「それ、私の仕事じゃないんで」と言う人と仕事をすることになったら

コミュニケーション総合研究所代表理事の松橋良紀さん。そんな松橋さんに「コミュニケーションの極意」についてお話しいただくこのコーナー。第30回目は「やる気のない人との付き合い方」についてです。

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人と一緒に仕事をしていると、時には温度差を感じることがあります。
全員が同じようにやる気にあふれていることは少なくて、やる気に燃えている人もいれば、さっぱりやる気を感じない人もいるでしょう。
今回は、どうしたら、この温度差を解消できるのかをご紹介します。

あなたのやる気の元は何?

あなたがやる気にあふれているとしたら、その動機を考えてみてください。あなた自身がやる気が上がっていない場合は、周りでやる気に満ちている人の動機を考えてみましょう。

(1)得たいこと
・上司に認められたい
・とにかく昇進したい
・昇進して収入を上げたい
・同僚に勝ちたい
・発言力を高めて、思い通りの仕事をしたい
・プライベートを充実させたい
・好きな異性に認めてもらいたい

(2)損をしたくないこと
・上司の評価を落としたくない
・昇進レースから脱落したくない
・収入が上がらないのは嫌
・同僚に負けたくない
・発言力が上がらないのが嫌
・プライベートを犠牲にしたくない
・好きな異性に嫌われたくない

などなど、モチベーションが高い人は、以上のような理由が多いと思います。
大きく分類すると、動機は次の2つです。
(1)「得をしたい」
(2)「損をしたくない」

人によっては、得をしたいという感情から動くことが多い人もいれば、損をしたくないという感情から動くことが多い人もいます。
やる気が上がらない状態というのは、得をしたいという感情が薄くて、損をしたくないという感情も薄いということが考えられます。
「収入は、そりゃ多ければ多いほどいいけど、でも今のままでもやれないことはないですからね。昇進にも興味がないし、責任が重くなって負担がかかることは嫌だし・・・」
このような冷めた人は、やる気を出すことで得られるものも、損をすることもイメージできていないことが多いのです。

人は得することよりも、損することを避けたい

やる気がない人に、
「この時期に結果を出せば将来昇進できるぞ!」
「頑張れば収入が上がるんだぞ!」
こんな声がけは効果がありません。
このタイプは、昇進も収入も、現状維持でいいのです。
でも、損をしてしまう可能性が出てきたら話は別です。
「昇進や収入アップは別にいいです」という人でも、
「がんばらないと、与えられるはずの地位に昇進できない」
「同期がみんな役職になっても、自分だけがヒラのまま」
「もらえるはずの収入が減る」
などと、損をすることを明確にイメージできたら、やる気は一気に高まりやすくなります。

たとえば、英語を学ぼうと思っても、なかなか続かない人は多いでしょう。
英語を学べたら、海外旅行は楽しくなるし、仕事の幅も広がるし、得られることだらけのはずです。でも、それらの得られることには、我慢ができてしまいます。
私自身、英語圏に旅行するたびに、「英語が話せたら、どんなにいいだろう」と思います。しかし日本に帰り、数週間もすれば、英語を話せたらというモチベーションはほとんど消え去ります。
もし、その海外旅行から帰ってきた直後に、高額な英会話スクールに入会して1年分の学費を一括で払っていたらどうでしょう?
学費をムダにしたくないというモチベーションが、英会話のマスターを支えてくれるはずです。
損をしたくないというモチベーションは、得をしたいというモチベーションよりも、強い効果を生み出します。

損のモチベーションは続かない

本気で「そんなのは嫌だ」と思ったときに、やる気のスイッチは入ります。
しかし、損を回避するモチベーションだけだと、行動が持続しません。
痛みが持続しすぎると、ガゾリンを使い果たしてしまった車のように、まったく動けなくなってしまいます。
やる気のスイッチは、「損をしたくない」という感情だったとしても、行動することで「得られる喜び」がやる気を持続させてくれます。
とはいえ、最近は物欲がない世代と言われていますから、収入アップというインセンティブではモチベーションが上がらない人が多いです。
そんな人には、どんな喜びが効果的なのでしょうか?

人間の根源的な喜び

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モチベーションに関しては、マズローの欲求5段階説がとても有名です。

(1)第一階層「生理的欲求」
食欲、睡眠欲、性欲など、生きていくための本能的な欲求のことです。

(2)第二階層 「安全欲求」
食べ物、住まい、健康などの安全を守って、安心できる暮らしがしたいという欲求です。

(3)第三階層 「帰属欲求」
集団に属したり、仲間とのつながりを得たいという欲求です。
この欲求が満たされないと、孤独感や社会的不安を感じやすくなります。

(4)第四階層「尊厳欲求(承認欲求)」
他者から認められたい、尊敬されたいという欲求です。

(5)第五階層「自己実現欲求」
自分の能力を引き出して、創造的活動がしたいという欲求です。

一緒に仕事をしていて温度差が違うというのは、欲求の階層が違うということです。
つまり温度差がある人は、「安全欲求が満たされていない」「帰属欲求が満たされていない」「承認欲求が満たされていない」のどれかにあてはまる可能性があります。
・いつクビにされるかわからない。安心できない。
・仲間として受け入れてもらえてない。あるいは、こいつらと仲間にはなりたくない。
・ほめられることがない。役に立っている感じがしない。
このような階層にいると、やる気はなかなか上がらないのです。

あなたがリーダーなら、自分で仕事を創造していて、自己実現欲求を満たすための仕事ができているかもしれません。
しかし、承認欲求や帰属欲求が満たされていない人にとっては、それどころではありません。
上司や同僚とつながりを持つこともなく、生活を守ることだけになりがちです。

やる気を上げるために

生活を守るだけの人のやる気を上げるには、マズローの5段階説を使って、以下の事を伝えていく必要があります。

・あなたは大事な仲間である
・あなたの仕事ぶりはすばらしい
・あなたはかけがえのない人材だ

いつもけなされて、ダメ人間の烙印を押されてしまって、力を発揮できない人は多いです。
しかし、かかわる人しだいで良い方向に変わっていくこともあります。
帰属意識、承認、尊厳。
このキーワードをいつも意識したいですね。

松橋良紀(まつはし・よしのり)

コミュニケーション総合研究所代表理事/一般社団法人日本聴き方協会代表理事/対人関係が激変するコミュニケーション改善の専門家/コミュニケーション本を約20冊の執筆家

1964年生青森市出身、青森東高校卒。ギタリストを目指して高校卒業後に上京して営業職に就くが、3年以上も売れずに借金まみれになりクビ寸前になる。30才で心理学を学ぶと、たった1ヶ月で全国430人中1位の成績に。営業16年間で、約1万件を超える対面営業と多くの社員研修を経験する。2007年にコミュニケーション総合研究所を設立。参加者が、すぐに成果が出るという口コミが広がり出版の機会を得る。NHKで特集されたり、雑誌の取材なども多く、マスコミでも多数紹介される。

約20冊で累計30万部を超えるベストセラー作家としても活躍。「コミュニケーションで悩む人をゼロにする!」を合言葉に奮闘中。

著書

『「売れる営業」がやっていること 「売れない営業」がやらかしていること』(大和書房)

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「あたりまえだけどなかなかできない聞き方のルール」(明日香出版社)

「相手がべらべらしゃべりだす!『聞き方会話術』」(ダイヤモンド社)

「人見知りのための沈黙営業術」(KADOKAWA)

「何を話したらいいのかわからない人のための雑談のルール」(KAODOKAWA)

「話し方で成功する人と失敗する人の習慣」(明日香出版社)

公式サイト http://nlp-oneness.com

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