「仕事でやる気が出ない」と感じる理由とは?30代向けにキャリアのプロが教えるしんどいときの対処法

なかなかやる気が出ない…と悩む30代ビジネスパーソンは、実は少なくないようです。中には「やる気が出ないなんて…」と自分を責める人もいるようです。

そうは言っても、仕事での責任も増しており、何とか頑張らなければならない世代でもあります。リクルートワークス研究所でキャリアデザインなどを研究する橋本賢二研究員に、30代がやる気が出ないと感じる理由、そして「やる気が出ない自分」とどのように向き合い、対処すればいいのかなどについて伺いました。

やる気が出ない30代のビジネスパーソンイメージカット
Photo by Adobe Stock

30代が「仕事でやる気が出ない」理由とは?

30代が「やる気が出ない」と感じてしまうのは、いくつかの理由が考えられます。

世の中には「やる気を出さねばならない」とする雰囲気がある

まず挙げられるのは、世の中が「やる気を出さねばならない」という雰囲気が強くなっていることがあります。30代に限らない話ですが、やる気が出ないことを不安に感じてしまうのは、これが大きな要因ではないでしょうか。

その理由として、先行きが見通しづらいVUCAの時代で、企業が従業員のキャリアを決めるのではなく社員自身がキャリアを考える「自律的なキャリア形成」が推奨されていることなどが挙げられます。また、世の中にはランキングや平均、割合など数値化した情報があふれて、「自分の現状」と情報から見えてくる「世間」とを比較しやすい状況にもあります。

例えば、自分の年収は○万円なのに、世間では同世代がこんなにもらっているとか、役職に就く平均年齢は○歳からといわれているのに、自分にはその予兆すらない、など。もちろん、それが奮起する材料となって、やる気になる人もいますが、逆にやる気を削がれている人も多いのではないでしょうか。

「何かをやる」ために必要な資源は、時間、お金、対象の3つですが、これらに関する情報が可視化されて溢れていることで、「自分には無理だ」というあきらめや、その先が見えてしまうことによる興ざめなどが起こり、やる気を減退にさせているのではないかと見ています。

重要な意思決定が重なりやすく、悩みやストレスが生じやすい

リクルートワークス研究所が行った「ワークス1万人調査(※)」で、人生に最も大きな影響があった意思決定は何かと聞いたところ、20~30代男性、20代女性は、進学や最初の就職の影響が大きく、40代以降の男性で結婚の影響が大きく、30代以降の女性で子の出生の影響が大きいことが分かりました。さらに、これらの意思決定のタイミングを年代別に調べたところ、転職や結婚は20代後半から30代前半、子の出生は30代で多いことがわかりました。

最も大きな影響があった意思決定

図表:最も大きな影響があった意思決定
※性別・年代別において第1位は濃いピンク・第2位は薄いピンクで色塗りしている

最も大きな影響があった出来事とその意思決定のタイミング

図表:最も大きな影響があった出来事とその意思決定のタイミング
(※)出典…リクルートワークス研究所『新しいキャリア論ハンドブック』

30代は、転職、結婚や子の出生など、人生に影響を及ぼすような自身のキャリアの転換期を迎えやすい年代です。年齢に関係なく転職が一般的になっていますが、自分にも身の回りにもキャリアの転機が多く生じている中で本当に今の会社、今の仕事でいいのかと悩む人もいるでしょう。30代になるとリーダーなどマネジメントを任される人も増えますが、その重圧にしんどさを覚える人も少なくありません。性別に関係なく結婚や子育てといった自分のライフと自身の仕事との関係で、キャリアの両立に悩む人も増える年代です。悩みやストレスからやる気を失ってしまう人もいるのではないでしょうか。

8,568通り、あなたはどのタイプ?

仕事でやる気が出ないときの対処法

やる気の源は、一人ひとりのパーソナリティや置かれている状況などによって変わるので、誰にも当てはまる万能の対処法はありませんが、2つの方法が考えられます。

今の自分の気持ちに向き合い、それを大切にする

やる気は精神や感情にも大きく左右されます。そこで、やる気を高めたいのであれば、まずは自分の気持ちと素直に向き合うことが大切です。

世の中的にはこのような流れだからとか、これが好ましいと言われているからなど、世間や見栄などは考えずに、いったん「今の自分の気持ち」に向き合い、自分が楽しいと思えることは何か、どういった決断をすれば心地いいと思えるのかを考えてみてください。前向きな感情と結びついたやる気には大きなエネルギーがあるので、自分の気持ちを尊重して行動することが大切。それがやる気を取り戻すきっかけになり得ます。

世間にあふれる「百聞」の情報よりも、自分の「一見」にこそ自分だけのオリジナルな価値があります。世間一般の数字よりも自分だけのN=1の体験には感覚や感情が伴うので、自分に対する説得力が圧倒的に異なります。

世間の流れや周囲の評判などに合わせて行動しても、自分が楽しくなければ長続きさせることは難しいです。やる気がなかなか出ないときは「自分はどうしたいのか」に立ち返ることを大事にしてほしいです。

自分の世界に閉じこもらず、外界との扉を1つだけでも開けてみる

自分の世界に閉じこもってしまうと、やる気を取り戻すことは難しいです。自分の世界の中だけに閉じこもっていると、その中だけであれこれと考えてしまい、どんどん苦しくなってしまいます。何か1つだけでもいいので、外界と通じている扉を確保しておき、定期的にその扉を開けることが大切です。

仕事や職場のことでやる気が出ないのであれば、学生時代の友人など仕事や職場と関係ない人と会って愚痴を聞いてもらうだけでも、気分が楽になると思います。他にも、習い事や趣味に没頭してみたり、仕事に関係のない本を読んだり、コンサートやライブに行ってみたりするのもいいでしょう。それがきっかけとなってやる気が出たり、新たな視点が得られたり、新鮮な気持ちになったりしてモチベーションが高まる可能性があります。

現状を変えるためには、何かを変えてみることが必要です。転職とか転居などのような大きなことでなくていいので、日常にあるちょっとした何かを少しだけ変えてみてください。いつもと違う人と会って話をしてみる、いつもと違うお店に行ってみるなどでも、気持ちを切り替えるきっかけになります。

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やる気が出ないときこそ、自分自身を大切にしよう

学生や20代の若いころは、自分が頑張ればどうにかなることも多かったと思いますが、30代は、自分だけではどうにも対処できない悩みが多くなる年代です。仕事でもプライベートでも、誰かの影響を受けたり板挟みにあったりして、気持ちが萎えてしまうこともあるでしょう。

そんな30代がやる気や自信をなくしてしまうことがあるのも自然な反応であり、その状態を卑下する必要はありません。多くの悩みを抱えている状態であっても、状況や条件が変われば別の結果になる可能性があります。自分の気持ちに向き合うことや、何か1つを変えてみることは、状況や条件を変えるきっかけになるかもしれません。やる気が出ないときこそ自分自身を尊重して、大切にしてほしいです。

 

リクルートワークス研究所・橋本賢二研究員_プロフィール画像リクルートワークス研究所 橋本賢二研究員

2007年人事院採用。国家公務員採用試験や人事院勧告に関する施策などの担当を経て、2015年から2018年まで経済産業省にて人生100年時代の社会人基礎力の作成、キャリア教育や働き方改革の推進などに関する施策などを担当。2018年から人事院にて国家公務員全体の採用に関する施策の企画・実施を担当。2022年11月より現職。2022年3月法政大学大学院キャリアデザイン学研究科修了。修士(キャリアデザイン学)

EDIT&WRITING:伊藤理子
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