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退職通知のタイミングが総支給額に大きく影響!? ボーナスはがっちり受け取る!完璧転職スケジュール
「転職をするならボーナスが出た後で」と考える人は多いが、入社の時期が特定できないため、実現できているケースはそう多くない。この記事では退職前だけでなく、新しい企業での入社後のボーナスを含めた、ボーナス獲得のための完璧スケジュールを探る。
(取材・文/総研スタッフ 高橋マサシ)作成日:06.05.17
Part1 これだけは押さえておきたい「ボーナス転職」の基礎知識
 日本のボーナスは独特だ。多くの企業でボーナスは、「インセンティブ」や「臨時賞与」ではなく、「生活費」として年収の中に予定されている。つまり、ボーナスを受け取った後で転職する、いわゆる「ボーナス転職」を考えるのは当然とも言える。まずは基礎知識を知っておこう。
ボーナス期の転職に見る2つの典型的なパターン
A 夏のボーナスを満額で受け取って転職
B 夏のボーナスを1円も受け取れずに転職
 上の表を見てほしい。2つの差は単純で、ボーナスを受け取って退職した場合と、ボーナス支給前に退職した場合である。企業により支給時期が異なるため、ここでは1年に2回のボーナスで、支給月は7月(夏)と12月(冬)にしてある。
 このような差が生まれる大きな理由は、内定の時期と入社日だ。Aは6月後半に内定が出て、ボーナス支給後の退職を考えたケース。ただ、支給前に退職の意思を伝えるのは「もらい得」のようで気が引けるし、ボーナスを減額される場合(後述)もあるため、退職の通知は8月に入ってから。残務整理や仕事の引き継ぎに1カ月強かかり、入社は10月上旬となった。転職先企業に入社日を延期してもらったのは言うまでもない。

 Bは5月下旬に内定が出たケース。ボーナスは欲しかったが、転職先企業から「プロジェクトがスタートするので7月初めに来てほしい」と言われた。どうせボーナスは受け取れないと早めに退職の意思を伝え、内定からほぼ1カ月後には入社している。
 これらが典型的な「ボーナス転職」の例だが、ここで出てきたいくつかの要素から、押さえるべきポイントを見ていきたい。
知らないと損する自社ボーナスの仕組み
 ポイントは3つある。ひとつはボーナスの評価対象期間だ。ボーナスは一定期間(一般的には6カ月)の業務・業績が評価されて支給されるため、同じ7月支給でも10月〜3月、11月〜4月、12月〜5月などと企業によって対象期間が異なる。勤務先の制度は事前に調べておきたい。
 ただし例外もある。給与が年俸制で、年俸を16で割って4カ月分をボーナスとして支給する、あるいはボーナスは純粋に「賞与」であり、通常は支給されないが好業績などが理由で臨時支給されるなどだ。この記事では、日本の典型的な賃金体系である「ボーナスは賃金の一部として支給」を前提とする。

 もうひとつは支給額だ。まず、支給前に退職が決まっていると、減額される場合がある。理由は多くの場合「査定の結果」である。また、原則的に支給日に在籍していないと支払われない。この2つは現実的に対抗できないので覚えておいてほしい。
 3つ目は、退職する企業のボーナスだけでなく、転職する企業のボーナスも考えたいということだ。上の表には書いていないが、転職先企業のボーナス評価対象期間を5月〜10月とすると、冬のボーナスはAが1カ月分、Bでは4カ月分となり、3カ月という金額の差が出ることになる。
Part2 ボーナス転職実践者が経験した予想外の「光と影」
「ボーナス転職」を実践したエンジニアを紹介する。昨年3月に内定を得たものの転職先企業に入社日を待ってもらい、ボーナス支給後の7月に入社したITコンサルタントだ。周囲に迷惑をかけず、スムーズに事が運んだと思ったが、入社後に思わぬ事態が待っていた。
前社:退職時期を調整してほぼ全額のボーナスを獲得
 坂本さんはリクナビNEXTスカウトを使って転職活動を開始。2004年12月にある企業からオファーが届き、連絡を取って面接を重ね、2005年3月早々に内定を得た。先方からは「すぐにでも来てほしい。新年度の4月からでも」とプッシュされた。
「内定後の早い段階で会社に転職意思は伝えましたが、4月入社は無理でした。会計の仕事は3月が年度末で、新年度の4月からシステムが稼働、5月が第1回目の締めとなります。そこまで見届けてからの退社だと思っていましたし、前社からも『5月中旬までいてほしい』と言われました」

 もともとボーナス転職は意識していたが、このスケジュールが本気にさせた。夏の支給月が6月なので、もう少し退社を延ばせばボーナスを受け取れるからだ。坂本さんは勤務先に退職日を延ばしてもらい、転職先には入社日を待ってもらって、ボーナス支給後の6月末に退職、7月初旬に入社した。支給金額は通常なら2.5カ月分で95万円だが、受け取ったのは70万円。減額の理由は「査定が低かった」だ。
「辞めていく人間に満額は払えない、というのが本音でしょうね。ただ、転職の珍しくない業界ですから、前の会社も今の会社も、日程を調整したことでの嫌がらせや反発はありませんでした。むしろ慣れた感じもあり、その点で苦労はありませんでした」
坂本さんのボーナス転職スケジュール
現社:2カ月も仕事がなく、入社後のボーナスは大幅に減額
 予期せぬ事態が起こったのは入社後すぐ。新しい職場で仕事がなかったのだ。なぜなら、転職先企業はもっと早い時期の入社を見込んでプロジェクトを用意していたので、7月入社の坂本さんは「乗り遅れて」しまったのだ。結果的に「待機」の状態で2カ月間を過ごす。
「会社にある程度慣れてからならまだしも、右も左もわからないままで仕事がなかったのは、精神的にきつかったです。また、仕事がアサインされていないとボーナスが減るのは、この業界の特徴です」

 現在の会社のボーナスは1年分がまとめて2月に支給される。7月入社の坂本さんの評価対象期間は計6カ月で、アサインの期間が短かったため査定も下がった。仮に無理をしてでも5月に入社していれば支給額は2カ月分増え、予定どおりのプロジェクトに参加できていただろう。
「今思うと、前の会社のボーナスにこだわらなくてもよかったとも思います。転職後にバリバリ仕事ができて、満足できるボーナスも得ていたでしょうから。会社の業績がよかったので、2月のボーナスは『史上最高額』と評判だったんです」

 坂本さんは入社前に、給与の前年度実績や評価査定、ボーナスの仕組みといった処遇説明を受けている。しかし、「結局いくらになるの」という実感値はわかなかったという。また、年収にして約600万円から約750万円に上がったのだが、説明だけでは下がる場合もあると覚悟していた。
「仮に7月のボーナスの評価期間が12月〜5月ならば、6月退社の人には12月〜4月分を支払うなどがあってもいいと思います。そうでないと、ボーナス転職で考え込んでしまいます」
坂本剛さん(仮名:31歳)
ERP導入コンサルタント
坂本剛さん(仮名:31歳)

大学卒業後にコンサルティングファームに入社。主にERP導入コンサルティングに携わり、昨年7月に同職種で外資系ファームに転職した。
ボーナスを受け取って転職したエンジニア100人へのアンケート
Part3 ボーナス転職を成功させるための至高の5カ条
 ボーナス転職にはさまざまな要素が重なるため、総合的な成功を求めるのは難しい。そこで、人材紹介会社に勤めるプロのヘッドハンターにアドバイスをいただいた。ボーナスの額にこだわるなら、在籍企業と転職先企業を通した総額を考慮すべきだと語る。
年間での「ボーナス対象期間のロス」を少なくする
 私が企業に紹介する方々も、ボーナス時期が近づくと「転職するならボーナスが出た後の8月か9月に」と異口同音におっしゃいます。ただ、「6月入社が可能な人」などと入社日を指定する企業も多く、調整は難しいものです。私としては「食いつかないとチャンスを逃す」と言いたいのですが、まずは基本的なことを具体例で説明しましょう。
 内定の時期は確定できないので、仮に6月下旬としました。(1)はボーナス支給後の8月上旬に退職の意思を告げるケースです。支給前に退職を伝えて減額されるのを避けるためですが、実は企業側にも理由があります。例えば退職者の評価が5段階のAなら、今後も自社で働く社員にAをつけて士気を高めたい。そこで評価をCなどに下げるわけです。

 そして、9月の入社となります。これは通知後の1カ月間が一般的な退職準備期間という意味だけでなく、内定から約2カ月強がたっているからです。Part2の坂本さんのようなケースもありますが、私の経験では、企業が入社を待てる最大日数は内定後2カ月です。20代の若手を複数人採るならともかく、特に33歳以上のリーダー、マネジャークラスなら、用意した仕事にすぐにでも入ってもらいたいもの。2カ月以上待つならほかの人を探すでしょう。
 こうして(1)のスケジュールでは満額のボーナスが受け取れます。成功したように思えるのですが、私はお勧めしません。ボーナス対象期間のロスが4カ月も出てしまうからです。
手法(1) × ボーナス支給後の退職通知で「プラス2カ月」分に
手法(2) ○ ボーナス支給前の退職通知で「プラス3カ月」分に
処遇説明で詳細を聞く。事前に退職日を伝えておくのも手
 ボーナスの金額はトータルで考えましょう。(2)では、内定後数日して退職の意思を伝え、8月早々に入社するケースです。確かに査定で減額はされるでしょうが、半減するとは思えない。それより、転職先の入社が1カ月早くなるのでボーナスもその分が受け取れます。ここでは2カ月と3カ月の差ですが、仮に1カ月分なら「寸志」で終わる場合もあり、合計額でより差が出ます。もちろん、新しい仕事に早くチャレンジできるというメリットも大きい。
 注意点としては、ボーナスの評価対象期間や前年度実績などを、処遇説明のときに詳しく聞くことです。面接の場で質問することは難しいですし、担当部署でないとわからない場合もあるので、あくまで処遇説明時の質問です。

 また、企業が待つのは最大2カ月と言いましたが、例外もあります。面接の段階から「○月までは辞められません」と伝えた場合です。企業はその条件も採否の材料にするので、無理は言わないと思います。最近では内定後に転職活動を続ける人も多いので、内定辞退のリスクを避けたいなどの事情から、入社までの空白期間を短くしたいというのが企業の意思なのです。
 景気回復といわれても、やはり「無駄な人は採らない」という企業は多い。時代も情報もどんどん変わります。ボーナスを大切に考えることに反対はしませんが、こだわり過ぎてタイミングを逃さないようにしてください。
清野義則氏
株式会社アイテック
人材事業部 部長
清野義則氏
ボーナス転職を実現するための5カ条
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私も転職経験者なので、ボーナス転職は気になります。ただ、今回の記事を通して、「すべてのいいとこ取り」は難しいと思いました。ボーナスは多いに越したことはありませんが、仕事や人間関係、何より転職時期を含めて知恵を絞らなければいけないようです。それでも、お金は欲しいですけどね。大切な話なので、ぜひ下のフォームからご意見を送ってください!
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