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懐かしの“アレ”がエンジニアの原点だ! Vol.3 これぞカスタマイズの原点! “NEC PC”の魅力とは?(前編)
80年代の「マイコン」ブームに登場した数々のPC。その中でも「PC-8001」「PC-98シリーズ」といった名機を次々と世に送り出したNEC製のPCと、エンジニアのかかわりについて今回は深く探ってみたい。
(取材・文/大類隆司 総研スタッフ/山田モーキン) 作成日:05.08.24
座談会テーマ:「エンジニアとNEC PC 両者の関係は?」
 今回の座談会には、前回の「MSX編」に引き続き参加の2人に、新たに1人を加え、計3人のエンジニアが参加。70年代末に、日本に登場した本格的国産PCである 「NEC PC」をテーマに、深く熱い討論が交わされた。
NEC PC
「NEC PC」とは?
一般的にはNEC社製のパソコン全体を指す名称だが、ここではPC-9801シリーズやPC-8801シリーズ、PC-6001シリーズなど、NEC独自のアーキテクチャをもつパソコンを指す。1979年にパソコンの先駆けとなったPC-8001が発売されてから2003年にPC-9821Ra43、PC-9821 Lavie Nr300/S8TBを最後に受注終了するまでの24年間、NECは独自アーキテクチャのパソコンを提供し続けた。PC-9801シリーズに至っては『国民機』と呼ばれるほどの普及率を誇っていた時期もある。
*注釈:本文中に登場するマシンやPC用語については注釈をつけているので、そちらを参照していただきたい。
NEC PCに熱い情熱を持つエンジニアたち
山川さん 栗田さん 高橋さん
山川さん(仮名・32歳)
機械設計
栗田さん(仮名・30歳)
Webアプリ開発
高橋さん(仮名・40歳)
システム開発エンジニア
 
まず、皆さんとNEC PCとの出合いについてお聞かせください。
栗田:
PC98シリーズ(※0)
PC98シリーズ(※0)
初めて買ったNEC製のパソコンは、PC-9801VM21(※1)でした。当時の価格で約40万円。それまではMSXでプログラミングをしていたのですが、性能に限界を感じて購入しました。価格が価格ですから、限界まで使い倒してからでないと、次に移れなかったですね。まだ何とかなると思えるうちは買い換えられない。
山川:
私はPC-98Do(※2)を購入しました。PC-98DoはPC-8801とPC-9801両方のソフトウェアが動くハイブリットマシンだったのですが、パソコンとしてはどちらの性能もいまひとつだったため、結果としては……でしたね(笑)。
高橋:
PC-6001
PC-6001
高校生のころに買ってもらったPC-8001(※3)が最初のパソコンでした。価格は16万8000円でしたが、半年後により性能の高いPC-8001Mk2(※4)PC-6001(※5)が出て、「もう少し待てばよかった」と当時、相当なショックを受けたのを今でもよく覚えています(笑)。
どのような経緯、どんな基準でNEC PCを購入されましたか?
山川:
PC-9801は入学祝いとして買ってもらいました。MSXからの転向だったのですが、NEC製のパソコンを購入した基準はゲームでしたね。当時『ファーストクィーン(※6)』というゲームがあって、それが1画面の中でとんでもない数のキャラクターを動かしていたんですよ。それを見て「なんであれだけのキャラが動かせるんだ!」と感動しまして。
栗田:
私は、中学校のとき自分でお金をためて、NEC製パソコンを買いました。購入基準は、ズバリ財布の中身ですね。PC-9801VM21の上にはVX(※7)という機種もあったのですが、48万円と高かったため買い控えました。でも、VMとVXの性能差は結構あったので、今思えば8万円程度なら出しておけばよかったとも思いますね(苦笑)。
高橋:
私の場合、大学の進路先が工学部に決定したので、それをダシにして、親にPC-8001を購入してもらえました(笑)。当時、ほかにも富士通のFM-7(※8)シャープのMZ-2000(※9)などもあり、どれを買うか迷いましたが、最終的にはこれに決めました。PC-8001のころには型番などなく、NEC製パソコンといえば選択肢はこれしかなかったので、PC-8001を買うと決めてからは迷いませんでした。せいぜい後からPC-8001Mk2が出たくらいでしたから。多数の型番が登場したのはPC-8801以降の話ですね。
栗田:
複数の型番が出てからも、購入基準は限られていますよ。モデルチェンジ時期も今と違って2年程度と長く、型番もCPUなどの性能が多少異なるタイプが2〜3種類程度しかラインアップされないんですから。そして一度NECシリーズを買ったら、ソフト的遺産を生かすために、その後もずっとNECを買い続けなければならないので、買い換えのときもあまり迷いませんでしたね。
NEC PCを手に入れて、最初にどんなことをしましたか?
高橋:
まずはゲームでしたね。買ったときショップの店員からもらった麻雀などのゲームばかり。それに飽きたら、次はパソコン雑誌のプログラムリストを見ながらBASICプログラムを入力。ミスがあったら入力し直して、でき上がったらテープメディアに保存するのを繰り返していました。でも、そのおかげでBASICは何となく覚えられたのでしょうね。大学3年の専門課程になってBASICとフォートラン(※10)をいじる機会があったのですが、フォートランが今ひとつよくわからなかったのに対して、BASICはすんなりこなせました。
山川:
私はPC-9801でしたが、『マイコンBASICマガジン(※11)』という雑誌に掲載されていたプログラムの打ち込みはやっていましたね。打ち込んだプログラムに対する改造などもやっていましたが、さすがにオリジナルゲームを製作するまでには至りませんでした。
高橋:
私も本のとおりに打ち込んで、動かなかったら打ち込んだ文字をチェックしているだけだったので、ゲームプログラムを自作する段階まではいきませんでした。でも、ほかの人が製作したプログラムを打ち込むだけでも、動いた瞬間はうれしいものがありますよね。
栗田:
PC-9801VM
PC-9801VM
私のほうは、MSX時代からBASICやアセンブラで独自のゲーム製作をやっていたのですが、PC-9801VMを買ったころはBASICとアセンブラを併用してプログラムを書いていました。PC-9801で作ったゲームは、ファミコン並みのクオリティには仕上がっていましたね。MSXのころに作っていたゲームは、性能のせいもあってか、普通の人が見てもゲームとわかるような作品ではなかったのですが……。
そのほかに“ユニークな”使い方をしていましたか?
栗田:
あと、受験中や試験の最中にも、英単語を覚えるソフトを作成するため、という理由で英語学習用のプログラムを組んでいました。これはどちらかというと作る過程が大事で、教科書に載っている単語をひたすら入力することで、指が英単語を覚える。
山川: 
私もやりましたよ、入力して英単語を記憶する方法。でも、いざ書こうとなるとスペルが出てこないときがありますよね。そういうときは、ホームポジションを思い浮かべて仮想のキーボードをたたいていました。指が勝手に動いて英単語のスペルがわかる。こんな方法をしていたのは自分だけだろうな、と思っていたのですが、いざ職場で先輩方に聞いてみると、意外と同じ事をやっていた人は多かったんですよ(笑)。
栗田:
指は覚えてますよね、筆が動かなくても。微妙な単語を思い出すときは私もよくやっていました。
山川: 
それとプログラム以外に、PC-9801で初めてCPUのクロックアップとCPU載せ替えを行いました。なにせPC-98Doは性能的に不満が多い機種だったので……。クロックアップを行うと消費電力が上がって、どうしてもCPU周りや機体全体の温度が上がってしまうので、熱対策としてファンの増設などもやってましたね。
高橋:
PC-8001
PC-8001
私の場合、PC-8001のハード改造は情報がなかったので無理でしたね。当時のPC-8001に関する情報源は、一部の雑誌だけと限られていましたから。ハードウェア自体も頑丈で壊れなかったため、改造や修理のため中をのぞくことは全くなかったです。
山川: 
ちなみにその後、どんどんカスタマイズがエスカレートして最終的には水冷式(※12)の冷却方法にも挑戦してしまいました。本体に穴を開けて、金魚鉢から水を供給する、完全手作りの水冷ですけどね(笑)。さすがにここまで改造してしまうと壊れる可能性も高くなってしまうのですが、買い換える予定が立っていたので「壊れてもいいや」的な発想で思い切った改造を行っていました。今思えば、たとえ買い換えるからとはいえ、40万円近いパソコンにとんでもないことをしていたと思いますけど(笑)。
NEC PCに熱中した当時の“こぼれ話”はありますか?
栗田: 
実はNEC PCを購入した縁で、初めてやったアルバイトがPC関連でしたね。仕事内容は、ある会社の会計関連のオールBASIC言語プログラムを、夏休みをフルに使って製作していました。目的は、高価なパソコン関連の専門書を一冊でも多く手に入れるため(笑)。
山川: 
私もPCショップの店員のアルバイトをしていました。高校生のころに始めたんですが、とにかく知識量が莫大に増えましたね。というのも、今のPCショップは売ること自体が主目的ですが、当時はパソコンにハードディスクを増設したり、ソフトを組み込むなど、トータル的な技術サポートもPCショップ単位で行っていたんですよ。自分では買えないような高価な製品を増設する経験が得られて、機械やソフトに関する知識も増え、なおかつお金ももらえる。一石三鳥でしたね(笑)。
佐藤:
当時のPCショップ(※13)には、今の量販店とは全く異なる、一種独特の雰囲気がありましたよね。悪く言えば怪しい(笑)。
PC-98シリーズ(※0)
1982年にPC-8801の上位機種として発売された『PC-9801』を初代とし、その後数々のバージョンアップや型番『PC-9821』への進化などを経て2003年まで発売され続けたNEC製の16bit・32bitパソコン。かつてはPC-8801シリーズとPC-9800シリーズで全国のパソコンシェアの大半を占め、特にオフィスを中心に深く浸透していたPC-9800をして『国民機』と言わしめた時期もあった。

PC-9801VM21(※1)
1986年10月に登場した、PC-9801VM2のバージョンアップ版。CPUにインテルの8086と互換性をもち処理速度を高めたNEC製チップ『V30』を採用している点はVM2と変わらない。しかし、VRAM領域が640KBと、VM2の256KBより2.5倍多い。性能は若干高くなったが価格はVM2の41万5000円より若干安い39万円だった。

PC-98Do(※2)
1989年に発売された、PC-9801とPC-8801の両ソフトが動作するパソコン。ビット数の異なる2機種のプログラムを動作させるため2種類のCPUを搭載しており、PC-9801モードではV30、PC-8801モードではZ-80の同等品を使用する。しかし、特にPC-9801モードでは、多くの機種がインテル社製CPU『80286』に移行している中、8086互換のV30を採用したことが速度面での大きなハンディキャップとなってしまった。

PC-8001(※3)
一部でブレイクした自作マイコンキット『TK-80』の流れをくむパソコンで、1979年9月に発売された。搭載されたCPUはZ-80Aの互換CPUであるμPD780C-1。TK-80では1KB程度しか保持できなかったRAMが最大で32KBまで扱えるなど、あらゆる面でTK-80を凌駕していたPC-8001は、高性能にもかかわらず16万8000円の低価格で発売したこともあり、3年間で約25万台を売り上げ、パソコンブームを巻き起こすきっかけとなった。

PC-8001Mk2(※4)
1983年初頭に発売された、PC-8001の後継機種。価格は12万3000円と安く抑えられている。PC-8001は標準でのRAM搭載が16KBだったが、Mk2では標準で32KBのRAMが搭載された。また、VRAMを24KB搭載することにより320×200ドットの解像度で8色の発色が可能になるなど、グラフィック面の強化も図られた。

PC-6001(※5)
PC-8001の廉価版として1981年に登場。価格が8万9800円にまで下げられている。グラフィック機能は縮小されており、発色は4色までとなっている。一方、サウンド機能が新たに追加され、8オクターブの音を3和音まで同時発音することができる。ちなみに愛称は『パピコン』。
ファーストクィーン(※6)
呉ソフトウェア工房が1988年に発売したシミュレーションゲーム。ゲーム最大の見どころは、最大で20を超える軍勢同士が同時に戦闘する『ゴチャキャラ』と呼ばれるシステム。プレイヤーは味方のうち1人を選んで操作するが、そのほかのキャラクターは勝手に戦ったり、またはサボったり逃げたりと、それぞれの思考で自由に動き回る。

PC-9801VM21の上にはVX(※7)
1986年、PC-9801VM21と同じ10月に発売された、インテル社製CPU『80286』を搭載した機種。80286は、8086を速度面優先で改良したCPUだけあり、V30と同じクロック周波数でもV30より動作は高速であった。最上位機種のVX4には、当時非常に高価だった20MBのハードディスクが標準で搭載されている。

富士通のFM-7(※8)
1982年に発売された富士通製パソコンで、価格は12万8000円。CPUにはモトローラ社製のCPU『68B09』を使用、BASICは独自の『F-BASIC』が搭載されている。グラフィックでは当時の8ビットパソコンで主流になりつつあった640×200の解像度にも対応し、8オクターブ3和音までの同時発音が可能なサウンド機能も搭載する。

シャープのMZ-2000(※9)
1982年に登場したシャープ製パソコン。カセットテープレコーダーと10インチのモニタを内蔵したパソコンだった。価格は、ほかのライバル機種より若干高めの21万8000円。シャープはMZシリーズの設計思想として、ROMに標準でBASICを搭載することをやめ、その分使用可能なRAM容量を増やす『クリーンコンピュータ』を掲げていた。
フォートラン(※10)
IBM社によって1956年に開発された、世界初の高級プログラミング言語。科学技術者向けのプログラミング言語をうたうだけあって、数式を記述できるところがポイント。今でも情報処理系の高校や大学では教えられている場合もあり、また一部現場では現在でも使われ続けている現役の言語である。

マイコンBASICマガジン(※11)
1982年7月に電波新聞社から創刊されたパソコン雑誌。パソコンの新機種や新しいソフトウェアに対する特集記事もさることながら、当時流通していたメジャーなパソコンをすべて網羅したプログラムリスト群やBASICの解説ページなど、プログラムに特化した記事内容が光る雑誌だった。惜しまれつつも、2003年5月号を最後に休刊。

水冷式(※12)
読んで字のごとく、高熱部分にチューブなどで水を送り込み、水で熱を取り除くシステム。パソコンで水冷式の冷却システムを実現するには、熱を発するCPUや周囲のコンデンサなどの精密電子機器に水がかからないよう、徹底した防水や腐食防止処置を施す必要がある。

当時のPCショップ(※13)
まだパソコンの認知度が今ほどではなかった1980年代、パソコンショップを訪れる人間はある程度の知識をもったパソコンマニアたちであった。よって、余計な解説などはほとんど必要ないため、店員の対応は現在のように事細やかではない。慣れた人間にとっては情報の倉庫であり、集まる人間や店員との『濃い』コミュニティを形成するステージでもあった。
この後、NEC PCに関する苦労話で座談会はますますヒートアップ!
後編(9/7掲載)では、いよいよNEC PCとエンジニアとの“深い”関係が明らかに。
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山田モーキン(総研スタッフ)からのメッセージ  
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