ジャック・ウェルチ氏「勤続年数、出勤日数、出勤態度は仕事のパフォーマンスと一切関係なし」

 東京・六本木にて開催されたワークスアプリケーションズ社主催のイベント『COMPANY Forum 2014』。初日となった10月7日(火)、開催10周年を記念して『COMPANY Forum 2007』の基調講演「ジャック・ウェルチの戦略的思考 21世紀を勝ち抜く~ビジネスに加速を、ビジネスに先手を~」がサテライト放映された。

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 同VTRは、アメリカのフォーシーズンズホテル・ボストンにて2007年10月3日(水)に行われたGeneral Electric社の元会長兼CEOのジャック・ウェルチ氏と、ワークスアプリケーションズCOOの阿部孝司氏の対談を記録したもの。

 2007年といえば、米サブプライム問題が起き、原油1バレルが100ドルまで高騰するなど、世界規模で経済や金融が混乱した年。同VTRにおいて、20世紀最高の経営者と評されるウェルチ氏は、「ベストプレイヤーからなる強い組織を作ることが、21世紀を勝ち抜く企業の条件である」と提言。最強の組織を作るための優秀な人材の定義やロイヤリティ、リーダーシップのあるべき姿について語った。

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■興奮するフィールドの定義

阿部:ウェルチさんは以前、優秀なプレイヤーをまずは集め、そのプレイヤーたちが興奮するフィールドを与えることこそ、経営者が成功する秘訣なのだとおっしゃっていました。ウェルチさんにとって興奮するフィールドとはどのような場を言うのでしょう。社会貢献できることなのか。要求水準の厳しいお客さまを相手にすることなのか。厳しい競争相手がいることなのか。

ウェルチ:まずは、社員が刺激を得られ、興奮できるポジションに配置されているかどうかが肝心です。社員と業務の相性がよいのはもちろん、勝利を意識できるポジションに置かれているかどうか。個人が偉大なフィールドでエキサイティングな仕事をしてこそ、グレート・チームワークを発揮することができるのです。

■優秀なプレイヤー、優秀なリーダーの定義

阿部:最優秀プレイヤーについてですが、私たちの会社では、「自分の頭で考えられて、人や環境のせいにしない」人材が優秀なプレイヤー、「スピルバーグのように、よい映画監督であること。コーディネーターとしてプロジェクトを統括して、いろんな役者を使いこなす」人材が優秀なリーダーであると考えていますが、ウェルチさんの考えはいかがですか。

ウェルチ:優秀なプレイヤーの定義として、まず第一に、高潔な人格かつ本物であること。次に内も外もおなじであること。それからエネルギーに満ちているか。周囲のやる気を高められるか。イエスとノーが明確か。実行力があるか。一方で、最高のリーダーの条件はあらゆる分野において先見性があることです。他者には見えない先のことまで読める人が最も優秀な人材です。

■リーダーのエンパワメントの条件

阿部:失敗は必ず起きます。部下の失敗をリーダーはどのように許容すべきか。あるいは許容しないべきか。この考え方がないと、なかなかエンパワメントを理解するのは難しいかと思いますが、リーダーのエンパワメントの条件とは?

ウェルチ:私が属しているような大企業の場合、小さな企業よりもリスクに対する耐性は大いにあります。よって、リーダーは発生するリスクの範囲を第一に理解する必要があるのです。そのリスクが、守備範囲内で収まるのであれば受け入れ、社員を罰する必要はありません。しかし、会社の存続に関わるようなら受け入れず、その行動を制止します。社員にはリスクを取ることを推奨しつつ、一方で経営に問題のない範囲内で収めるよう注力することです。

■ロイヤリティの必要性について

阿部:日本は経営者のロイヤリティが非常に高い国民性で、そういった経営がこれまで成り立っていました。しかしながら、年功序列制や終身雇用制が崩れてきており、そこで問題になっているのがロイヤリティです。多くの経営者は今、ロイヤリティがなかなかハンドリングできない状況にあります。ロイヤリティの築き方について、アドバイスいただきたいのですが。

ウェルチ:日本でロイヤリティが崩壊していることは良い兆候だと思います。私は常々、組織のロイヤリティについて疑問を抱いており、アメリカで年功序列や終身雇用について批判的な発言をすることで物議を醸してきました。よい労働環境を提供すること。目標達成の機会を与え、社員にチャンスを与えること。年功序列ではなく、仕事の成功や優れたパフォーマンスで報酬を決めること。それらの能力主義によるメリットを、経営者は社員にオープンに話せば、社員は経営者に対してベストを尽くすという契約関係を結びます。

私はロイヤリティはむしろ捨てたほうがよいと思っています。よい仕事をすることとは、毎朝出勤し、会社に顔を出すことですか?勤続年数が長く、出勤日数が多く、出勤態度がよいことが仕事のパフォーマンスがよいといえるのでしょうか。私は、それらは一切関係がないと思っています。そもそも、「忠義を誓ったのに」とロイヤリティを口にする人は、パフォーマンスに問題があります。最も有能な社員がこれまでロイヤリティを口にしたことがありましたか。ありませんよね。それが答えです。

■変革は経営者が繰り返し説明することから

阿部:ロイヤリティを捨てるべき、とおっしゃいましたが、ロイヤリティなしで、どうやって、社員をコントロールするのでしょうか。ウェルチさんが書いた本で、独自の評価制度について触れられていますが、注意点があればお聞かせ願いたいです。

ウェルチ:まずは文化を確立する必要があります。それは公正で誠実な文化でなくてはなりません。アジア文化圏でそういった評価制度を確立するのは、特に困難で、時間がかかります。そのためには、経営者が社員にかれらのポジションを明確に指示し、業務状況や改善点について話さなければなりません。社員と向き合うのです。

私が実践した方法として、高く評価している項目を4点あげたら、次に改善すべき点を4点、同じように挙げます。企業として正式な統一フォーマットを作る必要はなく、経営者と社員がオープンに向き合って、そのうえで社員の社内でのポジションについて決定し、合意をとります。大事なのは、決して偽らず、誠意をもって接することです。

従来のロイヤリティ制度では、経営者が社員に直接話しかけることはありませんでした。だから、社員は、入社さえしてしまえば、出勤後に居眠りをしてもオーケー。毎日、“同じダンス”を続けていました。けれど、今は違います。社員がさらに成長できるように、経営者自らアプローチし、環境を変革していくべきです。とはいえ、変革は元来、支持されません。なぜなら現状維持を皆が好むからです。だからこそ、変革をする場合は、何度もくり返し説明しなければなりません。それをあきらめ、古い報酬体系のままでは、社員は変わらないのです。

これまで、私は業務時間の6~7時間を、社員の教育、評価、配置転換などの人事に費やしてきました。私の主な仕事は、トップ700人の給与と賞与の決定でした。そして、年2回は各事業のCEOに一日中ヒアリングをし、将来性のある社員の顔と名前を覚えていきました。

■日本のビジネスリーダーへ向けてメッセージ

阿部:最後に日本のビジネスリーダーに向けてメッセージをお願いします。

ウェルチ:品質、イメージマネジメント、プロセスマッピングなどは、これらはすべて日本企業から学んだことです。日本は高品質なものをリーズナブルな価格で売って成功することが可能であると世界に示してきた、いわばパイオニアです。けれども、アメリカの方が「学ぶこと」により積極的で速かった。日本は遅かったのです。確かに、日本の中国進出は成功していますが、しかしながら、それ以外にもグローバルメソッドはたくさんあります。

日本はもっと学ぶべきです。能力主義主体の運営システムを築くことも、日本企業を大いに変化させることでしょう。「日本では通用するわけがない」と否定しないでください。何を採用するかはあなた次第です。私は日本の可能性を信じてますし、そして日本を愛しています。私は日本がより開眼し、市場以外のあらゆるフィールドを見つめ、経営や生産性が向上し、より革新的に成功することを期待しています。

取材・文・撮影 山葵夕子

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