【藤田晋氏×兼元謙任氏×石渡美奈氏】トップ経営者が説く「失敗力の身につけ方」~個人編~

ビジネスは挑戦の連続。
挑戦がなくては、成功をすることはありえない―。

一般社団法人新経済連盟が先週、「失敗力」にフォーカスし、著名なビジネスリーダーを招いて、起業と経営のヒントを共有する『失敗力カンファレンス』を開催した。

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パネル2では、岩本隆氏(慶應義塾大学大学院 経営管理研究科 特任教授)をモデレーターとして、藤田晋氏(株式会社サイバーエージェント 代表取締役社長)、兼元謙任氏(株式会社オウケイウェイヴ 代表取締役社長)、石渡美奈氏(ホッピービバレッジ株式会社 代表取締役社長)が登壇。『失敗力の身につけ方』について、個人と組織の面から語った。

岩本隆氏:本日は失敗力の身につけ方ということで、体系的な話ができるかと思っています。パネラーの皆さんには、議論のテーマとして2つお伝えしておりまして、1つ目は個人としての失敗力の身につけ方についてです。おそらく皆さん、社内で一番失敗している方々でしょうから、意識の持ち方や失敗した時の対処の仕方を聞いてみたいと思います。2つ目の議論は、組織としての失敗力の身につけ方です。組織として、失敗をどのように消化していくかという点は、企業が成長していくうえで非常に重要です。その2点についてお伺いしたいと思います。まずは議論1について、石渡さんからよろしくお願いいたします。

石渡美奈氏:私は祖父が創業した会社の3代目で、かつては活気のある会社に変えようとして、全社員から辞表をつきつけられるという失敗もございました。失敗の数は限りないのですが、「なんでそんなに元気でいられるんですか」とよく聞かれます。

(その理由として)自分の身の上に起こることは、誰かのせいではなく、すべて自分が引き起こしているという意識があります。また、どんなことも、すべて意味があって起こっていると思うことにしています。乗り越えられない課題は自分に与えられず、絶対に乗り越えられるこそ、こうして課題を与えられている。逆の見方をすれば、これが乗り越えられないと次の成長がないと思っています。

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大切なのは、(そういった課題に)対処する際は、間髪を入れずに行うこと。特に経営者は時間の周りが速いので、社員の1ヵ月が自分にとっては3ヵ月だと思っています。私が対処に遅れると、3倍遅れるという考えで動きます。そして、自分が解決できない問題は躊躇せずに人に聞く。私は学生もやっていて、周りにはいろいろと支えて下さっている先生がいます。でも、やはり失敗は避けられず、必ず降ってくるものと認識しています。失敗がなければ修行にならないので、自分の成長にもならない。そういったことをいろんな計算をしながら毎日繰り返しています。

岩本隆氏:ありがとうございます。次は兼元さんにお願いします。兼元さんは壮絶な人生を送っていらっしゃいますよね。

兼元謙任氏:私は現在、『OKWave』というQ&Aサイトを運営しておりまして、4000万人の方に使用していただいています。

私は小学校5年生の時に、トイレに顔をつっこまれて落とされそうになった経験があるんです。原因が僕は韓国から来た祖父の子孫でございまして、国籍が韓国だったんですね。日本で生まれ、日本で育って、帰化していたのですが、それを知った友達たちに、殴られ、トイレに落とされました。一番びっくりしたのが、昨日まで「カネちゃん、カネちゃん」と一緒にキャッチボールをしていた奴が、鬼のような形相をしていたことです。なんでこんなことが起こるのだろうと思いました。同じ日本語しか話せない人間を、なぜそんな目で見るんだろうと。25年くらい、(そのトラウマから)抜けることができませんでした。

けれど、切り替えるきっかけがあり、モノの見方を変えることができました。たった8人のそのいじめっ子が、韓国がどうのこうの、日本がどうのこうのと言っているだけで、実はもっとリベラルでフリーな方がたくさんいて、そんなことを考えては駄目だとある本が教えてくれたんです。それが『アドラー』でした。その著書の中に次のような話が出てきて、それが僕の事業を決めてくれました。

電車の中です。そこそこ混んでいて、空いている座席がちらほらあります。次の駅で止まり、ドアがバッと開いて、男の人が入ってきました。その男の人の子どもたちが2人、後ろから乗ってきました。男の人はダーッと歩いてきて、空いている席にどかんと座り、子供たちがキャーキャー騒ぎ、ほかの乗客の足を踏んでいても注意もしない。いろいろなところで悪口が囁かれます。「あの親にして、あの子だよ」「あの態度はだめだろう」。

たまりかねた中年女性が、その男性に言うんです。「あんたね、座らせるなら、子どもが先でしょ。子どもの教育、どうなっているの」。それを聞いて、男の人は答えました。「すみません。出てくる時に妻が亡くなったと聞いて、座る場所があったので、座ってしまったんです」。そしたら、「なんだ、この親父は」と思っていた、電車の中の人たちが一変するんです。「がんばらなきゃダメだよ」とおばさんも言うし、子どもに「こっちへこい」といって席を譲る人も出てきた。

僕はこの話を読んで、インターネット上で、そんなやりとりができる場所があれば、世の中の考え方をひっくり返す、世界をひっくり返すようなコミュニケーションが確立できるのではないかと思ったんです。それでOKWaveを15年前に設立しました。
これから、どんどん国際化していきますので、いろんな国籍のしがらみを持っている、だけど日本人として、日本でどう人に受け入れられたらいいかという点で、何かの力になれればと思ったんです。

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個人としての失敗力という面では、いじめを受けていた自分が、負の方向へと向かうだけではなくて、「これって、何か意味があるのではないだろうか。どうせ生まれたからには、何かするためにこの命を使いたい」と気づいて、切り替えられたのはよかったと思います。(たとえ苦しい経験をしても)この経験をどんなふうに展開していったらいいかと見つけられる時がくると思いますし、たまたま自分はその機会に恵まれて、その経験が今の自分を活かしてくれています。

岩本隆氏:兼元さん、ありがとうございました。実は私、人材育成を研究させていただいておりまして、サイバーエージェントさんはずいぶん研究させていただいております。まず個人の話からしていただければと。

藤田晋氏:改めまして藤田と申します。経営者歴で今年で18年目、社会に出て19年になります。致命的な失敗をしていたら、さすがにここにもいられないと思うんですが、「経営者としての強みはなんですか」とよく聞かれます。実家が金持ちというわけでもなく、ただのサラリーマン家庭に育ちましたし、性格も自分でいうのもなんですが至ってふつうだと思っています。その中で、自分で強いと思うのは、精神的な強さです。経営者としてだけではなく、ハートの強さで仕事を続けていると思います。

僕も生まれつき精神的強さがあったわけでは決してありません。では、どうやって鍛えたかというと、自分のキャリアを通じて鍛えられてきました。また、どういう時に鍛えたかといえば、大きな失敗をした時やみんなに叩かれている時です。

24歳で会社を設立して、26歳で上場させました。上場したのが、ちょうどインターネットバブルのあった2000年で、上場するまでは息を止めて一気に駆け上ったので、失敗も何もなかったのですが、そんな絶頂期に、いろいろな先輩から「挫折をしていない奴は駄目だよ、人生の中で失敗してみないと」と結構言われたんです。それを聞いた時は、「何言っているんだ。そんなのなくたって一気に駆け抜けられる」と正直そう思っていたんですが、今となっては、(当時の私のように)同じように調子に乗っている若者がいたら「お前、挫折しろ」と絶対言っています(笑)。

上場直後にネットバブルが崩壊し、その時、株価があっという間に10分の1になりました。1株850万から85万に下がっていて、そのまま死んだ人の心電図のように、ぴたっと下にはりついていたまま動かない。200億くらい会社に現金があったんですけど、それが100億くらいまで下がっていて、会社を清算したとしても、藤田が社長のままでは、お金がどんどんなくなると言われていて、半額セールのような状況でもありました。

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経営者って、いい時は何を言っても「なるほど」と言われるんですが、悪い時は「だから、お前、だめなんだよ」と言われるんです。結果がすべてというところがあるんです。その時はかなり長期にわたって、「あいつはもうだめだ」と言われ続けたのですが、4年がかりくらいで黒字化させて、結果的に会社をもたせることができました。その時はただ、とにかくじっと耐えていました。その経験があると、株価が下がっても「だから、なんだよ」という気持ちがある。ちょっと叩かれても、どうってことがない。おそらく、その経験が今、活きています。

精神力を鍛えるチャンスというのは、失敗した時、叩かれている時です。起業や新しい事業について、若い人と話していると、「でも、リスクがありますから」と言われることがあります。そこで、そのリスクの内容をいろいろと聞いていると、お金もどうせ持ってないし、そういう立場でもないし、僕にとってはどうでも良さそうに聞こえる学歴やプライドを失うくらいのことを「リスク」と呼んでいる。本当は恥をかきたくないだけ。失敗してバカにされるのが嫌なだけ。たかだか、そんなことをリスクと言っているので、そういうところを怖れずにいける人は、先に先にと進めます。本来なら、若いので、失うものはほとんどないはずです。

ある程度の失敗をして、メンタルを鍛えて、あまり恐れない人が早く成長できると思いますし、僕自身もそれを生かして、20代を過ごし、30代を過ごしてきました。そうして40代になると、もうみんな馬鹿にもしないし、「社長が言うんだからいい」となる。今まで叩いていたような人も(叩くようなことは)言わなくなります。そういう意味では、いろいろなことがやりやすくなりました。

次回は、『組織編』として組織としての失敗力の身につけ方をご紹介します。

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取材・文・撮影 山葵夕子

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