そろそろ結婚を視野にいれたいと思った時、社内恋愛もきっかけのひとつとして考えている人は減っているそうです。社内恋愛のリスクを懸念する声が多い中、キャリア支援やコンサルティング、結婚コンサルタントなど、幅広い領域で活躍されている川崎貴子さんは、「社内恋愛にはメリットがある」といいます。
「社内恋愛・職場結婚」について、イマドキ男女の意識や、メリットと注意点について話をうかがいました。
目次
「社内恋愛・職場結婚」は珍しい?
私は起業前、あるベンチャー企業に勤めておりました。半年ほど前、その頃の同期や仕事仲間の男性4名と話をする機会があったのですが、なんと私以外全員の伴侶が当時社内に居たお相手でした。彼らは社内恋愛からの結婚成就者たちだったのです。
またつい最近、とある大企業出身者のアラフィフお食事会に出席した際も、そこにいらした10人中8人が社内恋愛からの結婚だとおっしゃっていました。
「なんという高打率…!」
私は、彼ら彼女らが結婚したであろう15年~20年前の職場結婚の数に驚きを隠せませんでした。
なぜなら、ここ数年、創業経営者仲間の結婚式に参列すると、彼らの伴侶は、学生時代や起業時からの糟糠の妻もおりますが、多くは「合コン」「パーティ」などで出会っており、社内恋愛という言葉は最近もっぱら聞いていないからです。
イマドキ男女が気にする「社内恋愛のリスク」
また、私が3年前から手掛けている婚活事業「キャリ婚」で、現在婚活中の男性の面談を何百人と担当したのですが、彼ら(大手、ベンチャー、外資問わず)は口々に
「社内恋愛、職場結婚だけは嫌」
「別れたりもめたりしたら仕事に影響があるので嫌」
だと、まるでテンプレみたいに言っているのです。
片や婚活女性たちにこの件に関してヒヤリングした所、婚活男性達ほど頑ななNOでは無いにしても
「気まずくなった場合仕事がやりづらいかも」
「バレて異動させられるのは困る」
と、男性と同じように職場や自身のキャリアの心配をしており、若者たちの「社内恋愛」に対する意識は消極的なものであると肌で感じております。
社内恋愛・職場結婚が減っているのはなぜか?
いったいこの20年の間に何があったというのか…?
もしや私の気のせいではあるまいか?と調べてみると、少し前のものになりますがデータがありました。
結婚した時期が1991~1995年の回答者の間では35.4%で最多だった「職場で知り合った」が徐々に減少し、2011~2015年には19.9%に。
年代別も、40代では35.8%と最も多かった「職場で知り合った」が20代では18.7%とほぼ半減。
2019年現在はネット婚活も増えているので、「職場結婚」の数は更に減少しているのではないかと予想されます。
共働き夫婦が6割を占めるようになった今、昔のように“寿退社”“結婚が決まったら妻が転職すればいい”がスタンダードではなくなった状況も、職場結婚減少の理由の一つではあるでしょう。
他にも、セクハラやパワハラ・ルールの徹底、飲み会の制限、会社イベントの減少、働き方改革による残業撤廃など、この20年で労働者の権利はだいぶ向上したわけですが、同時に、部署を越えての共同作業や本音で話せる場が減り、職場の男女が「例え意中の人がいたとしても」距離感を縮めるきっかけが少なくなったのかもしれません。
(とはいえ、労働者の権利向上は大切な事なのでそれを否定している訳ではございません。むしろ推進したい派です)
このように当人たちの意識が変化したり環境が変化したりと、「社内恋愛、職場結婚」は減少傾向にあるようです。
が、あくまでも「働く女性の婚活支援者」という立場でフラットに意見させていただけるなら、私は「職場結婚」には賛成です。
次からお勧めの理由をお伝えします。
職場結婚・お勧めの理由1:本性が見極めやすい
仕事というのは真剣にやればやるほど、結構「素」が出やすいのです。お相手の仕事振りを直で見られる職場であれば、お相手の「本性を見極めやすい」ということになります。
人間がもしも3層構造になっていたとしたら、一番表層の部分は世間に見せたい自分であり、婚活含めてこの表層部分を見て人間関係やお付き合いはスタートします。
しかし、2層目を知るには、共に同じプロジェクトで仕事をしてみたり、共同作業してみたりしてわかる事が多い。ピンチの時に人のせいにする人なのか、部下をかばえる上司なのか、ちゃんと謝ったり、お礼を言ったりできる人なのかなどなど。
そして3層目はその人のトラウマやコンプレックスなど、残念ながら結婚したり共に生活しないとわからなかったりするのですが、よくよく観察していると、仕事中にその三層目も透けて見える事もあるのです。
職場結婚・お勧めの理由2:相性がいいケースが多い
前述した職場結婚を成就させた人たちは皆さん幸せそうでした。もちろん喧嘩もたくさんしてきただろうし、実際に職場結婚で離婚した人もいます。
しかし、成就者たちが言っていた
「元同じ職場だったので仕事に理解がある」
「共通の話題が多い」
は当たり前に、「同じ会社に採用されている」という時点で夫婦として相性が良いという可能性も高いのです。
アメリカの調査で、離婚するカップルと離婚しないカップルのデータを分析したところ、
「両親の職業、両親の教育方針、余暇の過ごし方、学歴etc、全ての成育過程において近しい二人の離婚率が低かった」
というものがありました。
色々な企業にお邪魔して社員の人たちと接すると、その企業の採用基準や方針がよくわかります。特にスキルや経験で採用されていない「新卒採用」で入社した人たちは、その企業が求めているであろう「ある一定の基準」や「空気」や「キャラクター」を持っているものです。それらは昨日今日身に着けたものではなく、育ちや価値観が近しい可能性が高いのです。
人生において一番の理解者が「伴侶」であるならば、価値観の近い者同士が一緒になるのは自然の摂理と言えるでしょう。
社内恋愛・職場結婚の注意点
とはいえ、冒頭で若者たちが心配していたように、社内恋愛・結婚は、変な形でバレたり、二人が結局上手くいかなかった場合、人間関係の悪化やキャリアのリスクになる事はあります。
INOUZTimes編集部が行った調査「あなたの会社は社内恋愛にオープンですか?」アンケート(「ハードルは意外と高い!?34%が社内恋愛はダメ」)
でもあるように、
「恋愛や結婚はプライベートな事なので」という肯定派がいる一方で、「社内に色恋沙汰は迷惑」「バレれば異動」など、厳しい意見もあり、昔より社内恋愛、職場結婚が全体的に減っているという事であれば、社内恋愛は数的にマイノリティであり、何かあった時の風当たりは厳しくなると予想されます。
よって、社風によって様々ではありますが、
令和の社内恋愛は、結婚などが決まるまで平成時代より更に隠密に動かれることをお勧めしたい所存です。
「プライベートのいざこざを会社に持ち込まない」
「お別れしても何事も無かったように社内で振舞える」
そんな大人の男女のみ許されるのが今時の「社内恋愛・結婚」なのではないかと思うのであります。
秘め事もまた甘美なりけり。
例え別れてしまっても「結婚する前に合わない事が解って良かった」と、結局オープンにしなかったから異動を免れた二人が、また仕事で協力し合うも良し。そして、新たなお相手を探すも良し。
20年後に笑って話せる社内恋愛、20年後も笑って共に過ごしている職場結婚を目指していただきたいと思います。
回答者:川崎貴子
リントス(株)代表。「働く女性に成功と幸せを」を理念に、女性のキャリアに特化したコンサルティング事業を展開。
1972年生まれ、埼玉県出身。1997年、人材コンサルティング会社(株)ジョヤンテを設立。女性に特化した人材紹介業、教育事業、女性活用コンサルティング事業を手掛け、2017年3月に同社代表を退任。女性誌での執筆活動や講演多数。(株)ninoya取締役を兼任し、2016年11月、働く女性の結婚サイト「キャリ婚」を立ち上げる。婚活結社「魔女のサバト」主宰。女性の裏と表を知り尽くし、フォローしてきた女性は1万人以上。「女性マネージメントのプロ」「黒魔女」の異名を取る。2人の娘を持つワーキングマザーでもある。