に訪れることもあるだろうが、「○○がしたい」と思っていなければ巡ってこないのではないか。そして、その何かがとらえられれば、将来の目標も絞り込まれてくる。
「次の流行りもの」を追いかけるうち、やりたいことが見えてきた
ポジションを上げてビジネスをすることが近道だ
 大学時代に仲間とITベンチャーを興した小島さん。しかし、「世の中を知るには外を見るべき」と卒業後は情報通信会社に就職し、インターネット事業に携わる。その後、シリコンバレーでの子会社立ち上げに参画するが、会社の都合で事業は撤退となり2年後に帰国。米国時代の知り合いに声を掛けられて、Linux系ベンダーの日本支社に転職した。
「日本というより韓国、香港、中国などを含めた、アジア地域でのLinux導入の推進です。技術的な業務に加えてコンサルティングやセールス支援的な仕事も多く、日本にいたのは月のうち4分の1くらい。大学時代はインターネットを広めようと思っていましたが、そのころはオープンソースに夢中でした」

 この間の3年が小島さんの転機となった。自分ひとりで走っても限界がある。影響力を高めるには社内のポジションを上げ、また、一緒に働く人の気持ちを考えることが大切だと実感したのだ。
「そのためにはマネジメント手法を学ぶしかないと思いました。難しかったのは現地、特に韓国でのマネジメント。儒教の国なので年下のマネジャーの話をなかなか聞いてくれないんです。それでも、ビジネスマンになりたいと努力しました」
小島浩之さん
IPテレコム株式会社
取締役
Nature’s Linux事業統括

小島浩之さん(33歳)
金でも仕事でもいい、「野望」は絶対に必要だ
 小島さんの身上は「流行りそうなものを追っかける」。インターネット、オープンソースときて、彼の嗅覚が次にとらえたのは「セキュリティ」。その後、オープンソースに携わりつつも会社を辞め、個人で動くようになる。現在は独自のセキュリティ機能をもつLinuxベンダーの取締役を務める一方、多くの企業で役員待遇の契約を結んでコンサルティング業務を行っている。
「3年前なら話を聞いてくれる企業も少なかったのですが、日本でもセキュリティへの意識が一般化したようで、今はとにかく忙しい。やっときた、という印象です」

 前職の「転機時代」に立てたもうひとつの目標は年収アップ。1年単位の成果で年収が決まる外資型給与に影響され、当時の目標は4桁(1000万円)。それが今では年収約1600万円と大幅増となっている。そんな小島さんは「常に1年後を意識している」と語る。将来のプランを立てることは彼の中で日常なのだ。
「目標がないとやるべきことが見えてこないし、プランがないと一日一日が面白くないでしょ。お金でも夢でもいいですけど、『野望』は絶対に必要ですよ」
 最終目標は学生時代からの夢である「インターネット家電」の開発。現在も活動中で、日本企業のほか外資系家電メーカーやロシアの研究者などと打ち合わせを重ねる。38歳で研究生活に没頭するのが夢だ。
ポジションを上げて「ビジネスマンになる」と決意
「開発志向の青年が、いつの間にか事業会社のCIO希望に
プログラマとして業務系システムの開発がしたい
 小学生でプログラミングを覚えた村上さんは、大学で逆のハード(工学部)を専攻。しかし就職先は「やっぱり」好きなソフトを選び、中堅SI企業に入社した。最初の業務はネットワーク監視システムの開発。2〜3年に及ぶ大規模なプロジェクトで、メンバーとしてオープン系開発を経験した。一段落した後はパッケージの開発。転機はその後の、常駐SE時代にやってきた。
「常駐先では多くのシステム案件が企画から運用まで並行して進んでおり、私は非IT系の社員の方に対する『技術の相談屋』といった位置づけ。ここで学んだのはユーザーの視点です。自社では計画どおりに開発して納品することがすべてでも、お客様は導入・運用費用からシステムの生み出す利益まで、コスト意識が非常に強い。当たり前かもしれませんが、私には新鮮でした」

 そんな中で小さな案件を任された。顧客側も含めた若手だけのチーム、責任は重かったが上からの指図もなく、夢中で仕上げたシステムは顧客の営業部門にも好評となった。この充実感が、「プログラムを書ける人間がいちばん偉い」と考え、それで一生やっていくと決めていた村上さんに、ビジネスを意識したシステム開発の面白さを教える。しかし、こうした開発は現在の勤務先ではかなりのレアケースであり、二度はないと思った彼は転職を決意した。
村上 歴さん
ウルシステムズ株式会社
シニアコンサルタント

村上 歴さん(33歳)
コンサルタントとして全体的に携わるのが面白い
 転職先選びに際して、SI企業では「自分でバリバリ」できないと感じた村上さんは、コンサルティングファームに目を向けた。ただし、大手外資では扱う案件が大きすぎる。国内系新興ファームで、「空気が合う」と思ったウルシステムズに入社する。
「システムがわかって口が達者ならコンサルタントになれると思っていました(笑)。とんでもない。100点のアイデアも伝わらなければ0点、逆に50点でも100%伝われば50点と評価される世界です。システムそのものは、お客様が必要とする価値の一部でしかないということを学びました。管理業務は増えましたが、それなりに面白いところも多いんです」
 ただ、「自分でバリバリ」はどうしたのか。村上さんは「自分より優秀な人間がいっぱいいた」と言いながらも、「モノづくりに直接携わる以外にも多くの道が見えてきた」と言う。目標も次第に浮かび上がってきた。それは、40歳で事業会社のCIO、あるいは情シスの責任者になって、その会社の事業全体を支えていくことだ。
「目標ができると、今の自分が提供している価値も、将来への課題もわかり、やらなきゃいけないことがつかまえやすくなります。現場から離れる恐怖もなくなり、プログラミングは趣味に戻しました(笑)」

 現在、村上さんはキャリアプランについてこう考えているという。
「いきなり10年先を定めてそこから逆算しても現実味がない。それよりも、数年先の自分がやりたい仕事を今、実際にやっている人をよく観察することで、『その立場での自分』を具体的にイメージするのがいいんです。具体的であることが大事。具体的なイメージをもつことで日々の行動に自信がもてたり、自分に欠けているものが見えたり、あるいは迷いが出たときにも方向修正しやすくなりますから」
業務系開発がしたいとコンサルタントに転職
Part2 強みを見つけて自分の適性を調べ、キャリアの方向を探そう
 キャリアを意識することは重要。しかし、実際にはどうしたらよいのか。それ以前に、ITエンジニアとしての将来像はどう描けばよいのだろうか。これらについてリクルートエージェントの進地氏に、20代を対象に解説をしていただいた。ただ、もう少し上の年齢でも参考になる考え方だ。
業務系アプリSEなら5つのキャリアが見えてくる
 若いITエンジニアのキャリアプランは画一的で、「将来はマネジャー」「目的は年収アップ」と答える人が圧倒的に多いようだ。IT業界の構造がそう言わせるのかもしれないが、少々寂しい気がしてしまう。
「キャリアは多方向に広げられます。例えば、請負型の企業に勤める25歳の業務系アプリSEなら、少なくとも5つはあります。1は順当に進んでプロジェクトマネジャー、2は技術に特化したITアーキテクト、3はインターネット系企業で企画から担当するSE、4は業務寄りのITコンサルタント、5は事業会社などの社内SEです」
 プロマネならコストや利益の意識をもって仕事の中で実践する。ITアーキテクトなら言語や技術を幅広く習得するとともに、得意分野を極める。インターネット系企業ならSEで転職した後に、少しずつIT分野だけでなく事業関連のアイデアを出して実現していく。ITコンサルタントなら相手側の課題や問題を発掘し、IT技術を駆使して解決するとともに事業拡大につなげる経験を積む。社内SEなら企業の組織や業界、業務知識を覚える。
 このように、キャリアの方向によってすべきことが分かれると進地氏は語る。

「技術を極めるITアーキテクトも、自社サービスの企画から入るアプリ開発も面白いでしょう。また最近では、技術力の高いコンサルタントが求められています。ただ、社内SEは納期がない、残業が少ないなどの理由で選ぶのではなく、業務コンサル的な存在を目指してほしいですね。いずれにせよ、待っているだけでは変わらないので、身近に『こうなりたい』という人を見つけるなど、手探りでも動くことが大切です」
進地浩平氏
株式会社リクルートエージェント
キャリアアドバイザー
第二ビジネスユニット
ITカスタマーマーケット
2グループ

進地浩平氏
「何が面白いか」でキャリアの方向を決める
 ただ、技術もビジネスも変化が早く、長期的な見通しは立てにくい業界だ。そのため、まず3年先くらいまでの目標をもとう。絶対に把握すべきことは「自分の強み」。弱い部分を埋める努力をするより強みを意識することで、自分の適性がわかってくる。仕事のポジションを把握することも役に立つ(下図)。
「どんなときに充実感や満足感を感じるかがそのヒントになります。それがキャリアの方向だと思います。若いのですから壁に当たることもいい経験ですし、そこで何らかの転機が生まれるかもしれない。若手エンジニアには概して、『これがやりたい』と主張する人が少ないと思います。しかし自分を売り込むことはとても大切で、企業もそんなアピールを買うものなんですよ」
職種による仕事のポジション
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高橋マサシ(総研スタッフ)からのメッセージ 高橋マサシ(総研スタッフ)からのメッセージ
エンジニアお二人の取材、どちらも延期になったのです。小島さんは急な地方への出張、村上さんは奥さんが病院に運ばれたからです。驚かないでくださいね、ご出産です。無事に女の子が生まれたそうです。おめでとうございます! ちなみに小島さんも近々「4人目」がお生まれになる予定だとか。ちょっと早いですが、おめでとうございます!

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