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クラウドを使えば費用は格安、Webやアプリで勝負できる

会社は辞めずに開発、
    「3日起業」をやってみよう!

IaaSやPaaSなどのクラウド環境が格安で利用できる今、独自にWebサービスやアプリを開発しているエンジニアも多いはず。だったら「起業」してみたら? 会社を辞めろなんて言わない。提案するのは「3日起業」。自分にどれだけのスキルがあるか、試してみるだけでもワクワクすると思う。

(取材・文・撮影 総研スタッフ/高橋マサシ) 作成日:12.02.20

クラウドサービスは値段ではなく、自分との「相性」で選ぶ

さくらインターネット

さくらインターネット研究所
上級研究員
松本直人氏

まず、起業の準備にいくらかかるかを計算してみよう。アプリの開発だけなら自宅のノートPCにせいぜいストレージがあれば十分。Webサービスであればクラウドを利用するのが安くて早くて簡単だ。さくらインターネット研究所上級研究員の松本直人氏は、クラウドについてこう語る。
「月額固定でがっちりといくか、従量課金でとりあえずやってみるか。大きく2つに分かれます。トラフィックが出ていなければ従量課金は本当に安いですが、逆の場合は青天井。最悪は『クラウド破産』という可能性もあります」

クラウド破産とは従量課金で使い続けて、月に何十万円という金額を請求されるケース。起業の初心者がそれほどを使うかどうかは別にして、「どれだけ使ったか」をチェックしておくに越したことはなさそうだ。また、最初は従量課金で始めて、様子がわかってきたら固定に切り変えるなども考えられる。では、値段は?
「クラウドではなくてVPSですが、弊社では月額980円からあります。値段としてはこれがぎりぎりだと思いますし、とりあえず始めるには十分でしょう。ただ、値段はどこもさほど変わりません。大事なのは自分との『相性』です」

この1〜2年でクラウドサービスを提供する企業が急増し、各社ともに特徴を出そうと必死だ。そのためか値段に大幅な違いはない。まずはIaaSやPaaSなどの差で考えてみたらどうだろう。
Java、Ruby、Perlなど開発言語や環境がある程度決まっていれば、それに合ったPaaSを選べばいいし、そのほうが楽だ。松本氏は「Web屋さんだったらPaaSでOKでしょう」と語る。一方、自分なりの開発環境をそのまま構築するならIaaSだ。ただ、ある程度の技術知識は必要になる。

費用はせいぜい1年で数万円、まずはクラウドを試そう

起業

加えて、松本氏は起業するエンジニアは2タイプに分かれるという。Webサービスなどをゴリゴリ開発するタイプか、インフラまですべて面倒をみるタイプかだ。
「WebをつくるだけならGoogle App Engineを使えばいい。ただ、『クラウドなのに何でインストールしなくちゃいけないの』というエンジニアも実際にいます。同じエンジニアでも本業が開発でなく、趣味でやりたい人に多いですね。つまり、人それぞれということです」

そこでお勧めなのが「とりあえず試してみる」こと。サービスの概要をざっと読んで、1週間でも使ってみる。自分の開発環境が用意できるのか、使い勝手が自分に合うのか、などを判断するのだ。1週間後の料金明細を比較するのも役に立つ。これが先の「相性」なのだ。
またAmazon Web Servicesの「JAWS-UG」やWindows Azureの「JAZUG」などの、ユーザー会から情報を得るのも方法だ。最近は特に活動が活発で、イベントや講演もかなりの頻度で開催されている。

「いくつかのサービスを試して、2周くらい回ると自分にマッチしたものがわかってくるものです。ハードはノートPCだけでOK、勉強するにはネットがあるし、本を買ってもさほどはしない。費用はクラウドを入れても年に数万円でしょう。起業に躊躇する必要はありません。必要なのは知恵と体力です」

「見た目に凄くてつくりが難しくないもの」で勝負せよ

起業
クラウド

次は収益源を何にするかだ。広告、アフェリエイト、ペイドなどがあるが、もちろん最も難しいのがペイドだ。売れるコンテンツを考えて開発するのもそうだが、ネックになるのは課金システム。
PayPalなどのオンライン決済サービスを使うのもよいが手数料がかかる。お金を自分で管理するのもエンジニアは得意ではないだろう。ならば、スマートフォンのアプリマーケットを利用するのが楽だ。手数料は必要でもしっかりと集金してくれるのはありがたいし、会社を辞めて生活費を稼ぐわけでもない。
「フリー版を出した後で有料版を出していく方法もあります。そうそう売れるわけではないので入るお金も少額でしょうが、10時間で書いたアプリでお小遣いが稼げれば御の字でしょう」

では、アプリやWebサービスで何らかの「事業」を始めた場合はどうか。もちろん会社は辞めないままだ。副業禁止のところも多いだろうが、ここでは副業OKを前提とする。
「まずは名刺。なぜなら、誰もあなたのことを知らないからです。それと会社のHP。お金があるならアウトソースしたほうがよいでしょうが、値段はピン切りですから、デザインのできる友人を探したほうがよいかもしれません」
技術力とデザイン力は別のものだ。HPをつくれるエンジニアは多くても、見知らぬ人が読んでくれるHPをつくれる人は稀だろう。ならば、専門職に外注したほうがよいのだが、デザイン料は決して安くない。それならば自分で頑張るか、知人がいるなら頼めということだ。
 

また、HPとともに会社を紹介するのがパンフレット。ネットの時代になっても多くの会社で用意されているが、松本氏は「パンフレットは不要」と語る。
「素人がつくったパンフレットは文字ばかりで、要点が絞れていなくて、読みにくい。渡しても読んでくれませんし、逆効果になるかも。プロがつくれば別ですがデザイン、ライティング、印刷などの経費が掛かりますから、なくてよいでしょう」
大事なのは会社や製品のPR、ネタづくりだ。TwitterやSNSを使うなどは当然。あとはWeb記事など媒体の特集などで紹介してもらうこと。ただ、業界やコミュニティで知名度があれば別だが、そうそう取り上げられないもの。松本氏がお勧めするのが「見た目に凄くてつくりが難しくないもの」の開発だ。

「ちょっと前ならAR。参入者が少ないときにガーっとつくって発表する。もちろん、フロントランナーになればベストです。そのためにも、思い込みは捨てたほうがよい。起業する人は特にそうで、『このアプリは売れる』『俺なら大丈夫』という自信家が多いのですが、その自信はどこからくるのか(笑)。途中で気づいたほうがいいですよ」

自分の思いをすべてぶつけた「3日起業」をやってみよう

起業
起業

これから先は仮の話だが、つくったアプリやサービスが当たった(当たってしまった?)場合。そうなれば続々と出てくるのが類似品だ。このときに「一発当てたからいいや」と止めるか、「ユーザーもいるから続けたい」と思うかが分かれ道。後者を選べば差別化したアプリや、新しいサービスをつくり続けことになる。

そしてまた仮の話だが、事業が大きくなった場合。そうなるとエンジニアは目的で2方向に分かれるという。サービスがつくりたいのか、会社を大きくしたいのかだ。薄々感じていてもエンジニアはこの切り分けができないと松本氏は語る。
「私も以前は会社を経営していました。お金をもうけるのが当たり前ですし、従業員の生活もあるので、悩みましたがエンジニアでなく経営者になりました。コードを書くなど目先のやりたいことを捨てたのですが、それでも感じたのは体力が必要ということ。睡眠が重要になりますからしっかり寝てください(笑)」

ここまでいけば完全な起業だが、副業として始めた場合でも重要なポイントがあるという。悩んだときにどうするかだ。例えば、システムのトラブルで自力ではどうにもならないとき。
「悩んだら人に聞く。恥ずかしくても人に聞く。人に聞くのが嫌な人も多いでしょうが、それでは解決しません。だからこそコミュニティ活動が大切なのです。ユーザー会で聞いてもいい。そのためのユーザー会ですから。そして、あきらめることも大事。ダメだったときは無理しないほうがいい」
何百人、何千人、あるいは何万人ものユーザーがつく場合もあり得る。そんなときは「ユーザーを大切にしてください」と松本氏は言う。サービスが大きくなったらそれは自分ではなくユーザーのものだからだ。自分の都合で気に入らないから止めるでは、その人に「次はない」そうだ。

「深く考えずに『3日起業』をしてください。自分が思っていることのすべてを掛けて、その3日間でがっつりやってみる。1日でもよいのですが3日だと考える時間ができますから。結果としてやめてもいいですし、もし続いたら次の3日をやってみる。それが1年になるかもしれませんよ」

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