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今月のデータが語る エンジニア給与知っ得WAVE! Vol.27 海外赴任の給与・手当はおいしいか?
商社、金融、プラント建設、大手製造業などに限られていた海外赴任。工場立ち上げ、オフショア開発などの増大で、中小の製造業からIT系企業まで業種を問わず一般的になってきた。そこで、エンジニアの海外赴任事情を給与・手当の面から調査した。
(取材・文/広重隆樹 総研スタッフ/宮みゆき イラスト/Onsel BEHICH) 作成日:04.11.03
増え続ける海外長期滞在者
 外務省の調査によれば、海外にいる日本人の「長期滞在者」(3カ月以上の滞在者で永住者でない者)は2002年10月現在、58万8000人に達する。海外赴任者だけを見ると、損害保険料率算出機構が2000年段階で民間企業だけで5万5000人という数字をはじき出している。92年の3万8000人に比べると、44%の増加だ。赴任先で注目されるのはやはり世界の製造拠点となりつつある中国を中心としたアジア地域。長期滞在者全体に占める割合では、22%(92年)から31%(2002年)と伸びており、さらに増加していく傾向にある。

 Tech総研でも、2003人のエンジニア(25〜39歳)に海外開発業務に携わる経験を聞いたところ、約3割が経験ありと回答している。うち約8割が海外赴任や海外出張を経験している。

 アジアに進出する製造業などでは、安くて豊富な労働資源を生かしての生産が進み、工場立ち上げや生産ラインの設計・改良などでエンジニアが長期にわたって赴任する例が増えている。欧米への進出の場合も、最適地開発の需要が高まり、海外現法や提携・合弁先企業でR&Dに従事する技術者は増加する一方だ。また、システムインテグレータなどが、システム開発・運用管理などを海外企業に委託する、いわゆる「オフショア開発」が増えたことも、海外への赴任や、出張するITエンジニアが増えてきた要因の一つと考えられる。

 いずれにしても現地スタッフの雇用や管理とともに、どのような人材をどのような処遇で海外に赴任させるかという海外赴任にまつわる諸問題が、全業種的な課題になりつつあるといえる。
購買力補償方式で決まる海外基本給
 その処遇のなかでも関心が高いのは、海外赴任者の給与。海外赴任でも日本国内と同様に基本給(海外基本給)を設定し、それに諸手当(海外赴任手当など)を加算するというのが一般的だ。

 このうち海外基本給部分の設定方式は大きく3つに分類できる。
1)
購買力補償方式
外部コンサルタントなどが調べた赴任地の生計費指数などを基準にして決める。
2)
別建て方式
国内月例給与とは切り離して、独自基準で支給する。
3)
併用方式
日本国内の月例給与を現地貨幣に換算した支給分と、国別や郡市の在勤基本手当などを、
合算して支給する。

 人事問題の専門誌『労政時報』の調べ(2003.11.28号)によれば、このなかで最も多いのが「購買力補償方式」で、調査対象の約75%がこの方式を採用している。購買力補償方式は「国内と同等の購買力を駐在地でも補償する」というのが基本コンセプト。つまり、海外にいても日本にいるのとほぼ同じような生活水準を維持できるだけの基本給を支払うということである。外部コンサルタントから提供されるデータを用いることで、任地ごとの物価水準やインフレ率を考慮した、客観的な海外給与体系が構築でき、海外要員への給与の“払いすぎ”も抑えることができる。

 海外基本給の平均は都市によって異なるが、『労政時報』によれば30歳・ニューヨーク赴任の平均が月額3057USドル(1ドル=110円として33万6270円)だ。同年齢の国内(東京)勤務の場合のモデル基本給が平均で30万2595円だから、単純比較で3万4000円ほど高いことがわかる。

 『労政時報』が調べたある電気機器メーカーの上海駐在員(35歳)の給与モデルによれば、海外基本給と子女教育手当はドル建てで支払われ、合計が3726USドル。それに国内給与が11万7535円、海外勤務手当が7万円、それぞれ円建てで毎月支払われている。年間賞与を合計し、年収総額を円換算すると約870万円になるという。おそらく同年齢の国内勤務者よりは高い年収で、海外勤務手当の7万円分が年収を押し上げる要因になっている。
 
データ1 [地域別]30歳の海外基本給の平均額
 ニューヨーク 336,270円
 東京 302,595円
 台北 309,368円
 バンコク 242,114円
 シンガポール 309,368円
 ロンドン 400,161円
 デュッセルドルフ 373,260円
 香港 373,260円
 上海 339,633円
 
手当だけで生活できる地域も
 この海外手当は、海外赴任手当、帯同家族手当、子女教育手当、住宅手当など名称は企業によってさまざま。額も企業や赴任地によって差がある。
 Tech総研が行ったアンケート(海外赴任経験のあるエンジニア100人対象)では、海外派遣で特別手当が支給された人が全体の73%、月々の給与に上乗せされる形が49%、仕度金・準備金などの名称で一時払いされる人が18%いた。(データ2)

 その手当についての満足度だが、「もともとの日本での基本給はそのまま日本で支給され、海外での生活はほぼ海外手当だけでまかなえた」(37歳・システム設計・月額手当30万円)と満足する人は少なくない。この場合、海外勤務が長くなればなるほど、日本での基本給がそのまま預貯金に回せるというメリットが出てくる。また、「タイは物価が日本の5分の1以下のため、住んでいたマンションがプール付き、メイド付き、運転手付きで社長になった気がした」(37歳・システム開発・月額手当5万円)と、額そのもの以上に現地での居住環境に満足している人もいる。

 その一方で、「手当が増えた以上に、基本給がとても安くなり、収入は結局下がった」(31歳・コンサルタント・月額手当10万円)という不満派も。なかには、「お金はたまるが、日本の友人たちとの関係が疎遠になった」(31歳・IT系・月額手当15万円)と、金銭以外のデメリットを不満要因に挙げる人もいた。
 海外赴任手当についての金銭的満足度は「かなり満足」「やや満足」を合計すると41%に達する一方で、不満の人が24%という結果になった。(データ3)
データ2 海外赴任手当の支給形態は?
データ2
データ3 海外赴任手当に満足は約4割!
データ3
※海外赴任経験のあるエンジニア100人に調査(25〜39歳)
海外で働くことのメリットとは
 最後に、海外日系企業への技術者の転職・派遣の事情に詳しいパソナテック中国事業部のコンサルタント・小平達也氏に、最も成長力が高いといわれる中国における人材需要について話を聞いた。

「かつては中国への要員派遣というと、いわゆる“中国通”の専門スタッフばかりだったのが、近年は欧米でも実績を上げたエース級の人材が投入される傾向にあります。それだけ企業の中国シフトが強まってきた証拠。その一方では、実務経験の浅い日本人の現地採用も増えるなど、人材の二極化が進んでいるのが特徴です。逆にいえば、現地法人のトップに立つ人と、現地ワーカーとの間に立って現場のマネジメントができるクラスの人材が、不足しているともいえます。

 給与体系については、日本国内の給与テーブルに縛られがちな大企業に対して、社長や現法の支社長決裁で採用ができる中小企業のほうがむしろ柔軟な給与提示を行っているようです。
 海外勤務で給与が残るかどうかについては、赴任地の物価や手当額などの違いがあるので一概には言えませんが、中国・上海を例に取ると必ずしも都市部の物価は安くはなく、結局日本人は外国人専用の住居に住み、交際やショッピングもそれなりの店ですることになるので、中国だから生活費が安いということには必ずしもなりません。このあたりは人それぞれの生計プランのほうが決め手になるのではないでしょうか。

 もちろん給与以上に、異文化理解や現地スタッフとのコミュニケーションなど、海外での勤務経験がその後のキャリアに大きな影響をもたらすことは事実。海外では少人数であらゆる問題に対処しなければならず、そうした課題解決力こそがお金には換えられない貴重な財産になると思います」

 手当の分だけ収入を貯蓄に回すか、国内だけでは得られないスキルやノウハウを身につけるか。あるいは、その二兎を追うか。さて、あなたならどうするだろう。
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