【今、気になるビジネス書の要約】『社畜もフリーもイヤな僕たちが目指す第三の働き方』

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anttoniu/iStock/Thinkstock

 「会社員」または「独立・起業」という選択肢、どちらの働き方もしっくりこない。そんなあなたにぜひ読んでほしいのが本書である。筆者は大学教授、クリエイティブ・ディレクター、作家、コンサルタントなどの多彩な顔をもつ。彼が提案する新しい働き方は、会社員、フリーランス、経営者といった職業形態にとらわれず、様々な働き口(=モジュール)を自分で選び、自由に組み合わせて同時並行的に進めていくという「モジュール型ワーキング」である。収入を確保しながら、やりたい仕事の機会を生み出していき、リスクヘッジもできるという、まさにいいとこ取りで時代に合った働き方だと言える。

 筆者は「モジュール型ワーキング」を4つのタイプに分け、タイプごとの戦略と具体的な事例を述べている。職業形態に縛られない多様な働き方を紹介する本は他にもあるが、具体的なタイプに落としこんで実現に向けてのステップが書かれているのは、本書ならではの魅力である。具体例として登場する4名の試行錯誤を追体験する中で、より自分らしいキャリアのシナリオをイメージできるのではないだろうか。

 本書を読み、提案されている実践ワークに取り組んでいけば、自分に合った働き方と、今後どんなアクションを起こせばいいかを明確にしていけるというわけだ。この本をキャリアの羅針盤とし、自分らしい第三の働き方を模索してみてほしい。(松尾美里)

【必読ポイント!】第三の働き方:モジュール型ワーキング

モジュール型ワーキングとは?

 本書に興味をもつ人は、会社員生活に何らかの不満をもっているケースが多いのではないだろうか?このまま会社にいて、いずれやりたい仕事のチャンスが回ってくるかというと、答えはNOである。企業の成長が鈍化する現在において、かなりの数の人が年を重ねても課長にすらなれない。部下を持たなくてもそれなりにやれるのではと思いきや、年齢が上がっていくと使いづらいと煙たがられることが増えてしまう。会社で出世を目指すにしても「上司に気に入られること」や「運」の要素に左右されるため、必死に自分を磨いても割にあわない生き方だといえよう。このように、会社一本の人生を選ぶと、望まないことを強いられ、「組織に職業人生を奪われた状態」になるというデメリットが生じる。

 かといって独立や起業もハイリスクである。起業後5年以内に8割、10年以内に9割の会社が倒産する現実がある。フリーランスでやりたい仕事を選んでいけるのはごく一部で、しかもその道だけで生計を立てるのは非常に困難である。そこで、会社員か、独立・起業かという二者択一ではなく第三の働き方を求めてはどうだろうか。

 提案したいのは、働く内容と収入をいくつかの「モジュール(働き口)」に分けて、そのモジュールの組み合わせで、満足のいく職業人生を組み上げていく働き方である。筆者を例に取ると、大学教授の仕事をメインとし、執筆、講演・研修講師、企画・コンサルティングの4つのモジュールを組み合わせている。ここでのポイントは、自分なりの「幸福な職業人生」のイメージを自問自答し、「自分という会社を経営する」感覚をもつことだ。この感覚をもつと、会社員としての働き口しか持たない状況は、取引先が1社だけの「下請け会社状態」であることが分かるだろう。

 このモジュール型ワーキングでは、「事業ポートフォリオ」という考え方を取り入れている。大きなリスクを避け、ある程度の収益を確保しながら大きなリターンを生み出せるようなバランスのとれた事業の「組み合わせ」を重視する、という、経営やマーケティングに関する概念だ。

モジュール型ワーキングのメリット

 モジュール型ワーキングを取り入れれば、やりがいと収入を失うリスクを回避しながら、自分の現状に合わせて職業人生を変化させるチャンスメイクができる。そうすることで、次のようなメリットが生まれる。

・会社では実現できなかった「やりたいこと」や「夢」の実現に近づける

・新たな世界に飛び込むことで、これまで付き合わなかったタイプの人たちの新たな価値観にふれることができ、人生がより豊かになる

・隠れた資質や適性を発見し、新たな自分に出会える

 では、こうしたメリットのあるモジュール型ワーキングの種を蒔くにはどうしたらよいか。お勧めは、休日や平日の夜を新しいモジュールづくりやその育成に充てることだ。

 会社勤めのまま、クラウドソーシングなどを活用して、会社業務とはバッティングしない内容でやりたい仕事を請け負ってみるのもよい。

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arcady_31/iStock/Thinkstock

Work1-1:自分をマーケティングする

 まずは、自分の現状と環境を分析し、そのときどきに最適な事業を考えていく必要がある。マーケティング分野のツール、SWOT分析を使って、自分のマーケティングをしてみよう。あなた自身の強み・弱みという内部環境と、機会・脅威(世の中の動向や仕事の発注先)という外部環境を書き出せるよう、本書にはワークシートが付されている。

強み・弱みは外部環境の影響を大きく受ける。そこで、「機会」を生かすために自分の強みをどう活用するか、「脅威」を回避するために、自分の弱みをどう補強するか、というふうに、内部環境と外部環境を掛けあわせてみることがポイントだ。そうすれば、新しいモジュールの可能性や、努力する方向性を模索していくことができるはずだ。

Work1-2:目指すべきタイプを知る

 モジュール型ワーキングは次の4タイプに分類される。自分の目指す働き方がどのタイプかを考えると、実現の道筋を具体化しやすくなる。

(1)専門性追求拡張タイプ:現在持つ自分の専門性を掘り下げ、その専門性を軸にモジュールを拡張していく 

(例)広告を軸に、広告の研究、広告のトレンドの講演、関連する書籍の執筆、コンサルティングへと拡張していく

(2)本業キープ拡散タイプ:本業を続けつつ、本業とは関連のない領域に興味を広げて、やりがいや収入を補完する 

(例)会社員を本業にしつつ、趣味のサッカーでコーチをして収入を得る

(3)憧れ中心下支えタイプ:憧れや夢を本業にするために、他の仕事で収入を確保しつつ、憧れにつながるモジュールをもつ 

(例)メーカーに勤めつつ、カフェ経営の夢に向けて、土日だけカフェのアルバイトをする

(4)テーマ中心雑食タイプ:自分の設定するテーマにつながる仕事にはなんでも雑食的に取り組み、複数のモジュールをもって働いていく 

(例)「企画」というテーマをもとに、編集やマーケティング、イベント企画・運営を行う

4タイプの先駆者に学ぶ

4タイプの実践例

ここでは、4タイプの働き方を実践する人たちの具体例を紹介していこう。

(1)本田由佳さん(専門性追求拡張タイプ)

 本田さんは「女性健康医学」という専門性を軸に、大学の特任助教や、研究職、セミナー講師などいくつもの顔を持っている。このタイプにおいては、自分の極めたい分野での経験や知識が物を言う。本田さんは株式会社タニタで「会社に還元できる成果」を目指して働いた15年の間に専門性を磨いていた。

 自分の専門性を軸に新たな収入のモジュールをつくりだすには、現在所属する会社での仕事を「勉強の場」「人脈形成の場」と捉えることが大切だ。何より、その専門性に入れ込めるかどうかがこのタイプの成功のカギを握る。

(2)三宅正さん(本業キープ拡散タイプ)

 三宅さんは、フリーのマーケターを本業としつつ、ダンサーとしても活躍する。会社員として社内で自己実現をするには限界があるため、自己実現への興味・関心は分散しておいた方がよいというのが三宅さんの考えだ。

 趣味を仕事にするには、いかに収入を得るかという「マネタイズ」の意識と工夫が不可欠だ。自分の先行者であるロールモデルをたくさん見つけていいとこ取りをするといい。

 モジュールが異分野にまたがることのメリットもある。三宅さんはダンサーであることを発信しているために、企業が行う音楽イベントの企画発注を受けることが増えているという。モジュール同士の分野が大きく異なるからこそのシナジー効果も生まれる。

(3)阿部光峰さん(憧れ中心下支えタイプ)

 阿部さんは、コピーライターとして広告会社に在籍しつつ後に飲食店経営者として独立を果たした。成功のポイントは、一定収入を確保しながら憧れの仕事を試していったことである。現在の仕事を清算してしまわないことで、失敗したときの大きなリスクを負わなくて済む。

 憧れを心の奥底にしまわず、意識の片隅に置いておくことで、憧れをかたちにできるきっかけに敏感になれる。安定を望む心があっても、変化しないことがリスクになる昨今、変化を恐れず、夢を叶えた後も変化を意識しよう。

(4)安藤美冬さん(テーマ中心雑食タイプ)

 安藤さんは「新しいワーク&ライフスタイルの発信」というテーマを中心に大学講師やビジネス書の執筆、講演、企業との商品開発など、テーマに通じるさまざまな領域を渡り歩いている。テーマを中心としているが、専門性や肩書にきにはこだわらない。スペシャリストとジェネラリストを横断するような働き方だ。

 常に自分自身と向き合い、そのなかで自分のテーマを考えていく姿勢が、このタイプでは大切になってくる。

 仕事とプライベートの境界がなくなるような状態を「ワークライフブレンド」と安藤さんは呼ぶ。そうなるくらいに、常に働くことにワクワクしているのが、このタイプだといえる。

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OSTILL/iStock/Thinkstock

タイプ別実践ステップ

次に、タイプごとの実践スタイルを紹介しよう。

(1)専門性追求拡張タイプ

 今の仕事に邁進し、専門性を極めることが先決だ。そのために今の業務でできることに取り組みながら、隣接他領域にも目を配り、チャンスを見つけていく。また、興味がある領域の人たちと知り合うことも大切だ。人と知り合うことで、新しいモジュールの働き心地を試すこともできる。

 極めたい領域で実際に働く人にメンターになってもらい、アドバイスを仰ぐと、とても参考になるだろう。

(2)本業キープ拡散タイプ

 本業をしっかりキープしつつ、新しいモジュールを決めて稼ぎ方を考えることが最初のステップだ。新しいモジュールには、趣味のレベルを超えて仕事にできるレベルのものを選ばなければいけない。その上で、本業と新モジュールのシナジーを生み出す方法を検討し、行動に落としこんでいくとよい。

(3)憧れ中心下支えタイプ

 まずは、憧れが仕事になり得るかを検証しよう。例えばアロマの仕事がしたいとすれば、友人相手にアロマのスクールを開催することなら、今からでも取り組めるはずだ。憧れの実現の障害にならないような、収入確保のためのモジュールをもちつつ、憧れの仕事への一歩を踏み出し、本格的に収入を得られるように工夫していくとよい。

(4)テーマ中心雑食タイプ

 自分と対話し、やりたいテーマを見極めるよう、テーマにつながる仕事を書き出し、雑食的に小さくチャレンジを続けていく。また、常に自分自身と向き合い、自分のテーマを柔軟に変えていく姿勢も大切である。チャレンジするなかで、自分やトレンドに合ったテーマを常に考え続けるとよい。

幸せに働くために

トータルとしての職業人生を考える

 モジュール型ワーキングで幸せに働くためには、トータルとしての職業人生に気を配ることが大切だ。収入の確保、やりがい、働き心地の3つのポイントの掛け算が、職業人生トータルの満足度になると言える。

 なかでも、見落とされがちなのは働き心地の要素だ。働き心地に深刻に影響するのが、人間関係だ。人間関係の問題には、仕事上の付き合いが濃厚すぎるケースと希薄すぎるケースとがある。モジュール型ワーキングでは、とくに、人間関係が希薄になり、所属意識をもちにくく孤独を感じやすくなるという問題が起こりうる。

 ではそうした孤立感をもたないようにするにはどうしたらよいか。対処策として、メインで所属するコアコミュニティーを、家族や地域、ボランティアなどに持ち、職場をサブコミュニティーズの1つとして考えることを勧めたい。滅私奉公的な関わり方を求めてこないコアコミュニティーと、複数のサブコミュニティーズを持つことで、濃厚すぎまたは希薄すぎる人間関係の悩みをもたずに寂しさを避けることができる。

今回紹介した本

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『社畜もフリーもイヤな僕たちが目指す第三の働き方』

著者: 佐藤 達郎

価格:1,404 円

単行本: 199 ページ

出版社:あさ出版(2014/06/29)

著者情報

佐藤 達郎

多摩美術大学教授(広告論・マーケティング論・メディア論)/作家/研修講師/クリエイティブ・ディレクター/コミュニケーション・コンサルタント。一橋大学社会学部卒業後、アサツーディ・ケイに入社。コピーライター、クリエイティブ・ディレクターを経て、クリエイティブ計画局長、クリエイティブ戦略本部長として、約200名の部門の人事・組織・研修・ビジョン策定を担当する。2004年に青山学院大学にてMBAを取得。その後、2009年に博報堂DYに移籍し、エグゼクティブ・クリエイティブ・ディレクターを務め、2011年より現職。現在は教壇に立つかたわら、執筆、講演、研修、企画、コンサルティングなど、さまざまな分野に活躍の場を広げている。著書に『リーダーシップのなかった僕がチームで結果を出すためにした44のこと』(実務教育出版)、『NOをYESにする力!』(実業之日本社)などがある。

※本記事は、本の要約サイトflierより転載しております。

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