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ざっくり手取り額は25万円ほど。3年前から会社の制度を利用して住宅財形を始めた。月額5万円+ボーナス時20万円。年間100万円という計算だ。これを頭金にして35歳までにはマンション購入というのが当面の目標。最近は住宅情報誌をときどき読んでいる。
ほかにも月に5万円ずつ銀行定期に預金している。「財形と合わせて月額10万円の貯蓄。この手の情報に疎いので、自分の年代でそれが多いのか少ないのかはわかりません。」
一昨年結婚した妻と共働き。趣味のサークルで知り合った仲だけに、今も夫婦でサークル活動を続ける。その会費などを含めた交際費は固定支出だ。車も古くなったので、この1〜2年内には新車に買い換えるつもり。外食やレジャーなどで少し贅沢をして蓄えを取り崩す月もときにはある。
「子どもはもちろん欲しいけれど、どうなるかわかりません。将来のためにケチケチするよりは今の2人の生活をもっと楽しみたいというのが基本。といっても無計画に散財することはしたくない」。金銭に対する自分の性格をひと言でいうと、「少しだけアリ寄りのキリギリス」だと思う。
会社では次世代商品の開発など、先端的な研究を行っている。だが、技術だけのエンジニアにはなりたくない。マーケティングやマネジメントにも関心がある。自分の経験が生かせるのなら、転職もありという立場。入社6年目で仕事にも自信がつき、次の可能性を真剣に考えるようになってきた。 |
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鈴木さんの給与明細
支 給 |
控 除 |
手取金 |
基本給 |
162,750 |
健康保険料 |
8,400 |
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資格給 |
95,700 |
厚生年金保険料 |
20,901 |
成果給 |
13,200 |
雇用保険 |
2,550 |
時間外手当 |
47,186 |
所得税 |
12,420 |
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住民税 |
10,700 |
給与計 |
318,836 |
持株会 |
3,150 |
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組合費 |
5,200 |
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食堂利用料 |
4,204 |
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その他 |
5,880 |
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支給額合計 |
318,836 |
控除額合計 |
73,405 |
245,431 |
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主な家計支出 |
家賃(駐車場代込み) ※1 |
49,000 |
食費 |
50,000 |
公共料金 |
10,000 |
携帯電話等通信費 |
15,000 |
交際費 |
20,000 |
自動車維持費 |
20,000 |
小遣い |
25,000 |
生命保険 |
25,000 |
銀行貯金 |
50,000 |
住宅財形 ※2 |
50,000 |
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支出合計 ※3 |
314,000 |
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現在の預貯金 |
住宅財形 |
約300万円 |
銀行預金 |
約400万円 |
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※1
50m2のアパート。家賃96,000円のうち会社が「借り上げ社宅料」47,000円を補助
※2
住宅財形は実際は給与から天引きされる
※3
妻の収入が約15万円ある |
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私生活では結婚を決めた調理師の恋人が近所に住んでいる。結婚して子どもをつくって、家族3、4人がさほど困らない生活をして、家を買うというのが人生のおおざっぱな計画。
貯蓄は残業の大小によって変わるが、月に5万〜10万円。結婚資金には200万〜300万円を予定。彼女と一緒に積み立てている銀行定期が約300万円たまった。
住宅のほうは、個人で定期約150万円、普通約200万円の預金があり、さらに住宅金融公庫が発行する住宅宅地債権「つみたてくん」を2001年から買っている。これが来年の償還時に200万円になる予定。これらを原資に、1000万円まで増やし、頭金にする計画だ。
「実家が都内に借りている借地を買い取って2世代住宅を建てるか、横浜あたりに4000万円までのマンションまたは建売の戸建てを買うか」と、購入計画はかなり具体的だ。
キャリアプランの方向に沿っていて、人間関係がよい会社なら転職も考えるが、けっして焦ってはいない。「今はしっかり腰を据えて、自分の次のキャリアの方向性を定める時期」だと思っている。 |
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佐藤さんの給与明細
支 給 |
控 除 |
手取金 |
基本給 |
241,900 |
健康保険料 |
10,560 |
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時間外手当 |
34,200 |
厚生年金保険料 |
22,294 |
住宅手当 |
25,000 |
雇用保険 |
2,448 |
諸手当 |
5,000 |
所得税 |
11,410 |
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住民税 |
9,600 |
給与計 |
306,100 |
親睦会会費 |
2,000 |
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支給額合計 |
306,100 |
控除額合計 |
58,312 |
247,788 |
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主な家計支出 |
家賃(駐車場代込み) |
50,000 |
食費 |
50,000 |
公共料金 |
10,000 |
携帯電話等通信費 |
9,000 |
交際費 |
20,000 |
小遣い |
25,000 |
生命保険 |
9,000 |
雑費 |
22,000 |
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支出合計 |
195,000 |
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現在の預貯金 |
つみたてくん |
来年償還予定
約200万円 |
銀行預金 |
約350万円 |
婚約者との共同預金 |
約300万円 |
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お二人の了解を得て、この給与明細と支出・貯蓄状況を、専門家に診断してもらった。 アドバイスしてくれたのは、ファイナンシャルプランナーの関根光氏。
開口一番、「佐藤さんの個人の預金350万円、鈴木さんの住宅財形300万円というのはなかなかですね。エンジニアは堅実な人が多いのかもしれませんね」と関根氏。
「同年代の独身男性営業職なんて、ほとんど貯金ないですよ。下手をしたらレジャー費用を消費者金融から借りている人もいます」
鈴木、佐藤の両人とも住宅購入が今後5年内の大きな目標になっている。
「住宅購入の頭金は物件価格の3割はほしいところ。3000万円台のマンション物件であれば、1000万円はためておくべきでしょう」という一方で、向こう5〜7年は住宅購入の時期としては「大変厳しい」とも。「この時期は団塊ジュニア世代の住宅取得のピークと重なります。そのため不動産価格は上昇を続けるでしょう。7年後には需給バランスが崩れて値下がりするかもしれませんから、5年後という目標をもう少し先延ばししてもよいかもしれません」
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フェイシス(株) 代表取締役 関根 光氏
大手証券、外資系生保を経て2000年に金融アドバイス専門会社フェイシスを設立。マネーセミナー「100点スクール」を主宰し、個人の投資教育に力を入れている。 http://www.100ten.co.jp/ |
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今回は、現在独身で結婚予定あり、あるいはDINKSのケース。成果主義が導入されているとはいえ、給料がこれから先、確実に大幅に上がる保証はなく、また妻が妊娠・出産で休職した場合は片方の収入が期待できなくなるというのが、共通するリスクだ。
「まだ意識しないかもしれませんが、老後の生活準備も30歳前後の今から始めておくべきです。企業年金、退職金をアテにはできない世代なのですから。単にためるというだけでなく、多少は財産を運用するということも考えてみてはいかがでしょうか」と関根氏。
例えば鈴木さんが購入予定の新車費用のうち100万円を年率7%で運用できれば、10年後には倍になる。
「日本の株式市場の平均利回りは約7%。もちろんリスクはありますが、10年で倍になる投資商品はほかにはありません。日経平均やトピックスに連動する株式投資が候補のひとつ。要は、若いうちから投資や運用でお金を増やすという経験を身につけておくこと。多少の失敗は授業料。中高年になってから慌てて運用を考えるよりも、今のうちに慣れておくほうがいいと思います」
「お金は3つのポケットに分けておけ」というのが関根さんの基本的なアドバイスだ。 1つは、「いざというときのポケット」。失業や病気など不測の事態に備えた生活資金を確保する。形態は銀行預貯金で構わない。
生活費の6カ月分が目安だ。
2つめが「目標のためのポケット」。結婚資金、マイホーム資金、老後の資金など、将来に向けた準備金だ。預貯金だけでなく、変額年金保険や投資信託の活用も考えたい。
そして、3つめは「楽しみのためのポケット」。趣味や学びや旅行など人生を楽しむためのお金を入れておく。具体的には株式や外貨預金など。多少リスクがあっても大きく増える楽しみがあるし、投資を通して経済の仕組みも学べる。
「たえず10年後、20年後の生活を意識しながら、マネー・マネジメントするという意識づけが必要。給料が増えないのなら、別の方法で資産を運用する考え方は、20代、30代のこれから若い世代に必須のものとなるでしょう。エンジニアとしての自分に投資し、転職市場での資産価値を高め、有利な転職をめざすということも当然ながら考えておきたいものです」 |
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