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東芝四日市・半導体技術幹部が徹底議論
東芝の先端メモリ研究開発戦略と転職技術者への期待
NAND、BiCS、さらに次世代新規メモリの開発に向けて怒濤の進撃を続ける東芝セミコンダクター&ストレージ社。メモリの研究開発・生産拠点である四日市工場の幹部技術者が、転職エンジニアへの期待を語り尽くした。
(取材・文/広重隆樹 総研スタッフ/伊藤理子 撮影/早川俊昭)作成日:15.7.22
出席者プロフィール
メモリ事業部
先端メモリ開発センター技監
渡辺 寿治氏
半導体研究開発センター
副センター長
服部 圭氏
半導体研究開発センター
新規メモリ・
デバイス技術開発部 部長
石丸 一成氏
ブレークスルーのために、異分野のエンジニアの知見が求められている

──東芝四日市工場における半導体技術開発の最先端の様子を、お三方に伺いたいと思います。最近1年間での大きなトピックといえば、工場の新建屋が稼働し、BiCSメモリ開発にも大きな動きがあったことですね。

渡辺

今年3月に世界に先駆けて48層のBiCSを出荷開始しました。四日市工場は今、3次元構造のBiCS開発を強力に進めており、成長が期待されるSSD向けなど大容量のものにBiCSはどんどん採用されていくでしょう。

ムーアの法則では毎年一定の速度での高集積化を予言していますが、私たちが目指すのは、これを継続して推し進める「More Moore(モア・ムーア)」です。NANDでいえば、絶えざる微細化に加え、一つのメモリセルに2ビット以上の情報を記憶する多値化の技術も使用して高集積化を進めてきました。BiCSではこれにさらに多層化技術が加わることで、微細化に依存しない高集積化、大容量を進めていく道が開けたわけです。

もちろん、3D化=多層化とひと口に言っても決して簡単な技術ではありません。例えば多層セルでは、メモリホールの深さが深くなるに伴い、いわゆるアスペクト比が高くなりますから、細長い穴を垂直に開けていくためのプロセス的なチャレンジが必要になります。

渡辺 寿治氏
渡辺 寿治氏

技術的なブレークスルーは必至であり、そのためにこそ、さまざまなバックグラウンドを持った技術者が必要とされているのです。DRAM、ロジック、イメージセンサ、ディスクリートなど半導体技術はもちろんのこと、ディスプレイなど他業界の方にも来ていただいています。例えばイメージセンサを開発した経験のある技術者なら、材料の金属汚染対策に詳しいはずだし、アナログ的なデバイスにも慣れているかもしれません。いろいろな製品で蓄積された経験や技術が、次世代メモリ開発にも活かされるのではないかと期待しているわけです。

石丸

メモリだけでなく、他領域の知見を持っている人に加わって開発を加速化させてもらいたい、ということは私も痛切に感じています。

当社に限らず半導体開発の歴史を見ると、一つのデバイスがほかのデバイスの技術を取り込んで進化するというケースが続いていました。例えば、かつてはDRAMの技術開発の中心は微細化であり、ロジックの開発のコアは新規材料であると言われていました。しかし、ロジックにおける材料開発の進歩を受けて、DRAMでも新規材料導入が大きく進みました。

当然そうしたことはNANDでも起こりうるわけです。私たちも今のNANDとは異なる構造・材料のデバイスの知見を導入し、現在の課題をブレークスルーしたいと思っているし、実際にそうしてきた実績があります。

現在は技術ベンチマークとしていろいろな学会や海外の研究所に人を派遣して、NANDだけでなくほかのデバイスのテクノロジートレンドもウォッチしています。新技術を導入することでNANDの特性がどう改善されるかをたえず考えている。海外の著名な研究者が日本を訪れたときなどは、四日市にも足を運んでいただいて、講演を聞く機会なども設けています。そうしたことがエンジニアの新しい発想を刺激するんですね。

こうした近接領域への調査研究という点でも、転職者たちの知見やリーダーシップは大いに役立つはずです。実際、こうした異分野からの転職者が、東芝ですぐに活躍し始めるというケースはよくあります。

渡辺

そうですね。例えばロジックから入ってきた方で、入社わずか2カ月でチームリーダーを務めるようになった人もいます。何か一つの技術を追求していてリーダーシップを発揮してきたような方は、どこに行っても、もちろん当社に来ても通用する。「NANDはやったことがない、3次元構造など自分には無理だ」などと遠慮することなく、ぜひともチャレンジしてほしいですね。私たちのようなNANDだけをやってきた集団では、なかなか気づかない視点を持ち込んでほしいのです。

プロセス開発におけるブレークスルーはどこから生まれるか
服部 圭氏
服部 圭氏
服部

これはユニットプロセス開発における生産技術領域でも言えることです。BiCSの多層化工程では、異種膜を積み上げる、異種膜を加工するというステップが必要になり、これまで半導体分野で使ってこなかった技術を導入することも多いんです。新しいデバイスに必要な材料、生産に必要な新しい加工技術の開発では物理化学的な知識をベースに新たに発想することが欠かせません。

例えば、成膜には700度〜1000度近い高温を使うのが一般的ですが、それだとウエハにストレスがかかり、多層化にあたって限界が出てきてしまいます。物理蒸着、化学蒸着のほか、電解・無電解のメッキ技術などさまざまな方法を駆使した低温成膜技術、あるいはプラズマの生成原理を踏まえた上でそれを代替する技術開発も視野に入れなければなりません。

実際、プラズマも真空中だけじゃなくて大気圧のものも実用が始まっていますしね。以前の会社で、成膜技術、プラズマ技術を一通り身に付け、そのうえで新しい発想ができる人には、東芝の次世代メモリ開発にも大いに貢献してほしいですね。

 さらに、半導体の製造装置は導入すればすぐに量産に使えるというものではありません。装置メーカーや材料メーカーと共に技術課題を共有しながら共同で装置開発を進める必要があります。そういう意味では、これまで装置・材料メーカー側にいらした方はその経験が大いに活きるのではないかと思います。

計測技術もそうですね。普通の電子顕微鏡では追いつけないレベルまで追い込めないかと、私たちは絶えず追究している。計測機器メーカーでそういう技術を蓄積した人の知恵を借りたいと思う場面がよくあります。

石丸

実際、キャリア入社者から「なぜこういう技術を使わないのか」「これを使えば課題はクリアできるのでは?」という提案をされることがよくあります。彼らなりに原理原則を踏まえてそういう提案をしてくる。そこで議論が始まり、その結果、一気にブレークスルーが進むことも稀ではありません。もちろん、学会などを通して常に情報は集めていますが、実際その知見を持っている人が中に来てくれると、課題がよりクリアになる。

服部

こうした議論ができる背景には、東芝のもともとの風土だけでなく、四日市工場のスタイルというものもあると思っています。デバイス技術、成膜技術、加工技術などのメンバーが同じフロアにいて議論しながら開発を進めている。何か新技術を導入したときも、単にスコアがよかった、悪かっただけでなく、なぜ良かったのか、なぜ悪かったのか、その背後の原理は何かを、いつも議論しています。

渡辺

私も、「フランクで自由に議論ができる」という東芝の風土は大いに自慢できるものだと思います。疑問をぶつける、改善案を出す、ということを常に奨励しているし、実際行われてもいる。ディスカッションの場では、ベテランも新人もキャリア入社者も関係がない。

石丸

東芝はDRAMのころから海外他社との協働を積極的に行ってきた会社ですからね。そうした他社協業を通して、異なるバックグラウンドを持つエンジニアと議論することが当たり前の風土になり、それが、現在の社風につながっているのではないかな。

渡辺

今も、サンディスク社と同じ部屋で開発しているわけですからね。

未来を創造する情熱、仕事の流れを先取りしていく姿勢

──これからの社会変化を見越した上での半導体技術の未来。「ポストNAND」とか「新規メモリ」ということもよく言われますが、どんな取り組みをされていますか。

渡辺

情報爆発が進行しており、2020年に人類が生み出す情報量は44Z(ゼタ)バイトに達すると言われています。ますます増大する情報を格納し、ビッグデータを活用するための高集積化 More Mooreに加え、More than Mooreとも呼べるような、多様な特長を持つ新規メモリによる新たな価値創造も重要です。

私たちはBiCSの継続的な高集積化に集中すると共に、MRAMやReRAMはもちろん、さらにその先も視野に入れた新規メモリの研究開発も進めています。

石丸

例えば、新興国で使われている携帯電話はまだフィーチャーフォンからの脱皮を始めたばかり。彼らがどんどんスマホを使い始め、写真を撮り出したら、データは爆発的に増えます。それ以上に、データ爆発が本格化するのは、M2M(マシーン・ツー・マシーン)技術が普及したときだとも言われていますね。

今でも毎日膨大なデータが生成されていますが、その2/3はすぐに消えてしまう。クラウドに残るのは15%だけとも言われます。これを全部データセンターに格納し、活用する技術が求められている。メモリが重要であることは今後、何十年も変わらないと思います。

石丸 一成氏
石丸 一成氏

一方で、世の中では、高速アクセス、高集積化、不揮発性、低消費電力を全部兼ね備えたユニバーサルメモリに期待する向きもありますが、これはなかなか実現が難しい。そもそも現在のメモリは、これまでのコンピュータシステムの階層構造=アーキテクチャを前提に設計されているわけです。キャッシュメモリ、ワークメモリ、ストレージメモリといった分業で動いている。それを全部ユニバーサルメモリで置き換えようとすれば、システム全体を変えなければいけないし、コスト増にもつながる。それで果たして顧客が満足するのかということも、考えなくてはなりません。

もちろん、ある分野向けに開発していたメモリが、別の分野にも応用・転用でき、それが画期的な技術のトレンドを作るということはあると思います。ただ、そのためにもきちんと狙いをもった製品を開発し続けていくことが重要です。

服部

微細化だけを追いかけると、いずれは壁にぶつかるでしょう。半導体を人の手で作り込むのではなく、自己生成的に生み出されるもの、例えばバイオ技術を転用した開発手法などが、いずれは出てくるかもしれないですね。

石丸

トップダウン型じゃなくて、ボトムアップ型でデバイスを形成する技術という発想もありますね。実際、カーボンナノチューブを活用した技術がいま芽生えつつある。東芝がそこに行くかどうかという話は別として、そういう発想を持った人に来ていただきたい、という思いはあります。確かに、今やっている製造技術と先進領域の技術の間にはまだギャップがあります。そこは、東芝本体の研究開発センターなどとも協力しながら、ギャップを埋める研究開発を進めていきます。

渡辺

全員がぶっ飛んだことを考える必要はないんですよ(笑)。ただ、言われたことをやるだけでなくて、自分で考えて動くことが大事。仕事の流れを先取りしていく姿勢を私は重視しますね。やはり一番根っこになるのは熱意でしょう。キャリア入社者の熱意と能力が、私たちの技術課題とマッチするように適材適所の配置を常に考えています。

基礎研究から量産まで、有機的な連携が東芝の強み
石丸

今の会社で研究をしている、しかし実用化への道が見えない、道を絶たれた……などと悩んでいる人にはぜひ東芝を勧めたいですね。ちゃんと「モノづくり」ができ、世に出していけるのが東芝だという自負が私たちにはありますから。

やはり自分の仕事が基礎研究だけに終わってしまうと、エンジニアは物足りなく思うものですよね。最終的に、製品として仕上げることができてこそ、技術者としてのプライドにつながると思います。私たちが、NAND型フラッシュメモリを開発したときも最初は「こんなの何に使うんだ?」と言われたものです。BiCSを発想した人も、最初は「こんなの実現できないよ、机上の空論だよ」と笑われたと言います。しかし、何年にも渡ってしつこく技術開発を続けることで、ようやく製品の形で世に出すことができました。東芝はそれができる会社だし、それができるエンジニアが集まっている会社なんです。

服部

その通り。誰が何を言おうと、強い意志をもって継続することが大切。その信念が市場を切り拓いていくのだと思いますね。そういう強い意志のある人であれば、メモリでもそのほかの電子デバイスでも、バックグラウンドは何でもよいと私は思います。

生産技術の観点からもう一つ加えると、半導体は大量に作ることが必要で、そのためのシステムも改善を続けなければなりません。量産を続けながら開発を続けるのは、今までの常識を破壊しつつも、今のラインと融合させなければならない難しさがあります。けれども、技術者としては楽しいものですよ。

渡辺

これまでの常識を破壊しながら創造し、さらに工場でしっかりモノづくりを行う。この繰り返しで東芝の半導体技術は前進してきました。材料開発、プロセス開発から、生産技術まで含めた有機的な連携が東芝の強みになっています。海外他社はそれぞれの機能が分離しがちだし、日本のメーカーも半導体部門が切り離されていて研究所との連携が不可能になりつつあると聞いています。東芝は総合電機としてのバックボーンを活かした奥の深い開発戦略ができていると思いますよ。新しい技術を発想する人、その技術を理解して、それをしっかり形にする人、実際に量産に載せるのが得意な人、それぞれ一人ひとりが欠かせない技術者なのです。

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