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人間関係に疲れて会社を辞めても転職できるのか?汎用ソフト開発へのこだわりを訴え、再転職できたK・Aさん
K・Aさんは最初に就職したソフトハウスで10年間働いた。その間、システムエンジニアとして着実なスキルアップをしたが、管理職への昇進が嫌で迷った末に転職を決意。ところが、転職先の人間関係が、さらにK・Aさんを悩ませることに……。
(取材・文/中村伸生 総研スタッフ/山田モーキン)作成日:05.08.31
Profile
ソフトウェア開発企業 システムエンジニア K・Aさん(36歳)
専攻した大学の電気工学の授業になじめず、私大工学部中退。自分のやりたいことはシステム構築やソフトウェア開発の方面だと自覚し、小規模なソフトハウスに就職する。
転職活動1回目:生涯現役エンジニアを目指して転職
 SE35歳定年説? 会社が用意してくれた管理職を拒否し、転職を決意
転職1回目(32歳)業種:ソフトハウス/職種:システムエンジニア
転職理由
開発エンジニアを続けたかった
企業選びの条件
開発職として採用してくれるところ
転職で犠牲にしたこと
10年間の社歴くらい
転職活動で工夫した点
特になし
活動期間
2週間
活動方法
転職サイト
内定社数/応募社数
1社/3社(2社は辞退)
転職活動の反省点
もっと内定企業の内情や社風を知るべきだった
 大学時代にFORTRANとBASICをかじり、この世界で食べていこうと考えた。それで大学を中退してまで入社したのが、社員10人にも満たないソフトハウスA社である。業界内でいうところの二次請け、三次請けの零細企業だった。それから10年ばかり勤めることになったが、後悔したことはなかった。入社当初はプログラマとしてCOBOLを修得し、キャリアをスタート。3年目からは詳細設計を、5年目には基本設計を任されるようになり。汎用機系SEとして順調にステップアップしていった。クライアントの業種も金融から製造まで幅広く、それなりに年齢相応のキャリアを身につけられたと思う。

 ところが雲行きが怪しくなってきたのは30代も半ばにさしかかったころ。社長から「そろそろ管理職側にまわってくれないか」という打診があったのである。一般的には昇進や昇格と取られるかもしれない。だが、自分としては不本意だった。管理職といえば聞こえはいいが、開発現場を離れ営業などもしなければならない。それは願い下げだ。今後もシステム開発を続けたかったのだ。少し前にちまたで「SE35歳定年説」などもささやかれていたが、まさか自分が対象者になるとは思ってもみなかった。

 打診があってから拒否的な応答を繰り返しているうちに、以前は良好だった社長との仲がギクシャクしてきた。居心地の悪さどころではない“変な”プレッシャーを感じ、体も壊してしまった。これ以上在職できない。そう考えてA社を飛び出した。
 ネットで応募、即内定。この安易な転職が裏目に……
 急遽の退社だったので、すぐさま転職活動を開始することになった。何をどのようにして行動すればいいかまったくわからない。とりあえず転職サイトにアクセスしたところ、自分が活躍できそうな会社が幾つか見つかった。もちろん応募する職種はシステムエンジニアである。すぐに3社に応募のメールを出した。するとレスポンスよく3社から面接したいとの返事。最初に訪問したB社の1次面接で、もう採用の内定が出た。自分でもあっけないと感じたが、何はともあれホッとした。別に焦っていたわけではないが、B社への入社を“即決”した。面接で対応してくれたB社の開発部長とは話が弾んだし、係長待遇での契約ということもあり、開発の仕事内容も申し分なさそうだったからだ。ただ今思い返せば、それはすべて表面的にしかB社を見ていなかったことになるのだが……。

 「話が違う」。B社に入社後、とんでもない事態に陥った。まず、最初から係長待遇と聞かされてうかれた自分も悪いのだが、要は残業代が出ないというだけのポジションであることが判明した。それでも仕事に満足できればまだ我慢もできるのだが、いつまでたってもプロジェクトへのアサインが決まらなかったのだ。どうやら元請けとなる大手SIerとのつながりがA社ほど良くないらしい。そのうちに開発案件が決まらないのは自分のせいにされ始めた。「君に問題があるのでは?」という訳だ。冗談じゃない。責任転嫁もはなはだしい。ちょっとした口論が多くなった。冷笑、陰口、無視。新参者である自分には同調してくれる人間はいない。「俺はただ開発を一生懸命したいだけなのに!」。

 人間関係の悪化はA社のころどころではなくなった。またもや体調が悪くなる。こうして入社して3ヵ月ももたずに自主退職に追い込まれてしまった。
転職活動2回目:前向きな自分を取り戻してようやく内定
 人間関係の悪化を理由にたった3カ月で退職。それが原因で悪戦苦闘する2度目の転職活動
転職2回目(32歳)業種:ソフトハウス/職種:システムエンジニア
転職理由
人間関係が悪化し、居づらくなった
企業選びの条件
 
開発案件が豊富で社風の良いところ
転職で犠牲にしたこと
特になし
転職活動で工夫した点
面接態度や自分のポジティブな考え方
活動期間
3ヵ月
活動方法
転職サイト
内定社数/応募社数
1社/8社
転職活動の反省点
人材紹介会社を利用したらよかったかも
 B社を飛び出した背景には、また次を探せばいいや、という楽観的な気持ちがあった。あんなにすんなり次が決まったのだから、今度も2〜3週間で新しい勤務先が決まるだろうと踏んでいたのだ。そこで前回同様、転職サイトにアクセス。すぐに候補を4社ほどに絞って応募。今回は経営の確かさや社内の雰囲気をキチンと見ようと思った。ところが、前回と違って応募先各社の反応が鈍い。レスポンスそのものも遅い気がしたし、面接にこぎ着けても、次の段階に進めなかったりした。早い話が「落ち続けた」のだ。こんなはずじゃ……、だんだん焦ってきた。

 どうして1回目のときと違って、先方のウケが悪いのだろう。自分なりに落ちた理由を考えてみたところ、二つほど原因らしきものが浮かび上がった。一つは、直前に辞めた会社の在籍期間。A社は10年間。B社は3ヵ月である。どう考えても2回目の今回は、長く働けない何かを感じ取られているのだろう。もう一つは転職理由の違いだ。前回は開発を続けたいというのが退職の原因であり、今回は人間関係がうまくいかなかったことが退職の原因だったと答えていた。履歴書にも正直にそう書いていた。面接をする側も前回と今回では印象は180度違うはずだ。多分、面接の際にB社のことを無意識に悪く表現していたのだろう。これでは受かる会社も受からない。面接に臨む態度をもっと前向きにしなければならないと察した。表面的な態度だけではない。内心から変わらなければならない。
 人間関係の悪化→前向きな意見が周囲と折り合いがつかない……履歴書の表現内容をブラッシュアップ
 面接に臨む態度を根底から改め、本来自分が初めて転職を決意したときから思い続けていた、「エンジニアとして開発の最前線にかかわりたい」という意思を前面にアピールすることに専念した。またそれに合わせて、履歴書や職務経歴書の中身もブラッシュアップ。転職理由の項目から、自分本位とも取られかねないので『入社時の約束の反故』を削除。代わりに『SEとしての自分の前向きな意見が、周囲と折り合わなくなって』を加えた。職務経歴書については、かかわってきた汎用系システム案件の列挙だけではなく、その具体的な開発内容の紹介と、さらにそこに主体的にどのようにかかわったかをつけ足した。
 それから続けて何社か受けたところ、少しは反応が良くなったようにも思えたが、続けて3社から不合格の通知を受けた。もう自分を採用してくれる会社はないのだろうか。そう落ち込んでしまう寸前に、最後の1社から内定連絡が入った。「明日から来ていただけますか」。奈落の底で聞いた天の声のようだった。

 入社したC社では、自ら周囲に溶け込もうと人間関係の構築に努力した。そのかいあって、現在は良好な信頼関係を上司、同僚、クライアントなどと築いている。大規模な病院のオーダリングシステムを構築している最中だが、なかなか手応えのある仕事に満足している。今になって落ち着いて振り返れば、開発の最前線から転落するどころか、危うく社会からドロップアウトしてしまうところだった。ひどくつらい回り道をしたが、今ではエンジニアとしての意思を貫いて本当によかったと思っている。
考察:K・Aさんの転職活動1回目/2回目を徹底比較 何が変わったのか?
 K・Aさんが自分でも分析しているとおり、2回目の転職における前半の活動は、だれが見ても後ろ向きなものに映ったことだろう。人間関係に悩むことはだれにもある。人間なので好き嫌い・合う合わないはある。だが、いくら自分に非がなくても、単に前職の上司・同僚を悪人扱いしていたのでは、幾多のエンジニアと面接してきたであろう募集企業の人事担当者であっても、「コミュニケーションを取るのが苦手な人ではないか」「性格に問題があるのではないか」と疑われてしまうだろう。「仕事で安易な妥協をしたくないので積極的な発言をしたら、受け身的な周囲と意見が折り合わなくなった」といったようにポジティブに表現すれば、それだけで印象は大きく変わってくるのではないだろうか。
K・Aさんに学ぶ転職ノウハウ 人間関係の悪化はだれにもあること。それを転職理由にするなら「自分の仕事に対する前向きさと周囲が折り合わなかった」というように、ポジティブな表現に置き換える。
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