ビジネス会話がうまい人は「何を聞いて」いるのか / 番台に学ぶ

こんにちは。銭湯芸人のハブチンです。
いろんな銭湯に行くのですが、もう一度いきたくなる銭湯と、そうでもない銭湯があります。価格は自治体ごとに決まっていますし、設備も似たり寄ったりです。でも明らかに居心地のよさが違う銭湯はあるのです。いったいその違いは何でしょうか?その答えには、ビジネスにも通じるものがあるような気がします。

今回はそのヒントを探るべく、私が今まで都内で通って来た銭湯の中で、もっとも居心地のよかった上野稲荷町にある銭湯「日の出湯」の12代目、田村祐一さんにインタビューさせていただきました。

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【田村祐一 プロフィール】
1980年生まれ。東京蒲田にある銭湯「大田黒湯銭湯 第二日の出湯」の跡取りとして生まれ育つ。2012年5月、元浅草「日の出湯」経営再建マネージャーに就任。『常連さんが増える会話のコツ』著

心地いい銭湯には◯◯◯がある

— 今までいった銭湯の中でも「日の出湯」は、なんか気持ち良いんです。田村さんが番台に立つようになった半年で、来店者数が5割増えたそうですね。その理由は?

田村:なぜなんでしょうね。お客様によって感じ方は違うのでなんとも言えませんが、私は番台として「感じのいい接客」を心掛けています。

銭湯は「安らぎの空間」です。お客さまは風呂に入ることで、心と身体をリラックスし、心地よく帰宅したいはずなのです。それならば入浴だけでなく、ちょっとした会話を交わすことで、頭や気持ちもスッキリすると思うんですよね。

— たしかに頭の中がモヤモヤしているときに、誰かに話したらスッキリするときありますね。

田村:そうなんです。銭湯業界は、価格競争は不可能で、 設備投資もきわめて難しく、 すぐ近くには他業態の強力なライバル店があります。 その中でできたことが「感じのいい接客」でした。

— 私も営業していたころ、商材にあまり差別化がなくて、競合他社もいた中で、お客様とコミュニケーションをとって、お客様を理解することを心掛けていました。
そういう意味では銭湯の番台とビジネスにおける心がけは近いかもしれませんね。

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コミュニケーションが苦手な人の特徴とは

— 初対面の方とのコミュニケーションは難しいですよね。まず何を話していいかわからない。

田村:話さなくていいんじゃないですか?話すのではなく聞けばいいんです。私はなんでも聞くようにしています。

— そうですよね。ただ何を聞けばいいかわからないときあります。

田村:他人と自分はちがうので、自分の知らないことを聞いてみるのがいいと思います。

— 人の意見を聞いていると、自分の考えと違うときに、ついつい自分の意見を言いたくなるのですが……

田村:私はそのときは我慢しますね。反論や正論は言わないようにしています。たとえばお客様は深煎りのコーヒーが好きで、自分は浅煎りのコーヒーが好きだったとしても、言い合っても答えは出ないんです。

— 好き嫌いは正解がないですもんね。

田村:そのときは、なぜそう思うのだろう?…と聞くようにしています。なぜその人が深煎りコーヒーが好きなのかを聞いていると、不思議と深煎りコーヒーもありだと思うようになります。

— 話をあわせて、「私も深煎りコーヒーが好きです!」とか言わないんですか?

田村:それは言わないですね。しったかぶりはせず、常に教えてもらうスタンスでいます。すると「そんなこともしらねぇのか、教えてやるよ」と、いろいろ話してもらえるのです。

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コミュニケーションは”挨拶”からはじめる

— 田村さんはいろんな人から話を聞くのがお上手だと思います。なぜ初対面の人でもいきなり距離を縮められるのですか?

田村:いや、いきなり距離は縮めていないですよ。初対面のときは挨拶しかしません。

— えっそうなんですか。

田村:そうですよ。二回、三回来られるようになってきたら、「今日もありがとうございます」とか「最近、よくこられますね」とか声をかけるようになります。

— それでも質問とかしないんですね。

田村:そうですね、そのうち「最近引っ越してきたんですよ」とかお客様の方から話していただけるので。そうすれば引越しにまつわる質問をします。

— なるほど。一回で営業しないんですね。

田村:一回だと売れないと思います。何度かお会いして徐々に信頼関係を築いていく方が大切です。焦っても売れないんじゃないかと。

— 確かにそうですね。

田村:特にご年配のお客さまは、商品・サービスの質や値段だけで、店選びをしていないように感じます。「誰から買うか?」「誰に会いに行くか?」といったことを重視しています。

— 商品力とか会社のブランドとかよりも、大事かもしれませんね。すごく勉強になりました。ありがとうございました。

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【羽渕 彰博(ハブチン】
1986年、大阪府生まれ。2008年パソナキャリア入社。転職者のキャリア支援業務、自社の新卒採用業務、新規事業立ち上げに従事し、ファシリテーターとしてIT、テレビ、新聞、音楽、家電、自動車など様々な業界のアイデア創出や人材育成に従事。2016年4月株式会社オムスビ設立。

habchin(Akihiro Habuchi)|Facebook

編集:鈴木健介

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