女性のキャリアを考えられない会社では働きたくない

こんにちは。斗比主閲子と申します。先日は、子育てと部下育ての共通点を書きました。今回は、女性のキャリアと企業の人事戦略について書いてみます。Pregnant

Pregnant by xavier bo, on Flickr

企業活動と人事活動は繋がっている

雇用統計は景気の先行指数として使われることもあるように、企業のアクションには雇用が関わってくるものです。新しい事業を立ち上げるのであれば、その事業に関わる人間を社内で選定したり、中途採用や新卒採用で外から採ってくることになる。事業を止めるときであれば、社内の部署転換を検討したり、採用を絞るようにする。

このように企業活動と人事というのは、多少のタイムラグはあるにせよ、密接に関係があるものです。その職場があまり人手を必要としなかったとしても、事業の変化は取引先にも影響がありますので、その取引先の事業の変化に繋がり、取引先の人事に影響が出る。

人・モノ・金という企業が持つ資源のうち、人が最も重要だと唱える企業は、日本の大企業や著名な成長企業にも多く見られます。モノや金が比較的潤沢にある日本では、人事戦略が企業の戦略のうち、最も重要な戦略の1つと言っても過言ではないでしょう。

8,568通り、あなたはどのタイプ?

人事戦略における女性のキャリア

そんな人事戦略のうち、近年大きく議論になっているのが女性のキャリアの取り扱いです。雇用自体は1986年の男女雇用機会均等法から(未だ不十分ではあるものの)改善してきていますが、議論の中心にあるのは女性のキャリアステップを企業内でどう考えるかというものです。日本政府としては、内閣府や厚生労働省などが中心になって、ポジティブ・アクションという言葉で、女性社員の活躍を推進する取り組みについて提案していますね。

日本企業は、会社に長くいることでの忠誠心を社員に期待し、新卒採用偏重などのキャリアの連続性を重要視する傾向があります。グローバル化の進展の影響もあってか、こういった考え方は企業によっては薄れてきているものの、これらの人事上の拘りと言っていいものは、まだまだよく見かけます。

企業の戦略と人事戦略が密接に絡むと先に書いたように、この拘りは日本企業が高度経済成長期にビジネスモデルを実現する上では必要なものだったのでしょう。しかし、妊娠や育児で一時的にキャリアから離れる可能性が高い女性の視点からは厳しいものです。長時間労働は、誰にとっても望ましくないものでしょうが。

毎年世界経済フォーラムが公表している男女の格差のレポート(『The Global Gender Gap Report 』)において、日本は政治参画や経済参画における男女格差は大きいとされています。健康面と教育面も含めたトータルな観点で見たジェンダー・キャップ指数(低ければ低いほど男女の差がある)は低く、2013年度は世界136ヵ国のうち105位です。

経済参画の格差といったときには、収入の格差という観点と、経営幹部での雇用の格差というものが含まれます。確かに、日本の会社では、役員クラスに女性がいるのをほとんど見かけませんよね。

※参考指標:「ジェンダー・キャップ指数(2013)各分野の日本の順位と比較」(「共同参画」2013年12月号 | 内閣府男女共同参画局 より)

ジェンダー・ギャップ指数(2013)各分野の日本の順位と比較

8,568通り、あなたはどのタイプ?

女性が就労で格差のない国

私は職業柄、海外の方と仕事をすることがあります。欧米圏の方もありますが、最近機会が多いのは、東南アジア圏の方でしょうか。短期間、海外に住んだこともあります。

そういった個人的な経験において、各国での女性経営者や女性幹部の多さに最初は驚いていました。その後、いろいろ聞く中で、その状況が成立している要因は国によって異なるということも分かってきました。

例えば、10年前に初めて中国の方と仕事をしたときに、なぜ企業において女性が管理職に多いのか聞いてみたところ(彼ら/彼女らからすれば意味不明な質問だったでしょうね)、政治的な要因で、ある世代の人口が少ないことがあるのではないかという話がありました。

女性管理職が多いことで有名な国といえば、フィリピンです。フィリピンの女性管理職の割合は50%を超えていて、これは世界で最も高い水準でしょう。フィリピンで女性管理職が多い理由は、母系社会である、家族全体で子育てをする、優秀な女性が汚職の比較的少ない経済界に進出する、基本的にフィリピン人男性よりフィリピン人女性の方が真面目などさまざまな要因があると言われています。

就業者及び管理的職業従事者における女性割合

※図は『第1-特-3図 就業者及び管理的職業従事者における女性割合 | 内閣府男女共同参画局』より

そして、忘れてはいけないのが、地方の出稼ぎ層の女性が都市部で安価なベビーシッターとなっていることがあります。これによって、華々しく経済界で活躍する女性と、それを支える安価なベビーシッターである地方の出稼ぎ女性との間に、同じ女性の中でも大きな経済格差が生じており、大きな社会問題として認知されています。

歴史的経緯、宗教観や文化、働き手の需要、男女の家庭内での役割、親の子への教育に対しての意識、子育て環境(シッター文化)……さまざまな要因が絡み合って、女性が管理職として働きやすい(違う見方をすれば働かざるを得ないかもしれない)状況が成り立っています。だから、他の国がそうだから日本も明日から同じようにしようと簡単に言えるものではない。

ただ、他の国で、女性が女性であることで不利益を被らずに、出産を経験しても、育児をしながらも、同じ職場で働けているのを見ると、それができる社会環境を羨ましく感じます。

女性のキャリアを考えられる会社で働きたい

女性の給料を引上げ、役員にしやすくするという積極的なアクションを取ることについては賛否があります。同じ職能を果たせるかという議論もありますし、誰かを意識的に引き上げることは誰かを引き下げることに繋がるからです。

そういった議論はあるにせよ、自分個人が働く場所としては、女性のキャリアについてどう考えているか、長時間労働の健康への影響をチェックしているか、妊娠・出産がどうキャリアに影響がないかを明示している会社で働きたいなと考えています。

団塊世代が退職し、少子化により新卒要員が減少する中で、女性を人事上どう取り扱うかは、外国人や中途社員をどう取り扱うかと合わせて、人事戦略上は、考えていて当たり前のことです。

人を重要な資源とし、長期間定着して欲しければ、社員のライフイベントについて会社がサポートするのも当然の発想でしょう。妊娠・出産という、会社からするとまだ考慮しやすい一時的な離職状態について不寛容であるなら、突然病気になった時、怪我をした時に、自分がどういう扱いをされるか心配になります。

社員にある程度の余裕を持たせて企業運営ができるのは、その会社が超過利益を得ているか、各社員の給与水準がそれなりにならされているかのどちらかでしょうが、子育てをしながら働いている身では、そういった企業の方が望ましいです。

締め

大上段に、企業は女性の管理職や幹部社員を増やすべきだ、一時的なキャリアの断絶を採用上不利に扱うな、と申し上げるつもりはありません。

ただ、働いている一個人の立場として企業に期待するところはあります。現在の人事上の女性の活用について公開することです。

先に書いた通り、人事戦略は企業の戦略に密接に結びついています。女性活用についての状況を公開することから、内部の社員もそうだし、入社を希望する外部の人間からも、企業の成長戦略をうかがい知れ、会社として社員をどのように考えているのかの姿勢も感じとることができます。

とても働きやすい職場なのにそれが外部にあまり伝わっておらず人が集まらないなどという状態は、その会社にとっても就職・転職活動中の人にとっても不幸な話です。投資家向けに会社の魅力を語るのが当然のことのように、社員になりたい人に向けても会社の魅力がもっと語られ、より健全な人材獲得競争が起きることを期待しています。

著者:斗比主閲子 (id:topisyu)

id:topisyu profile image

「年齢は35-40歳。旧帝大卒業後、一部上場企業に勤務。外資系企業含め複数回転職を経験し、現在は某企業のIR部門に所属。2.5世帯住宅に住み、X人の子を育てながら日々姑と対決中……」ということになっています。

ブログ 斗比主閲子の姑日記

PC_goodpoint_banner2

Pagetop