日本マイクロソフト株式会社でテクノロジーセンター長を務め、年間プレゼン回数はなんと200回以上。
卓越したマイクロソフト社員にのみビル・ゲイツ氏本人から授与される「Chairman’s Award」を受賞したこともある澤円(さわ まどか)さんに、この秋読むべき愛蔵実用書リストを教えていただきました。
目次
13年前に書かれたソーシャル時代の予言の書?ドラッカーが語る ”次” の世界
ネクスト・ソサエティ ― 歴史が見たことのない未来がはじまる
ボクがまず最初にオススメしたいのは、マネジメントの神様 ピーター・F・ドラッカーさんによる未来予言書、『ネクスト・ソサエティ』です。
4人のインタビュアーによるインタビュー形式でまとめられていて、『マネジメント』や『プロフェッショナルの条件』などはちょっと重たいけど『もしドラ』は軽すぎる…なんて方にピッタリの読み物と言えるかもしれません。
内容はさすが天下のドラッカーさん!という感じ。初版は2002年、ソーシャルメディアなんて考え自体が全くないような時代だったはずなんですが、もう本当にズバリ現在のマーケットとその流れを言い当てています。
マネジメント論が有名な方だけあって、起業家の起こすイノベーションについても予測されていて、その考察がまた実に面白く的確。
現在より未来のことももちろん大量に記されているので、読んでいるとワクワク…を通り越してウズウズしてきます。「やらなきゃっ!」ってなる感じですね。
>>ネクスト・ソサエティ ― 歴史が見たことのない未来がはじまる
経営コンサルの大御所 大前研一著『企業参謀』のライト版
企業参謀ノート [入門編] 超訳・速習・図解
この本、結構刺激的ですよ。
世界的な経営コンサルとして知られる大前研一さんの名著『企業参謀』の実践専用ライト版です。
本としてはいたってシンプルで、見開きの片面にドドーン!と「自分の頭で考えろ」みたいな熱い言葉が書かれていて、その隣のページに熱い解説文が載っている形。
なんですが、このまとめ方が実に素晴らしい。
ドラッカーの原著などもそうですが、目の前に見えないものを理解し想像し言語化してしまう人達のスゴイ言葉って、普通に読んでも難しく感じちゃうんですよね。普通の人にはそういう能力が備わってないから。
でも、この本の場合インパクトのある言葉と分かりやすく書かれた解説文がセットになっているので、とにかくとっつきやすい。 つまり、行動に移しやすいんですよ。
ちょっと原書だと読みにくいなー…っと感じた方、大前さんの考え方に触れてみたいと思った方。まずはこの本から。というのがベターなのかもしれません。
IT業界 大手企業のビジネスモデル設計がまるっと分かる名著
ITビジネスの原理
IT業界に関わっていようがいまいが、これから自分でビジネスをやろうという方にとって、この本は必ず読んでおいた方がいい書ですね。
Googleや楽天、リクルート、価格コムといった、無意識にユーザーとして使っているWebサービスは、どういったコンセプトでビジネスとして成り立っているのか。そしてそれらを使ったデータはどのようにマネタイズされていくのか。そういった原理をざっくりと、でもしっかりと知ることができるんです。
ITビジネスでキーとなる「純粋想起」はどう起こすのか?成功の法則は?失敗例は?などなど、ためになる情報がギッシリ詰まっています。
ビジネスを起こそうという方だけでなく、企業で働くビジネスパーソンにとってもとっても有効。これを知るだけでも、ベンダーや代理店から搾取されちゃうような事態は免れられるんじゃないかな?なんて思います。
怪盗ロワイヤルなどソーシャルゲームの参加コストであったり、ニコニコ動画の話であったりと、とにかく内容が濃いので、飲み屋の話題としても使える…かもしれませんね(笑)
数字が苦手な方こそ読んで欲しい。ビジネスの根幹となる統計学をざっと解説
統計学が最強の学問である
実はボク、すっごい数字が苦手なんですよ。テクノロジーセンター長とかやってるくせにね(笑)
でも、そんな数字アレルギーなボクでも分かりやすく、ちゃんと統計学の基礎を理解できるようにしてしまう。ってのがこの本の素晴らしいところ。
例えば、ビッグデータと統計学の考え方や、行動分析とビジネスの関係性。気にはなってるけど、なんとなく遠慮しちゃってるジャンルってありますよね。
そういう「知りたいけど難しそう…」な話をザッと理解できて、全部は理解できなくても使いドコロと貢献の方法が頭に入ってモチベーションになる。そんな本なんです。
どちらかというと厚い部類の本なんですが、そのぶん丁寧に書かれているので、これを読んだあとに専門的に統計学を勉強するとっかかりとしては最高の良書と言えるかもしれません。
日本人の必読書。すぐに使える怒りを鎮める方法
アンガーマネジメント 怒らない伝え方
アンガーマネジメント…って言ってもまだ日本だとあんまり浸透してないんですが、実はアメリカでは既にかなり一般的に浸透している考え方なんです。
ナオミ・キャンベルやチャーリー・シーンなどの暴行問題でコートオーダー(裁判所命令)としてアンガーマネジメントのカウンセリング命令が出されたり、そのものズバリ『Anger Management』というドラマがヒットしてたり。マネージャー研修として取り入れている企業もかなり多くなってきているんですよ。
で、今回なぜこの本を日本人に読んでもらいたいかというと、ストレス満載の都市生活を送る日本人って、怒りが爆発しやすいと思うんですよね。
いわゆる阿吽の呼吸で察する文化なので、どうしても色んなシーンでコミュニケーション不足になりがち。結果的に誤解が生まれ、それが溜まりにたまってしまうんです。
だからこそ、日本人はアンガーマネジメントをすべきだと思うんですが、この本では怒りを認証心理学など使って徹底的にロジカルにコントロールする手法を解説してくれています。
例えば・・・
- 怒りのピークは6秒で終わる
- この6秒の間に反応するとロクなことがない
- ピークの6秒間をやり過ごすためにはどうすればいい?
といった感じ。
本当にすぐ「使える」本なので、寝る前のちょっとした時間や電車の中で読むには非常にオススメな一冊ですね。
ビジネスだけでなく人生観にも影響を与えるかも?300年前に書かれた「武士のたしなみ」書
[抄訳] 葉隠
原書は300年も前なのでとにかく読みにくい…を通り越してもはや読めないんです。この本は現代語訳が併記され、さらにエピソードと解説がピックアップされている妙訳版。
簡単に言うと、武士のたしなみを記した江戸中期のマナー本なんですが、強烈なヒエラルキーのある世界での心得がベースになっているので、今日のビジネスパーソンにも実はピッタリだったりするんですよ。
『時代の気風は変えられない。時代に合わせていけ』なんて、まさに現代のビジネスにこそ通じる考え方ですよね。
当時の武士の「美学」や「人として豊かに生きるための考え」がメインテーマになっていて、『身だしなみと考え方の危機管理』とでも言うべきシンプルで凛とした教えが凝縮されているボクの愛読書です。(※編集部注:澤さんは空手と茶道の師範でもあるらしいです)
古い本だからと言って、全く侮れない。今日のビジネスの現場だけでなく、人生観にまで影響を与えてしまうかもしれない、そんな本ですよ。
まとめと後記
いかがでした?秋の夜長を共に過ごす、ピンとくる一冊は見つかりましたでしょうか?
実用書でありながら決して難しすぎず、魅力的でちょっと捻りの効いた書籍のチョイスと、澤さんらしい「なにそれ読みたい」と思わず言ってしまいそうなプレゼンはさすがの一言。
皆さんもたまにはSNSやゲームを離れて、「読書の秋」を楽しんでみては?
取材・編集:中村健太