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新たにスタジオ制を導入した狙いとは?
「エンジニア社長」池田氏が語る新生gloopsの開発体制
国内トップクラスのソーシャル・アプリケーション・プロバイダーであるgloops(グループス)が、スタジオ制の導入を発表した。その狙いとは何か?そして、エンジニアのやりがいや、求められる素養はどう変わるのか?新社長の池田氏に聞いた。
(取材・文/白谷輝英 総研スタッフ/伊藤理子 撮影/刑部友康)作成日:13.08.07
3スタジオを創設。ブラウザ版、ネイティブ版ともにゲーム制作のスピードを加速

「大乱闘!!ギルドバトル」「大熱狂!!プロ野球カード」「大戦乱!!三国志バトル」などのヒットゲームを連発しているgloops(グループス)。総ユーザー数は述べ2600万人を超え、1カ月で150億以上のPVを誇る、国内でも指折りのソーシャルアプリケーションプロバイダーだ。

 同社では先日、新体制への移行を発表した。取締役CTOとして創業期から会社を支えてきた池田秀行氏が、社長に就任。そして、7月1日付でスタジオ制へ移行することもアナウンスされた。現時点で創設されたスタジオは3つ。第1、第2スタジオは、ブラウザをプラットフォームにしたゲームの開発を担当。そして第3スタジオが、スマートフォンにネイティブ対応したゲームを担当することになっている。

池田 秀行氏
株式会社gloops 
代表取締役社長
池田 秀行氏

「ネイティブ版のゲームは、当社にとって新しいマーケット。ブラウザ版に比べてリッチな表現が可能で、今後、売り上げ拡大が期待できると考えています。また、エンジニアにとっても挑戦しがいのある分野でしょう。2013年度下半期には、ネイティブ版ゲームだけで10本程度はリリースしたいと考えています。一方、これまで多くのヒット作を生み出してきたブラウザ版ゲームについても、引き続き力を入れていきます。現時点ですでに大きな売り上げをもたらしている分野ですが、『守りに入る』ことはありません。今、人気があるゲームでも、同じことを繰り返すだけでは飽きられてしまう。常に攻めの姿勢で、さらにシェア拡大を狙いたいと思っています」

 2012年10月、グループスは韓国のオンラインゲーム会社であるネクソンの陣営に加わった。これにより、海外展開にも弾みがつきそうだ。

「現在、ネクソンとの共同プロジェクトで、韓国向けのソーシャルゲームを制作中です。おそらく、年内に1本、年明けに1本くらいの作品を送り出せるでしょう。また、それ以外の国での展開も進めています。ただ、過去にブラウザ版のカードバトル系ゲームを海外でリリースしたこともあったのですが、正直、あまりうまくいきませんでした。やはり、海外を目指すなら、ゲームのネイティブ化は必須ですね。そうした背景があり、現在開発中のネイティブ版ゲームの中には、当初から海外展開を視野に入れて開発を進めているものもあります」

「スタジオ制導入」最大の狙いは、ゲームのクオリティ向上にあり

 目覚ましい成長を遂げている同社が、あえて今、スタジオ制を導入したのは、自らもエンジニアである池田氏が社長に就任したことが大きい。池田氏は、導入の理由として2つを挙げている。1つ目は、「スピードアップ」だ。

「当社がソーシャルゲームに参入した2009年当時、社員数はたったの6人でした。しかし、今では600人近くにまで増えています。企業規模が大きくなるにつれ、素早い意志決定がしづらくなっていたのが、このところの課題でした。制作チーム自体も、以前より大きくなっています。フィーチャーフォンでの開発が中心だったころは、1タイトルを10人あまりで開発するのが普通でしたが、スマートフォン向けの開発が増えると、ゲーム開発はずっと複雑なものになりました。また、UI・UXやデータマイニングの専門家もチームに参加。その結果、現在の制作チームは従来の2倍以上の規模になっています。こうした中、開発や意志決定のスピードを高めるためには、独立性の高いスタジオをつくって機動力を高めることが適切だと考えたのです」

 2つ目の理由は、「クオリティアップ」。こちらのほうがより大きな狙いであると、池田氏は語る。

「過去にヒットタイトルを手がけたトッププロデューサーが昇格し、マネジメントに多くの時間を取られるようになりました。その結果、ゲーム制作に振り向けられるエネルギーが削られてしまうケースがあったのです。これは、実にもったいないこと。ゲームに対してより高いクオリティが求められるようになった今、彼らをスタジオのリーダーに据え、より現場に近いところで力を振るってもらうことで、スピードのみならずクオリティ向上も図れると考えています」

 なお、現在の3スタジオ制は固定されたものではない。近い将来、リーダーを務められる人材が続々と登場すれば、スタジオを増やす可能性は十分にあるという。また、ゲーム以外のサービスを作る動きもすでに始まっている。

「当社が目指しているのは、『ソーシャル・エンターテインメント・プロバイダー』です。『スマホ×ソーシャル』という切り口で人々を楽しませるアイディアがあれば、ゲーム以外でもどんどん形にしていきたいと思っています。今年開催した社内の新規事業コンテストでは、30チーム以上から応募がありました。そのうち3チームの事業アイディアには予算をつけ、プロジェクトをスタートしており、ゆくゆくは新しい組織を立ち上げる予定。このように、社員誰もがチャレンジしやすい柔軟な組織を整備することが、社長としての私の目標の一つです」

グループスのエンジニアだからこそ得られる「ライブ感」

 スタジオ制が敷かれることで、エンジニアとリーダーとの距離は確実に近くなる。優れた企画を立て、それを形にしてきた実力者の隣で働けることは、若手にとって大きな刺激になるだろう。また、経験値の高いリーダーの元で働けば、ヒット作に携われる可能性も高まる。

「数十万人、百数十万人ものユーザーを集めるヒット作には、それなりの理由があります。どこがユーザーに支持されたのか、サービスが急成長したカギはどこにあったのかを身をもって学べれば、エンジニアや企画担当者にとっては大きな財産になるに違いありません。実体験こそが、一番モノを言うのです」

 小回りがきく組織に変わったことで、エンジニアとしての楽しさも、より味わいやすくなるというのが、池田氏の考えだ。

「ソーシャルゲームを手がけるエンジニアは、コンソール系のゲーム制作者に比べ、ユーザーとの距離が近い。自分が作ったサービスへの評価が、ユーザー数の増加という形ですぐに可視化されますし、ユーザーからの要望もダイレクトに伝わってくるからです。集まった要望に合わせてサービスをブラッシュアップし、ユーザーの反応を確かめる。そして、次の手を考えて実行する…。そうした『ライブ感』こそが、ソーシャルゲーム業界で働く最大の醍醐味ではないでしょうか。そして、スタジオ制によって組織のスピード感が高まれば、そうした面白みはもっと増すだろうと思っています」

 ただし、スタジオ制導入のデメリットもないわけではない。例えば、各スタジオ間に壁ができてしまうのではないかと懸念するメンバーもいたそうだ。しかし池田氏は、そうした不安を打ち消している。

「スタジオ制の導入で、同じスタジオのメンバー同士は距離が縮まることでしょう。半面、ほかのスタジオ、あるいは会社全体の様子は見えにくくなるかもしれません。ただ、そこは全社的な情報共有などを積極的に行うことで、十分カバーできると思います。それも、社長である私の大事な役割でしょうね」

特定分野にこだわらない柔軟性と、ユーザーを楽しませるマインドの持ち主を評価

 グループスで強く求めているのは、一つの得意分野にこだわらず、「領域外にはみ出すことができる人」だ。例えば、サーバサイドとフロントエンドの両方がわかる、あるいはアプリ開発とインフラのどちらも知っているようなエンジニアなら、存分に活躍できるだろう。

「小さい組織でスピード感を持って開発に臨みたいと考えたのが、スタジオ制導入の原点です。小規模のチームでは、一人のエンジニアが何役もこなしたり、メンバー同士で柔軟に協力し合ったりする必要がありますから、特定の仕事だけしかせず、あとは無関心という人では困ってしまいます。何でもこなせる人、いわゆる『フルスタックエンジニア』なら大歓迎です。もちろん、そういう人材はめったにいないでしょうが(笑)、何にでも興味を持ち、いろいろなことを学ぼうとする姿勢があれば、成長力が期待できますね」

 エンジニアにとって、技術力は欠かせないものだ。特に、技術の進化が早い現代においては、新しい技術、情報にキャッチアップし続ける姿勢が求められる。だが、それ以上に池田氏が重視しているものがある。

「人を楽しませようとするマインドです。技術は、あくまでも手段の一つ。最終的な目的は、多くの人々に喜ばれるサービスを作ることなのです。そのためには、遊ぶ側の視点に立って、よりよいものを作ろうとする姿勢が大切。作り手自身が楽しみつつ、ユーザーをとことん楽しませようと努力する。そんな情熱の持ち主を、ぜひ求めたいですね」

同社の風通しは非常によく、社長と社員一人ひとりの距離も近い。この写真の撮影時も、社長のお茶目な姿を見ようとギャラリーが多数集まり、大にぎわいとなった。
株式会社gloops 代表取締役社長 池田 秀行氏

1976年生まれ。東京工業大学卒業後、大手SIerでJavaによる大規模SIの開発、BtoC向けWeb開発を手がける。2007年、グループスに入社して取締役CTOに就任。技術部門の責任者として、ソーシャルゲームの開発・運営を支えてきた。2013年6月、代表取締役社長に昇格。

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