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常日ごろから最先端技術を追い求めるエンジニアだからこそ、ハマる、語る、こだわる!アナログ 技術。彼らの心をがっちりとらえて離さない、アナログワールドの魅力の数々を一挙公開。 |
(取材・文/ハタジュン 総研スタッフ/山田モーキン イラスト/佐藤ワカナ)作成日:05.02.23 |
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最先端技術の中で生きるエンジニアたちにとって「アナログ」とはどんな存在なのか?
テクノストレスからの逃亡か、はたまた癒しの小旅行?
そこで編集部では、エンジニアが没頭する「アナログワールド」の実態を、総勢200人のアンケート結果から徹底分析。「エンジニアがこだわるアナログ技術・モノ」を5つのカテゴリーに分類し、
1. エンジニアが愛するアナログ技術・モノの中身
2. アナログワールドにいるときの「至福のひととき」
3. その魅力と「アナログ」にこだわるワケ |
の3段階で、その真相に迫った。 |
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機械式の腕時計、特にオメガのスピードマスター。 |
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毎朝仕事へ行く前に時計を腕にはめる、その瞬間こそが至福! |
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過去にさまざまなストーリーや伝説があり、深いロマンを感じるから。 |
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懐中時計。 |
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定期的に時計の部品を掃除して、注油するときの感覚がたまらない! |
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一点一点が個性的で、職人技が色濃く残っているから。 |
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昔の二眼レフ(キヤノン)。もちろんフィルムはモノクロ手巻き。 |
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撮った写真を見ながら、お酒を飲む。 |
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デジカメでは描写できない味のある写真を撮ることができるため。 |
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昔のUSED ZIPPOライター。使用不能のモノを使用可能にする技術にハマっている。 |
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錆びまくったライターが見事に使用可能になる瞬間! |
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だれもがゴミ化したと思っているモノを修復する喜び。長い沈黙から目覚めさせたとき、「魂が再び入ったような」気分になる。 |
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ケース1にハマるエンジニアは、モノがたどった物語や歴史にロマンを感じている。自分だけのモノ、自分と一体になって初めて息吹き始めるモノ。ナンバーワンよりオンリーワン!……ポイ捨て時代に生きる私たちに対するそれは、切実な叫びである。 |
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ラジコンカー。絶版となっている旧式マシンの収集、走行、整備。 |
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ステアリングやスロットル、サスペンションなど、旧式マシンをバッチリ整備してサーキットに行き、最新式マシンと互角に走行できたときの、あの優越感! |
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お金をかければRCカーを速く走らせることが可能な時代になってきたことに違和感を覚え、旧式は本当に遅いのか?という疑問をもったから。部品の調達が困難な現在、偶然店先でその部品を発見したときの喜びも大きい! |
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プラモデル。 |
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パーツのヤスリがけをして、光に当てながら仕上げ具合を確認して、完璧であることがわかった瞬間! 子供のころはできなかったことが大人になってできた、その実感。 |
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ヤスリがけが終わったときの喜びはプログラムが正常に動いたときの感動と近い。 |
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昔のゲームソフト。初代ファミコンや、ディスクシステム、スーパーファミコンのハード、ソフト共に健在! |
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数年間プレーしていなかったソフトに再挑戦し始めた直後。古い記憶をたどりながらゲームを進めていると、懐かしさを感じる。 |
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たまに10年以上も前のソフトをプレーすると、シンプルな中に、懐かしさと同時に、最新のゲームでは味わえない新鮮さを味わうことができるから。 |
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紙風船や竹とんぼなど、昔のオモチャ。 |
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甥っ子と昔のオモチャで遊んでいるとき。 |
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最近のオモチャは複雑化して、一人で遊ぶものが多い。昔のオモチャは単純だけどわかりやすく、あたたかみがあって、大人も子供も一緒に楽しめる。 |
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今の自分のまま、あの無邪気で幼いころに戻れたら……。多忙な毎日、厳しい現実の中でふと抱く思い。仕事だけじゃなく、たまには「大人」も休みたい! 彼らにとって幼いころの追体験から得る万能感は、“究極の癒し”であるようだ。 |
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昔のスカイライン。 |
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故障を修理し息を吹き返したとき、今まさにこの手でスカイラインをよみがえらせた、と感動する。 |
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愛着や執着心が発生するのは、メンテが必要だからこそ。アナログの醍醐味はそこ。 |
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ハーレーダビッドソンの旧車。 |
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ピカピカに磨いて、エンジンをかけ、ツーリングをするとき。 |
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現代文明は非常に便利だが、でき上がったものをそのまま自分の中に取り入れている気がする。アナログは非常に手がかかるが、自分が動かしてるという自己満足感、達成感がある。 |
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自転車。特にママチャリ! |
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チェーンに油を差すとき、ペットにえさをあげているような気持ちに……。 |
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自分の足でこいで走る姿はまさにチャリンカー(!?)だから。 |
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車のギア操作。 |
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ギア操作が円滑にできて、停止できたとき。 |
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少しでも人間が動かしているという証拠が感じられるから。 |
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自分が動かしているという実感、確信がほしい。このケースにハマったエンジニアは皆そう言う。デジタル社会で希薄となった己の存在意義を、アナログの世界で再認識。「今、オレは生きてるんだ!」と実感できるのが、アナログの魅力なのかもしれない。 |
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アナログレコードの視聴。 |
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以前に集めていたレコードや、中古屋で新しく買ったレコードに針を落とすとき。 |
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かつての音声技術の確かさ。郷愁。CDにはない独特の味わいを楽しめるから。 |
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昔の真空管式ラジオの製作。 |
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真空管の電熱(熱源ヒーター)の明かりをともすとともに漂うハンダのにおいが最高。 |
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自分が、そのアナログ世代だから。 |
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真空管のアンプで、アナログレコードの柔らかい音を聴く。 |
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真空管アンプで自分の大好きな曲(レコード)を聴いているとき。音楽がかかる前にかすかなノイズがするが、あれが最高。 |
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CDは確かに音がいいし頭出しも速い。しかし、やはり音が鋭い。アナログの音は柔らかく、心地よい。 |
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エレキベースを弾きライブをすること。 |
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バンドで、打ち込みでは味わえないグルーブ感が出せたとき、一体感が出て気持ちがよい。 |
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世間では打ち込み系の曲が人気であるが、機械的なリズムより、人が楽器を弾き人間的なリズムを生み出すところに音楽という共通の一体感が味わえる。 |
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音やにおいは記憶と密接に結びついている。レコード、ハンダごて、ギターの音色。いわばこれらは、彼らにとって記憶の再生装置であり、自らの再生装置。彼らはそうして何度も生まれ変わるのだ!……って、おおげさか。 |
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アナログ電話を経由してのダイヤルアップのインターネット接続。 |
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とてもネット接続ができるとは思えないような場所・電話機経由でのインターネット接続ができたとき。 |
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海外に限らず国内でもピンク電話だけしかないような場所があり、必然的にこだわらざるを得ない。 |
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X68000というシャープ製パソコン。Windowsで動作するエミュレータでプログラムを書いたり、ゲームをしたり。 |
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今のGUI環境ではなく、テキストベースでX68000の環境整備をしているとき。 |
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現在ではすべてのパソコンが画一化され、何を使っても同じようなことができるが、そのパソコン自体の特徴がなくなってしまった。昔のパソコンには個性があった。本当にパソコンを使っている、という気分を今でも味わっていたいから。 |
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数年落ちのPCを入手し、それに合うパーツを購入、現行PCにも引けをとらないPCに仕立てる。 |
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事前に調べていた内容と、購入したパーツとがうまく作動し、正常に動作したとき。ベンチマークなどで現行PCと比べても、そん色ない数値が得られたとき。 |
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費用をかけずに、最大の効果を得られること。技術的には古いが、一般には知られていない技術を自宅で保有できる。 |
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電子ブロック。アナログ回路の魅力に取りつかれた。 |
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説明書に書いてない回路をくみ上げ、予想どおりの動きをすると、「よっしゃー!」とすっきりした気分になる。 |
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デジタル回路は適当に作ってもまぁまぁ動くが、アナログ回路はギリギリのところを攻める快感がある。 |
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他人とは違った世界、あるいは自分自身の知識と技術への挑戦。慣れ親しんだデジタルからアナログへと回帰し、一つ一つの部品や回路と戦う。そこから得る達成感はマシンを支配下に置いた快感にも通じる……のかも? |
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常日ごろから最新の技術を追い求める、エンジニアである彼らが、幸福に満ちた菩薩の顔で懐中時計のぜんまいを動かし、レコードの溝に針をそっと落として身もだえする……。そんな場面は想像しがたい。しかし彼らは口をそろえてこう訴える。「自分が動かしている実感、達成感がほしい」「モノがたどってきた歴史、物語へ愛を注ぎたい」「技術の習得、己への挑戦をしてみたい」etc……。これは紛れもなく「エンジニア魂」であり、彼らは単なる現実からの逃避や、リラクゼーションとしてアナログにこだわるわけではない。
デジタルという1か0かの極端な世界の中から見れば、あいまいではあるが、選択肢をいくつも選べるアナログの世界には終わりがない。あったとしても自分の意思で選ぶことができる。「実感を得る」とはそういうことじゃないか? エンジニアたちの言葉は、まさにここにたどり着く。自分の意思で選び、自分の手で成し遂げたということ。
アナログ的世界。そこは「エンジニアとしての原点」が存在する場所だったのだ。 |
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都内の某大手企業でシステムエンジニアとして活躍するK・Aさん。在学中に研究のために作っていた「あるモノ」が、現在どっぷりハマっているという「アナログラジオ」製作のきっかけとなるのだが……。
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そのころ彼は、大学での研究に追われる傍ら、友人と共にWebシステムの開発会社を立ち上げ、起業家としても多忙な日々を送っていた。 学校では論文に、会社ではPC操作に明け暮れながら、ある日彼は無性に自分の手でモノづくりをしたくなったという。 では何を作るか? 彼の頭に即座に浮かんだのは、「ラジオ」だった。 彼の大学での研究は、岩石を砕いたときに発生する電磁波の、その存在を証明すること。そのため、周波数をキャッチする受信機を毎日手作りしていた。それがラジオとほぼ同じ構造だったのだ。 とはいえ、受信機は単純に音を拾えればよかったが、ラジオは内容まで理解できなければならない。難しい。どうにかキレイな音にしたい。もっている限りの知識と技術を総動員し、でき上がったころには半年以上が経過していた。
「初めて音が出たときは、出た!ホントに出た!という感じで……」。 試行錯誤の果てにようやくでき上がったアナログラジオ。 その音は市販のものとは違い、「丸い」音だった。滑らかで、感触のよいその音を耳にしたとき、それが彼の至福の瞬間だったという。 彼はアナログの魅力をこう語る。「デジタルは壁に向かってボールを投げる感じ。投げたら返ってくる。でもアナログは人間を相手にしているみたいなんです。予想外の方向に飛んでいったり、取り損ねたり。じゃあ今度はこう投げてやるか、これくらいなら受け止められるかな?って、反応が反応を生むんですね。デジタルはちゃんと返ってくるけど、予想外の動きはしない。だから物足りない」。 |
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K・Aさん・26歳
大学在学中に友人とベンチャー企業を立ち上げるなど、若いうちから多彩な能力を発揮。現在は友人に会社を任せ、某大手企業にてシステムエンジニアとして活躍。 |
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現在彼は、2台目のラジオを製作中。前作の経験を生かしもっとレベルアップしたモノを作ると意気込んでいる。 彼の耳に心地よく聞こえる「丸い音」、われわれもぜひとも耳にしてみたいものだ。 |
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