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止まらない 技術者人性の法則 センスorカン→技術者の実力
技術者は、専門知識を持ち、技術で世の中に貢献する人。しかし、知識を蓄え技術を駆使するだけなら、マシンでもできる。技術者という生き生きとした存在には、「センス」や「カン」が必要なのだ。
(文/出川通 総研スタッフ/根村かやの) 作成日:03.08.06


(イラスト/工藤六助)
THANKS! どんな専門分野でも、「センスで勝負するエンジニア」「カンで勝負するエンジニア」と、2つのタイプが存在するようです。あなたはどちらのタイプでしょうか?
技術者の能力は専門性だけで測れない

 スポーツの世界で、体力や技術とは異なる能力を指して「イチローは野球勘がいい」「ベッカムはサッカーセンスに秀でている」などということがあります。エンジニアの世界もこれと似ていて、技術に対する「センス」「カン」が問われます。
 あなたの周りでも、「Aさんのシステムアーキテクチャーの『センス』は素晴らしい」「『カン』が抜群なBさんがダメ出ししたところには、必ずバグが潜んでいるからすごい」などという会話が交わされているのではないでしょうか。あるいは、ネガティブな例としては、「偉そうなこと言ってるけど、エンジニアとしてはセンスないよナー」と評され、エンジニアからの尊敬が集まりにくい管理職が、あなたの職場にもいるのでは。

 では、「技術センス」と「技術カン」とは同じものかといえば、少し違うらしい。「センスはいいが、カンはよくない」「カンはいいが、センスはよくない」というエンジニアが存在するからです。
 例えば、「Cさんのシステム設計のセンスは抜群だけど、カンがもうひとつだねー。せっかくのセンスが、個別のファンクションでは死んでるよね」とか、「Dさんの設計センスはちょっとどうかと思うけど、個々のパフォーマンスは最高だよね。カンどころをつかんでいるからだろうなあ」とかいうふうに。

 これはどういうことでしょうか? 「センス」と「カン」の助けを借りて、両者の違いを整理してみたいと思います。


「センス」とは? 「カン」とは?

 「センス」は、「カン」に比べて、ある程度長い時間軸で考え対応する能力であるといえます。中長期的に先を見て、全体のバランスをうまく調和させることができる能力でしょう。
 一方、「カン」とは、「ものごとを感覚的、あるいは瞬時に感じ取る心の働き」と辞書にあるように、まさにクイックにいろいろ対応できる能力です。すなわち、短中期的に必要なことを即座に対応する能力といい直していいのではないでしょうか。

 この分類と言葉のもつイメージについて表1に示しました。もちろん境界領域もあり、これだけですべてに対応できるものではありませんが、傾向を見ていただきたいと思います。


表1. センスとカンの世界の特徴イメージ

  センスの世界 カンの世界
視点・視野 ・全体最適化(バランス指向)
・マクロ的
・戦略的
・部分最適化(突出指向)
・ミクロ的
・戦術的
時間軸・スピード ・中長期
・スロー
・短中期的
・クイック
適した仕事のイメージ ・監督
・長期戦略企画立案者
・選手
・現場解決型
・第一線オペレーション
システムへのアプローチのイメージ ・ネットワーク型
・サーバー型
・スタンドアローン型
・クライアント型

  さてあなたは、もしくはあなたの隣の技術者は、「センス」の人でしょうか。それとも「カン」の人でしょうか。「センスを生かす」のと「カンを働かせる」のと、どちらに喜びを感じるでしょうか?
 自己判断をする前に、頭の体操として、医師の中の「内科医/外科医」という分類を例にとって、もう少し考えてみましょう。

センス先行タイプは内科医型?!

 内科では、患部をすぐにメスですぱっと切り取るようなことはしません。じっくり経過を聞くとともに、近傍部を含めて問題部(患部)を診て、総合的に診断していきます。最近ではいろいろな医療診断器具が充実してきたので検査も手が込んできましたが、昔は聴診器ひとつで、問診を中心にして内臓の調子を判断していったものです。
 そして対応プロセスは薬の処方です。通常は内服薬を少しずつ与えながら、回復状況を判断(シミュレーション)して治していきます。このとき要求される能力は、経験に基づいた洞察力と推理力です。人間が本来もっている自然治癒力を有効利用するための、トータル設計力ともいえます。

 ただし、この特質があまり強く出ると、じっくりいきすぎて、当面の対策や個々の最適化が犠牲になったり、タイミングを逸して現実的な対応が遅れたりすることがあります。切除すればよかった早期がんが、いろいろいじっているうちに各臓器に転移してしまって、学術論文はできたが患者本人は……の感じです。
 エンジニアの仕事でいえば、全体は素晴らしくでき上がったシステムなのに、個別のインターフェイスがものすごくややこしいため、実際には使いものにならない、などの現象が起きることもあります。


カン先行タイプは外科医型?!

 外科医の得意技は、内服薬よりはメスでの手術です。すなわち経過を見るシミュレーションより、まずは分解です。患部は目に見えるところにあることも多いので、それを即座に判断して治していくのが本領です。目に見えなければ、見えるところに引っ張り出してでも確かめてやろうという強引さもあります。
 外科では、どちらかというと全体最適化よりも当面の素早い対応が大切だと考えます。このため、そのときは痛くてたまりませんし、また傷もしばらく残るかもしれません。けれども、うまく行われると、きわめて早く問題は解決するものです。

 一方、問題点は、対応が局所に限定され、全体のバランスや最適化が犠牲になるきらいがあることです。最悪の場合は「手術は成功した(患部は切除した)が患者は亡くなった」という結末になるかもしれません。
 個々の機能は素晴らしくでき上がったシステムが、全体の見かけや継続性に問題があり、極端な例だと共通性、汎用性がほとんどない、このため実際には使いものにならない、などの例に相当します。

表2. 内科医と外科医の仕事と、技術者のアナロジー

  分類
内科医(センス型)のアナロジー 外科医(カン型)のアナロジー
医師の手法 判断ツール 問診、中長期経過、周辺部検査 外観観察、短中期経過
対処ツール 投薬、対症療法(パッシブ) メス、患部切除(アクティブ)
患者側 じっくり治る例が多い
(痛みは少ない)

早く治る場合が多い(痛い)
技術者の手法 判断ツール 経営者、管理者と友達 オペレーター、現場と仲良し
対処ツール 全体の枠組みから始める
設計を見直す
ディテールから始める
試作品を作って動かす

成果の現れ方
時間がかかる
必ずしも最適値にならない
(最適値の見つけ方を知っている)
すぐに成果(失敗)が出る
その場では最適値となる
(最適値そのものを知っている)

   センスやカンは、専門知識と経験に裏付けられつつも、専門を越えて通用するものでもあって、「ソフトウェアは内科型」「ハードウェアは外科型」のように、いちがいに分けられるものではありません。
 むしろ、同じ技術的課題に対して、センス型のアプローチとカン型のアプローチが可能、と考えることもできます。

 例えば、1.0〜2.0の間を動く何かの値の最適値を決定する課題があるとしましょう。
 センス型(内科医型)エンジニアは、「このあたりに最適値がありそうだ」と見当をつけてまず1.60〜1.75という範囲に絞り込みます。そこから「1.71」という最適値に到達するためにいくつのステップを要するかは、課題の難易度と本人の(センス以外も含めた)能力次第です。
 一方、カン型(外科医型)エンジニアは、1.10から1.90の間であちこちつついてみます。最適ではないが十分適切な「1.69」をすぐに見つけるかもしれないし、大はずれの「1.42」かもしれない、といったところです。
 これは、どちらがいいとかすぐれているとかいうことではありません。両者が協力し合えば、「1.60〜1.75という範囲の中からぴたりと1.71を示す」、あるいは「1.80を示したら、そこから少しずつ下げながら試していく」というふうに、確実かつ効率的に最適値にたどり着くことができるわけです。

内科医と外科医以外のアナロジー

 もちろん、センスとカンの両者を十分兼ね備えた「スーパー技術者」は存在しますが、これは例外でしょう。逆に、「俺はエンジニアだけど、どこかこの分類では収まりきれないぞ」という人もいると思います。

 医師の世界は、内科、外科だけではありません。体の各パーツを得意とする眼科、耳鼻科、泌尿器科があったり、目的指向型の産科、対象限定型の小児科、婦人科などもあります。変わったところでは、精神科医というカテゴリーもあるわけです。
 ですからエンジニアにも「センス」「カン」以外の型があっていいのですが、エンジニアの分類というと、多くの場合、パーツ対象の専門知識指向の職種(業種)分類です。例えばリクナビNEXTでも、ソフトウェア/ネットワーク/電気/電子/機械/素材/食品/メディカル/建築/土木……となっています。いわば、呼吸器科/消化器科……といった分類に相当するものです。

 では今回、専門職種とは異なる「センス型」「カン型」という切り口でエンジニアを分類してみた目的はなんでしょうか。自分の強みを発見し、弱みを見直すきっかけとするためです。そして、自分のよさを認めることは他人のよさを認めることです。そうすることで異分野の専門技術もうまく融合し、結果として付加価値がある技術や製品、システムができるのではないでしょうか。


手段と目的、分類によって見えてくるもの

 図1には、「センス」「カン」、「内科医」「外科医」を、時間軸と空間軸で整理してみました。それぞれ特徴があり役割分担があり、どちらがいいかということではなく、両方必要なところです。手術が得意な外科医と薬で治す内科医、両方がいて、さまざまな病気や症状に対応していけるもの。

図1. 内科医と外科医の守備範囲、センスとカンの世界

 技術でアウトプットを出すということも、同じように、きわめて総合・融合的な組み合わせです。
 成果をあげていくためには、個人の能力を伸ばすことも必要ですが、専門分野のほかに個々の得意な特性(ここではセンスとカン)を自覚することで、他者との協力関係を考えていくことも大切だと思います。
 エンジニア自身が、従来の分類以外に「自分はこういうエンジニアだ」という指針を自分でもち、自分で技術者人性を深め、広げていく時代がきたのかもしれません。

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根村かやの(総研スタッフ)からのお願い
 カン型のエンジニアは、ブランド名には疎くてもおしゃれなシャツを選びとる。しかし、パンツとの組み合わせが下手なので、全体としてはいまひとつイケてない。センス型のエンジニアは、文字どおり“センスはいい”が、よく見るとシャツもパンツもみんな安物である。……こんな「法則」は成り立つでしょうか?
 センス型、カン型、そのほか○○型のみなさんによる採点、そしてご意見・ご感想をお待ちしています。

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