ドラマ『俺のスカート、どこ行った?』に学ぶ、常識にとらわれず部下の相談に乗る方法

社会人になって1~2年経つと後輩ができたり、早い人は3年ほどで部下を持つようになります。その時、仕事の悩みやプライベートで起こったトラブルなどの相談を受けることもあるでしょう。そうなると、どうやって相談に乗ればいいのか判断に迷う人もいるのではないでしょうか。

古田新太さんがゲイで女装家の教師・原田のぶおを演じる『俺のスカート、どこ行った』では、主人公ののぶおが世の中の常識をぶっ壊して、生徒に人としての生き方を説いていきます。ただ生き方を説くだけでなく、人の弱さに寄り添いながら、厳しくも温かく様々な問題を解決ていくのが印象的です。のぶおの考え方から、「常識にとらわれず、後輩や部下の相談に乗る方法」を学びましょう。

【1】取引先が、こちらの要望を受け入れてくれないと相談されたら?

原田のぶお(古田新太)は赴任早々、2年3組の担任を受け持つことに。しかしホームルームで、生徒の東条正義(道枝駿佑)と対立してしまいます。生徒の名前を覚えず、「お前」と呼び続けるのぶおに、東条は「出席簿の名前ぐらい、ちゃんと呼んでもらえません?」と反発します。(1話より)

のぶお「お前が私に向き合ってほしいなら、まず、お前が私と向き合いなさい。こそこそ笑ってバカにして、そんなやつと向き合いたくないわよ、私!」

他人のせいにする前に、まず自分のやり方を顧みる

物事がうまくいかないことを、他人のせいにしている人がいたら、まずは「自分のやり方」がおかしくないのか顧みるようにうながしてみましょう。人生経験や仕事の経験値が少ない人ほど、仕事で思い通りに進まなかった時に、他人のせいにしてしまいがちです。時には、「あの取引先、全然商談が進まないし、担当者が話を聞いてくれない」などと、顧客のせいにする新人がいるかもしれません。

そういう時は、あえて厳しく「取引先を動かしたいのなら、まず自分から変わろう。取引先を動かすために何ができるのか、もう一度自分がやるべきことを考え直せ」と指導するのも一つの手です。

自分ができることを最大限やり尽くす前に、他人を批判したり評価したりしている新人から相談を受けたら、このように答えてみましょう。

8,568通り、あなたはどのタイプ?

【2】仕事がうまくいかない、と言われたら?

のぶおの同僚、長井先生(松下奈緒)は、のぶおが生徒たちと親密にコミュニケーションしたり、生徒や他の教師を動かす様を見て、「私は、生徒にあんなふうに慕われたことはありません」と、落ち込みます。その長井先生を、のぶおはこう励ましました。(7話より)

のぶお「あんたは、あんたができることをやればいいのよ。あんたは、あんたらしく。できることを」

いきなり解決策を提示せず、前向きになるよううながす

まず、落ち込んでいる人に対していきなり「もっとこうすればいい」「あなたのここが悪い」と解決策を提示したり、ダメ出しをしても、相手に受け止めるだけのキャパシティがないかもしれません。その前に、一度、落ち込んでいる相手の気持ちを受け止めた方がいいでしょう。

まずはネガティブになっている相手の気持ちを、前に向かせることが先決ではないでしょうか。そのためには、「社歴や経験年数の違う誰かと比べることをやめ、あなたができることから始めよう」と、今現在のその人自身を受け入れるところから始めたほうがいいかもしれません。

そのうち、気持ちが前向きになってきた時に、改めて「もっとこうした方がいい」などの改善策などを伝えてみてはどうでしょうか。

8,568通り、あなたはどのタイプ?

【3】後輩や部下から深刻な相談をされた時、どう本音を引き出す?

文化祭の準備中、何か相談ごとがありそうな素振りで、のぶおを呼び止める生徒の一人、光岡(阿久津仁愛)。なかなか話出さない様子を見て、のぶおはこう言います。(8話より)

のぶお「どうしたの、黙り込んで。そんなに言いにくいことなの? どうしたら言いやすくなるのか、教えてみ? ちゃんと聞いてあげるから。言いやすくなるまで、待っててもいいし。口で言いにくかったら、字で書いてもいいよ」

あえて深掘りせずに心が開くまで待つ、という選択

誰かに相談をされた時、「何があったの?」「なぜそう思うの?」そんな風に矢継ぎ早に深掘りし、ヒアリングする人が実は多いのではないでしょうか。しかし、それは一体、誰のために聞いているのでしょう。もしかすると、相談される「自分」が聞きたいことを聞いているだけかも知れません。深刻な問題は、相談者が心を開いてから本音や事実を話してくれたほうが、解決へ向かいやすいのではないでしょうか。

その時、相手の立場に立って「どうしたら言いやすくなるの?」「言いやすくなるまで待つ」「紙に書いてもいい」と、相手が話しやすくなるように提示することで、「この人になら本音で話をしてもいい」という気持ちになるのではないでしょうか。

正面突破で、「どういうこと?」「なぜ?」と具体的に掘り下げて聞いても、相談者は話をする心の準備ができていないかもしれません。

傷つくことも、哀しいこともたくさん経験してきたのぶおだからこそ、「ただ寄り添うこと」ができるのでしょう。後輩や同僚から、悩みごとを相談されたら取り入れてみてはいかがでしょうか。

【4】新しいことにチャレンジしたい、と相談されたら?

文化祭で「男子生徒が女装、女子生徒が男装して接客するバー」をすることになったのぶおのクラス。その時、女装を通じて「ずっと自分は女の子の格好がしたかったんだ」ということに気付いた、生徒の光岡。女の子の格好をしたいんだと、のぶおに打ち明けます。(8話より)

のぶお「どんな格好をしても、光岡は光岡。そのままの光岡なんだから。誰かを傷つけるわけでもないし。理解できない他人を、怖がりすぎる必要はないよ。好きなように、やってみれば?」

チャレンジすることのメリット・デメリットを伝えて背中を押そう

誰しも新しいチャレンジには及び腰になるもの。その時、誰かに自分の決断を指示してほしいと思っている人は多いのではないでしょうか。のぶおの回答には、

(1)チャレンジした後も自分は態度を変えないと安心させる
(2)新たなチャレンジをしたことで起こるメリット・デメリットを伝える
(3)背中を押す

の3ステップが隠されています。

誰しも、新しいチャレンジは怖いもの。新しい一歩を踏み出したいと考えた時、一人で新しい世界に立ち向かう勇気が出ず、誰かに相談したくなることがあるでしょう。その時、新しいチャレンジをしても態度を変えず、自分のことを受け入れてくれる誰かがいれば、その一歩を踏み出しやすくなるのではないでしょうか。

このときののぶおの答えは、まず、(1)「光岡は光岡である」と、本人のパーソナリティを受け入れる意思表示をしています。どれだけ新しいチャレンジをしたとしても、のぶおは態度を変えないと伝え、光岡を安心させました。

次に、(2)「誰かを傷つけることはない」「他人を、怖がりすぎる必要はない」とチャレンジすることで起こることや、メリット・デメリットを伝えています。そのことで、例え新しいチャレンジをしたとしても、悪いことは起こらないと安心させています。

そして最後に(3)その上で、そっと背中を押す。チャレンジしても、自分は変わらないし、悪いことは起こらない、だから新しい世界に踏み出そうと安心させた上で、本人の意思を尊重し、その一歩を踏み出させます

未知の領域にトライすることは、本人にとって恐怖心や人が離れていくかもしれない不安感と隣合わせ。そこに寄り添いながら、一歩を踏み出す力を与えてあげるといいのではないでしょうか。

<番組情報>

『俺のスカート、どこ行った?』(日本テレビ)

ゲイで女装家、52歳の新人教師・原田のぶおが、高校にやってきた!かつてゲイバーを経営していたが、「ある目的」を達成するため、国語教師として学校に赴任。歯に衣着せぬ物言いで、生徒も同僚教師の心も鷲掴み。型破りな先生が、学校でどんどん問題を解決してく新型・学園テンターテインメントドラマ。出演は古田新太、松下奈緒、永瀬廉、道枝駿佑、長尾謙杜、髙橋ひかる、いとうせいこう 荒川良々 大倉孝二 じろう(シソンヌ)他。脚本は劇作家としても活躍する90年代生まれの気鋭、加藤拓也。

WRITING:石川香苗子
新卒で大手人材系会社に契約社員として入社し、2年目に四半期全社MVP賞、年間の全社準MVP賞を受賞。3年目はチーフとしてチームを率いる。フリーライターとして独立後は、マーケティング、IT、キャリアなどのジャンルで執筆を続ける。IT系スタートアップ数社のコンテンツプランニングや、企業経営・ブランディングに関するブックライティングも手がける。学生時代からシナリオ集を読みふけり、テレビドラマで卒論を書いた筋金入りのドラマ好き。テレビやドラマに関する取材記事・コラムを多数執筆。
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