「ファンを獲得する」プレゼンに必要なものとは?──澤円のプレゼン塾(その13)

澤さんの行うプレゼンには、数多くのファンが存在します。そのファンはどのように獲得しているのでしょうか?
澤円のプレゼン塾・第13回は、ポジティブな姿勢で聞いてくれる「ファンを生み出すプレゼン術」についてお伝えします。
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ファンを作る、という心構え

オーディエンスの心をつかみ、その先に伝わっていく様子を想像する。

これは、まさしく「ファンを作る」ためのアクションだと言えるでしょう。

優れたプレゼンテーションは、多くのファンを生み出します。以前登場いただいた織田信長さんも多くのファンがいたことでしょう。(今でも歴史好き・ゲーム好きには不動の人気ですが)

リンカーン大統領やキング牧師、アップルのジョブズCEOも、紛れもなくプレゼンテーションによってファンを増やす名人でした。彼らは限られた時間の中で、練りに練られた「核」のあるプレゼンテーションを行い、多くのファンを獲得することに成功しました。

プレゼンによって聴衆をファンにすると、あらゆることがうまくいきます。

プレゼンをするあなたの言葉を、常にポジティブな姿勢で聞いてくれますし、多くの有用なフィードバックを返してくれるようになります。

  • ファンは、いつも味方になってあなたのプレゼンを支えてくれます。
  • ファンは、無条件にあなたに時間と、場合によって対価を用意してくれます。
  • ファンは、あなたの成長を助け、その成長を認めてくれます。

とはいえ、ファンを作るのはそう簡単なことではありません。AKB48の例を出すまでもなく、ある程度の環境が準備されたとしても、すべての人が平等にファンを獲得することはないのです。

ファンを作るという行為は、チャレンジしがいのあるものです。どうやっていけばいいか、一緒に考えてみましょう。

8,568通り、あなたはどのタイプ?

ファン心理を理解する

人はなぜファンになるのでしょうか。

皆さんも、何かしらファンであるものが存在しませんか?
自分がなぜその人なり作品なりのファンになったのかを掘り下げていけば、何かが見つかるかもしれません。

ファンになる心理は、どういうものがあるでしょうか?
ファン心理に関する研究は数多くなされているので、専門的な分析はそちらに任せるとして、私なりの考察をしてみたいと思います。

ファンになる心理には二つの側面が考えられます。

  • 自分の価値観と一致している
  • 新しい体験がある

では、それぞれのパターンについて考えてみましょう。

「自分の価値観と一致している」というのは、たとえば芸能人を見たときに「好みの顔をしている」とか「歌声が好きだ」とか「演技が自分の求めているテイストだ」とか、そんなところですね。

映画やドラマであれば「主人公の考え方に賛同できる」とか「あの街並みの描写がツボだ」といったあたりでしょうか。

自分が肯定されたとき、人はポジティブな気持ちになります。芸能人や映画やアート作品は、直接ではないにせよ自己肯定感を促す作用があると言ってもいいでしょう。

ファンの人たちは、対象に向けて自分を投影し、その価値観の反射を楽しんでいるとも言えます。要するに、自分を重ね合わせているわけですね。

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ファンの心を掴むアプローチとは

では、プレゼンにおいてはどのようにこれは作用するのでしょうか。

「そうそう、それを言いたかったんだよ!」というオーディエンスのツボをついてあげれば、「価値観の一致によるファン化」につなげることができるのです。オーディエンスが求めている答えを、わかりやすい形で言語化・記号化して伝えるのです。

そう、その機能が前々から欲しかったんだよね!」とか「そのコード記述がパフォーマンス向上の鍵だって思ってたんだ!」とか、そういう感じです。

では、そのツボはどうやって探すのでしょう。これはどのような形でファンを掴むのかによってアプローチが変わります。より多くのファンを獲得したいのであれば、プレゼンテーションの論点はシンプルかつ一般的になります。

一部の熱狂的なファンを獲得したいのであれば、限定的な人にしか分からないような、マニアックなテーマ設定が必要になります。どちらの方が正しいとか、どちらの方に価値があるとか、そのような差別化は必要ありません。

プレゼンテーションを行う場面や相手によって変えていけばいいのです。あるいは「自分はマニア層担当!」というブランディングをしてしまうのもの大いに結構。エンジニアとして最大限の価値提供ができればいいのですから、ファンが一般大衆であろうとマニアであろうと関係ありません。

ただし、どのようなファン層を獲得しようとする場合であっても、自己満足になってしまっては相手に肯定感を与えることはできません。

しっかり想像力を駆使して、オーディエンスの求めている答えを定義することが不可欠です。ここでも以前紹介した「第三極の思考」が活躍しますね。詳しくは「その7」をご覧ください。(その7記事はこちらから)

──次回「どうしたら“カリスマ・プレゼンター”になれる?」に続きます。

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撮影:栗原克己

著者プロフィール

澤 円(さわ まどか)氏

大手外資系IT企業 テクノロジーセンター センター長。立教大学経済学部卒。生命保険のIT子会社勤務を経て、1997年より、現職。情報共有系コンサルタントを経てプリセールスSEへ。競合対策専門営業チームマネージャ、ポータル&コラボレーショングループマネージャ、クラウドプラットフォーム営業本部本部長などを歴任。著書に「外資系エリートのシンプルな伝え方」「マイクロソフト伝説マネジャーの世界No.1プレゼン術
Twitter:@madoka510

※本記事は「CodeIQ MAGAZINE」掲載の記事を転載しております。

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