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面白法人カヤック×FEJ立ち上げ、新産業創出で復興に貢献 |
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Android開発よ、花開け!
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面白法人カヤック×Fandroid EAST JAPANが目指す
「仙台Androidブランド化計画」の全貌
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- (画面中央)
- 面白法人カヤック 企画部 クリエーター
野崎錬太郎氏 - (画面右)
- ファンドロイド・イーストジャパン
特別協力・アドバイザー
伊藤利憲氏
(宮城県産業技術総合センター 商品開発支援班班長 研究員) - (画面左)
- ファンドロイド・イーストジャパン
佐藤 慧氏
(株式会社ディー・エム・ピー デジタルマーケティング部門プランナー)
3.11の東日本大震災後、被災者の救出や支援のためにいち早く立ち上がった人たちの中には、ITエンジニアも多い。個人として活動するケースもあれば、会社や組織の枠を超えて多くのエンジニアが参加し、知恵と技術を出し合って被災者に役立つアプリを開発&リリースするケースもあるなど、全国各地で震災当日から活発に行われてきた。
その中で今回注目したのは、鎌倉を拠点にユニークかつ斬新なアプリやWebコンテンツ開発を展開している「面白法人カヤック」が取り組んだケース。今年5月〜8月までの期間限定で「仙台支社」を立ち上げて、東北のエンジニアたちと一緒にAndroid向けアプリの開発に取り組んだプロジェクトだ。
当初はカヤックが東北のエンジニアやWebクリエイターたちに仕事を依頼することで、業務委託やWeb開発スキルの向上に貢献していくという方針だった。しかし3カ月間という短い期間で、カヤックの想像を大きく超えるほどのビッグプロジェクトに結びついていった。
その具体的な取り組みについて、カヤック仙台支社長として尽力した野崎氏と、仙台在住で、後述する「Fandroid EAST JAPAN」の主要メンバーである伊藤&佐藤両氏に話を伺った。
震災から2カ月後にカヤックが仙台支社を設立した経緯
「当社ではこれから急速に普及するAndroid向けアプリの開発に取り組んだり、それに伴う勉強会も開催するなど、Android開発に対して積極的に取り組んでいました」と語るのは、同社のクリエイターで仙台支社長であった野崎氏。
そのカヤックが震災後、なぜ仙台支社を立ち上げたのか?その理由を探ってみると、同社独自の取り組みである「旅する支社制度」と、「経営理念=つくる人を増やす。」「Android開発者の絶対数の不足」という3つのキーワードが浮かび上がってきた。
「カヤックとして、被災地を支援するためのベストな手段は何か?徹底的に社内で議論した結果が、先月まで期間限定で設置した仙台支社の立ち上げでした。当社ではこれまでも“旅する支社”と称してベトナムやイタリアなど世界各地に期間限定で支社を立ち上げることで、『24時間働き、24時間遊ぶ』というKAYACスタイルを実践してきた経緯があります。また『つくる人を増やす。』という経営理念を掲げているため、つくる人たちをつくることで支援するべきだろう、と。
そこで今回の震災を機に、被災地に支社を立ち上げることで、より被災地に近い場所で一定期間継続的に復興支援したいと考えました。まだ新幹線が復旧する前の4月、車で8時間かけて仙台に向かい、支社設立の準備をした上で5月からスタートしたのです」
では3つ目のキーワードである「Android開発者の絶対数の不足」は、今回の被災者支援活動とどのように結び付くのか?
「先ほどAndroid開発に取り組んでいる話をしましたが、実のところAndroid市場の急拡大を受けて、開発者の絶対数が不足しているという問題を抱えていました。一方、仙台をはじめとした東北地方のITエンジニアのみなさんは今回の震災で、受注していた案件がストップするなど、仕事をしたくても仕事がないという状況。そこで当社の案件を担っていただくことで、業務委託という形で少しでも支援できるのではないかと考え、Android開発案件を仙台に持ち込んだのです」
仙台から世界に通じるAndroidアプリと人材輩出を目的に
「Fandroid EAST JAPAN」を設立
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カヤックの活動がきっかけで設立された「Fandroid EAST JAPAN」
このような経緯で仙台支社を設立したわけだが、実は仙台を含めた東北地方在住のITエンジニアやデザイナーの多くは、Android向けアプリの開発経験がない人が多数を占めていたという。そうなると一見、いきなりそうした未経験のエンジニアたちにAndroidアプリの開発を任せることができるのか疑問に感じるが、「そこにはひとつの大きな可能性が眠っていた」と、後述する「Fandroid EAST JAPAN(FEJ)」メンバーの伊藤氏は語る。
「元来、東北にはメーカー向けの組込ソフトウェア開発の案件が多いという特性があって、JavaやC言語で受託開発するエンジニアの人材が多くいます。JavaやCが使えるということは、Androidのアプリ開発にもそのスキルを応用することができる。しかしこれまでは受託案件に追われて、Androidのような新しいフォーマットに挑戦するチャンスがなかったのです。そこで今回の震災を機に組込案件の受注がガクッと減って困惑していた時、カヤックさんから今回のプロジェクトのご提案をいただき、“エンジニアやデザイナーが中心になってAndroid向けアプリ開発に取り組むことで東北の新しい産業に育て、復興に役立てるはず”と確信しました」
一方、Android向けアプリ開発を東北で進めていく上で、大きな障害が立ちはだかった。その障害について伊藤氏と同じく「FEJ」メンバーである佐藤氏は“横のつながりがないこと”と指摘する。
「特にAndroidのようなWebアプリを開発していく場合、エンジニアだけではプロジェクトとして成立しません。プランナーやWebデザイナー、ディレクターなどの各メンバーが一つのチームになって動く必要があるわけです。しかし東京のような大都市と違い、東北の場合はそれぞれクライアントから二次請け、三次請けで個別に案件が下りてきます。その結果、案件を離れた“横のつながりが希薄化している”という実態が、Android開発を進めていく上での大きな障害になっていたのです」
そこで今回、カヤックが仙台支社を立ち上げた動きと連動して、仙台・東北在住のエンジニア・クリエイターを横断的にまとめる組織として結成されたのが「FEJ」だった。
開設から3カ月で6つのAndroidアプリを開発・リリース。中には仙台発のアプリも
こうして“仙台から世界に通じるAndroidアプリと人材輩出”を掲げて設立された「FEJ」は現在、30社の企業・団体と約50名の仙台・東北在住技術者が集まる組織となっている。
「特に仙台には、画像認識技術等で世界最先端の研究を行っている東北大学の存在など、潜在的に高い技術力がありました。さらに仙台では印刷会社が多い関係でデザイナーが多い土地柄。そこでこうした優秀なメンバーがFEJを通じてつながることで、Androidアプリ開発のための選抜チームが短期間のうちに結成できたと思います」(伊藤氏)
この結果、仙台市からはアプリ開発による復興予算として1,800万円が計上されたり、また宮城県庁を通じて交流のある米・シリコンバレーの著名な研究所から無償でAndroidアプリ開発に関連する技術の提供を受けるなど、FEJを立ち上げた効果は早くも現れている。
その一方、FEJの技術者メンバーにも大きな影響を与えているという。
「エンジニアをはじめさまざまな職種のメンバーがアイデアや意見を出し合う等、定期的にブレスト会議を開くことでこれまでの組込開発とは全く違う新しい挑戦ができる喜びや興奮を、多くのメンバーが実感していますね。それにAndroidアプリ開発に関連する最新技術やデザイン事例を勉強会で学べる機会が増えたことで、日に日にメンバーの開発スキルは上がっています」(伊藤・佐藤氏)
その成果として、FEJ開設から3カ月間で6本のAndroidアプリを開発。しかもそのうちの2本は、カヤック仙台支社から受注した案件ではなく、純粋な「仙台生まれのアプリ」である。
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仙台のエンジニアが開発したFandroid アプリ「タンシェルジュ」&「脳波SPORTS」
(※「脳波SPORTS」は、FEJが取り組んでいる脳波計測デバイスを用いた、研究のテストケースとして開発されたもの)
東北エンジニアの底力を発信。
今後3年間で技術者100名に、アプリ100本リリースを目指す
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先月、カヤック仙台支社は3カ月間の活動を無事終えたことを記念して、勉強会とFEJのメンバーも含めたエンジニアの交流会を開催した。
今後、カヤックやFEJはこの仙台をはじめとした東北の地で活動した成果を、どのように発展させていくのか?
「カヤックとしてはひとまず仙台を離れてしまいますが、今後もFEJをはじめ、仙台・東北エンジニアをサポートしていくつもりです。現在はAndroidを軸に活動を支援していますが、将来的にはiPhoneなどの他のプラットフォーム、またデバイスの開発にも範囲を広げることで、東北でなければ生み出せないアプリやサービスを創出できる体制を構築するお手伝いを継続できたらと考えています」(野崎氏)
「とにかく東北・仙台から世界に向けて誇れるような、いいモノをどんどん生み出していきたいですね。そうなれば新たな雇用を創出したり、FEJが掲げる“東北のクリエイターに仕事を増やす”というミッションを達成できるので、東北復興の大きな柱になるはずです」(佐藤氏)
「これまでの組込開発も大事にしつつ、さらにAndroidアプリの開発を通して“ここでしか作れないサービス”を目指します。そして世界中で行われているAndroidアプリコンテストにも積極的に参加していくことで、東北エンジニアの持つ底力を発信し、復興の原動力になっていきたいですね」(伊藤氏)
FEJとしては今後3年間で技術者を100名に、Androidアプリを100本リリースすることを目標に活動していくという。
震災から半年が経過したが、まだ復興への道のりは非常に長く険しいのが現実。その中で今回紹介した東北エンジニアたちは、各々が持つエンジニアならではの力を存分に発揮することで、新しい産業を生み出していこうと今、力強く歩み出している。
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先月開催された、カヤック仙台支社終了に伴う勉強会&エンジニア交流会の模様 |
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