スライドをパクられる、プレゼンの反響がスゴイ…成功談から学ぶコツ【後編】──澤円のプレゼン塾

澤は、これまで成功体験によって自信を付け、プレゼンスキルを高める努力をするためのモチベーションとしてきました。
「成功体験を言語化」し、自分のプレゼンの「成功要素」を定義しておくことは、その成功体験を繰り返すためにとても大事なポイントです。ぜひ皆さんもチャレンジしてくださいね。

成功体験3:スライドや表現をパクられる

前回に続いて紹介する澤の成功体験。今回の「スライドや表現をパクられる」というのは結構ギリギリなテーマではあるのですが(笑)。

プレゼンテーションで自分が使ったスライドや、説明のために作った説明文や比喩表現などが、他者のプレゼンテーションに登場してくるのは、澤は「成功体験」と定義しています。

マイクロソフトでは、本社CEOのサティア・ナデラなどの役員から発せられるメッセージは、PR担当者が各国語に訳したものが「公式コメント」として使われます。

澤は、もちろんそれはそれで尊重するのですが、常に「より伝わりやすい表現」を模索し、内容が変わらないように気を付けながら別の文章に置き換えてプレゼンで紹介することがあります。

そのプレゼンを聴いた社員が、「澤の表現の方が話しやすいし伝わる」と言って、別のプレゼンの場で流用してくれたりします。

著作権などの問題があるので、澤の知らないところで勝手に自分のものとして使われてしまうのは困りものですが、「その表現、使わせてください」と言ってもらえるのはとても嬉しいものです。

プレゼン講座でもよく申し上げているのですが、「上達のためなら、模倣は遠慮なくしましょう」が澤のモットーです。

弊社エバンジェリストの西脇資哲のようなトップレベルのプレゼンターからは、同僚といえども無尽蔵に学ぶものがありますし、TEDなどを見ていれば世界中の成功者や挑戦者の皆さんのリアリティあふれる言葉に触れることができます。彼らも模倣されることでさらに自信をつけ、そしてもっと自分で成長していることでしょう。

私も、いろいろな人がスライドを流用したり説明の時の大事なキーワードや例え話などを使ったりしてくださることが、とても励みになりますし自信につながります。

澤がプレゼンテーションにおいて最も重きを置いており、他の方々との差別化ポイントにしようと日々精進しているのが「言葉選び」です。(英語でいうところの「Wording」ですね)

同じ話をするにも、なるべく澤が言った言葉が相手に残るように、他の人たちよりもずっと深く印象付けられるように言葉を磨いています。

プレゼンの時に使えばただの一言に過ぎないのですが、この連載でも紹介したように「プレゼンは伝言ゲームのスタート」です。伝言ゲームがきっちりと完遂するように、徹底的に磨いた言葉を使います。

磨き抜かれた言葉は、プレゼンテーションで他の方が使っても、その言葉が使われている背景を正しく理解しさえすれば、かなりの効果を上げることができます。

自分プレゼンで使われた言葉が、しっかりと内容も理解された上で他のプレゼンターが使っているのを見聞きすると、本当にモチベーションが上がります。(反対に、言葉だけをまねてスベッてしまっているのをみると、いたたまれない気持ちになりますが…)

これからも、自分が模倣の対象となるようなプレゼンテーションができるように、しっかりと日々勉強をし、研鑽を重ね、自分にとってもっとも厳しいレビュワーでありたいものです。

8,568通り、あなたはどのタイプ?

成功体験4:言語化されたフィードバックを得る

マイクロソフトでは、大きなイベントで多くのセッションが開催されると、「NSAT」と呼ばれる点数で順位付けがされます。これは、聴衆のアンケートにつけられる点数を、ある計算式で算出するのですが、まさに「プレゼンターとしての格付け」の様相を呈します。

おかげさまで、澤は何度もこのNSATでトップ点数をいただいたことがあり、それは大きな自信となっています。

ただし、単に「わーい、トップになったー!」ではだめですね。きちんとそれを言語化し、そして自分の伝えたいと思っていた内容が伝わっていることと、オーディエンスがつけてくださった点数がリンクしていなければなりません。

例えば、クラウドについてプレゼンテーションをした後、聴いてくださった方が「今までのマイクロソフトの印象が変わりました!ぜひともクラウドの選択肢のトップにマイクロソフトを位置づけるように、弊社役員に伝えます!」なんて言われたら、もうこりゃ大変です。最高の気分で打ち上げ会場にスキップで直行です。

そして、アンケート結果がそれを裏付けるように高得点であれば、プレゼンの内容と結果がきっちりと連動していると読み取れるわけです。

この成功体験を得るためには、一つ前に紹介した「質問が出しやすい雰囲気を作る」という行動を強く意識しなくてはなりません。そうすることで、聴衆側から感覚的ではなくしっかり言語化されたフィードバックをもらえることになります。

言語化されたフィードバックは、ポジティブなものであれば猛烈な自信として自分の糧にすることができますし、ネガティブであっても修正点が明確になっていると受け取ることができます。

澤がマイクロソフト社内でマネジメントしているチームには凄腕プレゼンターがそろっていて、その中の一人は組織的にはボクの部下でありながら、澤の指南役でありメンターでもある人物がいます。

その人曰く「私は、今まで失敗したことがないんですよ」。

ついついなんたる自信過剰な!と思ってしまうところですが、その後に続く言葉は「少し想定した結果と違っていたので、修正するためのヒントが得られました」となるわけです。これこそ、言語化されたフィードバックが活きる思考ですね。

落ち込んだり言い訳考えたりする暇があれば、「どうすれば次にいいプレゼンができるか」と思う方が建設的です。

いい結果を喜ぶのもすばらしい成功体験ですが、いまひとつの結果だったとしても、「改善のヒントが得られた」と思えば、別の種類の成功体験ですね。そう思えるようになるのは、ちょっと精神的な鍛錬も必要かもしれませんが(笑)。

いかがでしたでしょうか。今回は成功体験をテーマにお送りしてきました。

とはいえ、澤もそれはそれはたくさんの、思い出したくもないような失敗もたくさんしてきました。とはいえ、過去は変えられません。そして、他人の思考を変えることもできません。その場合は、自分がどんどん変わっていくしかないですね。

皆さんのプレゼンテーションが大きな飛躍を遂げることをお祈りしております!

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(撮影:栗原克己)

著者プロフィール

澤 円(さわ まどか)氏

大手外資系IT企業 テクノロジーセンター センター長。立教大学経済学部卒。生命保険のIT子会社勤務を経て、1997年より、現職。情報共有系コンサルタントを経てプリセールスSEへ。競合対策専門営業チームマネージャ、ポータル&コラボレーショングループマネージャ、クラウドプラットフォーム営業本部本部長などを歴任。著書に「外資系エリートのシンプルな伝え方」「マイクロソフト伝説マネジャーの世界No.1プレゼン術
Twitter:@madoka510

※本記事は「CodeIQ MAGAZINE」掲載の記事を転載しております。

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