生活のために働く必要のない時代がやってくる!?人生100年時代の“幸福な”キャリアの作り方

「人生100年時代」と叫ばれ、働き方改革も進む中、私たちのキャリアはますます不確実性が高まっています。今回お話をうかがった並木将央さんは、2011年の起業以来、人口減少を前提とした「成熟社会」における働き方をテーマにコンサルティングや教育事業などを手がけられてきました。
全3回の記事の第2回として、私たちが「これからの成熟社会で、幸せな生き方や働き方を見出していくためのヒント」を並木さんにお聞きしました。

⇒第1回はこちら

株式会社ロードフロンティア代表取締役 並木将央さん

東京理科大学大学院の電気工学専攻修士課程を修了後、日本テキサス・インスツルメンツの筑波研究開発センターに入所。2011年に法政大学専門職大学院イノベーション・マネジメント研究科を修了し、中小企業診断士資格およびMBAを取得。
同年に設立したロードフロンティアでは、コンサルティングやマーケティング支援など、経営を総合的にサポートする事業を手掛けている。2014年にはThe Japan Timesが選出する「100 Next-Era Leaders IN ASIA(次世代のアジアの経営者100)」に選出され、早稲田大学エクステンションセンターなど、国内外での教育事業も行っている。

“生活のために”働く価値観は過去のものに

――並木さんは、これからの日本の社会変化を、どのようにお考えでしょうか。

私は、2014年からはじまった人口減少を前提とした社会を、「成熟社会」と呼んでいます。それまでの、いわば「成長社会」とはまったく異なる社会構造になり、価値観の変化も起きてくる。

2018年現在は1年間に38万人ですが、向こう30年で平均すると実は1年間に人口は平均82万人減るという推計もあります。これは県によっては人口がまるごといなくなるほどのインパクトです。そうなると、商品やサービスが供給過多になるのは当然でしょう。しかも、昨今はシェアリングエコノミーが拡大して、個人間売買ができるオークションやフリマサービスも登場したりと、ますます従来のビジネスは通用しなくなっていきます。

――なるほど。それでは、成熟社会において、個人の働き方はどのように変わっていくのでしょうか。

「生活のために働く」という価値観がなくなると考えています。もちろん、AIやIoTなど技術的な要因もあるでしょうが、そもそも、働くという概念が義務ではなく、限りなく趣味化していくはずです。第1回でパラレルキャリアの話をしましたが、「生活をするための稼ぎはこの仕事」「自分がやりがいを感じるのはこの仕事」といったように分ける人も出てきている。

これは、かつて人間にとって長距離を歩くことが当然で、足がそのための機能を備えているにもかかわわらず、今ではウォーキングが趣味になっていることと似ています。「楽しみのために働く」という価値観にシフトしていくでしょう。

事実、今の若者はモノを欲しがらないので、かつてのように何かを買うために頑張って働くことはありません。私は大学で教えていて感じますが、彼らはいい車なんてまったく興味ないですから。

――それでも、高収入を約束された大手企業を目指す若者もあいかわらず多いようです。

そうですね。でも、そういう若者に理由を尋ねてみると、「親が安心するから」と答えるんです。「親のために生きてるの?」と言いたくもなりますが、実は彼らの気持ちもよく分かる。なぜなら、今の若者は親世代の価値観と成熟社会の価値観の間で引っ張られてしまっていて、ある意味難しい状況にあるからです。

親世代、つまり成長時代の価値観とは、簡単に言えば「いい学校に入り、いい会社に入って、いい老後」というものでしょう。でも、今やいい学校に入れば仕事や老後も安泰なんてことは、まずありえません。

考えてもみてください。学校はせいぜい3年や4年で変わりますよね。でも、社会に出て働くのは40年以上続きます。老後も、人生100年時代であれば、やはり40年くらい。これらが全部並列で語られるのがおかしいんです。

最近は若い人たちが3~4年で会社を変えると言われていますが、私は当然だと思います。それが本来、彼らが学生時代に身に着けたスパンなんですから。

――インターネットの発達によって、転職の機会も飛躍的に増えていますよね。

はい。しかも、人からの紹介を経て転職する「リファラルリクルーティング」が普通になりつつあり、SNSなどを通じてどんどん人が動いています。

ちょっと昔なら、「会社を辞めたいな」と思ったら求人広告を見るしかなく、グズグズしている間に上司から飲みに連れて行ってもらい、「俺も若い頃はそんなことあったけど、続けていればいいことあるから」なんて言われながら、結局辞められないというパターンがよくありましたよね。

でも今は、会社のトイレでもスマホで仲間とやりとりできますから、「会社をやめたい」と発信すれば、「うちの会社どう?」と話がトントン拍子で進みます。IT企業は特にそうですよね。

仕事の悩みは、「何をやるべきかわからない」こと

――仕事が趣味化していくにつれ、仕事に関する悩みは少なくなっていくのでしょうか。

そうとも言えません。仕事が趣味化するにつれ、「自分らしい幸せは何か?」いう悩みが生じるからです。実際、働き方改革に関連する統計を見たところ、「増えた自由時間をどう使うか?」という設問に対して、もっとも多い回答は「睡眠・休憩」というもので、実に4割に迫る結果でした。やはり、時間だけあっても使い方が分からないと、結局こうなってしまう。

――そうすると、働き方を含め、生き方全般を見直す必要がありそうですね。

そうです。とはいえ、ドラスティックに生き方を変えることのできる人はほとんどいません。人間にはホメオスタシスがかかっているので、どうしても「元の安全な環境を維持しよう」という気持ちが働いてしまうんです。

ある意味リミッターが壊れている人であれば、一気に変われるかもしれませんが、多くの場合、“徐々に”行動を変えていくしかない。歯の矯正も、一気に変えようとすると折れるけれど、少しずつ力を加えることで、やがてきれいに整っていきますよね。それと同じです。

だからまず必要なのは、感情のブレーキを“緩める”ことなんです。車をコントロールするとき、ハンドル、ブレーキ、アクセルが必要ですよね。でも、感情に関しては「いかに抑制するか」という話ばかりになってしまう。これはつまりブレーキの踏み方しか考えていないということなんです。

きちんと運転するには、ハンドルの使い方や、アクセルの踏み方も知る必要がありますし、その前にブレーキを緩めることを覚えないといけない。ブレーキを踏んだままでアクセルを踏むと壊れてしまいますから。

――自己啓発書を読んでも変われないのは、いきなりアクセルの踏もうとするからなのでしょうか。

そうです。いつもダラダラと過ごしてしまう人が「怠け癖を直して成功しよう!」と一念発起しても、やはりうまくいきませんよね。ダイエットが失敗するのと同じ原理です。やはり一発逆転をいきなり目指しても無理があります。

また、「目標を立てよう」ということも、よく言われますが、これも考えものです。あまり遠くに目標を置いて自分を変えようとしても、結局ホメオスタシスの抵抗を受けてしまいますから。

自分じゃないものになろうとする必要はないんです。もし目標を立てるのなら、「あれを知りたい」「あれを手に入れたい」など、自分の心で感じられる欲求に結びつく、近い目標にした方がいいでしょう。

――「自分の欲求がよくわからない」という人は、どうすればいいのでしょうか。

それは、他人と話すことで解決できるかもしれません。そういった意味で重要なのがコミュニティです。もちろん仕事の関係だけではなく、プライベートなつながりでもいいでしょう。私自身、仲間を集めて会社で麻雀大会をやっていますが、これもコミュニティです。

自分の顔は自分では見えませんから、見るためには鏡を使わなくてはいけない。それと同じことで、自分の中にある答えに気づくためには、他人の力を借りることが大切です。そうして自分の欲求やビジョンに気づけばいい。

私は、ロードフロンティアの事業のなかで、ロジカルシンキングやマーケティングなど、ビジネスで効率的に結果を得るための「実学」のほか、ビジョンメイキングやモチベーションなどに関連する「活学」も同時に扱っています。

実学と活学はどちらか一方だけでは十分な結果を得ることはできず、双方をバランスよく学ぶ必要があります。これからの働き方を考える上でも、この2つの軸を押さえておくといいでしょう。

文・小林 義崇 写真・刑部友康

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