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システム全体の設計、顧客との折衝などを担当するSEと、現場でコーディングを行うプログラマ。仕事内容や役割は全く違うし、労働時間や責任の重さも異なる。 そんなSEとプログラマが、ひとつの仕事のお金の「取り分」を決めるとなれば、かなりの難問だ。SEの取り分を大きくしすぎると、プログラマから「現場で苦労しているのは俺なのに、どうしてSEのほうが高いんだ?」という不満が出る。一方、プログラマを優遇しすぎれば、SEは「俺が仕様書を書き、顧客と交渉しなければ何も始まらない。こちらがもっともらってもいいはずだ」と思うに違いない。 このあたりの事情は、フリーのエンジニアに限った話ではない。会社に所属しているSE・プログラマの中にも、「どうしてSEはあんなに高い給料をもらえるんだ?」「うちの会社はプログラマに給料を払いすぎだ」と考えたことのある人は多いだろう。 自らの働きに対して、もらえるお金の割合が少ないことは、エンジニアにとっては「評価されていない」ことを意味する。それは不幸なこと。そこで今回は、SEとプログラマの「妥当な取り分」とは何か、考えてみた。 |
フリーのSE、プログラマの報酬の実態はどうなっているのか。フリーエンジニアを組合員として組織している支援団体「首都圏コンピュータ技術者協同組合」(本部:東京・港区高輪)の事業統括部企画広報課で、マネジャーを務める内田幸一氏に取材した。 「こちらの組合に所属しているエンジニアの平均的な報酬額は、SEが65万円/月、プログラマが55万円/月程度です。エンジニアの報酬は、おおざっぱな相場ができ上がっていて、基本単価はSEのほうが上。また、仮にひとつの案件をSEとプログラマの2人で手掛けたとすれば、報酬の分け前は、6対4程度になるかもしれません」 顧客企業と交渉して予算の総額を決めるのは、SE以上であることがほとんど。ギャラの分け方を含めた予算管理がSE以上に任されるケースも多いという。また、プログラマに比べてSEのほうが、仕事上の責任は重い。 「プロジェクトの初期段階で、SEがダメな仕様書を書いてしまえば、後からどう頑張っても取り返しはつきません。逆に、優秀なSEの設計によって、システムの効率が劇的に改善するのはよくあることです。一方のプログラマは、少なくとも仕事の質という点では、他者との差別化が図りにくいもの。また、SEはプロジェクトリーダーとしての責任も負っています。こうした背景があるため、SEの報酬のほうが高くなる傾向にありますね」 |
SEとプログラマの分け前は、前述のとおり、6対4前後になることが多い。しかし、状況によってはこの比が変わることもある。 例えば、SEが非常に優秀で、プログラマは指示のとおりにコーディングすれば事足りるという状況なら、SEの取り分がさらに増える可能性は十分に考えられる。逆に、特殊なスキルをもっていて、プロジェクトに絶対に欠かせない人材だと判断されたプログラマは、相場より高い取り分を得られる場合もある。 そこで、SEとプログラマの「力関係」「ギャラの比率」を、現在活躍中のお笑いコンビに強引に例えたのが、下の図だ(ネタを書く側をSE、そうでない人をプログラマにあてはめている)。 |
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ギャラの分け前が決まって、「これだけ働いたのに、どうして○割しかもらえないの?」「大して働いてないヤツが、どうして俺よりもらってるんだ?」などの不満を感じることは少なくない。そこで、どうして「不公平感」が生まれてしまうのか、日本大学大学院の田中堅一郎助教授に聞いた。 「本来もらえるはずの利益を得られず、怒りや嫉妬を感じることが、不公平感の原因です。焦点になるのは、プロジェクトに対する貢献度と、そこから得られる利益の比。これが各メンバーの間で異なっていると、人は『不公平感』を覚えるのです」 人は自分と立場の近い人を、比較の対象にするものだと田中氏は語る。 「普通、ビル・ゲイツと自分の収入を比べたりはしません。比べるのは、自分と比較的近い立場の人。例えば同僚であったり、ほかの企業で働いている同じ職種の人ですね。それらの人々と比べて、自らが得ているものが少ないと感じる場合、モチベーションは著しく下がります。場合によっては、退職や社内いじめ、組織に対する非協力的行動など、深刻な事態を引き起こす危険性もあります」 また、貢献度に比べて見返りが多すぎても、いい結果は生み出さないそうだ。 「過度に高い報酬を得てしまうと、周囲に引け目を感じたり、仕事を甘く見てしまったりする。給与や報酬が少ないのはよくありませんが、もらいすぎるのも逆にやる気を削ぐ結果に終わると、さまざまな実験データが証明しています」 |
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では、メンバー全員が不公平感をもたないようにするには、どうしたらいいのだろうか。田中氏は、事前に分け前を決める手順・基準を、きちんと決めておくことを推薦している。 「人によって、プロジェクトへの貢献度は異なります。ですから、その人の果たした役割に応じて、報酬に差が出てしまうのは避けられません。そのとき、貢献度の大小を判断する手順と基準が事前に明示されていて、かつ、メンバーの合意が取れていることが大事。そうすれば、分け前に差があっても、納得できるものなのです」 また、プロジェクトによっては、作業の途中で大幅な軌道修正が行われることもある。そんな場合に備えて、異議申し立ての機会を設けておくことも、不公平感をなくすためには必要だ。 「オリンピックの代表選考に漏れた選手が、仲裁機関に提訴することがありますよね。あのように、プロジェクト終了後、不満がある人は申し出られる仕組みを用意しておくと、工程の途中で作業の負担が増えた場合にも対応できます」 貢献度の判断が公正で、ガラス張りであること。そして、終了後の異議申し立てが可能であること。この2点が備わっていれば、不公平感を覚える危険性は大幅に減らすことができる。もしあなたが転職を考えていたり、フリーのエンジニアとしてプロジェクトに参加しようとしていたりするなら、この2つの条件を満たした企業・プロジェクトを目指してはいかがだろう。そうすれば、お金について不満を抱く危険性は低くなるだろう。 |
SEとプログラマの取り分の決め方には、いくつかのパターンが存在する。もし、現在の取り分に不満があったり、自らの貢献を公正に評価する仕組みがないと感じていたりするなら、より妥当な「分け前」を求めて転職するのも、ひとつの考え方だ。また、上司や仕事仲間と交渉し、より大きな「分け前」を要求する手もあるだろう。もしあなたがSEとしてメンバーのギャラの決定にかかわれる立場だとしたら、プログラマのやる気を引き出す取り分の設定を再考することが必要かもしれない。 現在もらっている「分け前」は、本当に妥当なものだろうか? もう一度見つめ直してみてはいかがだろう。 |
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