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ゲームからコンテンツサーバー開発への転進

趣味とは異なるやりがいを仕事に見つけたA・Nさん

ゲーム好きが高じ、大学卒業後に新卒入社した会社を辞め、ゲームソフト開発の専門学校まで通ったA・Nさん。ところが念願のゲームソフト開発会社では、本当につくりたいゲームの開発に参加できないというジレンマと、過酷な労働環境が待っていた……。
(取材・文/中村伸生 総研スタッフ/山田モーキン)作成日:05.03.23

キッカケ編
希望と違うジャンル、日夜の激務の果てに

ゲームをつくりたいという強い思いから就職後1年で退社、専門学校へ

 学生時代からゲームが好きだった。ゲームであれば何でもよいわけではない。没頭したのは、ネットワークを介して世界中のプレイヤーと遊べるオンラインゲームだ。この趣味が高じて、就職活動ではオンラインゲームを開発しているメーカーを志望した。だが、経済学部であることから採用に至る道がかなり厳しいことを、すぐに悟った。ならば、文系でも採用してくれるソフトウェア開発の会社に潜り込んで、そこでプログラマとしてスキルを磨き、いずれゲームの世界に転職しようという戦略にスイッチした。

 こうして入社したシステム開発の企業で1年間、保険会社のシステムの保守に携わった。そこで得たスキルはCOBOLなど汎用機系の言語。これではゲーム開発への足がかりにはならない。熟考した結果、退職してゲーム開発の専門学校に通うことにした。それほど、オンラインゲームへの思いは強かったのである。

1カ月400時間の激務が続き、突発性難聴に

 専門学校では、オンラインゲームの開発に不可欠なネットワークプログラム技術を専攻した。2年間の授業でサーバー構築のスキルやC、C++といった開発言語を修得。今度は就職活動にも堂々と臨めた。そして念願かなって小規模ながら自社開発で数多くのゲームをリリースしているA社に入社することができた。

 ところがA社で開発を任せてもらえたのは、スポーツ系の3Dゲームばかり。野球やゴルフのゲームは、それほど面白いと思ったことがなかったので、やりがいは感じられない。しかも3Dプログラミングが主な役割であり、本来やりたかったオンラインゲームのためのネットワーク技術やサーバー構築の仕事ではなかった。それだけなら転職しようとは考えなかっただろう。A社を辞めようと思ったのは、その過酷な労働環境からだった。どれだけつらかったかといえば、1週間も家に帰れないことが珍しくなかったり、1カ月の勤務時間の総計が400時間に到達したりというものだった。そしてとうとう、激務のしわ寄せが体にきた。突然、耳の聞こえが悪くなったのだ。医者に行ったら、疲労による突発性難聴と診断された。もう、辞めるしかない……。
PROFILE
通信ソフトウェア開発会社
エンジン開発エンジニア
A・Nさん(30歳)

1996年に私大の経済学部を卒業。金融系SI企業に1年間勤務するが、かねてからの趣味であったオンラインゲームを開発する仕事に就きたいと考え、退職してゲームソフト開発の専門学校に通う。卒業後、中堅ゲーム会社に就職。
A・Nさんの転職活動DATA
前勤務先 ゲームソフトメーカー
プログラマ
転職した時期 2003年 10月
活動期間
(決意〜内定)
約3カ月
転職理由 劣悪な労働環境から離れ、本当にやりがいのある開発をしたい
会社選びで優先したこと 仕事内容、適正な労働時間
実際に応募した社数 3社
内定社数 2社
落ちた社数 0社
辞退した社数 2社

応募からの日数
B社:制御系ソフトウェア開発企業
C社:医療システム開発企業
D社:通信ソフトウェア開発企業
 
B社
C社
D社
1次
面接
7日
(辞退)
5日
6日
2次
面接
 
8日
(内定辞退)
8日
(内定)

転職準備編 
ゲームへのこだわりを捨て、客観的に自分のキャリアを見つめ直す

自分がやりたいことを再検討

 A社における経験は、ゲーム業界にこだわっていた自分の考えを、いったん整理するきっかけとなった。ゲーム業界に残るべきか、それともほかのステップは考えられないのだろうかという、冷静な判断ができたのである。今までのキャリアを振り返ると、決して無駄な道をたどってきたのではなさそうだ。ソフトの開発経験もあるし、ネットワーク構築のスキルももっている。そこまで考えが及ぶと、次のステップはゲーム業界でなくてもよいように思えてきた。果たして自分はITの世界で、どんな活躍ができるのだろうか。期待と不安は半々だった。

転職サイトと人材紹介会社の利用で視野を拡大

 まずは最初に、転職サイトをあたってみた。ネットワーク関連だけでもいろんな仕事があった。少し展望が開けてきたように感じた。でも、それだけでは応募のアクションが起こせない。まだ、不安要素が強かったのだ。そこで、幾つかの人材紹介会社のサイトへ問い合わせのメールを出してみることにした。
 すぐにリターンメールがあり、3社の人材コンサルタントと会うことになった。さまざまな業界の転職情報を教えてくれるコンサルタントもいれば、自分の転職ロードマップをシミュレーションしてくれるコンサルタントもいて、とても参考になった。
活動編 
さまざまな人材紹介会社を活用。徐々にターゲットが絞られていく

ゲームでなくてもよいが、モノづくりにこだわる

 さっそく人材紹介X社から、ERPパッケージを得意とするSI企業で開発はどうかという話があり、書類を出してもらうことにした。数日で審査は通ったが、よくよく話を聞いてみると自分のやりたいこととは違うことに気づき、面接の前に辞退した。ERPは既にでき上がった完成度の高いパッケージ。オファーがあった業務の技術レベルは高いが、カスタマイズが仕事の中心になる。それは望んだ仕事ではなかった。いろんな仕事の話を聞いて、自分の意向もはっきりしてきた。ゲームでなくてもよいが、モノづくりがしたいという希望が明確になってきたのだ。ITコンサルタント系の仕事も紹介されたが、同様の理由でお断りした。

 次に人材紹介Y社から、家電製品に組み込まれるソフトウェアの開発職を求めるB社を紹介できそうだと聞き、心が動いた。書類審査もスムーズに通ったようだ。いよいよ最初の面接。相変わらず仕事が忙しかったので、面接時間は午前の早めにしてもらった。B社には意気込んで訪問したが、面接の終わりまでそれは続かなかった。組み込みソフトの開発は、確かに家電というモノづくりの重要な部分を担う。だが、B社では請け負っている開発対象製品が絞られすぎなのだ。デジカメやテレビやプリンターなど、プロジェクトによってさまざまな製品が担当できるのなら、意欲は衰えなかっただろう。

 B社を早々に辞退すると、続けてY社からすぐに、医療システム開発を得意とするC社はどうかというオファーがあった。主要製品は自社開発パッケージ。開発にかかわる仕事だそうだ。ここが最終目的地かもしれない。そんな思いで面接に臨んだ。1回目の面接では、ぜひ入社したいという思いを残して終了した。だからY社の人材コンサルタントから1次面接に通ったという報告を聞いてホッとした。そして2回目の面接。ところが、話の雲行きがおかしい。どうやら開発要員ではなく、技術コンサルタントとしての採用らしい。どこで話が食い違ったのだろう。疑問を残して帰宅する。直後にY社より内定のようだという報告をいただいたが、辞退したいと返答した。このころは、X社、Y社のほかにZ社ともやりとりし、併せて10社以上の候補を紹介してもらっていた。

納得できた仕事は意外な業務だった

 B社、C社と立て続けに断り、なかなかうまくいかないなあと考えていた矢先、人材紹介X社から通信ソフトウェア開発会社のD社を紹介したいというメールが届いた。さっそく担当者に電話をかけてみる。おおよその会社概要を把握した後、書類を出してもらうことにした。携帯電話のさまざまなコンテンツサービスを実現させるためのサーバー構築の仕事らしい。ソフト開発の経験が生かせそうだし、ネットワークのスキルも伸ばせそうだ。それは面接の際の会話で十分に把握できた。自分は何ができる、何がしたいというアピールと、先方の何をしてほしいという要望がほとんど一致した面接だったから、会話はスムーズに運んだ。次第に、ここに入れるのなら、この転職活動は終わりだという気分になってきた。

 何より新しいサービスやコンテンツを実現する仕組みを開発するこの仕事に、モノづくりの面白さを感じたのが大きかった。製品の開発ではないが、新しいことにチャレンジし、ネットワークを通じて多くのユーザーに楽しんでもらえることを目指したこの仕事は、かつてオンラインゲームの開発で求めていたやりがいに似ていたのである。
 D社の面接は今までで最も会話は弾んだが、内定の通知が届くまでは不安でいっぱいだった。それだけにX社を通して吉報が届いたときは、久方ぶりの安堵感を覚えた。
 ようやく次のステップが確定した。さっそくA社に現在の開発業務を最後に退社したいという辞表願を提出した。引き留めにあったが、最終的には円満退社することができた。
転職後の考察 
納得するまで妥協しないことが、失敗を回避

視野を広げ、自分にとって最善の道を選択すべき

 D社の内定が決まるまで、妥協したかもしれない場面は少なくなかった。A社での激務は続いていたから、できるだけ早く決めたいという思いが何度か不満点を上回りそうになったのである。それでも踏みとどまったのは、今度こそ仕事選びに失敗したくないという強い気持ちがあったからだ。また、人材コンサルタントとのミーティングや、実際の面接を通して、自分のやりたいことが一つひとつ明確になっていった。一定の時間と経験を積まないと、納得のいく転職はできないのかもしれない。

 こうして妥協せずに選び抜いただけに、現在の仕事には満足している。仕事に臨むモチベーションも高い。また、辞退した企業は、いずれもD社より見劣りした訳ではない。勤務環境はA社より格段に改善できたはずだし(どの面接でも、今の勤務時間は月に400時間超と言えば、かなり驚かれた)、技術レベルも一歩前進できる業務だった。ただ、エンジニアとしてモノづくりがしたい、幅広く多くの人に役に立ちたいという、どうしても外せない指針からズレていただけなのだ。ほかの転職希望者だったら、ベストな選択だったかもしれないと心底思っている。
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