商談をドラマティックに演出しよう!日常に感動を生み出す「ドラマ思考」のススメ

「21世紀型の新しいビジネス能力とは、『感動力』である」

 ――こう語るのは、『ドラマ思考のススメ』『感動のつくり方』などの著者である平野秀典氏。上場企業に勤務しながら演劇の舞台にも立っていた経験を活かして活動する「感動プロデューサー」です。

 感動は「設計できる」と平野氏。といっても、相手の感情を操作するようなテクニックではありません。人は、すごい体験で感動するだけでなく、人の「心」に触れた瞬間に思いがけず感動することがあります。そこで「心が伝わる設計図」をつくろう、というわけです。今回は、日常シーンに「感動」を生み出す要素と組み立てについて、平野氏にお話を伺いました。

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「SPP(シナリオ、プロデュース、パフォーマンス)」で商談を感動的なドラマに

ビジネスシーンに感動を生み出すには、まず次のように意識を転換してみてください。

「戦略」ではなく「シナリオ(=脚本力)」
「戦術」ではなく「プロデュース(=演出力)」
「戦闘力」ではなく「パフォーマンス(=演技力)」

「ターゲット」ではなく「共演者」
「客を落とす」ではなく「顧客と共演する」
「売り込みに行く」ではなく「ファンをつくりに行く」

「シナリオ(脚本力)」で相手を惹きつける

 「どうすれば人(顧客)を幸せにできるか?」を構想しましょう。顧客にとってどんなハッピーエンドのシーンを生み出したいか、着地点を先に決めます。

 例えば、商品を販売する場合、その商品を使った人の生活や人生がどのように変わり、どんな幸せにつながっていくかをイメージするのです。そして、そこに至るまでのストーリーを積み上げていきます。

 つまり、「この商品は****という特徴があります」ではなく、
「お客様がこの商品を使えば~~ができる/~~が便利になる/~~な体験ができる」
という点を重視します。

 セールスの場面では「クロージング」という言葉がよく使われますが、これは自分の都合、つまり「一人称」の立ち位置。それに対し、相手のハッピーエンドを想定して、そこに至るお手伝いをするという「二人称」の位置に立てば、顧客の信頼を得ることにつながります。それに、あらかじめ自分の中で「ラストシーン」を描けていれば、途中の段階でつまずいたり行き詰まったりしても、突破口を見つけやすいものです。

 また、感動というドラマを創る脚本のコツに「序破急」があります。これは、能楽師の世阿弥が記した『花伝書』に記載されているもの。「起承転結」は変化を四段階で構成しますが、こちらは三段階で展開していく方法です。スピード感が重要な現代では、「序破急」の方が合っているでしょう。

 これを平野流に訳すと「つかみ」「メイン」「クライマックス」。記号で表現するなら「?」「!」「~」。ビジネス風に言えば「問題点」「解決策」「証拠提示」です。
この3つをストーリーの中に組み込むと、「ドラマ」が生まれます。

まず、お客様の頭の中に「?」を起こさせる質問を投げかけ、その問題に対する答えや解決策を提示した上で、本題に入っていきます。
例えば、

自分「一般的に*****する人が多いですが、それはなぜだと思いますか?」

相手「?」

自分「実は、*******だからなんです。******というデータもあるんですよ」

相手「!」

自分「これと同じことは***でも起きていて、例えば~(自分が伝えたい商品の話へ)」

相手「へぇ~!(共感・納得)」

 問題の答えや解決策が、相手が気づいていなかった視点や方法であるほど、クライマックスがさらに盛り上がり、「へぇ~」という納得感や感動につながります。最初に結論を言うのではなく、段階を踏んで話すことで相手の驚きや感動を最大化することを心がけてみてください。

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「プロデュース(演出力)」でインパクトを与える

 ストーリーをドラマティックに演出するポイントの一つが「思いがけなさ」。言い換えれば、「意外性」「予想外」「サプライズ」です。
これを、先ほどのシナリオの「序破急」にかけ合わせましょう。

「問題点」→「思いがけない問題点」
「解決策」→「思いがけない解決策」
「証拠提示」→「確実な証拠提示」

 「?」「!」の振れ幅が大きいほど、生み出される感動が大きくなります。

 また、顧客へのサービスでは、まったく同じことをしても、時間的に後か先かで意味合いが変わってきます。顧客に言われてから行えば「作業」、顧客から言われる前に提供すれば「気の利いたサービス」となります。顧客は「作業」が遂行されれば普通に満足しますが、「気の利いたサービス」には感動を覚えます。強く印象づけられ、リピーターになってくれる確率が高まるでしょう。

 相手から言われる前にこちらから声をかける。こうした「時間差演出」により、普通のサービスが「感動のサービス」に進化します。

 ときには、「先を読む」ではなく「先走り」になってしまうなど、間違えることもあるでしょう。しかし、訓練することで精度が上がっていくので、日々実践して「先読みセンス」を磨いてみてください。

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「パフォーマンス(=演技力)」で伝えたいことを伝える

 「お客様の前で演技をする」と聞くと、「あざといことはしたくない」「きっと見破られる」などと思う方も多いでしょう。

 しかし、ここで言う「演技」とは、心技体が一つになった「振る舞い」のことです。
最高の振る舞いのコツは、「当たり前にできることを、見事に演じる」ということです。

 見事な笑顔、見事な挨拶、見事な見送り、見事な「ありがとうございます」、見事な歩き方、見事な立ち方――。一挙手一投足に気を配ってみてください。何気ない振る舞いでも、心が込められていれば、相手に伝わるものです。

 いい商品やサービスを扱っていても、伝わらなければ意味がありません。伝えるための表現力を磨くには、役者がやるような「役作り」を意識してみましょう。

 「役作り」は、日頃から皆さんが無意識にやっていること。例えば、会社の同僚、友人Aさん、友人Bさん、それぞれの人と一緒にいるとき、あなたのキャラクターは微妙に異なっているのではないでしょうか。相手との関係性により、少しだけキャラクターを変えている…というのは、多くの人が経験していると思います。

 そこで、これを意識的に行う「セルフキャスティング」を実行してみてください。
「自信に溢れている自分」「謙虚で奥ゆかしい自分」「大胆に行動する自分」「繊細な気配りをする自分」など。矛盾しているように見えて、どれも自分の中にある一面です。自分の中にある一部分を、シーンや相手に合わせて強調するなど、自分のキャラクターを適切に演出しましょう。

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「プラス思考」より「ドラマ思考」で、人生が楽しくなる

 ビジネスシーンに感動を生み出す「ドラマ思考」は、日々のストレスを感じにくくし、ビジネスや人生でぶつかる壁を乗り越えるのにも有効です。

 よく言われる「プラス思考」は、どんなときにもポジティブな自分であろうとする反動で、心のバランスを崩してしまうこともあります。

 一方「ドラマ思考」を身につけると、つらい経験や失敗を「感動を生み出すドラマ」の要素として演出する、という発想になります。映画やドラマでも、悪役が登場しない、主人公が逆境に立たされないストーリーは物足りない。ラストシーンの感動につながらないですよね。

 プラスとマイナスの出来事が両方あってこそ、ドラマは盛り上がる。嫌いな人、苦手な人も「自分のドラマを盛り上げてくれる共演者」ととらえれば、歓迎することができるでしょう。

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プロフィール:平野秀典氏/感動プロデューサー
公演家。ビジネス作家。有限会社ドラマティックステージ代表取締役。
一部上場企業のビジネスマンの傍ら、「演劇」の舞台俳優として10年間活動。その経験からビジネスと演劇の関連性に気づき、独自の感動創造手法を開発。二足の草鞋で勤務していた企業の劇的なV字回復に貢献する。独立後は、日本で唯一の感動プロデューサーRとして、日本を代表する一流企業を中心に一千社以上の企業へ講演(公演)・指導を行っている。受講体験者は累計で20万人以上を数える。著書に最新刊『ドラマ思考のススメ』(あさ出版)、『感動のつくり方』(フォレスト出版)、『GIFTの法則』(日本経済新聞出版社)など。

EDIT&WRITING:青木典子

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