【ママも「ひとりの大人の女性」】子を持つ母親だからこそ生まれたビジネスモデル3選

いま活躍する女性起業家・経営者・起業を目指す女性たちが集まり、ネットワークの輪を広げた『横浜ウーマンビジネスフェスタ2014』。11月9日(日)に開催された同イベントでは、林文子横浜市長とイー・ウーマン社の代表取締役、佐々木かをりさんによる特別講演会が行われたほか、事前に選ばれた9名のプレゼンターによるプレゼンテーションプログラム『CHEER!』と、横浜市内を中心に活躍する女性起業家たちによるブース出展『よこはマルシェ!』が開かれた。
アベノミクスの成長戦略で「女性の活躍推進」が柱のひとつに掲げられているとはいえ、全国的にみると出産後も仕事を続ける女性は約4割といわれており、女性が子育てと仕事を両立できる職場環境が十分に整っているとは言いがたいのが現状だ。
そんななか、女性起業支援を早くからすすめている横浜市では、子どもを持つ母親ならではの悩みや望みを、それまでの自分のキャリアとうまく結びつけて新たな事業を展開しているパワフルなママ起業家たちが多く輩出されつつある。
今回は、『横浜ウーマンビジネスフェスタ2014』の参加者の中から、女性視点や母親視点を上手に活かしたビジネスモデルを3つご紹介する。

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「ひとりの大人の女性」であるママたちがリフレッシュできる時間を提供する『ここるく』

子どもが生まれてからというもの、外食といえばファミレスばかり。たまにはゆっくり大人がくつろげるレストランやエステに行きたい…そんな子どもを持つ女性たちの要望に応えてくれるサービスが『ここるく』である。
『ここるく』は、上質なお店を託児付きで利用できるサービスだ。店内の個室を専用託児ルームにして、母親が楽しんでいる間は保育経験豊富なスタッフが子どもの面倒を見てくれる。万が一、子どもの急な発熱や体調不良で行けなくなっても、当日キャンセル料なしで予約変更することができる会員特典まである。
「お母さんは子どもを優先に考えているため、子どもが満たされないことには、自分が満たされることはありません。なので、お母さんが好きな空間でリラックスしている間、子どもたちも新しい遊びや制作、友達との関わり合いを学んでもらい、充実した時間を過ごしてもらいたいと思っています。ちょっとだけ心が成長して、『また来たい』と言ってもらえるような空間づくりが理想です」と代表の山下真実さん。
現在、都内や横浜を中心に、ミシュラン2つ星のフレンチや食通が通う鮨屋、人気エステサロンなど、これまで14店舗と提携している。

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8,568通り、あなたはどのタイプ?

ママたちの再就職を“外見”から支援する『美キャリア・ラボ』

30~50代の女性のためのメイクレッスンを行っている『美キャリア・ラボ』は、女性の再就職を支援するメイク指導を行っている。代表の平井聡子さんは、15年間、化粧品メーカーで勤めたあと、妊娠を機に退職。専業主婦でいた時期があったそう。公園のママ友と話をするうち、再就職をしようとすると、やる気があるのに年齢や子どもがいるという理由で面接に落とされてしまうママたちが大勢いたという。「このままではいけない!」と“世の中に対する怒りから”起業に踏み切り、自ら退職するまでやっていたメイクの仕事を生かして、再就職を目指すママたちを元気にする事業プランを作成。公的機関へ「こんな講座をやらせてください」と飛び込み営業を行った。採用されたメイク講座は評判を呼んで、早くからメディアにも取り上げられて現在に至る。
それまで仕事に自信を持つことで輝いていた女性でも、専業主婦になった途端、自己肯定感が薄れてしまう女性は数少なくない。そんな風潮を自分が得意とするメイクの力で何とかしたい。その思いの強さから、平井さんのメイクレッスンは「滅多に褒めず、スパルタ」なのだそうだ。同じ時間を使うなら、改善点をひとつでも多く伝えてあげたほうが相手のためだと考える。
「洋服は買うのにメイクはなぜだか若い頃のままという方が少なくありません。パッと明るい印象を与えるような、清潔感を与えるメイクのアドバイスをしています。また、面接の日には必ず美容院へ行ってもらうことをおススメしています。皆さん、自分を後回しにする傾向があり、『時間がない』とスルーしてしまうのですが、ヘアスタイルで印象はガラリと変わるので、必ず行くようにしてもらいたいです。」
平井さんの名刺は、片側が斜めにカットされており、これをあてると、「理想の眉角度かチェックできる」という優れもの。細部に至るまで、出会った女性たちへの目配りを忘れない。

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8,568通り、あなたはどのタイプ?

子どものためのビジネス教育『ジュニア起業スクール』

ジュニア起業スクールは来年4月に開講を予定している小学生のための起業スクール。同起業スクールを準備中の株式会社ライズサーチ代表取締役、内田奈津子さんは、昨年の9月に第一子を高齢出産した。生まれたばかりの子どもを見ながら、「この子が20歳になる頃には自分は60歳手前。わが子が万が一、ひとりになっても、強く、たくましく生きていける力を身につけて欲しい。自分で稼げて、自分の人生を切り開ける大人になって欲しい」と感じたそう。
そこで自分に何ができるかを改めて考えたとき、自分が起業したことで出会ったすばらしい人たちや経験と同じような価値を自分の子どもに与えたいと考え、ジュニア起業をリサーチし始める。ところが、調べていくうちに、日本では子どものための起業教育が遅れており、イベントは行われていても、しっかりと学べる教育機関はほとんど見つけられなかった。それならばと、自分が子どもたちのための起業教育第一人者になろうとジュニア起業スクールの開設に踏み切った。
今年の8月には、プレイベントとして、中小企業診断士を呼び、子どもたちが商品を仕入れて販売するという一連の流れを通して仕事の流れを実際に体験する3日間のコースを企画。『サック、サク。新しいのに懐かしい!お砂糖の風味とアーモンドの香ばしさが口いっぱいに広がります。』というキャッチコピーを参加した子どもたちが考えて、実際にチラシの発注も体験。そうして売り出されたクッキーは、6000円の利益を出し、子どもたちも大喜びだったそう。
子どもの職業体験といえば、キッザニアが思いつくが、キッザニアが従業員視点であるのに対し、ジュニア起業スクールは経営者視線であることが特徴。「花屋になりたい、パン屋になりたい」など、子どもの夢は多種多様。起業する力を早くから身につけ、自分で経営することができるようになれば、生計を立てるのには厳しい世界と言われているアートや音楽分野でも仕事を創出しやすくなる。夢をあきらめることなく、子どもたちの選択肢を増やして、可能性を広げることは可能だ。
「私たちが悲観的でいては、子どもたちに示しがつかない。少子高齢化で子どもの数を増やすことは難しくても、子どもの能力は伸ばしてあげられる。仕事への希望を見出してあげたい」と述べた。

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同イベント実行委員長の山下文江さんは、横浜市の女性が前向きに起業に取り組んでいる理由について、「横浜は歴史的に見ても早くから海外との交流があり、新鮮なものを受け入れたり、それを伝えたりすることに抵抗がない土地柄。また、横浜に暮らす人たちは自分の土地への愛着が強い。それが自分への自信や、自分の属するコミュニティへの自信に繋がっているのでは」と分析する。
同イベントに参加したある女性は、人が確実に変化する機会のことを、“ベイビーステップ”と呼んでいるそうだ。一歩一歩、確実に生活の中から仕事を生み出し、そこから協力者を手繰り寄せている横浜のママ起業家たち。その“ベイビーステップ”の積み重ねは、確実に実を結びつつある。

取材・文・撮影:山葵夕子

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