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理工系米国大卒者が実務未経験で挑む選考面接

Java技術者集団・日本インサイトテクノロジーへ

独立系のITベンチャー・日本インサイトテクノロジーは1998年に設立された。Java技術に特化し、今や社員150人を擁する。シリコンバレーとの連携も強め、目指すのは世界ナンバーワンのJava SIerだ。今回はそんな同社へ応募した、海外大学出身者の面接現場をリポートする。
(取材・文/須田忠博 総研スタッフ/高橋マサシ)作成日:06.11.15
InsighTech
応募したエンジニア 企業の面接担当者
砂川暁彦さん
砂川暁彦さん
(当時29歳)
池和田 暁氏氏
代表取締役社長
池和田 暁氏
当時の職種
無職(求職中)
募集職種
Web技術者
業務内容
――
仕事内容
Javaベースの企業Webシステムの開発(業務コンサルティング、提案、設計、開発、試験、運用)。
職務経歴
米国南イリノイ大学(コンピュータサイエンス専攻)を卒業後、帰国し、就職活動中だった。エンジニアとしての職歴なし。
応募資格
Java、C++、UNIXでの開発経験者歓迎。未経験者は3〜6カ月でJava技術者に育成。
志望動機
ITベンチャーで早くマネジメント業務に就きたい。企業の海外進出に参画したい。
募集背景
受注案件の増加に対応するため。会社の成長を加速させるため。
面接の流れ
社長がすべての応募書類に目を通す。
社長が1対1で面接する。所要時間は約1時間。さらに1時間の筆記試験も行う。
社長と技術部門責任者が面接する。所要時間は1〜1時間半。同時に技術試験を行う場合もある。
指定図書で学習後、課題に取り組ませる。研修期間は応募者によって異なり、1〜3カ月。
入社前自宅研修の課題をクリアした時点で、正式な内定とする。
【通過率:2〜3割】

【通過率:約2割】

Part1
海外留学経験・語学力
米国の大学で課題を出されてのプログラミングを学ぶ
池和田:
 初めまして。よろしくお願いします。
砂川:
 こちらこそ、よろしくお願いします。
池和田:
 【Point1】まず、米国の大学でコンピュータサイエンスを勉強したということですが、どういった内容ですか?
砂川:
 開発言語はC++がメインです。Javaは卒業前の数カ月で勉強した程度です。また、授業の内容は1年目が講義のみで、2年目からは課題を出されてのプログラミングが始まり、3年目では課題のレベルが上がるとともにデータベース関連技術も学びました。
 そして4年目にはグループ単位で課題を決め、それを解決するシステムを構築して、その内容についてプレゼンテーションを行う方式でした。
池和田:
 【Point2】具体的にはどんなものを作りましたか?
砂川:
 2年目から実際にプログラミングをするんですが、最初の課題は自分の成績のカリキュレイトシステムづくりでした。そういう製作課題が月1回のペースで出て、3年目には月2回になりました。2〜3枚のシートを渡され、いつまでにプログラムを仕上げるようにと指示されます。
 ほかにはATMの簡単な入出金システムや電気料金システムなどの、いろいろなものをつくりました。4年目はグループワークなので、例えばエアコンのユーザーインターフェースの仕様を話し合い、授業でプレゼンをし、グループ内で役割を分担して開発し、完成後に再びプレゼンをするといった具合です。
高校を卒業して米国の大学に進むまでの2年間
池和田:
 職務経歴書によりますと、【Point3】英語は米国へ行く前、南イリノイ大学の新潟校で勉強したんですね?
砂川:
 はい、そうです。姉妹校になっていて、語学の勉強と同時に教養課程もこちらで学びます。卒業すると日本の短大卒と同じ資格が得られ、南イリノイ大の学部を選べる仕組みです。
池和田:
 そうすると、渡米したときには「読み」「書き」「話す」に問題がなかった?
砂川:
 ええ。大して苦労しませんでした。
池和田:
 新潟校へ入る前、【Point4】高校を卒業してからの2年間が履歴書ではブランクになっています。この期間は何をしていたのですか?
砂川:
 自分が何をしたいのか、どう進むべきかを見いだせない状態に陥っていました。それで、アルバイトをたくさんしてお金をため、米国に住む姉を訪ねたりしていました。姉は米国の短大に通い、ソフトウェア業界を希望していました。
 私は姉の影響を多分に受けたわけですが、短大を見学させてもらったり、姉の友人たちの話を聞いたりして、自分自身も同じような道を進みたいと思っているのかどうかを確かめたいと思いました。最終的には大学でコンピュータサイエンスを専攻するわけですが、そんな事情から2年間のブランクになってしまいました。
Point1
[面接官]コンピュータサイエンスを勉強したというけれど、具体的に何を学んだのか。最初にそこを把握しようと思いました。職歴のない応募者にはあとから成績表を提出してもらったりもするのですが、ここでは本人の口で語ることに意味があります。
Point2
[面接官]米国の大学では実践的な教え方をします。卒業したら社会ですぐに使えるレベルまで教えるのが普通。この質問はそれを確認するためにすぎません。弊社の場合、技術力のレベルは入社前自宅研修と入社後研修の両方を通じて明確になりますから、面接の中でそう厳密に判定する必要はないのです。
Point3
[面接官]日本の高校を卒業していきなり海外留学をした場合、語学力がネックになって勉強についていけない、卒業できないという結果になることがしばしばあります。それで、この点を確かめました。
Point4
[応募者]この質問は当然されると想定していました。しかし、隠すべきことでもないし、恥ずべきことでもないので、ありのままを話すと決めていました。
[面接官]単純に不思議だったので尋ねました。彼の答えを聞くと海外留学のきっかけとして合点がいくし、誠実に答えてくれている点には好感がもてます。
Part2
リーダーシップ

サッカーチームのキャプテンとして学内準優勝
池和田:
 【Point5】身上書には、リーダーシップを発揮するのが好きで、大学ではサッカーチームでキャプテンをしていたという記載があります。その話を少し聞かせてください。
砂川:
 大学内の友人たちでサッカーをしようと思ってメンバーを集め始めたら、日本人だけでは足りずにとてもチームにならない。そこで中国人や韓国人、インド人の学生に講師までを集めて、アジアチームを作ったんです。私がキャプテンです。
 こういったチームが学内にはいくつもあって、学生主催のミニワールドカップが開かれるんですね。私はそれに参加しようと登録手続きや大会規定の伝達、チームの切り回しなどを、キャプテンとしてすべて行いました。
池和田:
 大会での成績はどうでしたか?
砂川:
 4年のときなんですが、準優勝でした。タウン紙が取材にきて、アジアチームはよく頑張ったと褒めたたえる記事を掲載してくれました。また、当時は私がホームページをもっていましたから、その大会の日程と試合結果を掲載するようにしていました。人に撮ってもらった写真を挿入してレポート記事にまとめたりもしました。これはチーム運営の一環です。
苦労したのは他国メンバーとのコミュニケーション
池和田:
 キャプテンをしていれば苦労もあると思います。どんな点が最も大変でしたか?
砂川:
 チームメンバーの中の他国の人と、意思の疎通を深めるという点ですね。
池和田:
 英語力に問題はなかったのでしょう?
砂川:
 【Point6】深いコミュニケーションとなると、語学スキル的な難しさを感じました。特にインド人の英語は理解しにくいところがあったりして……。また、文化的背景が国ごとに異なる点も影響します。
Point5
[面接官]多くの事柄が書かれた中からリーダーシップを選んだ理由は、彼の年齢が関係しています。実務経験なしで29歳。しかし、給料は普通の学部新卒者と同じというわけにはいきませんから、入社後の短期間で管理職になってもらう必要があります。その可能性を探りたかったのです。彼の答えには好印象を受け、これなら若い社員たちのまとめ役にすぐなれると思いました。ちなみに、彼の選考時には社内にサッカー部を作ろうという声があり、サッカーができるのなら若手になじむのも早いだろうと考えました。
[応募者]この点に関しては、評価されないはずはないと推測していました。企業組織で最も重要なヒューマンスキルはリーダーシップだろうと思い、身上書の中で目立たせたのです。また、私はITベンチャーで広くマネジメントをしたいと思っていましたから、この長所こそ見てほしい点でした。
Point6
[面接官]弊社は海外とのリレーション、海外進出をもっともっと進めたいと考えています。ところが、外国人の上に立ってリーダーシップを発揮するのが、日本人はあまり上手ではありません。その意味で彼のこの体験は、たとえ趣味のレベルのスポーツの話とはいえ貴重であり、いずれ生かされるはず。選考にはかなり有利に働きました。
Part3
志望動機・望むキャリアパス
Javaに特化した躍動感のあるベンチャーを志望
池和田:
 帰国して、今は就職活動に専念しているようですが、【Point7】弊社を志望する動機はどのようなものですか?
砂川:
 御社のホームページを拝見して、いくつかの点で魅力を感じました。まず、Javaに特化した技術者集団であること。私は、ユーザーの気持ちを踏まえたWebシステム、Webコンテンツをつくりたいと願っています。自分自身のホームページをJavaで作り、運営しながら、常にそういう視点で取り組んできました。
 次に、御社が海外展開に本気だということに注目しました。私の米国留学体験とリーダーシップの素養は、御社の活動において役立つものと信じて疑いません。また、ベンチャー企業である御社に躍動感を感じました。社員一人ひとりの発言力や存在価値が大きいのではないかと。そういう環境に私も身を置いてみたいのです。

 そして、もうひとつポイントになったのが、せんえつながら社長の人間性です。社員にJava技術書を執筆・刊行させて高度の専門家に育てようとしたり、社長自身が千葉大学大学院で非常勤講師をされたりしている。懐の深さを感じました。それに、お名前に「暁」が使われていて、私と同じ漢字。偶然とはいえ、親近感を覚えました(笑)。
将来は海外支社を任せてもらいたい
池和田:
 そうか、同じ字なんだね。なるほど、志望動機はわかりました。それではうかがいますが、将来のキャリアパスとしてはどうしたいと考えていますか?
砂川:
 【Point8】プログラマ、SE、プロジェクトリーダーといったステップを踏んだあとは「海外」をキーとする仕事に携われたらと思っています。例えば、海外支社を任せてもらえる人材になりたいです。
池和田:
 コンピュータサイエンスはやはり米国が最先端です。米国での拠点を大きくし、日米で連携して、製造は中国でといった3極構造をできるだけ早く実現したいという希望を弊社はもっています。その意味で、砂川さんの教育バックボーンが生かされるチャンスは大いに見込めるはずです。
砂川:
 はい。ぜひともよろしくお願いします。
(このあと、池和田氏は砂川さんのほうからの質問を促した)
Point7
[面接官]志望動機を聞く場合、本人のよい点や特徴と重ね合わせながら、弊社のベクトルとどのくらいマッチしているかを考えるようにしています。志望動機は応募者によって千差万別ですから。
[応募者]この質問は定番なので、答えを整理して用意していました。印象を強める答えになっただろうと、話し終えてから思いました。
Point8
[応募者]この将来展望は絶対に伝えようと思って面接に臨みました。社長に直接、希望をぶつけてみて、どう反応するかを見てみたい気持ちもありました。もし実現性が低いという反応であれば、応募を取り下げてもいいとまで思っていたんです。
面接官はココを見た!
●身についている技術、体験に基づく能力が会社のどこに適しているか。
●どんな工程やポジション、事業領域を志向しているか。
●事業環境の変化に対応できる柔軟性やキャパシティがあるか。
 経験・未経験を問わず、応募者の技術ベースと会社の事業領域のどこがマッチングしているかを探る。技術面以外の能力や素地についても同じ。入社前自宅研修と入社後研修は実務経験者にも同じものを課す。ただし、習得レベルによって所要期間が異なる。志向性については本人の希望を尊重して選考するが、こうでなければ不可というものはない。柔軟性やキャパシティに関しては、応募者の総合力をチェックしている。
砂川さんはコレで決めた!
「ベンチャー企業は社長の人間性に負うところが大きいと思います。
だから、二度の面接で社長と直接、それも割と長い時間話せたことが
結果的に入社へとつながりました。」
 私に対する社長の関心のもち方、私の答えを聞くときの表情から察して、2回の面接とも受かったとすぐ思いました。というのは、入社後にいろいろと任せてくれそうな感じがし、期待する印象が強くもてたからです。しかも、社長と二度会って、その人間性のよさを十分に確かめることができました。ベンチャー企業は社長に負うところが大きいですから、社長と直接話せる時間を割と長く設定してもらえたことが、結果的に入社へつながったように思います。
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  高橋マサシ(総研スタッフ)からのメッセージ  
高橋マサシ(総研スタッフ)からのメッセージ
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今回は少し変わった事例を紹介してみました。砂川さんに実務経験はありませんが、日本でいうところの新卒者とも異なります。加えて、実務的な技術レベルもある程度備わっている。こうしたエンジニア(への希望者)を企業はどう見ているのかが、少しでも伝わればうれしいです。見たい面接シーンがありましたら、下のフォームから送ってください。
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