• はてなブックマークに追加
  • Yahoo!ブックマークに登録
定時帰宅の環境づくり、スクール運営でキャリアアップ支援 / 企業も必死!技術者争奪戦☆あの手この手で挑む舞台裏
以前から他の職種に比べ、エンジニア採用の難易度は企業側・応募者側双方にとって高い傾向があった。しかしここ最近、特にそうした動きが加速している。その背景には何があるのか。また「エンジニア採用難」というハードルを乗り越えるために採用企業側が仕掛ける新たな取り組みについて探ってみたい。
(総研スタッフ/山田モーキン)作成日:11.11.28
ますます加速!企業側からのエンジニア採用条件の厳格化の中身
エンジニア採用難が続く中途採用市場において、その採用難の一例として挙げられるのは、ソーシャルゲームなどのWebアプリ開発職。採用難易度が昨年と比べて特に大きく上昇していると、ITエンジニアを対象にコンサルティングを担当しているクライス・アンド・カンパニーの松尾氏と武田氏は指摘する。
「特にソーシャルゲーム系アプリ開発の採用ニーズが高まっていますし、今後もある調査によれば、スマートフォンが2015年に世界で10億台に到達するとの予測も出ていますから、今後も採用ニーズはさらに広がり、なおかつ多様化が進むでしょう。」(武田氏)

その一方で、企業側の採用基準として、”エンジニアに求める条件の質”が数年前と比べて明らかに変化してきていることも選考上、ミスマッチを生みやすくしている大きな要因だという。
株式会社クライス・アンド・カンパニー / シニアコンサルタント 松尾匡起氏 / コンサルタント 武田直人氏
株式会社クライス・アンド・カンパニー
シニアコンサルタント 松尾匡起氏
コンサルタント 武田直人氏

「これまでなら『Java経験3年以上』といったように、求めるスキルやキャリアを数値化できた部分がありました。しかし今はよりコアな部分、例えば”アプリを自作して一般に有料で公開している” ”Android関連のコミュニティやフォーラムに参加し、最新技術について意見交換を行っている”、など技術スキル以外の数値化できない「探究心、向上心」などのマインドや経験に関しても重視する傾向が強くなってきています。もちろん、前提として「開発が大好きであること」も求められます。それが、採用基準のわかりにくさにつながり、求人要件を満たしていても、選考が見送りになってしまうという結果を招いているのだと思います。」(松尾氏)

またWebアプリ開発に求められる条件は、同じ開発者である業務系のシステム開発と比べて違いがあるのは事実。それが、特にSI企業に在籍する業務系システム開発者が、Web系アプリ開発者へ転身する大きなネックになる。
「自身の技術・スキルを生かしてユーザーのニーズを満たす、という点では両者に何ら違いはないのですが、こと経験において大きな違いがあるとしたら、それは業務の進め方にあるといえます。例えば自分で企画し、3日で開発し、すぐにリリース。その後、ユーザーの反応を見ながら次の企画にフィードバックする。このようにエンジニアに求められるのは技術力だけでなく、企画力や迅速な対応力、それにユーザー視点で開発できる能力など、また違った能力が数多く求められます」(武田氏)

このように従来の「エンジニア」という枠に当てはまらない領域まで、幅広くカバーできる素質があり、なおかつアプリ開発に対する情熱を強く持っているエンジニアが今、現場で多く活躍しているという。このような環境にチャレンジされたい方は、まず心がけたい事実といえそうだ。
ケース1 定時帰宅の環境を作り、個人生活重視のエンジニアを獲得 / 株式会社テクノード
2009年に設立されたばかりのベンチャー企業である株式会社テクノード。デコメなどで知られる寺島情報企画のスマートフォン部隊が子会社として独立する形で誕生した経緯を持つ。歴史は浅いがその一方「カジュアルゲーム」と呼ばれる、シンプルで気軽に楽しめるゲームを次々と開発し、2010年にはiTunesの無料アプリ、ゲームカテゴリーランキングで1位を獲得する等、ヒットアプリを続々とリリースし順調に事業を拡大させている。事業拡大に歩を合わせるように創業以来、アプリ開発者の採用を継続的に展開している。
そんな同社が打ち出す新たな採用戦略が、「個人生活重視のエンジニア」に響くメッセージを発信していくというもの。その具体的な中身について同社の鎌田社長に話を伺った。
株式会社テクノード / 代表取締役 鎌田寛昭
株式会社テクノード
代表取締役 鎌田寛昭
成長に伴う向上心が、「大企業志向」にも
先ほども触れたように、同社は「カジュアルゲーム」というカテゴリーで独自の存在感を発揮している。
「当社ではこれまでに30本以上のアプリをリリースしていますが、そのどれもが単純なものばかり。例えば2010年に無料アプリゲームランキングで1位を獲得した『Touch the Numbers』は、1〜25までの数字をいかに早く順番に消していくか、というシンプルなもの。ちょっとした暇つぶしを求めるユーザーには、その手軽さが受けているんです。」と語る鎌田氏。その開発の原動力になっているのはもちろんエンジニアだ。現在、社員と学生アルバイト合わせて20人弱の陣容だが、それぞれが柔軟なアイデアを元にヒットアプリを生み出している。ちなみに先ほどの『Touch the Numbers』は鎌田氏と企画者1名で開発。ランキング瞬間最高1位を獲得した『同じのタッチ』は後に社員となった当時学生エンジニアが企画・開発したもの、twitterなどで話題となった『うろおぼ絵17』というアプリは女子大生エンジニアが企画・開発したものだ。

好調な業績に合わせ、エンジニア採用も継続的に行っているが、採用へのハードルは高い。
「基本的にはエンジニアとしての最低限の能力を備えていて、業務経験がなくとも、アプリ開発にチャレンジしたことのある方であれば、貪欲に採用していきたい。」(鎌田氏)
それでもなぜ採用が難しいのか?
「優秀な学生アルバイトはたくさん集まるのですが、当社で経験を積むうち、大企業でなければ経験できない部分(インフラ等)に興味を持ち始める若者が多く、社員採用まで至るのはごく一部です。もっと先を見たい、というのは成長の証ですが、当社としては痛しかゆしのところでもあります。」(鎌田氏)
「Touch the Numbers」
「らくがきライブ」
同社のヒットゲーム
「Touch the Numbers」
「らくがきライブ」
”無理のない開発”をキーワードに、採用ハードルを乗り越える
そこで同社では、これまで以上に他のアプリ開発企業にはない特徴を前面に出して、採用活動を展開していくという。そのキーワードが「無理のない開発」だ。
その一例が勤務時間。10時から19時までで残業は基本的になし。同じように残業なしを謳う企業はほかにも多くあるが、実際は納期が近づくと残業が発生するケースが多い。しかし同社は残業が圧倒的に少ない。
「主力が自社製品なので、開発の遅れはリリース時期の調整で対応することができます。また納期的に厳しい案件はすべてお断りしています。開発で過度な無理をすると、間違いなく効率と品質が落ちます。カジュアルゲームの場合、アプリには遊び心が重要なので、勤務時間以外は、自分のための時間を思いきり楽しんでもらえるよう、残業は特別な事情がない限りはさせない方針を創業以来貫いています。」
株式会社テクノード / 代表取締役 鎌田寛昭
「エンジニアにいきいきと仕事を楽しんでもらうことが、ヒットアプリを作り出す出発点」と語る鎌田氏
同社は、残業なしでヒットアプリを連発するだけでなく、事業としても成立させている。
「当社のアプリは基本的に無料ですが、広告から十分な収益を得ています。安定した広告収入のためにはユーザーに使い続けていただくことが大前提、ユーザーを楽しませてナンボです。そのためには、エンジニアにも自分の生活を楽しんでもらい、そこから楽しいアイデアを生み出してほしいと思っています。エンジニアにいきいきと仕事を楽しんでもらうことが出発点です。」

同社では今後も、無理のない開発とそれを可能にする仕組みや環境があること,それこそが効率と品質を両立させるということを、地道に訴求していくという。
もうひとつの技術者争奪戦、インフラエンジニア獲得競争の舞台裏
ケース1では、アプリ開発者を獲得するための舞台裏について紹介したが、技術者争奪戦が激しいのは、アプリだけではない。そこで次に取り上げるのは、ネットワークやサーバの構築〜運用保守までのインフラ分野。ここでも、激しい争奪戦が各社繰り広げられているようだが、その中で同業他社にはない特徴を最大限活用した、独自の採用活動を展開している企業の事例を紹介したい。
ケース2 スクール運営の強みを生かして、ネットワーク&インフラエンジニアのキャリアアップをサポート / 株式会社エスアイイー
各種ソフトウェア開発からASP、システムアウトソーシングサービスなどの事業を展開している、株式会社エスアイイー。現在、約80人のシステム開発およびネットワーク・サーバ等のインフラの設計・構築〜運用保守のエンジニアが在籍し、大手クライアントで活躍している。
それだけをみると一見、どこにでもある企業と思われるが、同業他社と決定的に違う点が、同社にはある。それは、自ら「スクール」を運営していることだ。今回、そのスクール運営によりメリットを最大限活用しながら、難易度の高いインフラ系エンジニアの採用ハードルをクリアしようとする試みについて、同社人事部の植村氏に紹介してもらった。
株式会社エスアイイー / 人事部 / 植村 浩二氏
株式会社エスアイイー
人事部 植村 浩二氏
顧客の人材ニーズの内製化&高度化による、エンジニア採用難易度のアップ
「技術者要員派遣は基本、クライアント依存度が高くなる傾向があるので、クライアントのニーズに合うエンジニアを提案する必要性自体は、昔も今も変わりません」と語る植村氏。言い換えれば、クライアントのニーズにマッチしたエンジニアをいかに提案できるかが、ビジネスの最重要ポイントになるわけだが、ここ数年で、その「中身」に変化が生じているという。

「リーマンショックや先の震災後にプロジェクトにかけられる予算が減ることで、大手企業の内製化の動きが出ます。そのため、プロパーで補いきれないスキル要件をパートナーに求めてくるなど、クライアントのニーズが高度化している傾向があります。」
植村氏が語るように、パートナー企業に求める条件が高度化するため、そうした人材を確保することが、同社のエンジニア採用難易度アップの一つの要因となっているのだ。
またその条件も、特定のスキルだけでなくコミュニケーション力などヒューマンスキルを求める傾向が強くなっている。スキルや資格のように数字で評価しにくいスキルであるため、そのことも採用難易度を高める要因といえそうだ。
ほかにも「早急に○○と○○、○○のスキルを持ったエンジニアを出してほしい」など、急なタイミングで大量人材を求めるケースもあるという。
スキルや知識を教えるだけではない。キャリアアップのサポートができるメリット
そこで同社が、そうしたクライアントからの難易度の高いニーズに応えていくために、自社で運営している「スクール」を最大限、活用しようとしている。
同社には、企業研修や個人のエンジニアを対象に、ネットワークやサーバ系のスキルや資格取得のためのセミナーや授業を展開する事業もある。その施設や講師を活用することで、自社のエンジニアを効率的に育成することが可能なのだ。
「とかく『スクールで育成』と聞くと、新卒者や未経験者が対象と思われがちです。しかし例えば中途で弊社に入社したとき、ある分野の知識や経験が不足している場合には、その部分をスクールでフォローすることで、クライアントのニーズに対応できるエンジニアに短期間で育成することも可能。それが当社ならではの特徴です」(植村氏)

その一方、確かに社員ならば無料で教育を受けられて、スキルアップできるというメリットもあるが、単なるスキルアップや資格取得だけなら、自宅で勉強することも可能だ。しかしここでは、専任の講師が資格やスキルの最新トレンドや、それに関わる膨大な情報を有しているため、「ここでしか得られない価値」を提供しているという強みもある。事実、CCNAなどの社員の資格取得率は、非常に高いという。

しかしスクール運営の本当のメリットは別にある。それは、「キャリアアップするための実践的なアドバイス&関連案件のアサイン」だ。
特にネットワークやインフラエンジニアで、主に運用や保守業務を担当している場合、要件定義や設計・構築などの上流工程にキャリアアップしたい人が多い。その一方、そのために必要な経験や資格がなかったり、またどのようにキャリアアップしたらいいのかがわからない人が少なくないという。
「その点、当社では単に知識を教えたり資格を取得することだけをサポートするわけではなく、個人個人のキャリア志向や現状のスキルレベルを十分考慮した上で、キャリアアップしていくための実践的なアドバイスができるのが、スクール運営をしている大きな強みです。またコミットした条件をクリアしたら、その方の今後のキャリアアップにマッチする案件をアサインすることも可能です」(植村氏)

このように、スクール運営によって得られる数々のメリットを今後もアピールしていくことで、クライアントからのあらゆるニーズに対応できる、さまざまなタイプのエンジニアを採用していくという。
高性能PCやサーバなど充実した施設を持つ、同社のスクール
これから転職を始めるエンジニアに期待すること
最初に紹介したテクノードでは「自分の生活を楽しみながら、そこで触れた新しい情報やアイデア・知識を最大限に生かしつつ、ヒットゲームを開発できる自由な環境をこれから入社するエンジニアにも享受してもらいたい」という。
次に紹介したエスアイイーでは「明確な目的意識を持っていて、なおかつそのための自己研鑚の努力を継続している。しかし目標に到達するための手段で悩んでいる方ならば、そこをサポートしていくことで、エンジニアが望むキャリアアップを実現させたい」というメッセージをもらった。
また先述のコンサルタントのアドバイスによれば、実務経験がなくても、積極的にアプリ開発者向けのコミュニティやフォーラムに参加したり、自分で手を動かしてアプリ開発に挑戦し続ける姿勢こそ、企業側が求めている条件にマッチするため、その点に関してもっと自信を持ってアピールすることが重要だと指摘している。

今回、エンジニア採用難に対する企業側の取り組みにクローズアップしてみた。応募者側にとっては「裏側」に当たる部分ではあるが、そこにある事実を把握することは、転職成功のチャンスを高める要素になるはず。そのためにもぜひ、こうした企業側の取り組みにも目を向けたい。
  • はてなブックマークに追加
  • Yahoo!ブックマークに登録

このレポートに関連する求人情報です

株式会社エスアイイー◆20年連続2桁成長◆ITスクールを秋葉原・新宿で運営◆5年目迄は定期昇給確約◆社歴5年以上の平均年収517万◆ホワイト企業認定ゴールド取得

募集職種未経験OK/ITサポート、事務★資格合格95%★休日129日NEW!

  • 正社員
  • 未経験者歓迎
仕事の概要
サポートデスクやIT事務、設計など★1〜3ヶ月間は研修だけに集中!
対象となる方
学歴、経験一切不問!第二新卒歓迎◎意欲重視です
勤務地
1〜3ヶ月(最長)間の研修後、秋葉原本社or新宿オフィスor23区内中心のプロジェクト先※2…
年収例
850万円/中途10年目/40代前半(月給66万円+賞与)   400万円/中途3年目/30…

このレポートに関連する企業情報です

ITスクール事業(個人・法人対象)、ITソリューション事業、ゲームインテグレーション事業、人材サービスプロバイダー事業、セキュリティソリューション事業、メディアインテグレーション事業部続きを見る

あなたを求める企業がある!
まずはリクナビNEXTの「スカウト」でチャンスを掴もう!
スカウトに登録する
山田モ―キン(総研スタッフ)からのメッセージ 山田モ―キン(総研スタッフ)からのメッセージ
リーマンショックや東日本大震災などの影響で採用ニーズが一時的に減少するケースはありますが、今回紹介したアプリ開発職やネットワーク・インフラ分野のエンジニア採用ニーズは高いのが現状です。その中で今回紹介した企業以外にも、あの手この手でエンジニアへのアプローチを模索している企業は数多くあります。今、もし転職に関心がある方には、こうした企業側の姿勢も転職の判断材料の一つに活用していただけたらと思います。

このレポートを読んだあなたにオススメします

逆境転職に成功したエンジニア奮闘記

30パターンの職歴&味わいのある自己PRで転職成功へ

逆境転職に成功したエンジニア奮闘記不況下転職に成功したエンジニアたちを紹介していく連載企画。今回は応募しても面接さえ受けられない状況が続く中でほぼ毎日続けた“ある…

30パターンの職歴&味わいのある自己PRで転職成功へ

実録 求人魂!知られざるエンジニア採用の舞台裏

端末開発〜クラウド構築を担い、電子書籍市場を開拓!

実録 求人魂!エンジニア採用の舞台裏昨年から日本でも急速に拡大している電子書籍市場。さまざまな企業が参入し群雄割拠の状況の中で、電子書店サイトの運営からメーカーとの…

端末開発〜クラウド構築を担い、電子書籍市場を開拓!

HTML5、KVMなど注目テーマにハイパーエンジニア多数参加

リアル勉強会潜入!究極の技術&エンジニアに遭遇せよ

リアル勉強会潜入!最新技術に遭遇せよエンジニアを対象にした勉強会が活発に開催されるようになって久しいが、最近、勉強会の目的や開催する企業側の意図に変化の兆しが見受け…

リアル勉強会潜入!究極の技術&エンジニアに遭遇せよ

大阪から世界を目指すため、優秀な人材を発掘へ

グリーが大阪拠点を新設、エンジニアの採用を拡大

人気企業の採用実態世界で10億人のユーザー獲得を目指し、開発力の強化に乗り出したグリー。サンフランシスコ、ロンドン、北京、シンガポール…

グリーが大阪拠点を新設、エンジニアの採用を拡大

サイバーエージェント、pixiv、チームラボの人事部に聞く!

あのIT企業が今年採用した「凄腕エンジニア」の履歴

スイス出身、Android開発のスペシャリスト。WebGLを自在に操る、国内屈指のJavaScriptエンジニア。…

あのIT企業が今年採用した「凄腕エンジニア」の履歴

こんな時代に人事が欲しがる

年収1000万円超プレイヤーの自己投資術

不景気だから年収が下がるのは当たり前、と思ってはいませんか? 世の中には、こんな時代でも年収が上がり続ける「不況知らず…

年収1000万円超プレイヤーの自己投資術

この記事どうだった?

あなたのメッセージがTech総研に載るかも

あなたの評価は?をクリック!(必須)

あなたのご意見お待ちしております

こちらもお答えください!(必須)

歳(半角数字)
(全角6文字まで)
  • RSS配信
  • twitter Tech総研公式アカウント
  • スカウト登録でオファーを待とう!
スマートグリッド、EV/HV、半導体、太陽電池、環境・エネルギー…電気・電子技術者向け特設サイト

PAGE TOP