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固液分離機設計の即戦力エンジニアの転職

固液分離技術を多方面へ応用展開する三菱化工機へ

 三菱化工機はエネルギー・化学プラントや環境システム施設のエンジニアリング事業と、遠心分離機やろ過機、洗浄装置など各種産業機器の製造事業を柱としている。世界的に定評がある同社の固液分離技術は応用範囲が広く、エンジニアリング事業との相乗効果を生んでいる。今回リポートする面接現場は単体機器設計の即戦力だ。
(取材・文/須田忠博 総研スタッフ/高橋マサシ)作成日:06.06.21
三菱化工機
応募したエンジニア 企業の面接担当者
杉内さん
杉内さん
(当時33歳)
大森氏
産業機械技術部 産業機械設計2G
グループリーダー
大森氏
当時の職種
機械設計エンジニア
募集職種
機械設計エンジニア
業務内容
プラント向け脱水機の設計・製作・据え付け。
仕事内容
固液分離装置の設計・手配・引き渡し業務。
職務経歴
大学工学部卒業後、プラント機器メーカーで7年弱、主に脱水機・遠心分離機の設計・製作・据え付けを担当。
応募資格
遠心分離機、ろ過機、除塵装置、撹拌機など産業機械の設計実務経験。AutoCADの使用経験。英語力があればなおよい。
志望動機
特定の分野だけではなく、さまざまな用途の固液分離装置を設計したいため。
募集背景
多様化する固液分離装置のニーズに、より一層こたえていくため。
面接の流れ
総務人事グループでいったん選考し、次に採用を見込む技術部門の部課長クラスが選考する。
総務人事グループのリーダーと技術部門設計グループのリーダーの計2人で面接する。所要時間は40〜60分。適性検査も行う。
取締役、技術部門部長、事務部長の計3人で面接する。所要時間は約40分。
2次面接から1週間程度のうちに連絡する。
【通過率:4〜5割】

【通過率:約5割】

Part1
応募動機・職務の範囲
用途を限定されない回転機械を設計したい
大森:
 はじめまして。産業機械技術部の大森です。本日はお忙しい中、わざわざご足労いただきありがとうございます。
杉内:
 こちらこそ、ありがとうございます。杉内と申します。よろしくお願いします。
大森:
  【Point1】それでは早速ですが、今回、杉内さんが当社へ応募された動機から聞かせてください
杉内:
 私は×××(総合設備工事会社)のグループ会社である○○○(プラント機器メーカー)で機械設計を行っています。具体的には遠心分離機や脱水機などの固液分離機械です。担当期間はもう少しで丸7年になります。
 手がけた機器はすべて特定の業界向けでした。【Point2】私としては、ある特定の業界に特化するよりも幅広く、そしてさまざまな用途の機械を設計してみたい。そう思うようになり、この1年半ほど転職先を探してきましたところ、御社の求人に出合いました。
 多方面へ固液分離装置を展開している御社ならば、私の技術経験をそっくり生かして希望がかなうと思い、応募させていただきました。
設計に加えて全般的な管理業務までを担当
大森:
 杉内さんが設計してきた製品は、納入先プラントの種類こそ違うものの、当社が扱っている製品群と非常に似通っています。即戦力性が高そうです。【Point3】そこで伺いますが、例えば脱水機の設計で職務範囲はどこからどこまでですか?
杉内:
 端的にいえば、すべてです。まず、営業と一緒に現地へ赴き、仕様の打ち合わせ。次に仕様書の作成、それに伴う納入図一式の作成、製作図の作成、資材の手配と続きます。
 そのあと製作に入ってからは製作の指示や組み立ての指示も行います。機器完成後は据え付けの指示をし、客先への運転指導、そして引き渡しとなるまで担当します。
大森:
 【Point4】そうすると、全体の取りまとめと機器設計の両方を行ってきた。そのように受け取って構いませんか?
杉内:
 はい、結構です。
大森:
 幅広く回転機械を設計してみたいということですが、遠心分離機にも興味があるのでしょうか?
杉内:
 はい、そうです。
大森:
  【Point5】ということは、低速だけにとどまらず、高速も含めた固液分離装置全般を手がけてみたいという意欲があると?
杉内:
 はい、そのとおりです。
Point1
[面接官]面接の出だしは大体、業務経歴を中心にした自己紹介を求めるか、志望動機を尋ねるかのどちらかです。本人になるべく多く話させるのが狙い。話を聞くにあたっては、経歴のどこにポイントを置いているか、積極性やプラス思考があるかに注目します。
[応募者]転職のための面接は初めてのことでしたが、特に何の準備もせず臨みました。作為はせず、ありのままを見てもらい、正直なところを答えて判定してもらおうと。
Point2
[面接官]この転職動機には好感がもてます。彼が多く手がけてきた脱水機は、汚泥処理施設や化学プラントなどでも利用されています。エンジニアとしての彼の積極性や好奇心は、キャリアをベースにしているだけになおさら好ましいのです。
Point3
[面接官]職務範囲は提出されている職務経歴書から読み取れるのですが、本人の口で改めて説明してもらい、裏づけを取りたい。そのためにあえてこう尋ねました。
Point4
[面接官]固液分離装置の分野で、詳細設計と全体エンジニアリングの両方をこなせるエンジニアはあまりいません。希少価値が高いのです。
[応募者]この分野で私のような経験をもつエンジニアが数少ないことなど、当時は知りませんでした。知っていれば、もっと強気で面接に臨んだかも(笑)。
Point5
[面接官]このように念を押したのは、入社後に担当させ得る製品の幅を確かめたかったからです。固液分離装置でも、遠心分離機のように高速のものの設計は低速より難しい。しかし、低速でしっかり技術を習得していれば、やってやれないことはありません。彼の場合は可能でしょう。となると、問題は興味の程度。本当にいろいろなタイプの固液分離装置を手掛けたいと思っているのなら、非常に頼りになる人材となるわけです。
Part2
CADの経験・マネジメント力

入社以来の経験をもつCADでの詳細設計
大森:
 【Point6】機器単体の詳細設計に関して伺います。CADを使用した構造設計はどのくらい経験してきているのでしょうか?
杉内:
 CADでの作図ということでいえば、入社以来、ほぼ毎日CADに触ってきました。しかしながら、そもそもCADでかくだけではモノはできません。強度計算のほかに、ベアリングやモーター、減速機などの選定がおのずと必要です。
 【Point7】機械設計で最も面白いのは強度計算と部品選定だと私はとらえており、単体の詳細設計は自信をもってできると自負しています
大森:
 CADソフトは普段、何を使っていますか?
杉内:
 キャドパックです。
大森:
 AutoCADはどうですか? 当社はAutoCADを使っているのですが。
杉内:
 大学のときに少し使った程度で、会社では年に1、2回触るくらいです。しかし、問題はありません。日常的に使い始めればすぐ慣れます。
現在は7人のメンバーを束ねる設計主任
大森:
 なるほど。CADでの詳細設計もかなりやれると。【Point8】それならば、杉内さんが行った基本設計をもとにして、部下なり外注の人なりに詳細設計をお願いする経験はどうですか?
杉内:
 そういうスタイルも取っています。現在は設計主任として部下を7人預けられています。
大森:
 チーム内での分業をまとめる立場として、何かやりにくさを感じるようなことは?
杉内:
 これといって感じることはありません。私も入社当初は、いちメンバーとして詳細設計をしていましたから。
Point6
[面接官]基本設計と全体の取りまとめはできるが、CADでの詳細設計はほとんどできないという応募者もいます。この質問はその確認です。
[応募者]実際の面接でも、CADによる詳細設計の習熟度が採否を決めるポイントのひとつだと直観しました。ただ、自信があったので動揺はしませんでした。
Point7
[面接官]この答えを聞き、彼の詳細設計スキルは相当高いと判断しました。
Point8
[面接官]この質問の意図は、いうまでもなく設計業務のマネジメント経験を確かめるところにあります。中堅クラスのエンジニアでは欠かせないチェックポイントです。
Part3
設計後の業務範囲・英語力
顧客に信頼されてこそ産業機械のエンジニア
大森:
 【Point9】杉内さんは自分で設計した機器の据え付けや試運転まで立ち会うようですが、引き渡し時の性能検証はどんな内容ですか?
杉内:
 脱水機を例にお話しすれば、仕様としては処理量、出口含水率、ろ液含水率の3つが重要なポイントになります。これらについて順序立てて回転数や電圧、投入圧などを調整していき、保障できる範囲内にもっていくようスタートアップの方法を取っています。
大森:
 つまり、技術上の検収まで責任を負っているわけですね?
杉内:
 はい、そうです。
大森:
 引き渡し後はトラブルがつきものですが、どんな姿勢で対応していますか?
杉内:
 大きなプラントの生産ラインですから、停止が許されません。しかし、トラブルはいつ起こるかわからない。私としては朝夜の別なくいつでも飛び出せるという気構えを忘れないようにしています。お客さんに信頼されてこその産業機械のエンジニアですから。
 信頼という意味では、エンジニア冥利に尽きる瞬間として、こんなことがありました。【Point10】突然、お客さんから会社に電話が掛かってきて、私が扱っているのではない装置に変な症状が出て困っているんだけど、原因は何だと思うと聞かれたんですね。そこまで頼りにされていることがうれしくてなりませんでした。
大森:
 ほう、それはエンジニアとしてうれしいですよね。
自らで行う設計製品のアフターサービス
大森:
 【Point11】引き渡し後のアフターフォローについてはどうですか? 1年間の保証期間内はどんなかかわり方をしていますか?
杉内:
 窓口の営業から連絡を受けたら、そのあとはすべて設計部隊で対処します。主な問い合わせは、通常の能力が出ないとか、ベアリングから異音がするとかですね。
大森:
 1年後、2年後、3年後といったアフターサービスのプランニングはどうですか?
杉内:
 それは機器取扱説明書の最後の部分に付けておきます。
大森:
 メンテナンスの見積もりは?
杉内:
 積算グループが別にありますから、基本的にはそこが見積もりをします。ただし、必ず私が目を通してから顧客へ提出するようにしています。
大森:
 わかりました。そうすると、最初の要件ヒアリングからアフターサービスまで、本当にすべてを担当されているんですね。
英語力は大卒レベルだが学習意欲はある
大森:
 【Point12】ところで、語学のほうはどうですか? 特に英語。英文仕様書を読解し、英文のプレゼン資料などを作成できますか?
杉内:
 英語力は世間一般の大卒レベルです。読み書きはできますが、会話はほとんどできません。御社に入社させていただけたら、積極的に学習します。
大森:
 これまでの業務で英語を使うことはなかった?
杉内:
 はい。お客さんは国内の会社だけですから。
大森:
 最後に、付け加えてアピールしておきたい事柄があればどうぞ。
杉内:
 転職を考え出してから1年半、私はたくさんの会社の求人内容を検討してきましたが、どこも何か足りない。それで応募に踏み切れなかったのです。
 【Point13】ところが、御社の場合はすべてが合致していると判断できました。私自身の希望がかなうと同時に、御社のお役に立てると確信しています。
 何とぞ、よろしくお願いいたします。
Point9
[面接官]この質問では2つの点をチェックしたかったのです。ひとつは、本当に検収作業を行っているのかどうか。もうひとつには、業務の最終段階が当社と同じようなスタイルかどうか。対顧客のスタンスが似ていれば似ているほど即戦力性が高いと判断します。彼の答えを聞くと、ほとんど同じように思えました。
Point10
[面接官]この話はとてもよかったです。彼が顧客から技術力で認められ、人間的にも信頼されている証拠。当社でも顧客受けがするだろうと思いました。選考の評価上、プラス1にも2にもなったところです。
[応募者]この話は事前に心づもりをしていたものではありません。とっさに思い出して話しました。私のモットーは「顧客に頼りにされる存在」なんです。
Point11
[面接官]アフターフォローに関する一連の質問も、当社のスタイルとどのくらい似ているかを探ることが目的です。会社によっては設計者がノータッチという場合があって、入社後に戸惑うケースが考えられるからです。
Point12
[面接官]英語力は加点要素であって、英語が苦手だから採用を見送るといったことはありません。
Point13
[面接官]われわれのほうから見ても、彼はぴったりのエンジニアでした。不安事項がまったくなかったのです。
面接官はココを見た!
●固液分離装置の設計において即戦力か。
●顧客の信頼を得られる人物か。
●技術上の可能性に秘めた自信をもっているか。
 まず、最も重要なのは現在の技術力。どんな固液分離装置を設計できるのか。経験内容を基本設計、CADでの詳細設計、全体の取りまとめ、アフターフォローといった職務に分解し、現時点での力を探る。次に、顧客からの信頼という視点でチェックする。技術的知見と人間性の両面から裏打ちされた形で、顧客との信頼関係を築けているかどうか。そして、3点目が入社後の伸びしろだ。好奇心があり、向上心が強く、自分の力を信じているかどうかを見る。
杉内さんはコレで決めた!
「これまで続けてきたことや日常的に行っていることを答えました。
それだけで、話がどんどん進んでいったんです。
長い間探しに探した末に、ぴったりな会社が見つかりました」
 担当してきた産業用機械と同じような製品を扱うメーカーを、ずっと探してきました。そして三菱化工機が見つかり、これだと思って応募したわけです。面接を受けると、どの質問も、これまで行ってきたことや普通にやっていることを答えるだけでいい。話がどんどん進んでいった。英語力を除けば、答えにくい質問は何もありませんでした。採用されたら、これまでの延長線上で仕事を続けていけるだろうと確信できました。
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高橋マサシ(総研スタッフ)からのメッセージ
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産業用機器の機械設計。あまり取材経験のない分野だったのですが、その内容を聞けば聞くほど奥が深い。「固液分離装置」とは文字どおり、遠心力で固形分と液状分とに分離させる装置ですが、実にさまざまな用途に使われているんですね。やっぱりエンジニアリングの世界は面白い。今後も職種・業種の分野を広げて面接現場を紹介していきます。
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