仕事で評価されない…考えられる理由と対処法を紹介

仕事で思ったような評価がもらえないことに悩む若手ビジネスパーソンは少なくないようです。頑張っているにも関わらず、評価されないのはなぜなのでしょう?考えられる理由と対処法について、人事・採用コンサルタントの曽和利光さんに伺いました。

仕事で評価されないと悩むビジネスパーソン
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頑張っているのに仕事で評価されない理由と、その対処法

一生懸命仕事に向き合い、成果も上げているのになかなか評価されないという場合、いくつかの理由が考えられます。その理由を対処法とともにご紹介します。

Case1:自分の努力や頑張りを上司にアピールしていない

「陰徳を積む」という言葉があるように、日本人には「陰でひっそり努力する」ことを良しとする特性があります。「自分の仕事に一生懸命向き合っていれば、その頑張りを必ず誰かが見てくれているに違いない」とか、「自分から努力をアピールするのははしたない」などと考える人も少なくありません。

でも残念ながらそれでは、努力や頑張りが一向に上司に伝わりません。今は、自分から積極的にアピールしないことには、いくら頑張ったところで正当な評価が得られにくい時代になっているのです。

一昔前は、管理職の多くは文字通り「管理する仕事」に特化できていたので、部下の行動に目を配ることができていたし、誰がどこでいかに頑張っているのかという情報も積極的に収集できていました。

しかし、今は人手不足などから、管理職の大半がマネジメントだけでなく自ら業績貢献のために動く「プレーイングマネージャー」として働いており、どうしても部下一人ひとりにまで目が行き届かなくなっています。ましてや働き方改革やリモートワークの増加で、オフィスで時間をともにする機会が減っている今、ますます部下の努力や頑張りを把握するのが難しくなっているのです。

対応策は、「報連相で現状をこまめに共有する」

上司が評価してくれないならば、自分から普段の努力や頑張りをどんどんアピールしましょう。「上司にアピールするなんて気が引ける」という人もいるかもしれませんが、気持ちを切り替えるべき。前述のように、嫌でも自分をアピールせねば伝わらない時代であり、いくらひっそり陰徳を積んだところで現世では報われないと理解しましょう。

お勧めしたいのは、普段から報連相を通じて自分の現状をどんどん共有すること。たとえ求められていなくても日報や週報を作って上司に送ったり、「今度A社に訪問するのですが商談内容を聞いてもらえませんか?」などと相談したり、いいアイディアが浮かんだら「こんな案を思いついたのですがどうでしょう?」と立ち話でぶつけてみたりと、事あるごとに上司とコミュニケーションを取るのです。これらの行動を通じて、上司はあなたがどれだけ頑張っているのか正しくつかむことができるようになり、評価も変わってくるでしょう。

営業職など、成果が数字で見える仕事であってもアピールは必要です。例えば、同じ契約数であっても、まぐれで売れたものなのか、恒常的な努力の末に売れたものなのかでは、評価は当然変わってくるはず。契約を取るためにどんな努力や工夫をしたのか、日報やミーティング、1on1などの場で積極的に共有しアピールしましょう。

イキイキ働くビジネスパーソン
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Case2:上司と人物タイプが異なるため、無意識のうちに低く評価されている

人は誰しも、自分に似たタイプの人物に好感を持つものです。心理学で「類似性効果」と言いますが、これは悲しいかな、上司が部下を評価する際にも無意識下に存在します。同じような成果を上げている部下が何人かいた場合、自分と似たタイプの部下を無意識のうちに高く評価し、似ていない部下には低い評価を下す傾向にあるのです。

したがって、直属の上司とあなたの人物タイプが大きく異なるから、頑張っているにもかかわらず評価されていない…という可能性は考えられます。たとえば、とにかく顧客のもとに足しげく通い、人間力で関係性を築くような「足で稼ぐ営業」をしてきた上司は、同じようなタイプの行動力がありフットワークがよい部下をついひいきし、真逆のタイプである「机上で慎重に戦略を練ってから行動する」ような部下は低く評価しがちになるものです。

対応策は、「自分を買ってくれるリーダー層を見つける」

この場合、本来であれば上司に「類似性効果で評価を下している事実」に気づいてほしいところですが、部下から働きかけるのは相当難易度が高いと思われます。

有効なのは、上司と自分の間にいるリーダークラスの先輩の中で、自分の働きぶりを買ってくれる人を見つけること。そして、上司ではなくその人に、普段の努力や頑張りをアピールするといいでしょう。

上司は、自分1人の独断で部下の評価を下すことはほぼなく、周りの意見を集めて自分の目が届いていない部分を補完しながら一人ひとりを評価しています。自らがプレーイングマネージャーであり、マネジメントが手薄になっているのであればなおさら、信頼できるリーダークラスの声をできるだけ多く集め、評価の参考にしようとします。

そのとき、リーダーから「Aさんはすごく頑張っていますよ」「こんな工夫をして成果を挙げていますよ」などと伝われば、類似性効果による無意識の壁を乗り越え、正しく評価してもらえる可能性がぐんと高まるでしょう。

8,568通り、あなたはどのタイプ?

評価されないのは、実は自分側に原因がある場合も

前述の2つは上司側に原因があるケースですが、中には上司や会社のせいではなく、自分側に評価されない原因があるケースもあります。「いや、自分は頑張っている!」という人も、下記のケースに当てはまっていないかどうか念のためチェックしてみてください。

Case3:頑張りの方向性がずれている

そもそも会社や上司から求められていることや期待されていることと、自分の頑張りが合致していないと、当然ながら評価はされません。

頑張っているのに全然評価されないのであれば、もしかしたら頑張っている方向性がずれていて、会社や上司の期待に沿った働き方ができていない可能性が考えられます。たとえば、「今期は顧客数を増やしたいから、新規開拓に注力してほしい」と期待されているのに、1社1社との関係性構築に力を入れ過ぎて新規開拓がおろそかになっている…など。

仕事に対する価値観は人それぞれ違うと思いますが、基本的には「自分がやりたいことをする」のではなく「期待されている働きをする」ことを意識しないと、頑張りが無駄になり評価も下がってしまう可能性が大。評価を得たいのであればなおさら、会社や上司の求めることは何なのかを把握し、それに沿って行動することが肝心です。

対応策は、「求められている働きや成果を正しく確認する」

どの部署、どの職種においても、「今どんな働き方を求めているか」「何に注力してどんな成果を挙げてほしいか」は明確に示されているはずです。それを確認しないまま、自分の判断で勝手に良かれと思うことをしていては、期待とのずれが生じるのは火を見るより明らかですが、意外に確認できていない人が多いのです。

会社として掲げている「行動規範」や「バリュー」とずれた行動をしている可能性もあります。例えば、チームワークを重視している会社において、個人プレーでいくら高い成果を挙げたところで評価はされにくいでしょう。

まずは会社、そして部署やチームの方針を確認したうえで、上司に「特に期待されている働き」を詳しくヒアリングし、自分の行動にずれがないかどうか確認すること。もしもずれていると気づいたら、ただちに正しましょう。

Case4:自己評価が高すぎる

評価に不満を抱える人の中には、少数ではありますが「自己評価が異常に高い」人が一定数存在します。実は正当に評価されているのに、自己評価が高いために「評価されていない」と思い込んでいるだけ、という可能性もゼロではありません。

能力の低い人ほど、自分の能力を過大評価してしまうという悲しい傾向があります。この心理現象を「ダニング・クルーガー効果」といいますが、自己認知能力が低いがゆえに「自分はできる」と思い込んでしまっているのです。本人的にはこのうえなく頑張った!と思っていても、周りと比べてみると実はそうでもなかった…というケースは意外にあります。

対応策は、「周りと自分を比べてみて自分の『当たり前水準』を上げる」

仕事においては、頑張ったかどうかは相対評価で決まります。もしも自己評価が高すぎるのかも…と不安を覚えたのであれば、まずは自分の頑張りではなく、他の人の頑張りに目を向けてみましょう。
同じ部署、同じチームの人がどれぐらい努力し、どんな工夫をしてどれぐらいの成果を挙げているのか確認すれば、自分の頑張りは大したことない、もっと周りは努力している…と気づけるかもしれません。

そのうえで、頑張りのギアをもう一段上げてみましょう。周りの人の頑張りを目安に個人目標を設定したり、日々の業務一つひとつにおいて「いつもより少し上」を目指してみたりすると、自分の「当たり前水準」も徐々に上がっていくと思われます。

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今より評価されるためにやっておきたいこと

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今よりも評価される人材になるためには、これまでに紹介した対策を日常的に行うことをお勧めします。
まずは、普段から同じチームのメンバーなど他者の頑張りを観察すること。頑張っている人の努力レベルと自分とを定期的に比較し、もし後れを取っていたらもう一段頑張ってみましょう。
普段から周りを観察していると、自分の努力の方向性がずれていることに気づけたり、当たり前水準が下がっていると感じたりもできるので、気づいた時点でこまめに調整するといいでしょう。

そのうえで、「もう十分に頑張っている」と実感できたら、上司に自信を持ってどんどんアピールを。今や自分の努力や成果の説明責任は、被評価者である自分側にあります。陰でひっそり努力したところで誰にも何も伝わらないと理解し、意識を変えてください。

もし、さらに高い評価を得たいのであれば、社内で自分を引っ張り上げてくれる人を探すといいでしょう。
ある一定レベルまでは、自分の能力や成果で上がることができますが、上に行けば行くほどポジションは減り、ライバルも粒ぞろいになります。そこから先は自分の努力だけでは難しく、自分を認め引っ張り上げてくれる人の協力を得ながらチャンスをものにする必要があります。

自身の働きを認めてくれる上司や、さらにその上の上司を味方につけるのが最も手っ取り早いですが、上司とタイプが異なり類似性効果が得られない(=ひいきしてもらいにくい)場合などは、同じ部署に限らず社内全体に目を向けましょう。

たとえば全社横断のプロジェクトに手を挙げてみたり、社内の勉強会やセミナーに積極的に参加してみたり、全社イベント実行委員に有志として手を挙げてみたりするといいでしょう。いろいろなところに首を突っ込みイキイキ働くあなたに、目をかけてくれる上役が出てくるかもしれません。

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曽和利光さん曽和利光さん

株式会社人材研究所・代表取締役社長。1995年、京都大学教育学部教育心理学科卒業後、リクルートで人事コンサルタント、採用グループのゼネラルマネージャーなどを経験。その後、ライフネット生命、オープンハウスで人事部門責任者を務める。2011年に人事・採用コンサルティングや教育研修などを手掛ける人材研究所を設立。『「ネットワーク採用」とは何か』(労務行政)、『人事と採用のセオリー』(ソシム)、『コミュ障のための面接戦略』(星海社新書)、『人材の適切な見極めと獲得を成功させる採用面接100の法則』(日本能率協会マネジメントセンター)など著書多数。最新刊『定着と離職のマネジメント』(ソシム)も話題に。

EDIT&WRITING:伊藤理子

 

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