伝わる文章を書く前にすべき7つのポイント――山口拓朗の『そもそも文章ってどう書けばいいんですか?』

得意先に電話をしたら「その内容をメールでもいただけますか?」と言われた。上司に企画のアイデアを出したら「そのアイデアをA4一枚の企画書にまとめといて」と言われた。以前までは口約束が慣習化していたが「文面として残っていないのはマズイだろう」と、最近は書面でやりとりするようになった。

あなたも似たような経験をしたことがあるのではないでしょうか。このように、近年、文章で情報のやり取りをしたり、コミュニケーションを図ったりする機会が増えてきました。「文章に残すこと」や「文章で伝えること」の重要性が高まってきたのです。そんな“文章による見える化時代”のなかで、次のような悩みをもつ人が少なくありません。

・「文章を書くことがストレスです」
・「文章を書くことが苦手です」
・「文章を書くのに時間がかかりまくります」
・「支離滅裂な文章を書いてしまいます」
・「『この文章はどういう意味だ?』と上司に怒られます」
・「そもそも頭のなかにあることを、文章にすることができません」

このような悩みを抱えている人たちにとって一筋の光明となるのが、新刊『そもそも文章ってどう書けばいいんですか?』が話題を呼んでいる山口拓朗さんがお届けする短期連載です。報告書からメール、企画書、ブログまで、これまでの学校教育で“教わっていそうでいて、実は教わっていない「文章作成の基本」”を学んでいただきます。第3回となる今回のテーマは「書く前の準備」です。

文章を書く前に準備をしていますか?

過去2回の記事で、「文章作成」とは「書く作業」だけを指すのではなく、以下の4ステップで成り立っているとお伝えしました。

【文章作成の4ステップ】
ステップ1:情報を集める
ステップ2:書く前の準備をする
ステップ3:文章を書く
ステップ4:書いた文章を推敲・修正する

前回の「ステップ1(情報を集める)」に引き続き、今回は「ステップ2(書く前の準備をする)」についてお伝えします。

 

多くの人が文章を書くときに、たいした準備をしません。その場しのぎで書いていくため、文章にまとまりがなくなり、書くスピードも遅くなりがちです。その結果、「伝わらない文章」「読みにくい文章」「ピントのズレた文章」「仕事の成果につながらない文章」などができ上がります。実にもったいないことです。

文章を書くことが“得意な人”と“苦手な人”の違いのひとつが、「書く前の準備」の有無にあります。文章を書くことが得意な人ほど「書く前の準備」に相応の時間と労力を割いています。その結果、文章作成時のスピードが速まり、なおかつ、ハイクオリティな文章を作り上げることができるのです。

書く前にすべき7つの準備

筆者が行っている「書く前の準備」は以下の7つです。

<準備1> 読者ターゲットを明確にする
<準備2> 読者のニーズを把握する
<準備3> 文章の目的を明確にする
<準備4> 読者の反応を決める
<準備5> メッセージを絞る
<準備6> 文章のレベルを決める
<準備7> 文章のテイストを決める

この1〜7を明確にしたうえで書き始めると、多くの場合、読者に伝わる文章に仕上がります。いえ、伝わるだけでなく、俄然、仕事の成果にもつながりやすくなります。

「住宅リフォーム展示会」の案内状を書く前の準備とは?

具体例を挙げましょう。たとえば、あなたが住宅リフォーム関連の仕事をしていて、一般ユーザー向けに「住宅リフォーム展示会」に来てもらうための案内状を書くとしましょう。その際にすべき準備は以下の1〜7です(書き出した内容は一例です)。

<準備1> 読者ターゲットを明確にする

・自宅のリフォームを検討中で、とくに健康を重視している方(アレルギー症状に悩まされている方)。

<準備2> 読者のニーズを把握する

・自分または家族が悩まされている「アレルギー症状」を改善したい。
・これから生まれてくる子どもがアレルギーにならないよう「カビ・ダニ・ハウスダスト対策」を施したい。
・自宅を化学物質フリーにしたい。

<準備3> 文章の目的を明確にする

・ターゲットとなる人<準備1>に「住宅リフォーム展示会」に足を運んでもらう。

<準備4> 読者の反応を決める

・ターゲットとなる人<準備1>が、この案内文を読み終えた瞬間に「これは、私のための展示会じゃないか! 絶対に行く!」と決心する。

<準備5> メッセージを絞る

・健康面でのメリット(とくにアレルギー対策)に絞った住宅リフォーム情報。
※機能面やデザイン面のメリットについては、あえて書かない。

<準備6> 文章のレベルを決める

・リフォームの知識がまったくない人でもストレスなく理解できるよう、平易な表現を心がける(専門用語は極力使わない)。

<準備7> 文章のテイストを決める

・硬くなりすぎない文体(楽しさを感じさせる文体/女性ファッション誌の記事をイメージ)。

これらは、いわば文章の全体像です。この準備1〜7を念頭に文章作成することによって、文章の目的<準備3>を達成しやすくなります。先ほどの例でいえば、ターゲットとなる人<準備1>に「住宅リフォーム展示会」に足を運んでもらう、という結果を得やすくなるのです。

この記事を書く前に、筆者がした準備とは?

では、もうひとつ別の例を挙げましょう。筆者が書いた今回の記事の準備1〜7を公開します。

<準備1> 読者ターゲットを明確にする

・文章を書くことに苦手意識をもつ20代のビジネスパーソン。

<準備2> 読者のニーズを把握する

・文章を書くことへの苦手意識を克服したい。
・苦労せずに「伝わる文章」や「うまい文章」が書けるようになりたい。 

<準備3> 文章の目的を明確にする

・読者ターゲット<準備1>が、文章を書くことへの苦手意識を手放す。
・読者ターゲット<準備1>が、いつでも「伝わる文章」や「うまい文章」を書けるようになる。

<準備4> 読者の反応を決める

・目からウロコが落ちるのを感じながら「そうか! 書く前の準備が大事だったのか! これなら自分にもできそうだ!」とワクワクする。

<準備5> メッセージを絞る

・「書く前の準備」についてのみ伝える(今回の記事では、文章の書き方ノウハウなどには触れない)。

<準備6> 文章のレベルを決める

・新社会人(フレッシュマン)でも理解できるよう平易さを心がける。

<準備7> 文章のテイストを決める

・大手メディアのニュース記事ほど硬すぎず、かといって個人のブログほど砕けすぎない絶妙なトーン(イメージはビジネス系雑誌のコラム記事)。

 

もしも事前の準備なくこの記事を書いていたら、「読者不在の記事」「支離滅裂な記事」「読者のタメにならない記事」「読者の興味を引かない記事」「読みにくい記事」「反応率の低い記事」になっていたはずです。読者の精読率(※)や満足度が下がれば、この記事を書いた筆者自身の評価・価値も下がりかねません。

※精読=念入りに読むこと/詳しく読むこと

書く前の準備1〜7を書き出そう!

プロの物書き(ライターや記者)や、文章作成を得意とする人のなかには、このような準備を、すべて頭のなかで済ませる人もいます(習慣化しているため)。一方、これまで書く前の準備について考えたこともなかった人の場合は、しばらくはメモ帳やノートに準備①〜⑦を書き出すことをオススメします。

 

自分がこれから書く文章の全体像を視覚的に把握することで、自信をもって書き始めることができるはずです。書いている途中であっても、常に準備1〜7に意識を戻せるようにしておきましょう。万が一、準備と異なる文章になりつつあることに気づいたときは、そのつど修正していかなければいけません。

書く前の準備1〜7を習慣化できれば、「何をどう書いていいかわからない」という悩みが消えるほか、文章作成スピードの向上、さらには、読者の精読率および満足度の向上がもたらされます。つまり、いつでも仕事の成果につながる文章が書けるようになるのです。

さて、いかがでしょう。準備4の目論見どおり「これなら自分にもできそうだ!」とワクワクしてきましたか? 次回、連載第4回はステップ3の「文章を書く」についてお伝えします。

著者:山口拓朗

『そもそも文章ってどう書けばいいんですか?』著者。

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伝える力【話す・書く】研究所所長。「論理的に伝わる文章の書き方」や「好意と信頼を獲得するメールコミュニケーション」「売れるキャッチコピー作成」等の文章力向上をテーマに執筆・講演活動を行う。『そもそも文章ってどう書けばいいんですか?』(日本実業出版社)のほか、『残念ながら、その文章では伝わりません』(だいわ文庫)、『問題を解くだけですらすら文章が書けるようになる本』(総合法令出版)、『書かずに文章がうまくなるトレーニング』(サンマーク出版)『伝わる文章が「速く」「思い通り」に書ける 87の法則』(明日香出版社)他がある。

山口拓朗公式サイト
http://yamaguchi-takuro.com/

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