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初の高校生と女性ファイナリストも! Tech総研賞は「PocketCode」
応募466作品「Mashup Awards 8」最終バトルの結果は?
今年もやってきたマッシュアップアワード「Mashup Awards 8」。今回は「TechCrunch Tokyo 2012」との共催イベントで行われた。そのファイナルステージレポートとTech総研賞を受賞した堀内公平氏のインタビューをお届けする。
(取材・文/広重隆樹 総研スタッフ/宮みゆき 撮影/栗原克己 刑部友康)作成日:12.11.30
アプリ開発コンテストと、スタートアップバトルが「マッシュアップ」!

 今回が8回目となる日本最大級のアプリ開発コンテスト「Mashup Awards 8(以下、MA8)」(リクルート・メディアテクロノジーラボ主催)。全国規模の予選会を勝ち抜いたエンジニアたちが、11月15日東京・六本木に集結し、最終選考会・授賞式「Mashup Battle FinalStage」に臨んだ。

 今年のファイナルステージ最大の特徴は、「TechCrunch Tokyo 2012」との共催イベント。平日の午前中から会場のラフォーレ六本木には熱気がこもる。壇上では、これからのテクノロジービジネスの未来について、業界を代表する国内外のキーパーソンが講演や討論を行った。

 基調講演の最初のスピーカーはヤフー副社長COOの川邊健太郎氏。15年ぶりに執行体制を大幅に刷新した最近のヤフーのビジネスについて語った。川邊氏によればヤフーはいま「第二の創業」を迎えているという。「スマホ・ファースト」を社内標語に掲げ、スマートフォン時代にふさわしい意思決定のスピード化を急ぎ、グリー、DeNAを初めとする外部企業との提携やスタートアップ企業の買収も活発化している。「90年代ビットバレーの雰囲気を、ヤフーから生み出すことができれば……」と、かつて「電脳隊」を率い、若きIT起業家たちのリーダー的存在だった川邊氏は決意を語っている。

川邊 健太郎氏
ヤフー株式会社
副社長COO
川邊 健太郎氏
西田 隆一氏
モデレーター
TechCrunch Japan編集長
西田 隆一氏
井口 尊仁氏
モデレーター
頓智ドット株式会社 取締役会長 CMO
井口 尊仁氏

 続いて、ミクシィから代表取締役社長の笠原健治氏、執行役員・経営企画室長の朝倉祐介氏、Petite jeteプロジェクトリーダー玉井賀子氏の3人が登場。ミクシィはこの夏、エンジニア組織をビジネスユニットに再構成し、ユニットごとの裁量を拡大するという組織改革を断行した。社内からも「あらためて新規事業にチャレンジしやすくなり、社内に活力が戻ってきた」という声が聞こえるという。

「mixiが目指す、身近な友人との本音のコミュニケーションという雰囲気は変わらないものの、今後はmixiにとらわれない新しいサービスを生み出していきたい」と笠原社長。新規事業担当執行役員である朝倉氏は、「社内からボトムアップで生まれるものと、トップダウンで始めるものと、2つの方向から新規事業を生み出していく」と語った。

 新規事業の一例が、玉井氏が担当する女性向け定期購入型ファッションサービス「Petite jete」(プティジュテ)だ。「mixiとは直接関係しなくてもいいから新サービスを生み出せ」というトップの指示で始まったプロジェクト。膨大なユーザー基盤を抱えるmixiとのシナジーは追求するものの、これまでのmixi依存のビジネスからは脱却するという姿勢が、3人の話からは強く感じられた。

笠原 健治氏
株式会社ミクシィ
代表取締役社長
笠原 健治氏
朝倉 祐介氏
株式会社ミクシィ
執行役員・経営企画室長
朝倉 祐介氏
玉井 賀子氏
株式会社ミクシィ
プロジェクトリーダー
玉井 賀子氏
スマホでタクシーを呼ぶサービス「UBER」。創業者が熱弁

 TechCrunch Tokyoに限らず、米国のベンチャービジネスセミナーではよく見られる演目に、ファウンダーストーリーというのがある。ベンチャー創業者自らが事業成功の秘訣を語るのだ。今回のスピーカーは、スマホでタクシーやハイヤーを呼べる配車サービス「UBER」の創業者トラビス・カラニック氏。2009年にサンフランシスコで始まったサービスは、現在トロント、パリなど世界20都市に広がり、ユーザーの利用時間は毎週10万時間に達するという。

 旺盛な事業欲を支えるのは高度な技術力。同サービスのセールスポイントは「5分以内配車と動的に変動する利用料金」だが、利用者と近隣を流し営業するタクシーをマッチングさせるため、大都市の温度センサーマップをベースにした需要予測の緻密なアルゴリズムがつくられているという。地図上でホットな場所は、自動車の排気熱の高い地域であり、車が集中しているところ。ドライバーはそこに向かうべきか、あえて避けて客を拾うべきか、自分で判断ができる。また価格変動を制御するプログラム開発には、原子力工学を含む多数の博士号取得者が参画している。

 このように“論理的な”配車サービスが日本でも始まる可能性はあるのだろうか。日本のタクシー業界は強力な規制業種で参入障壁は高いと思われるが、それでもユーザー視点に立てば参入余地は皆無とはいえない。ドメスティックに閉じた市場だけを見ていると思いつかない新サービスのアイデアと、それを実現する高度なテクノロジーについて、あらためて考えさせる講演だった。

 gumi代表取締役社長・國光宏尚氏、サイバーエージェント・ベンチャーズ代表取締役・田島聡一氏、KDDI新規ビジネス推進本部 副本部長・増田和彦氏、B Dash Ventures代表取締役社長・渡辺洋行氏によるパネルディスカッションをはさんで、夕方からはTechCrunch Tokyo恒例の「スタートアップバトル」が行われた。優勝賞金100万円を目指し新規ビジネスの提案を競うもので、100社以上の応募の中から選ばれた8社が登壇し、プレゼンテーションを行った。

國光 宏尚氏
株式会社gumi
代表取締役社長
國光 宏尚氏
田島 聡一氏
株式会社
サイバーエージェント・
ベンチャーズ 代表取締役
田島 聡一氏
増田 和彦氏
KDDI株式会社
新規ビジネス推進本部
副本部長
増田 和彦氏
渡辺 洋行氏
B Dash Ventures株式会社
代表取締役社長
渡辺 洋行氏

 優勝したのは車いすの利用者や歩行が困難な高齢者のための乗り物を開発するWHILLの製品「WHILL type-A」。乗り心地など機能的な部分はもちろん、デザインもこだわりを見せている。12月にも100台限定・価格50万円で発売予定。将来的にはGPSを搭載し、ユーザーの見守り機能の導入なども検討しているという。

 優勝は逃したものの、他の候補も、データマイニングを駆使してユーザーに最適なニュース記事をレコメンドするサービス、電話番号をサイトに入力するだけでスマートフォン向けの店舗・個人サイトを生成できるサービスなど、興味深い提案ばかり。プレゼンのスタイルも洗練されており、マッシュアップアワード目当てで参加したエンジニアたちにも新鮮な刺激を与えたようだ。

WHILL type-A
優勝したWHILLの製品「WHILL type-A」
洗練された写真・音声共有サービス「Voicepic」が最優秀賞を獲得

 盛りだくさんのイベントの終盤には、いよいよMA8の最終プレゼンと表彰式が行われた。今年のMA8では地区予選を全国9箇所、21回にわたって開き、全国から350チーム・約1000人の開発者による466作品の応募があった。女性参加比率は6%。一見低いように見えるが、これまでのMAでは最大の比率。会場にも女性エンジニア、クリエイターが目立ち、最終選考に残った女性ファイナリストも生まれた。

 また予選段階で学生向けイベントとの提携も行われたため、学生からの応募数は前回の2倍に達した。さらに広く自由な発想を持って参加してもらえるよう、これまで作品の提出時に必須にしていた、指定APIの利用条件を撤廃したのも今回の特徴の一つだ。

 ファイナリストとして最終選考に残ったのは7作品。この内、5作品はMA8の地区予選から勝ち抜いたものであり、残り2作品は、学生向けのイベント「MA8 for Students Battle!with Tech-Tokyo」と、「電子工作コンテスト2012」でのMA8賞受賞作品から選出されている。

 先に行われたスタートアップバトルのムードとは一転し、こちらは会場に爆笑を巻き起こす楽しいプレゼンテーションが続いた。例えば、ユーザーの寝顔を認識して起こしてくれる「寝顔認識めざまし FACE KICK」(株式会社人間)では、頓智ドット取締役会長・CMOの井口尊仁氏が被験者となり、「寝顔をカメラで自動撮影してFacebookに漏洩する」「電話で起こす」「タライを落として起こす」という3段階の警告モードを実体験。AIRと画像認識技術をバックグラウンドにもちながらも、それを前面には出そうとしていない。エンターテインメントあふれる演出で受けようとする姿勢が一貫しており、ある意味MAらしさを体現する作品だった。

 最優秀賞に輝いたのは、写真に音声をつけてソーシャルメディアで共有することができるサービス「Voicepic」。MA8の第2次審査をトップで勝ち抜いた実力派だ。iPhoneで録音した演奏に他のユーザーが演奏を重ねて録音できるアプリ「melocy」に僅差ながら、優勝賞金100万円を勝ち獲った。

 受賞者のUIEvolution K.K.は「数多くの画像サービスの中でもみなさんに選んでもらえるものと自負している。ビジネスパートナーとなって支援してくれるスポンサーを求めています」と語っていた。

最優秀賞を獲得した「Voicepic」
最優秀賞を獲得した「Voicepic」
寝顔認識めざまし FACE KICK
寝顔認識めざまし FACE KICK
シャチクのミカタ
シャチクのミカタ
コトバノモリ
コトバノモリ
おーいおまえ ねむっTEL
おーいおまえ ねむっTEL
SoMoX
SoMoX
melocy(メロシー)
melocy(メロシー)
Tech総研賞は「PocketCode」。開発者は25歳の大学院生と24歳のデザイナー
どこでもコードが読めちゃうPocketCode
どこでもコードが読めちゃうPocketCode
堀内 公平氏
「どこでもコードが読めちゃうPocketCode」
メイン開発者
堀内 公平氏

 メディアパートナー賞の一つで、エンジニアのキャリアップに役立つ作品に贈られるTech総研アプリ賞もMA恒例のもの。今回は「どこでもコードが読めちゃうPocketCode」を選んだ。「空き時間にスマホでソースコードが読める」という開発理由や、面倒くさい作業を効率化し、不便さを感じるものは快適な環境に変えてしまう行動にエンジニア魂を感じたからである。

 エンジニアにとって自分や他人が書いたコードを読むのは、自分の開発プロジェクトではもちろん、学習という意味でも欠かせない作業だ。しかし忙しくしているとなかなかその時間が取れない。通勤途中などのちょっとした時間にスマートフォンでコードが読めれば、時間の節約になる。それを実現したアプリで、ソーシャル・コードリーディングツールという位置付けだ。

「移動中にもコードを読みたいという自分の必要から書いたアプリ。ちょっとした空き時間をTwitterなどで暇を潰すのではなく、少しでも勉強したかったんです」
 と言うのは、開発者の堀内公平(はむへい)氏。電気通信大学大学院で総合情報学を専攻する学生だ。人間コミュニケーション学科の学部生の時代には「複数ベンダーのクラウドを用いた秘密分散ストレージMyCloudの開発」というテーマで、IPA「未踏ユース」(未踏IT人材発掘・育成事業)の採択者になったこともある。

 今回の開発にあたっては、GitHubとDropboxのAPIを利用した。使い方は簡単。オープンソースのコードをDropbox内にcloneして放り込んでおくだけ。すると勝手にアプリ内にソースコードが同期される。このとき、シンタックスハイライトも自動で行ってくれるところが便利だ。回線がオフラインの状態でも読むことができるので、バグチェックする場所を問わない。

「技術的にはシンタックスハイライトの実現手段に特徴があります。表示のたびにソースコードファイルをHTMLのタグでサンドし、JSライブラリを使って動的にコードをシンタックスハイライト。作られたHTMLファイルをローカル・ウェブビューから読み込む。事前の準備を一切なしにさまざまなフォーマットのシンタックスハイライトを実現しました」

 堀内氏とそのパートナーである片山もんじゃ氏は、この作品に先立ち、オープンソースコードをインターネットから取得。Android端末でいつでもどこでも読めるようにするアプリケーション「CodeLibrary」を開発し、6月にはITpro主催の「Android Application Award 2012」で学生奨励賞を受賞した。iPhone向けには打って変わって、カップル向けのエンタティンメントアプリ「恋人アラーム」や「恋人クイズ」などをリリースしている。これらのアプリ収入で、学費や生活費をすべて賄っているという。

 もともと世界の最先端で開発をしたいと考えていた堀内氏は、2011年には9カ月にわたってアメリカに滞在し、GitHubなどベンチャービジネスのCEOやエンジニアと交流をもってきた。
「GitHubで働いてみようと思ったこともあるけど、いまは普通の就職活動のイメージが湧かないんです。パトロンを得て自由に開発するスタイルもあるだろうし、フリーランスとして企業にアイデアを提供して協業するという働き方もあるだろうし……。大きなビジネスをやるというより、面白いサービスをつくることが好き。特に最近はアプリ開発者のハードルを下げるサービスに関心があります」

 視点はプログラミングというよりは、あくまでもサービス。「人々がぶつかっている問題をいかに発見し、シンプルかつ効率的な方法でいかに問題解決を図るか」を毎日考えているという。まさにここにこそ、大人になると忘れてしまいがちな、エンジニアリングの初心があるような気がした。

求められるビジネスとテクノロジーを結び付ける視点
伴野 智樹氏
リクルート・メディアテクノロジーラボ・
プランナー
伴野 智樹氏

 MA8やTechCrunch Tokyo 2012など、ITエンジニア個人やスタートアップ企業の活動に焦点を当てるイベントが日本でも定着してきた。そうしたイベントに主体的に参加するエンジニアたちの中には、「自分の働き方はいまのままでいいのか」という問いかけがが生まれている。

 大企業の一員として受託開発で顧客のニーズを実現するのも立派な仕事ではあるが、エンジニアが自ら世の中のニーズを掘り起こし、それと直面しながら機能を実装し、ときには自ら会社を興して、サービスをつくり上げることもまた醍醐味があるはずだ。

「今回のTechCrunchとのコラボには、『アプリをつくった後のことも考えようよ』という呼びかけが込められています。エンジニアたちがアプリ開発して終わりではなく、サービスや事業としてのマネタイズなど、そのテクノロジーをビジネスにつなげていく視点をもてば、もっと面白いことが起こるはず。スタートアップバトルでの起業家たちの気迫あふれるプレゼンは、エンジニアたちにもよい刺激を与えたのではないでしょうか。今後もなんらかの形で、ビジネスとテクノロジーの両方の視点をマッシュアップする試みができればいいなと考えています」
 MA8事務局の伴野智樹氏(リクルート・メディアテクノロジーラボ・プランナー)は大会をこう総括している。

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