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エンジニア給与知っ得WAVE Vol.
104
20代、30代エンジニアの
平均貯蓄額は、476万円!
景気の先行き感がいまだ不透明な時代に、頼れるのは貯金。とはいえ、給与・ボーナスが伸び悩むなかで、蓄財はそう簡単ではない。IT系とハード系あわせて1000人のエンジニアに、現在の年収と貯蓄額、貯蓄の方法などを聞いた。
(取材・文/広重隆樹 総研スタッフ/宮みゆき イラスト/絵理すけ) 作成日:11.01.24
20代後半〜30代前半のエンジニアの平均貯蓄額は476万円

 金融広報中央委員会昨年10月に発表した2010年の「家計の金融行動に関する世論調査」(金融世論調査)によると、日本人が1世帯あたり保有している金融資産は平均1,169万円となることがわかった。前年に比べ45万円の増加。このうち、預貯金の保有額は635万円になるが、これも前年から16万円増えている。「給与などの定期収入から貯蓄する割合を高めた」と回答する人が増えており、その理由を「老後の不安があるから」とする人が8割以上ある。

 株式、債券、投資信託など「有価証券」の保有額も前年比10.5%増加の179万円と増えている。ただ、元本割れリスクのある金融商品は「持ちたくない」という回答も8割以上と高率だ。世帯平均の金融資産1,169万円、うち預貯金が635万円という世論調査の数字と、自分のケースを比べたとき、読者はどんなことを感じるだろうか。

 Tech総研が20代後半から30代前半の1000人のエンジニアを対象に、貯蓄額や貯蓄方法について聞いた調査では、こんな結果が出ている。まず全体をみていこう。1000人のエンジニアの現在の貯蓄額平均は、476万円だ。毎月の貯蓄額は平均6万円という数字が出た。年代別にみると、20代後半では月額貯蓄が8万円で、現時点での貯蓄額が311万円。30代前半になると、月額は6万円と下がるものの、貯蓄額は493万円に増えている。(DATA1)

 ただこの貯蓄総額の中には、普通・定期預金以外に、国債・外債・社債、投資信託、個別株、外貨預金、FXなどが含まれている。つまり、本調査の「貯蓄」は、冒頭の金融世論調査でいうところの「金融資産」に相当する。全国の2人以上の4035世帯の回答をまとめた金融世論調査の1,169万円と比べると、エンジニアの476万円はその40%でしかない。

DATA1 毎月の貯金額・現在の貯蓄額
職種分野 職種 20代後半 30代前半
毎月の貯蓄額 現在の貯蓄額 毎月の貯蓄額 現在の貯蓄額
IT系 コンサルタント、アナリスト、プリセールス 6 万円 481 万円 7 万円 760 万円
システム開発(Web・オープン系) 9 万円 361 万円 5 万円 540 万円
システム開発(マイコン・ファームウェア・制御系) 4 万円 345 万円 5 万円 477 万円
システム開発(汎用機系) 4 万円 360 万円 14 万円 532 万円
ネットワーク設計・構築(LAN・Web系) - - 4 万円 467 万円
パッケージソフト・ミドルウェア開発 3 万円 229 万円 4 万円 467 万円
運用、監視、テクニカルサポート、保守 4 万円 195 万円 6 万円 480 万円
研究、特許、テクニカルマーケティング、品質管理ほか 8 万円 330 万円 10 万円 895 万円
社内情報システム、MIS 4 万円 423 万円 4 万円 507 万円
通信インフラ設計・構築(キャリア・ISP系) 8 万円 492 万円 10 万円 1,094 万円
集計 6 万円 341 万円 6 万円 560 万円
ハード系 サービスエンジニア 4 万円 181 万円 3 万円 359 万円
セールスエンジニア、FAE 4 万円 250 万円 4 万円 381 万円
回路・システム設計 7 万円 301 万円 5 万円 501 万円
機械・機構設計、金型設計 16 万円 290 万円 5 万円 474 万円
研究、特許、テクニカルマーケティングほか 10 万円 300 万円 6 万円 541 万円
光学技術 9 万円 1,000 万円 7 万円 1,043 万円
制御設計 4 万円 138 万円 23 万円 521 万円
生産技術、プロセス開発 5 万円 268 万円 8 万円 422 万円
素材、半導体素材、化成品関連 6 万円 700 万円 5 万円 603 万円
半導体設計 4 万円 208 万円 8 万円 639 万円
品質管理、製品評価、品質保証、生産管理 7 万円 478 万円 6 万円 466 万円
集計 8 万円 311 万円 6 万円 493 万円
全体平均 7 万円 327 万円 6 万円 526 万円
普通・定期預金が全体の7割。投資型商品は意外と貯まらない?

 Tech総研の調査が低めに出ているのは、20代後半〜30代前半という比較的若い世代を対象にしたものだから、当然といえば当然だ。今回の調査では既婚率はわからないが、一般的にはこの世代の独身比率は高い。独身世帯と2人以上の世帯では貯蓄高が違って当然だからだ。ちなみに、サラリーマンが人生の中でもっとも貯蓄できるのは、ダブルインカム・ノーキッズ、つまり夫婦共働きで子供が生まれていない時期といわれる。これは、たんに2人分の収入があるからというだけでなく、家庭をもつことで、貯蓄意識が高まるからだ。

 独身者が多いと思われる若手エンジニア。平均476万円の貯蓄額(=金融資産)の内訳をみると、やはり多いのは普通預金(186万円)と定期預金(162万円)だ。この2つで全体の7割以上を占める。それに次いで多いのが個別株(53万円)、投資信託(25万円)、外貨預金(14万円)、FX(11万円)などとなっている。現金貯蓄と投資商品を比べると、ざっくり7対3の割合。金融世論調査では、貯蓄と投資の比率が5.5対4.5(635万円:534万円)になっているのと比べると、かなり貯蓄に偏っていることがわかる。

 貯蓄から投資への掛け声のなかで、若い人の間にも投資意識が高まってきたといわれるが、この調査を見る限りではまだまだ。全般的な株価低迷も背景にはある。定期預金でコツコツ貯めるのが精一杯で、とても投資に回す余力はない。あったとしても、なるべくリスクの低い金融商品からというのが現状なのだろう。

DATA2 職種・年代別の2010年冬のボーナス額
年収のほぼ同額を貯めるエンジニアたち。老後のための足がかりにはなる

 企業に勤務するエンジニアの場合、主たる収入は給与と賞与だ。そこからなんとかやりくりして貯金を貯め、さらに余った手元資金を投資に回すというのが、一般的な金融資産形成の方法になる。

 そこで年収と貯蓄の関係を考えてみることにする。調査対象者の平均年収は500万円。これに対して、平均貯蓄額が476万円だから、ほぼ年収の95%分にあたる。年代別にみると、20代後半の年収が428万円に対して、貯蓄が327万円(76%)、30代前半では524万円の年収に対して526万円(100%)の貯蓄となっている。果たして、この数字は多いのか少ないのか。

 貯蓄は年収の何倍を目標にすべきかについて標準的な指標はないが、マネー雑誌などではよく、「60歳までに年収の5〜6倍」というフレーズを見かける。それだけあれば、年金保障の今後に不安を抱えつつも、そこそこ快適な老後生活を送れるというわけだ。20代〜30代で年収の5〜6倍の貯蓄というのはとうていムリな話だが、この年代は、そこに至るためのベーシックな貯蓄基盤を固める時期であることはたしかだ。今回の調査を一つのサンプルにして、とりあえずは30代前半までには年収と同等分の貯蓄を確保しておくことを、目標にしてみてはいかがだろう。他のエンジニアができているわけだから、できないはずはないのである。

 今さら言うまでもないことだが、貯蓄は単に老後生活を支えるというだけでなく、結婚生活や子育ての資金でもある。また、エンジニアにとっては、転職の自由度を高めるために必要な軍資金にもなる。いまの会社が倒産したり、キャリアの将来性が望めなくなったとき、なんらかの形で転職活動を始めなければならないが、転職先が決まるまでの間にたとえ無職期間があっても、貯蓄があれば何とかそれをしのげるのだ。反対にこの余裕がないと、転職活動に焦りが生まれ、「食うためには仕方がない」と安易な妥協をしがちである。

「やりくり上手」のエンジニアは、光学系、通信系、研究・特許系、素材系

 一口にエンジニアというが、専門技術はさまざま。同じエンジニアでもソフトウェア開発やネットワーク設計などのいわゆる「IT系」と、機械設計や生産技術などの、いわゆる「ハード系」では肌合いが違う。その違いは、貯蓄高にも現れているのだろうか。(DATA2)

 興味をもって調べてみると、IT系の現在の貯蓄高平均が502万円(平均年収は509万円)、ハード系が476万円(平均年収492万円)という差が現れた。年収に対する貯蓄比率もIT系(98%)が、若干ながらハード系(96%)を上回っている。これが有意の差なのかどうかは、いまのところ判断しかねるが、興味深い数字であることはたしか。

 ちなみに30代前半に限定して、細かい職種別でみてみると、最も貯蓄額が多いのは、「通信インフラ設計構築(キャリア・ISP系)」の1,094万円、ついで「光学技術」の1,043万円となった。反対に低いのは、「サービスエンジニア」の359万円、「セールスエンジニア」の381万円などとなっている。

 さらに興味があるのは、限られた年収のなかでも、貯蓄額が高いのはどんな職種の人たちか、ということだ。いわば「やりくり上手」は誰かということ。貯蓄÷年収の貯蓄比率が最も高いのは「光学技術者」(30代前半の平均年収516万円に対して貯蓄が1,043万円で、貯蓄率は202%)だが、200%超というのは特異な数値。調査対象者に特異サンプルが含まれている可能性を否定しきれない。他に上位につけるのは「通信インフラ設計・構築(キャリア・ISP系)」(貯蓄率172%)、「研究、特許、テクニカルマーケティング、品質管理」(143%)「素材、半導体素材、化成品関連」(118%)などだ。低い方ではここでも「セールスエンジニア」(67%)、「サービスエンジニア」(70%)が顔を出す。

 平均貯蓄額では優位に立つIT系ではあるが、「やりくり上手」という観点からみると、意外とハード系職種のなかでもがんばっている人たちが多い、ということはいえるかもしれない。

DATA2 主な貯蓄方法と、現在の貯蓄額
DATA2 主な貯蓄方法と、現在の貯蓄額
貯蓄と投資、最適のバランスを探して

 最後に、貯蓄方法について自由回答してもらった中から、お金を貯めるヒントを探ってみよう。20代の層には「生活費で手一杯」「いきあたりばったり」「今は普通預金のみ」「その月に余ったお金を定期預金に組み入れ」という人も多いが、低金利の時代、もちろんこれではお金はたまるはずがない。余ったから預けるではなく、最初から一定金額を定期預金などに組み入れて、その残ったお金で生活するというのが賢明な方法だ。その点では、給与天引き型の財形貯蓄は有効だ。

 たとえ普通・定期預金だけだとしても、「当面使わない金は金利のよいネット銀行に預けている」「余裕がある月は金利の高いネット銀行に定期預金」など、預け先の選択は重要になるだろう。もちろん20代でも、定期制預金と投資型金融商品のバランスを取りながら蓄財に励む人もいる。ここでエンジニアたちの声を拾ってみよう。

エンジニアの生声
堅実派な20代は、貯蓄中心

給与から1万円を積立定期預金に預け、そのほかを投資信託で運用。ボーナスは全額定期預金に預ける
(IT系/27歳/年収450万円/貯蓄高450万円)

貯蓄と投資をバランスよく

生活費などで必要十分なお金は普通預金、当面使わない余剰金は定期預金などに預け、余剰金の1〜2割程度を外貨預金」
(ハード系/26歳/年収400万円/現在の貯蓄高160万円)

リッチな30代は、蓄積から投資に

最低500万円はいざという時の貯蓄にあて、残りを投資に回す」
(IT系/30歳/年収450万円/現在の貯蓄高660万円)


 回答者の中には、外貨預金、FXなど最近流行の投資運用術への関心も高いが、先に見たように、運用益の平均貯蓄額は、外貨で14万円、FXで11万円程度。けっしてぼろ儲けできるほど甘くはないようだ。いずれにしても、先行き不安の時代。お金が人生のすべてではないが、お金があれば人生がより自由になることはまぎれもない事実。貯蓄と投資については、さらなる研究が必要になっている。

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宮みゆき(総研スタッフ)からのメッセージ 宮みゆき(総研スタッフ)からのメッセージ
収入を貯金に当てて将来に備えるエンジニアが多いようですが、資金運用はお好みでない様子。投資にリスクを感じるのはエンジニアらしくもあり、意外でもありました。皆さんはどうですか?

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