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ユーザー系SIerからIIJテクノロジーへ応募
自分の志向にマッチした技術重視の先端企業へ
ユーザー系SI企業で業務アプリケーション開発に携わってきた中堅ソフト技術者が、最先端インターネット・ビジネス・システムのコンサルタントを志望。第2次面接で技術統括担当の面接官がチェックした要件とは?
(取材・文/須田忠博 総研スタッフ/高橋マサシ) 作成日:03.05.21
THANKS! 会社の業務内容そのものよりも、方針や手法の部分に疑問を抱き、転職を考えるソフトエンジニアがいます。しかし多くの人は、行動に移す最初の一歩が踏み出せません。今回はその壁を越えて転職に成功した方を紹介します。
応募したエンジニア 企業の面接担当者
飯田拓哉さん(当時35歳)
常務取締役 技術統轄本部長 吉原 勉氏
当時の職種 業務系アプリケーション開発プロジェクトリーダー
募集職種 ITコンサルタント
業務の内容 大規模プロジェクトにおけるサブシステムの開発管理。
仕事内容 インターネットを基盤とするネットワークシステム構築・開発のプロマネ・コンサル業務。
職務経歴 法学部卒。ユーザー系システム企業に約12年勤務。主に親会社の業務アプリ開発を担当。
応募資格 UNIX系でのシステム開発経験、プロジェクト経験など。
志望動機 「より良いシステム開発の根幹は優れた技術」との持論から、技術力重視の会社を求めた。
募集背景 事業基盤の強化と事業領域の拡大に伴うエンジニア採用。
書類選考
技術統轄本部長が選考する。
1次面接
志望職種に該当する部長とマネジャーのほかに、現場のリーダーやメンバーが同席する。時間は約30分。
2次面接
技術統轄本部長、人事担当役員、監査役の計3人が面接する。時間は約30分。
内定
人事課を通じて1週間以内に通知。
持ち時間を限定された自己紹介

吉原:
 それでは、面接に入らせていただきます。最初に自己紹介を兼ねて、【Point1】大学で熱中したことやこれまでの仕事について5〜6分で話してください。


飯田:
 私は法学部だったこともあり、学生時代、コンピュータのことはほとんど勉強しませんでした。しかし、本は手当たりしだいに読みました。哲学や数学、心理学、社会学など多分野で雑多です。知識として蓄積したかどうかはともかく、そういう乱読の時期を持てたのはよかったと思っています。

 会社入社後は、コンピュータシステムという新しいものへのチャレンジの日々でした。業務アプリケーション開発を中心とする会社ですので、プログラミングと設計は社会に出てから覚えました。ただし、体系的に学べたわけではありません。実務に即して独学的に習得した部分のほうが多いです。

 【Point2】プログラミングは、初めて取り組む対象としてはわかりやすかったです。すぐ好きになりました。入社後3年間はプログラミング中心で働き、4年目以降はプロジェクト管理へ志向をシフトさせて、7年目ごろからは費用管理まで担当するようになりました。現在はプロジェクト管理が中心です。プログラミングの楽しさは、プライベートでときどき味わう程度にとどめています。


大学時代は哲学や数学の本をむさぼり読んだ

吉原:
 【Point3】学生時代に本をたくさん読んだということですが、面白かった本をいくつか挙げてみてください。


飯田:
 今でも読み返す本は『はじめての構造主義』という新書です。内容は、物自体や事自体について考えるのではなく、物と物、事と事の関係性、つまり構造に着目する思想の紹介です。物事の考え方にモヤモヤする青春期でしたから(笑)、強烈な印象でした。

 もう1冊は、これもタイトルに「はじめての」と付くんですが(笑)、『はじめての現代数学』という本です。ギリシャ時代から現代までの数学の歴史が解説されています。数学が何に焦点を当てて発展してきたかがわかるんです。つまり、数字そのものよりも、関係性に比重を置くことで現代数学が生まれたと。
 私はこういった本の影響を強く受け、そういう考え方を今もしているように思います。


吉原:
 哲学や数学には以前から興味があったのですか?


飯田:
 ええ。算数は苦手でしたが、数学には興味がわきました。学校の成績は悪くても(笑)、数学には新鮮な驚きを感じました。平行な線はなぜ交わらないかなどです。心理学や社会学では、中学時代に目を開かされるというか、常識を覆す本に出合いました。


吉原:
 そういう読書傾向は、同世代の友人とはだいぶ違っていたのでは?


飯田:
 同じ本の話ができて楽しいという友だちは、ほとんどいませんでした。そもそも、このような話題を人と語りたいとは思わなかったのです。自分の頭の中でひねくり返すのが好きなんです。友人関係はバンド活動などを通じて別にありました。


Point 1
[面接官] 「5〜6分で」という指定は常に付けます。時間内でプレゼンすることを意識してほしいからです。その結果、内容や時間配分を考えて話すことになりますから。そうした制約があったほうが、プレゼンテーションスキルがよくわかります。
 
[応募者] 「5〜6分で」と指定された以上、この時間よりも短くても長くてもいけないんだとすぐ思いました。けれども、本番では時間をややオーバーしたような気がします。

Point 2
[面接官] こういう表現が自然にすっと出てきたことに好感を持ちました。学生時代に多読をし、知識の幅がある人の言葉として納得ができました。
 
[応募者] 面接では自分の「素」を出すようにしないと、必ずボロが出ます。ただし、どの部分の「素」を出すべきかは、答えるとき、瞬間的に判断しなければと思っていました。

Point 3
[面接官] 大学時代に読んだ本を具体的に聞いたのは、関心の方向性だけでなく、教養のレベルを知りたかったからです。これはポテンシャルの判定になるのです。教養のレベルは、習得可能な技術力のレベルに正比例します。
 
[応募者] 質問の意図はわかりませんでしたが、雑多に読んだ本の中から印象のよいもの、内容を説明しやすいものを選んで答えました。この戦略はどうやら成功したようですね。





オブジェクト指向とは「抽象化の上に具象をのせるもの」

吉原:
 学生時代の話を聞くと、プログラミングをすぐ好きになったという点はうなずけます。では、どうしてソフト業界を就職先に選んだのですか?


飯田:
 仕事をするなら、モノづくりをしたいという考えからです。それも、工場で製品を作るようなメイクではなく、クリエートです。そういう目でコンピュータソフトを見ると、物理的な物ではないけれども目に見え、プログラマやSEがクリエートしている。また、【Point4】ソフトは、抽象的な思考と具象の中間にあるもの。私は頭の中でごちゃごちゃひねくり回すのが大好きな性分ですから、ピッタリではないかと思ったのです。


吉原:
 哲これまでの仕事やプロジェクトで、面白いと思ったものを教えてください。


飯田:
 数年前に担当した市販パッケージ開発が、強く印象に残っています。弊社初の本格的なオブジェクト指向開発でした。しかし、オブジェクト指向の開発ノウハウは弊社でも実装の協力会社でも蓄積し始めたばかりでした。そこで、私たちのチームで勉強しながら、試行錯誤を繰り返して作りました。そのあとオブジェクト指向ベースの開発が何件か続いた私にとって、この仕事がスタートラインになったわけです。

 私にとって初めての技術分野で頑張った分、プロジェクトとしてもシステムとしても愛着がわくんですね。また、今でも開発中に新たなことに気付くたび、これを知っていたらよりよくなったはず、と振り返ってしまう。もし手直しが許されるのなら返してほしいと、今でも思っています(笑)。




Point 4
[面接官] この言葉は、ここまでに聞いてきた飯田さんの興味のあり方とコンピュータ技術との関係を示していますね。技術を一段高いレイヤーから観ることができる。これは、ITコンサルタントの重要な資質のひとつといえます。



吉原:
 それだけ思い入れが強かったのは、ほかにも理由があったのですか?


飯田:
 オブジェクト指向の考え方が面白いと思えたからです。それまでの開発の仕方は、業務があり、要件があり、それをそのまま実装するイメージでした。ところが、開発物が汎用のパッケージだったせいもあって、【Point5】オブジェクト指向だと、想定業務を抽象化したものに具象をのせる感じになります。その繰り返し。抽象と具象を行ったり来たりする。そういうオブジェクト指向の考え方にすっかり魅了されてしまったのです。


Point 5
[面接官] この答えで、飯田さんの技術センスはかなり高いと判断しました。オブジェクト指向の話をする応募者は少なくないのですが、このような本質的なところに面白さを感じる応募者は初めてでした。

会社の方向性と自己の志向のズレを感じた

吉原:
 なるほど。【Point6】では、逆に嫌だったプロジェクトは?


飯田:
 嫌だというよりは、つらいプロジェクトになりますが、現在のプロジェクトです。ある大規模プロジェクトのサブシステム開発に参画しているのですが、私の中心任務は製造とテスト部分のみの進捗管理と、製造上の全般的な技術支援というもの。プロジェクトの途中からの参加でした。

 いざ入ってみると、非常に厳しい状況でした。しかし、私自身を含めて各人の立場や組織管理上、ドラスティックな改善策を打つことが難しい。特に自分の権限の範囲外で起きていることなどは、見ていてつらいんです。


吉原:
【Point7】それが転職のきっかけですか?


飯田:
 転職を考え始めた原因ではなく、行動に移したきっかけですね。会社の質と私の志向のズレを数年前から感じるようになっていて、これが転職を希望した大きな理由です。


吉原:
 そのズレとは、主にどんなことですか?


飯田:
 ユーザー系のシステム会社ですから、もともと業務知識、例えば会計や物流などの業務自体の、知識に重きを置くんです。しかし、私は開発の立場から技術重視であるべきと考えるようになりました。親会社に受け入れてもらうためにも、まず技術的に優れたものであるべきだと。そのギャップが、社内の日常の中でも広がっている気がしてならないのです。


吉原:
 ところで、【Point8】将来の夢として、5年後くらいにどんな立場でどんな仕事をしていたいと思っていますか?


飯田:
 現時点でまだまだ興味があるのはシステムデザインの部分です。実装作業には年齢が影響するでしょうが、デザインは長く続けて行けると思っています。従って、5年先でも人、金、進捗を管理するプロジェクトマネジメントだけでなく、デザインには手なり口なりを出したいと考えています。


(このあと、吉原さんは飯田さんのほうからの質問を促したが、飯田さんは「特にありません」と答えた。それで面接は終了となった)

Point 6
[面接官] この質問は応募者の価値観を探るためのものです。何を嫌だと思うかは、その人の価値観や倫理観に根ざしていることが多いものです。
 
[応募者] 答える側は、この質問には慎重にならざるを得ません。自分のネガティブな面を見せることになるし、面接官から「では、どうして、あなたはそれを変えようとしないのですか?」と突っ込まれる恐れがあるからです。

Point 7
[面接官] 転職の理由と実際に転職するきっかけとは、必ずしも一致しません。筋が通っていればよいのです。私はきっかけから先に尋ねますが、それは具体的で答えやすいからです。しかし、そのあとで理由を聞いてみると、明らかに食い違っている応募者もいます。



Point 8
[面接官] 5年後の夢を語るためには、現在の延長線上に「期待」を加味する必要があります。その「期待」とは、実は現時点で本人が重視する価値のことなのです。当社でその価値を実現できる見込みが全くないとなれば、残念ながらミスマッチとして採用を見送るほかありません。
 
[応募者] この質問は答えやすかったです。IIJテクノロジーへ入社したら、ネットワーク技術を大幅にスキルアップさせたいと考えていましたから、そうなる働き方を話したにすぎません。

面接官はここを見た!
●抽象度の高い論理的な思考力
●相手の納得感を得られるコミュニケーションスキル
●本人の血肉になっている技術力のレベル
 今回の第2次面接は、高度な業務を任せるITコンサルタントの選考だった。そのため、入社後に習得可能な技術のレベルの高さを見る。現時点での即戦力としての技術力も重要だが、さらに重要なのは抽象度の高い論理的な思考力とコミュニケーションスキル。これは単に言葉巧みという意味ではない。自らの思いまで含めて、好ましく、かつわかりやすく表現できるかどうかがポイントである。
飯田さんはコレで決めた!
「個別の質問や発言ではなく面接全体を通じて、
非常に整理されたスキのない内容という印象を受け、
会社としてのレベルの高さを感じました」
 面接官がよどみなく質問してくることや、こちらの回答を聞きっ放しにせずに踏み込んでくることから、とてもよく考えられた面接を受けている印象でした。レベルの高い会社だな、と実感しました。質問の内容自体も明快で、無理なプレッシャーや引っかけ問題的な質問もなく、私自身を正しく評価しようとしてくれていると感じました。これも入社の意思を強めた一因です。
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高橋マサシ(総研スタッフ)からのメッセージ
 飯田さんの応募時の職種は、ITコンサルタントではなくネットワークエンジニアでした。応募者の素養を判断した企業が職種変更の希望を伝え、コンサルタントを視野に入れていた飯田さんが了承したわけです。もちろん、職種内容を詳しく聞いたうえでの判断です。このように企業と応募者は対立するものではなく、互いに合致点を求め合うものです。
 あなたはどう感じましたか? ぜひ感想を聞かせてください。

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