はじめての英語ビジネスプレゼン、失敗せずにうまく伝えるコツ~英語力に自信がなくても大丈夫!

ビジネスシーンで英語でのプレゼンテーションを求められてしまったら……。それがはじめての英語プレゼンとなると、とてもハードルが高いですよね。そこで今回はイングリッシュ・ドクター🄬西澤ロイさんが、『仕事の英語パーソナルトレーナー』河野木綿子さんに聞いた、英語に自信がなくてもビジネスプレゼンを成功させるコツを紹介します。

英語ビジネスプレゼン

まずは英語プレゼンのハードルを下げる交渉から

書籍『仕事の英語 いますぐ話すためのアクション123』(すばる舎)などの著書があり、現在はビジネスマン向けの英語トレーナーとして活動されている河野さんは、元外資系シニアマネージャーで、英語でのプレゼン歴は約20年。役員会でプレゼンを行なっては、ほぼ100%の承認を取る「切り込み隊長」として活躍された実績をお持ちです。

今回、河野さんにインタビューをさせていただいて強く感じたことは、ビジネスでの英語プレゼンテーションで一番大事なのは「戦略」――。どのような英語表現をすれば効果的か、などといった戦術ではなく、大局的な目をもって英語プレゼンを戦略的に捉えるべきだということです。そうすることで、“戦”いを“略”すると書く通り、成功に大きく近づけるのです。

英語プレゼンでよく聞く悩みが、「プレゼン自体は事前に準備ができるからなんとかなるが、Q&A(質疑応答)は厳しい」というもの。どんな質問が出るかも分からない上、質問自体が理解できない可能性さえあります。

そこで河野さんは、初めて英語プレゼンテーションを部長から命じられた時に、「説明だけは自分でできるようにしますので、Q&Aだけはお願いできますか?」と交渉したそうです。そして、約10分間の英語での説明だけに集中させてもらいました。

また、英語での会議ではプレゼンターが話している最中に、意見や質問が出ることもよくあること。10分くらいまでのプレゼンであれば、終わるまで質問を待ってもらえるようお願いしてみるのもありですね。

河野さんのように、英語プレゼンを言われたからやるのではなく、自分の最善が出せるように、ぜひ交渉してみてください。

<質問を待ってもらいたいときの英語表現例>
I’m going to have a Q&A session at the end of my presentation, so please hold the questions for a while.
(プレゼンテーションの最後に質疑応答の時間を持ちますのでご質問はしばらくお待ち願います)

相手に取ってほしい行動を明確に

戦略として、最初に考えておくべきなのは、プレゼンを聞いた相手にどのような行動を取ってほしいか、というメッセージ

日本人は、“話を聞いたのだからやってくれるだろう”と勝手に期待をします。日本人同士であればそれでうまくいくかもしれませんが、外国人は“説明は分かったが、だから何なの?”ということになり、プロジェクトが進みません。予算をください。人手が欲しい。サポートをお願いしたいなど、言葉にしてきちんと伝えることが重要だと、河野さんは言います。

ビジネスプレゼンの目的は、相手の心を動かし、相手の行動を引き出すこと――

「スティーブ・ジョブズやマーティン・ルーサー・キングJr.(キング牧師)の真似をしなくていいんですよ。TEDのプレゼンも聴衆の心を動かしますが、あれはアートであり、ビジネスプレゼンとは違う世界です。ビジネスでは、結果として相手に何かをしてもらうことが必要です。プレゼンがうまくなくてもいいし、英語が下手でもいいんです。とにかく、相手の心が動いて、行動をしてもらえれば勝ちなのです」(河野さん)

ビジネスシーンで役立つ「英語プレゼン」の構成の作り方

ビジネスでの英語プレゼンで核となるポイントは、河野さんによると以下の3つです。

1.メインメッセージ(取ってほしい行動を言葉で伝えること)
2.各論(なぜそうなのか理由を伝えること)
3.データ(裏付けとなるデータや実例)

1.メインメッセージ(取ってほしい行動を言葉で伝える)

まず忘れてはいけないポイントは、先ほど明確にした、「相手に取ってもらいたい行動」というメインメッセージを、先に伝えること。英語は、結論から伝える言語なのです。なお、個別の説明からではなく結論から入れるように、思考を切り替えられるようになるには少し時間がかかります。

<相手に取ってもらいたい行動を伝える英語表現例>
By the end of my presentation, you would have a better understanding about our project. Then, I would like to have your approval and support to go ahead.
(このプレセミナーを聞き終わるまでに、私たちのプロジェクトについて理解を深めていただけます。それを受けて先に進むためのご承認と支援をいただきたい)・If you agree to introduce the new evaluation system, I would like to have chances to negotiate each of the department heads within December.
(この新しい評価制度の導入にご賛同いただければ、各事業部の事業部長と12月中に交渉する機会をいただきたい)・If you are satisfied with our coverage of the service, can we have a chance to make this presentation at the senior board meeting?
(私どものサービスの範囲にご満足いただけるのでしたら、このご提案を御社の役員会でプレゼンテーションをする機会をいただけますか?)

2.各論(なぜそうなのか理由を伝える)

次に各論として、メインメッセージを支える理由を(できれば3~4つ程度で)伝えます。相手に行動してもらうためには、「会社にこういうメリットがある」などという相手の利益にフォーカスすることが大切です。

3.データ(裏付けとなるデータや実例)

そして、それぞれの理由について、その裏付けとなるデータや実例などを挙げることで、自分が伝えている情報が正しいということに対して、相手に確信を得てもらいます。

「提案プレゼンで出てくるのは、まだ結果の出ていない新しい話です。その承認を取りに行くわけですから、相手に『これなら大丈夫そうだ』と思ってもらえることが重要です。省庁が公開しているデータや、その業界で信頼されている有名な先生の発言など、ビッグネームを活用できるとより効果的です」(河野さん)

成果を報告するプレゼンを作成する場合の構成

なお、例えばプロジェクトの成果を報告するようなプレゼンテーションの場合には、特に相手の行動を求めることはないかもしれません。しかし、その場合でも、プレゼンの構成は変わりません。

まず、メインメッセージとして、報告の概要を先に伝えます。その後で各論として、詳細のポイントについてそれぞれ話していきます。そこで、報告を裏付けるデータや事例が入ってくるのは全く同じことです。

実際の英語プレゼンを作るときのコツ

まずはプレゼンでメインに伝えたい内容をどう構成するか、プレゼンテーションの全体を作成するコツをお伝えしていきます。

冒頭では「自己紹介」と「時間構成」を伝える

もちろん、英語プレゼンでも最初に自己紹介があります。ただし、日本人は『○○チームの山田です』などのように所属しか言わない傾向があります。

英語プレゼンでは、自分がこのプレゼンをするのにふさわしい人間である理由を、言葉で伝えることが大切です。学歴や専門知識、業績など、自分のふさわしさをしっかりと伝えましょう。それにより『この人の話なら信用できそうだ』と思ってもらえるのです。

そして時間構成について、何分くらいのプレゼンなのか、何について話すのかといったことを伝えます。もし、Q&Aの時間を最後に回したいのであれば、このタイミングで伝えてください。

最後の「まとめ」では、次のステップを忘れずに

メインメッセージ~各論~データという、プレゼンのメイン部分が伝え終わったら、次は「まとめ」が重要です。まずは、簡単に内容をおさらいしてください。

その次に忘れてはいけないのが「次のステップ」の確認です。例えば、以下のような発言は、英語の世界では全く言いすぎでも何でもありません。

<次のステップを確認する英語表現例>
How can I help you after this?
(この後はどのようなことをすればよろしいですか?)・Are there anything I can be of your help after this?
(この後、何かお手伝いできることはございますか?)・Can I make a presentation at the senior board meeting?
(役員会に私が行ってご説明しましょうか?)

日本ではプレゼンが終わった後で上司に『プレゼン、どうだった?』と聞かれ、『たぶん、うまくいったと思います』と答えるような場面が多くあります。でも、英語でプレゼンするならば、次の機会や次のステップを取って帰らなくては意味がありません。遠慮することなく、それを伝えるべきだと河野さんは強調します。

ユーモアを無理に入れる必要はない

できるビジネスマンはユーモアが得意だと言われることがありますよね。そこで、ユーモアを入れた方が良いのかどうか、河野さんにお尋ねしてみました。

「たしかに、トップの人などは、最初にジョークをぶちかましてきます。しかし、私たちにはそれは特に不要です。なぜなら、ユーモアとは相手をなごませるもの。ビジネスプレゼンにおいて、相手はこちらの提案を聞く側であり、既にリラックスしています。下手なジョークが滑った時のダメージの方が大きいと言えます」(河野さん)

英語力をカバーする、デキる英語プレゼン資料の作り方

聞き手に読ませてはいけない

投影したスライドで日本人がよくやりがちなのは、小さな文字で情報をたくさん詰め込むことかもしれません。

読んで分かるなら、そもそもプレゼンをやる必要がありません。あくまでもスライドや配布資料は脇役であり、プレゼンターに耳を傾けさせることが大切です。また箇条書きにする場合、一文の語数は10 wordsまでにしましょう。それ以上になると聞き手の目はスライドに貼りついてしまいます。

特に、グラフなどを載せる場合には、データラベルが小さくなってしまうことが多いので注意が必要です。その場合には、凡例として文字を拡大して載せるなどの工夫がいるでしょう。

小さくて読めないものは絶対に載せてはいけません。聞き手は見ようとして、そこにばかり意識が向いてしまいますし、読めないとイライラさせてしまいかねません。フォントサイズは20ポイント台では小さすぎます。少なくとも30~40ポイント台にしましょう」(河野さん)

大事なメッセージほどページの上方に

日本語のプレゼンでは、結論を画面の下の方に表示させる人も少なくありません。しかし、画面の下は、広い会場だと、前の人の頭で見えない可能性があります。また、繰り返しになりますが、英語は結論から伝える言語ですから、大事なメッセージほど、ページの上の方に載せるべきなのです。

人間の目線は上から下、左から右へと移動します。だから、重要なメッセージは上に載せるべきですし、大事な表などは左半分に置き、説明やポイントなどは右側に書きましょう

英語プレゼンで絶対にやってはいけないこと

最後に、英語でのプレゼンテーションで絶対にやってはいけないことを紹介します。

原稿を暗記してはダメ!

まず、プレゼンの原稿を作るにしても、長い文章を作らないようにして、SVOでシンプルに伝えることを心がけましょう。また、英語は暗記科目だと誤解していると、原稿を丸暗記してしまいがちです。しかし、「暗記は絶対にしないでください」と河野さんは言います。

予想以上に緊張してしまい、頭の中が真っ白になってしまうことだってあり得ます。忙しい役員を相手にプレゼンする場合には、当初は10分の予定だったのを3分に変更してと言われることだって珍しくありません。

ちなみに、台本を暗記するのではなく、キーワードだけを覚えるのがオススメとのこと。河野さんは、資料の3ページ分を1ページに打ち出した資料を持ち、キーワードを端に書いておくことが多かったそうです。

また、スライドに関して、そのページの落としどころを一言で言えるように、要点を頭に入れておくことも大事です。そうすることで、突発的なアクシデントにも対応がしやすくなります。

聞き手を迷子にしないように細心の注意を!

手元に配布資料がある場合に、いま何ページのどこの話をしているかを明確に伝えることで、聞き手を迷子にしないようにしてください。そのためには、視線を誘導する表現や、表などの説明をする表現が欠かせません。

<聞き手の視線を誘導する英語表現例>
Please open Page 18.
(18ページを開けてください)・Please look at the chart at the top on the right side.
(右上にある表を見てください)・In the middle of the left side, there is a chart that represents “Countries with Large Numbers of Immigrants”.
(左側の真ん中にあるチャートは「受け入れ移民数の多い国」を示しています)

どこの話をしているのかが分からなくなると、脱落する人が出てしまいます。それだとあなたが『聞き手の立場に配慮がない人だ』という誤ったイメージを持たれてしまいます。

また、表やグラフの見方も説明した方が良いケースもあるでしょう。

<表やグラフの見方を説明する英語表現例>
The vertical axis shows the population in millions. And the horizontal axis represents the
names of the countries.

(縦軸は人口、単位は100万人です。いっぽう横軸には国名を示しています)・The horizontal axis covers the a duration of time between 2000 and 2019 from the left to the right.
(横軸は左から右へ2000年から2019年までを表しています)・This chart shows the changes in average house prices between 1980 and 2000.
(このチャートは1980年から2000年までの住宅価格平均の変化を示しています)

「ぶっつけ本番」は絶対にダメ

プレゼンで大事なのはリハーサル。かのスティーブ・ジョブズも、何度もリハーサルを重ね、練習をしていたと言います。いきなりスライドを完成させようとするのではなく、会社の会議室でリハーサルをしながら仕上げていくことがオススメです

実際に声に出して話してみると、話の流れがスムーズにいかない箇所が出てくるものです。ページの順番を入れ替えたり、不要な箇所を削ったりしながら、自分自身が納得して話せる内容に仕上げていきましょう。

また、ある程度の完成度になったら、ダメ元で上司に聞いてもらえるようお願いしてみるのも良いでしょう。

「あなたが良いプレゼンをできることは、上司にとっても大切です。上司はあなたのことをよく知っているでしょうから、的を射たフィードバックがもらえるはずです。また、プレゼンの内容について、上司の確認が取れているという事実は、本番での安心感にもつながりますよ」(河野さん)

まとめ:英語は下手でも大丈夫

百戦錬磨の河野さんでも、実は一度だけ、プレゼンを結論ではなく説明から入ってしまい、失敗しかけた経験があるそうです。このエピソードが示していることは、まさに戦略が重要だということであり、英語力自体は、そこまで大きな問題ではないのです。

ぜひ、相手に取ってほしい行動を明確にし、そこから各論にブレイクダウンして、英語プレゼンのメイン構成を作ってください。そして、キーワードをしっかりと覚え、何度もリハーサルをすることで、プレゼンの完成度を高めていきましょう。

「あなたがする提案のプレゼンによって、相手の会社が良くなる、という明確なメッセージさえあれば、英語は下手でも大丈夫です。大きい声で堂々としゃべってください。あなたのプレゼンが成功することを心より願っています」(河野さん)

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著者プロフィール

西澤ロイ(にしざわ・ろい) イングリッシュ・ドクター

TV・ラジオでおなじみのイングリッシュ・ドクター(英語の“お医者さん”)。英語に対する誤った思い込みや英語嫌いを治療し、心理面のケアや、学習体質の改善指導を行なっている。英語が上達しない原因である「英語病」を治療する専門家。ベストセラーとなっている『頑張らない英語』シリーズ(あさ出版)や『TOEIC最強の根本対策』シリーズ(実務教育出版)他、著書多数()。さらに、ラジオで4本のレギュラーがオンエア中。特に「木8」(木曜20時)には英語バラエティラジオ番組「スキ度UPイングリッシュ」が好評を博している。★「イングリッシュ・ドクター」公式HP(

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