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Japan Life、Coin☆Piratesなど世界累計で1000万ダウンロード!
海外ヒット連発のNubeeは、なぜ東京上陸を決めたのか
中国App Storeで上位を継続している「Japan Life」。このゲームを開発したシンガポール企業のNubeeは、実は日本人の設立。グローバル市場での成功要因について、新たに東京に開発拠点を設けた経営陣に伺った。
(取材・文/中村伸生 総研スタッフ/宮みゆき 撮影/佐藤聡)作成日:12.03.14
必然性と勝算があったEC企業のSAP進出
浮城 智和氏
Nubeeグループ代表
(兼 株式会社ベガコーポレーション
代表取締役)
浮城 智和氏

 国内ソーシャルゲーム大手各社が海外進出を進めるニュースが続々と入ってくる中、一つの海外SAP(ソーシャルアプリケーションプロバイダー)事業者が、東京に開発部門を立ち上げた。その会社とは、シンガポールにヘッドクォーターを置くNubee。2010年11月の設立から現在までの同社のゲームタイトルのダウンロード総数は、世界累計で1000万超。そのような実力企業だけに、ゲームエンジニアの人材市場への影響も大きいことは想像に難くない。

 中でも日本をテーマにした夢の町づくりソーシャルゲームの「Japan Life」は、中国App Storeランキングで上位を継続。さらにコインを投下して宝物を獲得するコインプッシャーゲームの「Coin☆Pirates」は300万ダウンロードを突破するなど、同社のコンテンツ企画力はグローバルマーケットの潮流を捉えていると言えるだろう。そのNubeeの母体は、実は福岡を拠点とするベガコーポレーション。家具のECサイトである「ロウヤ」を運営している内資企業である。

「家具のECサイト運営も、スマートフォンのゲーム配信事業も、商品をインターネット上で流通させ、課金や決済も行うという点では同じ。今までのノウハウが活かせると考えました」

 そう語るのは、NubeeとベガコーポレーションのCEOを兼ねる浮城智和氏。ベガコーポレーションを率いて一定の成功を収めていた同氏によれば、EC運営とSAP事業の運営は親和性が高く映ったようだ。だが、SAP事業への進出はそれだけが理由ではない。EC大手各社のゆるやかな成長曲線が示すように、ECの市場が安定成熟期に入ったと思われる一方、ソーシャルゲームの市場は爆発的な成長を続けている。まだまだビジネスのスケール拡大意欲が旺盛なベガコーポレーションにとって、急成長市場への進出は自然な流れだったのである。

 一方で、ECサイト運営とSAP事業は、商材の確保が大きく異なる。ECはバイヤーが「交渉して仕入れる」ことに対して、SAP事業はエンジニアが「プログラムをつくる」ことになる。この相違点も、「ロウヤ」のオリジナルサイトを社内のプログラマが開発し、社内のサーバエンジニアが運用していたことで、ハードルを乗り越えられたと浮城氏は語る。「2010年の夏に、テストアプリケーションとしてiOS/Android向けのゲームをリリースしたところ、僅か3日間で10万ダウンロードを記録したのです。需要と供給のバランスが取れていないのだと確信しました」
 Nubeeは、確かな手応えを感じての設立だったようだ。

どこよりも最適地だったシンガポールでの創業

 以上のような手順を踏み、浮城氏とベガコーポレーション専務として浮城氏のビジネスパートナーを務める手島武雄氏の、SAP事業参入の意思は固まった。当時、すでにスマートフォンの時代に突入したのは明らかだった。フィーチャーフォンは最初から念頭にない。浮城氏の経営者としての感覚は、「日本だけに市場が限定されるフィーチャーフォンのゲーム開発は、結果的に機会損失。最初からスマートフォン向けに開発すれば、世界がターゲットになる」ということだ。

 次に、SAP事業は業態の異なるベガコーポレーションでスタートするのではなく、海外での新会社設立が望ましいと浮城氏たちは考えた。
「海外をターゲットにするなら、最初から外国語で開発した方が市場展開は早く、先駆者として有利な位置に立てると考えたのです。それに、海外では日本よりも早くFacebookの普及が進んでいたこともあり、ソーシャルネットワークゲームがヒットする土壌は整っていると感じました」

 浮城氏は続けて、シンガポールでの設立理由を語ってくれた。
「世界を相手に挑むということは、どの言語圏にフォーカスして開発するかということです。最初に上がったのは、やはり英語でした。そして次に中国語。中国国内の13億人に、台湾や世界中に根を下ろしている華僑を加えれば、英語圏をしのぐ巨大マーケットが見込めると考えたのです。これで、英語・中国語の両バージョンが開発しやすい場所に拠点を構えることが望ましいとなりました。そうなると、自ずと適地は香港かシンガポールになります。最終的にシンガポールを選んだのは、世界中から優秀な人材が集結してくる場所であることと、家具の貿易を通じてシンガポールのポテンシャルが相当高いことに気づいていたからです」

手島 武雄氏
株式会社Nubee Tokyo
代表取締役
手島 武雄氏

 2010年11月24日、こうしてシンガポールにNubeeが設立された。開発エンジニアのリクルーティングは順調に進んだ。現地の求人サイトを利用するとともに、地下鉄にも求人広告を出したところ、シンガポールはもちろん、インドネシア、マレーシア、フィリピン、インド、ベトナムのほか、フランスなど欧米からも優秀なエンジニアやクリエイターが集結したのである。人材力が開発力に直結するゲーム開発。この1点だけを捉えても、浮城氏たちのシンガポール選択は正解だったと言えるだろう。

ユーザーの潜在的な要求を捉え、ヒット連発
Coin☆Pirates
Coin☆Pirates

 それからのNubeeの躍進は凄まじかった。まず、2011年2月にリリースした「Coin☆Pirates」が累計300万ダウンロードとスマッシュヒット。同年7月にリリースした「Japan Life」は、中国のApp Storeでダウンロードされ続けたのは前述の通り。Nubeeは2011年末までに8つのタイトルをリリースし、結果的に世界累計で1000万ダウンロードを突破したのである。

「Japan Life」などは、中国人の嗜好や潜在的な要望に応えたことがヒットの要因と考えられており、シンガポールでの開発が奏効したのは間違いない。2012年に入っても開発の勢いは止まず、夏にかけて数タイトルが新たにリリースされる予定だ。

ネイティブアプリの選択でゲームの魅力を引き出す

 Nubeeの各ゲームタイトルが多数のダウンロードを生んでいる理由としてもう一つ挙げられるのは、ネイティブアプリとしての開発を選択したことである。言うまでもなく、プラットフォームに特化したネイティブアプリは、表現力がWebアプリよりも大きい。実際に「Japan Life」をWebアプリで実現するのは難しいそうだ。また、App Store経由でアプリケーション配布が容易であることも、Nubeeの躍進を加速させた。ただ、浮城氏はネイティブアプリとしての開発に固執しているわけではないと言う。

「それまで日本のSAPはHTML+FlashによるWebの開発で次々とヒットタイトルを生んできました。それはそれで正しい戦略だったと思います。でも我々はフィーチャーフォンではなくスマートフォンに特化し、ユーザーに新しいものを提供しようと考え、表現力に勝るネイティブアプリを選択したのです。マネタイズの面でも有効でした。ただ、今後はまた違った、柔軟な対応を取っていこうと考えています。HTML5がかなりの進化を遂げていることもあり、開発陣はネイティブアプリとWebアプリの両方に備えています」
 浮城氏たちの考えは、海外と日本のソーシャルネットワークゲームの良いところを融合していこうというものであるようだ。

Japan Life
Japan Life
見過ごせなかった、日本市場と日本の開発力

 そんなNubeeが2012年1月6日に、日本国内の開発拠点として、東京にNUBEE Tokyo Co,. Ltdを設立した。シンガポールで成功を収めた同社が、東京に逆上陸したという格好である。日本市場でのスタートから一足飛びに、しかも確かな理由があって海外で立ち上げたNubeeが、今なぜ開発部門を国内に設けたのか、浮城氏は次のように語る。
「日本人の技術レベルとソーシャルゲームの国内マーケットは、グローバルで見てもかなり魅力があります。昨年秋、日本で人材を募集してみたところ、予想以上に応募があり、シンガポールに勤務する日本人が増えました。その時多かった意見が、東京勤務を希望するものでした。であれば、我々がもし東京に拠点を出せば、多くの優秀な人材が応募してくれるかもしれない。我々が海外で得た成功体験を国内チームと共有すれば、さらに良い結果が出せるのではないかと考えたのです」

 それでは東京の開発拠点は、グローバル企業Nubeeにとってどのような役割を担うのだろうか。この点については、NUBEE Tokyo Co,. Ltdの代表取締役を務めることになった手島氏が次のように言う。
「東京スタジオは、シンガポール本社の下請けをする訳ではありません。今から約1年間で現在の20名体制を80〜100名体制に拡大し、東京のプロデューサー指揮のもと、東京スタジオ単独でオリジナルゲームを開発していきます。もちろんシンガポールからはグローバル仕様への成功ノウハウを注ぎ込みます。日本の開発力とグローバルで培った知見が相乗効果を持ち、シンガポール本社に負けない開発スタジオができるものと考えています」

 手島氏はさらに、東京スタジオが求める新規スタッフの人材観を語ってくれた。
「立ち上げメンバーですから、ハートの強い人を期待しています。それは、今この瞬間の報酬よりも、未来を拓いていく夢に自分を投資できる人です。ユーザーに面白いゲームを届けたいという想いが大事であり、そこに没入できる人とも言い換えられるでしょう。見返りは、何もないところから確かなものをつくっていく手応えと、エンジニアとしての成長、そして将来の報酬です。今が未熟でも、優秀なエンジニアが100とすれば、それに至るまで向上心を持って成長していく人材と出会いたいですね」

語学力は不問。外国語でコミュニケーションを学ぶチャンスを掴んでほしい

 代わって、浮城氏が、日本のエンジニアに強くアピールしたいことがあると続けた。
「日本人は、今こそ海外に出て行かなければならないタイミングに差し掛かっていると、強く感じています。東京スタジオは、いずれ海外に進出するエンジニアの踏み台になっても構いません。
 日本のエンジニアの海外進出の障害になるとされる語学力ですが、完璧なものは必要ないと考えています。エンジニアに必要なのは開発スキルであり、言語ではありません。それを持つエンジニアなら、ぜひ一緒に世界一のSAPを目指したい。流暢に外国語を操る必要はありません。外国語が不自由なエンジニアばかりになったら、通訳を社内にたくさん用意すれば良いと思っています。でも、この環境なら数ヶ月で、外国語でコミュニケーションが取れるようになりますよ」

 今後の展望として、上場を視野に収め、ゲーミングネットワークの次の可能性も探り始めていることも小耳に挟んだ。家具のECで成功を収めつつ、短期でソーシャルネットワークゲームのシーンを先導するようになったNubeeだけに、エンジニアならずとも目が離せない存在ではないだろうか。

Nubeeグループ代表 (兼 株式会社ベガコーポレーション代表取締役) 浮城 智和氏

北九州市出身、1976年11月生まれの35歳。九州国際大学経済学部卒、家具輸入商社で営業経験を積み27歳で独立。2004年、家具のECサイトを運営するベガコーポレーションを設立。Nubee設立後からはシンガポール、福岡、東京を駆け回る。
https://twitter.com/#!/t_ukishiro

株式会社Nubee Tokyo 代表取締役 手島 武雄氏

北九州市出身、1976年4月22日生まれの35歳。高校卒業後信用金庫に入社、一年で情報通信会社に転職。20歳の時、中学同級生の浮城氏に再会。ベガコーポレーション設立時は社外取締役となり08年7月に専務に就任。Nubee Tokyo Co,. Ltdの代表取締役も兼務する。

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■スマートフォン(iPhone・Android等)向け各種ゲームの企画・開発。 ※世界市場をフィールドに積極的なビジネスを展開。スマートフォンをターゲットにしたゲーム開発会社として世界NO.1を目指しています。 ■親会社:株式会社ベガコーポレーション(福岡県福岡市博多区祇園町7-20)続きを見る

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